【完結】魔法少年ノ記録回帰   作:兼六園

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Q.逆にリンネに裸を見られたらどうなる?

特に動じない
・シェリー、ノア、マーゴ
悲鳴を上げる
・ハンナ、ココ、ミリア
普通に怒る
・ヒロ、アリサ
その場では冷静に対応できるけどあとで悶える
・ナノカ、レイア
ビックリしすぎて声が出ない
・エマ、メルル、アンアン
旦那の裸を見たことも旦那に見られたこともない
・変な大魔女姉貴


バスタイム・スクランブル

 レイア乱入事件から翌日の昼、俺はヒロに事情を話して解決のための相談を持ちかけていた。

 

「……ということが昨日あのあと起きてな」

「そうか、なぜ私にこの話をした」

「それはだねヒロくん、私だけで抱えるにはあまりにもインパクトがありすぎたからだよ!」

「そうか、もう帰っていいだろうか」

「逃がすなーーーーッ!!」

「待ちたまえヒロくん! 待ちたまえヒロくん!!」

 

 そそくさと席を立ちラウンジから逃げようとするヒロに対し、俺とレイアで前後を挟み時計回りにぐるぐると回転することで逃げ場を無くす。

 

「ええい鬱陶しい! わかった! 話を聞くから人の周りをぐるぐるするんじゃあない!!」

「まったく……最初からそう言えばいいものを」

「やれやれだね」

「こ、こいつら……!」

 

 ヒロを軸にした回転をやめて、改めて座り直す。

 

「それで、私に何をしろと?」

「ンまぁ簡単に言えば……今後また同じことが起きないように対策をしたいわけでだな」

「それはそうだろうが、まさか最初から私に丸投げする気で持ちかけたのか?」

「ふふふふ、俺に画期的なアイデアがあるとでも?」「無いな」

「でしょー!?」

「無いな」

「でしょー!?」

「な、なぜ2度も言うんだい……?」

 

 レイアは俺たちの……厳密には俺のノリについて行けずに軽く引いているが、お前もそのうち俺たちと一緒にボケ始めるから覚悟したほうがいいぞ。というかもうボケの片鱗はわりと出ているぞお前も。

 

「君がシャワー中に誰かが乱入しないように……か。看板でも立てれば済む話じゃないか?」

「俺が忘れるか立てても入ってくるかの2択だぞ」

「……それもそうか、となると……事前に全員が入浴する時間帯を聞いておく、とかになるだろうか」

「時間割を決める……としても、日によって入るタイミングは変わるだろうから……逆にいっそリンネくんが入る時間だけ固定してしまうのはどうだい?」

 

 考えるそぶりを見せてから、ピッと指を立てて名案を思いついたように自信満々に言うレイア。俺とヒロは顔を見合わせて、なるほどと納得する。

 

「……いいんじゃないか? どうだ、リンネ」

「レイア、お前天才って言われたことないか?」

「ふふふふ、実は……よくあるんだ」

「おお……!」

「なにが『おお』だ」

 

 意外にも問題は解決してしまった。

 

 ……が、そういえばと思い出す。

 

「俺まだレイアに謝罪されてないんだけど」

「レイアが君の裸を見たことについてか?」

「いやまあ見られも恥ずかしくない体はしてるんだけどさ、形だけでも必要じゃん? 誠意ってやつ」

「……それもそうだね、私も考えていたんだ。リンネくんへの誠意ある対応というやつを……さ」

「…………」

「…………」

 

 そう言いながら、不意にレイアがゆらりと立ち上がる。もうその時点でなんか嫌な予感がしてきて、俺とヒロもそれとなく立ち上がった。

 

「時に2人はハンムラビ法典を知っているかな」

「……なんだっけそれ」

「古代メソポタミアの成文法だ。有名なのは『目には目を、歯には歯を』だろうか」

「そう、言うなれば『1の罪には1の罰を、100の罪には100の罰を。1や100の罪に与える罰は2でも101でもあってはならない』というものだね」

 

 はあ。要はやりすぎるなってことね。いきなり何を言うのかと思えば、レイアは説明を終えると同時に──なんかいきなり服を脱ごうとし始める。

 

 …………?

