えっ?!TSした僕が世界を救う?!できらぁっ!! 作:希捨酸
こういうのが書きたかったんだよねおじさん
「こういうのが書きたかったんだよね」
リネアから渡された書類には拇印や戸籍謄本が必要だったが恐ろしいことに全て用意されていてスムーズに進んだ。
全ての書類の性別の欄が女になっていたのは触れないことにした。
私は用事がある。と言って去るリネアの代わりに入ってきたのは
「あっ!昨日の軍人さん!?」
そういえば服にNTPDって書いてあったかも。
「その節は本当に助かった。ありがとう。キミのおかげで九死に一生を得たよ。」
軍人さんはニコリと笑う。
「私はレオノラ・カヴァリエリ。NTPD機動隊の隊長を努めさせてもらっている。」
機動隊……いい響きだ。主に俺の中学二年生くらいで最盛期を迎えた部分が反応している。
「えっと…レオノラさん。俺急にNTPDで働けって言われて…仕事なんてやったことないし……その……」
なんといってもさっき無理やり諜報機関にぶち込まれたばかりなのだ。
急に凶悪犯の相手をしろと言われていたらどれだけのサポートがあっても無惨にやられて人質になる自信がある。
「大丈夫。事情は……報告書の内容には目を通して把握してる。いきなり業務なんてさせないよ。」
「よかった…」
流石にそこまで鬼畜じゃないみたいだ。
「実務はまだ先だから安心して、今日のところはまず体力測定かな。」
着いてきて。レオノラはそう言って俺の手を引いて…って
「な、なんでナチュラルに手握ってるの!?」
「え…?はぐれないように?」
「こ、子供じゃないんだから必要ないッ!」
「え〜残念。柔らかい女の子の手、もうちょっと触ってたかったのに」
レオノラは手をわきわきさせて近づいてくる
「女の子でもないッ!!」
「ごめんごめん、いや〜機動隊のみんな手ゴツゴツしてるから新鮮でさ〜」
レオノラは謝りながらにへらと笑う。
レオノラの手、すべすべだったな……。
レオノラに連れられしばらくすると目的地に到着した。
大きな木製のドアを開くと。
「ひ、広い!!」
こんなに地下にこれだけの広さの空間を作って崩れないんだろうか。
体育館どころか小規模な学校が入るんじゃないかという大きな運動場があった。
「運動場A、ここじゃ一番広いとこだよ。リネアが貸切にしてくれたんだ。」
じゃ、待ってるからね。そう言って手渡されたのは
「ジャージと……レディースの下着!?」
こ、こんなの着ないぞ!!
小さくなった背と高くなった声で猛抗議するものの。
「でも、これしか渡されてないんだよね。流石にその服じゃ動けないでしょう?」
あと、ジャージのデザインは男女でほとんど変わらないし、とレオノラは続ける。
「レイちゃんが着たらすごくかわいいと思ってたんだけど……それでもヤダ?」
……今の俺の服は男の時の服、ブカブカでベルトで無理やり着てて歩くのすら少しおっくうなほどだ。
まだ怒鳴りつけられたり、無理やり着させようとするならよかったのにレオノラは『代わりの服、探してくるね…』と悲しそうに目を伏せて服を仕舞おうとしている。
いや、相手はあのリネアがいるNTPDだ。きっとこれだって泣き落としで……作戦で…………
「…………着るよ」
俺…チョロいのかもなぁ……
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「見ろ、レオノラ。監視カメラのアーカイブだ。」
リネアが私にタブレットを見せてくる。
足を投げ出して椅子に座って、ずいぶんご機嫌だなぁ。
「女子更衣室の中の映像だ……見ろ、ずっと目を伏せていたかと思えば顔を上げて───すぐに顔を赤くして顔を下ろした。」
リネアは続ける。
「服を着替える時も目をつぶっていて…見ろ!ズボンを履くのに5分もかかっているぞ。」
「はぁ……リネア、更衣室にカメラをつけるのは私、どうかと思うんだけど。」
スクールからの長い付き合いで慣れたと思っていたけどこの子の行動はいつも予想を超えてくる。
「安心しろ。基本的にカメラの映像はAIが監視してヒトが見ることは無いしアーカイブを見るにはNTPD長官である私の許可が必要だ。」
その権限、アナタにあったらダメじゃないかしら
リネアの顔は口角が上がりものすご〜く邪悪な感じになっている。
確かアカデミーで教頭が校長の妻と不倫してることを知った時にも同じ顔をしていた。
おもちゃを見つけた。そんな顔だ。
「人のシュミには口出したくないけど──ほどほどにね?」
「わかってる。ところで体力測定の結果は?」
「えーっとそれなんだけど…今中断してて」
「ケガか?」
「部分的に正解かな?その〜着替える時に下着を着たくなかったみたいで……」
「その………胸が擦れて痛くなっちゃったみたいで……。」
リネアの口が膨らむ。
「フハハハハハハッ!じ、冗談だろッ!?」
椅子から転げ落ちて床を転がりながら笑う。
ひとしきりリネアは笑うとこう言った。
「なんて…なんて愉快な奴なんだお前は……」
心の中で私はこう呟いた。レイちゃん、ご愁傷さま。と
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体力測定は散々だった。
シャトルランが無いって聞いて安心してたら時速35キロで何分走れるかとか言うイカれた種目に変えられてたし100メートル走は平均台の上を走らされた。反復横跳びでは胸を──ああっ思い出したくも無い!
着替えて戻ってきたらリネアが居て顔を見るなり笑ってきやがった。その上服を剥がれてブラの着方を間違えているのをみてまた笑われた。
手とり足とり教えてやろう。なんて言うかと思えば運動場のど真ん中で着替えさせられたし……貸し切られてて本当によかった。
測定結果はだいぶ低めで1点と2点が並んでいる。逆にこんなテストで高得点取れる奴は人間やめてるんじゃないか?
ひとまず今日は解散となり、レオノラに連れられて外に出ると空は赤く染まっていた。
来た時乗せられたゴツイ車とは違う丸くてかわいらしい───レオノラの車かな?に乗って家まで送ってもらう。
窓の外を見ると、窓枠がいつもより高くて身体が変化したことを嫌でも感じさせられる。
「ねぇ、レイちゃん。」
レオノラが口を開く。
「レイちゃんは不安?朝起きたら性別がいきなり変わってて、しかもいきなりNTPDに入れなんて言われて。」
こくりと頷くとそうだよね。と返される。
今でも悪い夢なんじゃないかと思っているし、夢なら覚めてくれと強く思う。
あくまでレイちゃんが望むなら。と置いてレオノラは話を続ける。
「今、NTPDはちょっとゴタゴタしててね、つまり……余計なことに時間を割いてる暇はないの。」
「だから、もし私がレイちゃんをどこか遠くに逃がしても追いかけるのはすごく難しいと思う。」
「私はきっと怒られるけど人材不足の今だから処罰は軽いと思うし、お金もしばらく生きるのに困らない分なら渡せる。」
「レイちゃんは……どうしたい?」
魅力的な提案だ。
新東京市にはきっと戻って来れないにしてもどこかで安穏な暮らしができるだろう。
だけど───
「昨日。レオノラさんが撃たれそうになった時、すごく怖かったんです。」
「俺が────俺が何もしないせいで誰かが死ぬのが。」
人は無力だ、特に俺みたいな一般市民は。
「きっとあなたたちは俺たちが知らないところで危ない目にあって、闘って……死んでいるんですよね。」
「俺は……それを知った上で見て見ぬふりをして自分一人だけ呑気に暮らすなんてしたくない。」
たとえどれだけ無力でも、無意味でも、手を伸ばしたい。
「ありがとうございます。レオノラさん。俺を気遣ってくれて。」
「だけど──大丈夫です。」
レオノラはしばらく俺の事を見つめて、そっか。と一言呟いてそれきりだった。
家に帰ると今までの疲れがどっと出て、そのまま寝てしまった。
今日はいろいろありすぎた。
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ゆっくりと目を開く。いつもと違う身体。この違和感にはしばらく慣れないだろう。
「知らない天井だ。」
「見知ってるだろ。何を寝ぼけている」
いやそれはそうなんですけどこれはネットミームで……
「ってええ!?リネア!!?」
アイエエエエエ!リネア!リネア=サンナンデ!!
俺がバカなことを考えながら目をぱちくりさせているとリネアは服を取り出す。あれは……制服?
「良かったな。ぽんこつのお前にピッタリ合った任務が見つかったぞ。」
「ソフィア女子高等学校への潜入調査だ。」
◇Tips
NTPD式体力測定について
体力バカが多く一般の体力測定では値が振り切れたり時間がかかりすぎたりであるためNTPDが独自に作ったテスト。
トレッドミルの上を時速36キロで走ったり上体起こし、反復横跳びの時間が通常の10倍であったりする人類やめかけてる人用テスト。1種目あたり50点満点。
レイがやるとケガしかねない内容もあるためそれらはレオノラが調整してくれた。
ちなみに体力測定も身体能力がよわよわなのは分かっていて戦力にする気はなく、元から潜入調査させる気でした。
スーパーハードな体力測定をさせた理由?リネアの趣味ですねを