 

 ?????

 

 なんで???

 

「つまり──キミの裸を見てしまった罪は……私の裸を見せることで償われる……!」

「もしかして昨日あのあと頭打った?」

「何かを間違えているのではないか?」

「刮目したまえ、結構気を遣って維持している私の! プロポーションを!!」

「待てレイア! 見せるな!」

「いや要らない要らない要らない要らない」

「言うに事欠いて『要らない』とはなんだい!?」

 

 ブンブンと首を横に振って、俺はレイアの行動をやめさせようと口を開く。

 

「別に、そんな……お前の裸を見ることは罪でも罰でもなくない? しかもなんか……見なきゃいけないっていうのがちょっとさ……義務感で見せられるのはあんまり、こう……燃えないじゃん」

「リンネ、君は君で何を言っている??」

「そ、そんな……! 私の裸には価値がないと言いたいのかい……!?」

「ねえこの人会話通じないんだけど!!」

 

 なんかもう、レイアの顔見ればわかるもの。明らかに混乱してて目がグルグルしてるもの!

 

「……レイア。お前さ、疲れてるんだよ。いったん頭冷やして冷静になれば、自分がどれだけバカなこと言ってるか認識できるようになるって」

 

 軽く肩をポンと叩いて、俺は踵を返してその場から離れようとする────が。

 

「待ちたまへーーーーっ!!」

「ぐあぁぁぁ……!」

 

 レイアに後ろから押し倒されて、俺は顔からラウンジのカーペットに倒れ込んだ。

 こ、いつぅ……! 的確に俺の膝の裏にタックルしてきやがった……!!

 

「私だって……私だって見られて恥ずかしくない体になる努力をしているよ! 高校に上がればグラビアの撮影もするかもしれないと思ってたからね!! なのに『要らない』なんてあんまりじゃないか!! もっと私を見てくれよ! 私だけを見てよ!!」

「うおおおそのセリフはやめろーーーッ!!」

 

 それお前が処刑される時に言うやつじゃねえか!! 俺が何百回そのセリフ聞いてると思ってんだ!!

 

「…………」

 

 それから両膝を抱え込むように両腕でしがみついてくるレイアから逃れようと打ち上げられたマグロのようにビチビチと悶えている俺を見下ろして、可哀想なモノを見るような眼差しを向けてくるヒロが、間を置いてから逃げる準備を始める。

 

「……あとはお若いもの同士で楽しんでくれ、私は何も見ていない。もう、それでいいだろう」

「逃がすかァーーーーっ!!」

「ぐあぁぁぁ……!」

 

 俺もまた、ヒロの足首を掴んで引っ張り倒すと、ヒロは俺と同じようにカーペットに顔からぶっ倒れる。

 

「お前だけがこの地獄から逃げられると思うな……! 我ら生まれた年月は違えど苦労する時は同じ!」

「苦しみだけ共有し合ってどうする! ええい離せ、こんな場面を誰かに見られたらどうす────」

 

 ふと、ヒロが気配に気づいてラウンジの出入口の方に顔を向ける。

 そこには、騒ぎを聞きつけたのか、心配そうな顔で部屋を覗き込んでいるエマの姿があった。

 

「…………エマ……っ!」

「ひ、ヒロちゃん、リンネくんとレイアちゃんまで、3人で何し…………ほんとに何してるの???」

 

 何が起きているのかまるで理解できないとばかりに、エマは困惑の表情で固まる。

 そりゃそうだろうな。どういうわけかレイアが俺にしがみついてて、俺がヒロの足を掴んでて、3人で床に倒れてるんだから。

 

「何って……『足の引っ張り合い』を体で表現するとこうなるのかなっていう再現をしてただけだが」

「……そう、なん、だ……?」

「そうですが?」

「なぜそんなスラスラと嘘をつけるんだ」

 

 これくらい肝を据わらせないと裁判ですぐ疑われるからだが……?

 俺がいったい何回犯人だと疑われてきたと思ってるんだ、何周かに1回はゴクチョーの気まぐれか何かでいきなり事前投票システムが追加されて裁判開始まで証拠集めに参加できないときもあったんだぞ。

 

 などと思考していると、エマはヒロを見下ろして悲しげな顔をしながら言う。

 

「……それにしても、ヒロちゃん、楽しそうだね。ボクと居る時はずーっと不機嫌なのに」

「今の私の顔を見てどうしてその感想になる」

「じゃあ……ボク部屋に帰るね。ヒロちゃんはボクなんかより、リンネくんたちと居るほうが楽しいんだもんね……」

「待て、エマ、弁明させてくれ。私は別に楽しくない! 私は……私は被害者なんだ!!」

「…………そっか」

「エマ! 待つんだエマ! エマーーーっ!!」

 

 ヒロの悲鳴が部屋に木霊する。エマは振り返ることなく、この場から離れていった。

 

「おお……」

「まるで妻に浮気がバレた夫のようだね」

「あー、確かにそれっぽいな」

「なぜ……なぜ私が、エマに、あんな……可哀想なモノを見るような顔で見下されないといけない……!」

「さっきのお前も俺らにあんな顔してたぞ」

「していたね」

「というかヒロのエマに対する態度がねぇ〜〜〜、ちょっといただけないよねぇ〜〜〜」

 

 ラウンジの床に倒れたままの会話が続く。

 

「そもそもさぁ、お前が具体的な理由も話さずに一方的に嫌いだなんだと突き放してるのが原因だろ? なんで嫌いなのか説明すれば終わる話じゃん」

「ぐっ……だが、しかし……」

「つべこべつべこべと! なぜ『腹を割って話し合おう』と言えんのだ!」

「ぐうぅ……!!」

 

 俺の発言にダメージを受けたかのように呻くヒロ。そこに、更にレイアの追撃が入る。

 

「ああ、可哀想なエマくん。でもいずれヒロくんは気づくんだよ、『あれ、あっちの方が友達の数多いんじゃないか?』……とね。向こうにはメルルくんシェリーくんハンナくんが居るが、対してキミはどうだい。居るとしてもリンネくんや私くらいだ」

「ゆ、友人は数を競うためのものではない……!」

「だが、質を競うものでもないな。……ん? もしかして外ではお前とエマの他にも誰か居たのか?」

「────!!」

 

 俺とレイアが言うと、ヒロは図星を突かれたかのように黙り込む。それから俺に短く呟く。

 

「──足を離せ」

「……へいへい」

 

 怒っているわけではない、けれども確かに機嫌の悪い声に対してまでおちょくるほどバカではない。素直に足を離せば、ヒロはすくっと立ち上がって、無言で部屋を出ていった。

 

「……ったく、あいつはあいつで意固地というかなんというか」

「まあ、いきなりデリケートな部分を話してもらうのも難しい。野良猫の警戒心をほぐすように、じっくりと攻めていくべきだろうね」

「ンだな。──で、だ。お前はいつまで俺にしがみついているんだ」

「無論、互いの恥を晒すまで……!」

「『これ』は恥じゃない……って、コト!? うおおお離せェーーーっ!!」

 

 その後、俺とレイアの戦いは5分くらい続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 ──夜の自由時間が終わる就寝までの1時間前。それが、俺が風呂に入るからと、他の囚人たちがシャワールームへ出入りするのを禁止する時間となった。

 

 それから、昼に焼却炉付近を調査した結果、風呂場の温度を変えられる機器を発見したことでお湯の温度を上げられるようになったのも束の間。

 なんとか汚れを落とし終えたバスタブで湯船にも浸かれるようになり、俺は体を洗いながら別の蛇口からお湯を出していた。

 

 ドドドドドドと勢いよく出るお湯がシャワールームを湯気で満たし、体を洗ってからお湯を止めて温度を測る。手をバスタブに入れて確認し──まあこんくらいか? もうちょい熱くてもいいかもしれない。

 

「他には……タイル張り替えたり割れてる鏡撤去したり色々やらないとなぁ。どっか切ったら大変だし」

 

 とかなんとか考えて、いざバスタブにイン──しようとしたとき。……ふと、背中にひたりと誰かの手が当たる。お湯の音に紛れて扉を開ける音が聞こえなかったのか、俺の背中を取った誰かは、そのままするりと腕を前に回してくると、囁きかけてきた。

 

「──だ〜れだ♡」

「こういうイタズラをする度胸のある人間は2人くらいしか知らんなぁ。それはシェリーか……そうでないならお前だ、マーゴ」

「やん、見ちゃダメよ♡」

 

 振り返った先に居たのは、服を着ていないマーゴ。けれども肌の上には、バスタオルが巻かれている。

 

「なんてね。ちゃんと隠してるわよ、見たかった?」

「なんか最近こんなのばっかだ」

「うん?」

「なんでもねーよ。……それで、何の用?」

「何の用、って。シャワールームに来る理由にお風呂のため以外の理由があるのかしら」

「それはまあ、そうだな。……いやこの時間は俺が風呂に入るから他の奴には入らないように決めたはずなんだけどな??」

「それを違反したら何があるの? という話なのよねぇ、だって魔女図鑑に記載されたルールではない以上は、たかが口約束なんだもの」

「お前なあ……」

 

 俺は呆れながらもマーゴの腕を引き離して、衣服棚からバスタオルを1枚取って腰に巻いてから、彼女と向かい合うようにバスタブに入る。

 タオルを巻いたままってのは行儀が悪いが、今回ばかりは流石に隠さないと色々と困るからな。

 

「…………はぁ〜、なんというか、やっぱただシャワー浴びるだけなのとお湯に浸かるのとでは明確に違うと感じるなぁ」

「……そうね」

「ン〜、で。マーゴ、俺と何か話がしたくて、俺だけになる時間かつ遮音性の高さを確保できるシャワールームを使いたかったんだろ?」

「やっぱり、わかっちゃう?」

「仮になんの理由もないならお前が痴女だったってだけの話になるわけだが」

「ふふ、やぁね。流石に相手は選ぶわよ」

「それは、外の世界ではそ(・)こ(・)ま(・)で(・)の(・)こ(・)と(・)は(・)今(・)の(・)と(・)こ(・)ろ(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)、って意味か?」

「────」

 

 ピクリ、と。マーゴの目尻が跳ねる。

 

「……リンネくん。あなたは……まるで私のことをよく理解しているかのような態度を取るけれど、私(・)の(・)客(・)にあなたのような人間は居なかったわ」

「そうかい」

「だからこそ、私はあなたに聞きたい──確かめたいことがあったのよ」

「……確かめたいこと?」

 

 あまり広くないバスタブの中で、自然と膝を突き合う形で向かい合って、マーゴは浴室の水気や湯気でメイクが薄まった顔を上げて問いかけた。

 

「──あなたは、『愛』を知っているのかしら」

 

『愛』。よりにもよって、マーゴからの問いかけ。目元のメイクが落ちて、しずくと混ざって湯船に落ちる。水の中にインクを落としたように広がり、薄まる様子を見ながら、俺はただ……脳裏で独りごちた。

 

 

 

 

 

 ──その話、今じゃなきゃダメなのぉ……??? 俺ゆっくり湯船に浸かりたいんだけどなぁ……!!




お気に入りと感想と高評価ください。


竜胆リンネ
・裸を見られた件は別に気にしていないし、ただ一言謝罪されればそれで丸く収まる筈だったのに、なぜかレイアが服を脱ごうとし始めて諸々が狂った。他囚人の裸は良くも悪くも見(・)慣(・)れ(・)て(・)いる。

蓮見レイア
・リンネの裸を見てしまった事実をわりと引きずっており、罪悪感と責任感で混乱した結果、自分の裸を見せて平等に恥じらおうとしてしまった。
原作1章1話ではチュートリアル犯人として早期退場したが、2章の方では終盤まで生存しており、日常パートと裁判パート共に愉快な面白ボケ枠として猛威を振るっていた。アリサを演劇に誘おうとして袖にされるシーンの演技は一見の価値あり。

桜庭エマ
・ヒロちゃん……ボクの事は嫌いなのに……他の皆とは仲良く遊ぶんだね…………

二階堂ヒロ
・『オモチャにされている』のを『仲良く遊ぶ』とは言わないぞエマ……!目を逸らすんじゃないエマ……!早歩きで去ろうとするなエマ……!!
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