具体的に言うと、ディセンションからドラゴン・ゲンドーソーにイエ・モトされるまでのどこかです。
重金属を含んだ雨が夜のネオサイタマに降り注ぐ。
ネオンが光るビル街の中、一人の少女ニンジャがニンジャ装束に身を包み、ビルからビルへと飛び移っていた。その胸は豊満であった。
何故ニンジャとわかるか?そもそもビルからビルへと飛び移るような真似をするのはニンジャ位しかいないからだ。
ニンジャの名はクチュリエール。ソウカイ・シンジケートの偵察諜報部門に所属するニンジャだ。
クチュリエールは焦燥していた。彼女は自身が持つニンジャソウル探知能力で追跡されている事を把握したからだ。
クチュリエールがジャンプ中に振り返ってリングの外側に刃が付いた形状のスリケンを投げる。先制スリケン投擲で相手のアンブッシュを防ぐ為だ。
チャクラムとも呼ばれる形状のスリケンは背後から迫る赤黒の装束に身を包んだニンジャへと真っ直ぐに飛翔する。メンポには『忍』『殺』と威圧的な漢字が刻まれていた。
ニンジャは投擲されたチャクラムスリケンの内側に指を入れて引っ掛け、投げ返そうとするが、入れた指に刃が食い込み出血する!
「グワーッ!内側に刃!」
チャクラムの内側にも刃が付いている!クチュリエールは投擲した瞬間にチャクラムスリケン内側に追加で刃を生成したのだ。思わぬ形のアンブッシュだ!
周囲のビルより低いビルの屋上に着地した二人のニンジャはビルの上で向き合い、立ち止まってアイサツする。
「ドーモ、始めまして。クチュリエールです」
「ドーモ、クチュリエール=サン、ニンジャスレイヤーです」
ニンジャスレイヤーから殺気が瞬時に膨れ上がり、対するクチュリエールは相手が格上と察しているので逃げの姿勢だ。当然、この後始まるのは凄惨な殺し合いだ。しかし、アイサツは決しておろそかに出来ないニンジャの礼儀だ。古事記にもそう書いてある。
「アッシみたいな情報持ってるか微妙なサンシタは無視する……って訳にはいかないでヤンスか?」
「ニンジャ、殺すべし。オヌシが知る限りの情報を吐くなら殺してやる。吐かないなら痛め付けて殺す」
「嫌でヤンス!」
ニンジャスレイヤーがジュー・ジツの構えを取り、クチュリエールも合わせて構える。
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが仕掛ける!イナズマのような飛び蹴りだ!
「フンハー!」対するクチュリエールは中腰の奇妙な姿勢で防御する姿勢!
ニンジャスレイヤーの飛び蹴りがクチュリエールのガードを貫……かない!その瞬間、クチュリエールの身体を瞬間的な緊張の波がはしった!ニンジャスレイヤーの足が歪んだ。
否、そのように見えただけだ。接触瞬間にクチュリエールの身体を走り抜けた謎めいたカラテ震動がニンジャスレイヤーの接触を拒絶したのだ。
「ヌウッ!?これは?」
「答える義理は無いでヤンス!」
勢いを殺され、飛び蹴り姿勢のまま床に堕ちたニンジャスレイヤーは姿勢を整えて攻撃を加えようとしたが、果たせない。彼の身体はビリビリと震え、自由を失っている。
「身体が痺れ……」
「イィーヤァ!」
クチュリエールがキリモミ回転をかけたバック宙をしつつ、チャクラムスリケンを四方八方に連射、連射、連射!
「グワーッ!」
ニンジャスレイヤーの身体をチャクラムスリケンが斬り裂く!
あらぬ方向に投擲されたり、斬り裂いてなお勢いが止まらぬチャクラムスリケンは周囲のビルや床等に反射して時間差でニンジャスレイヤーへと飛翔する!
チャクラムスリケンはただのスリケンではない。クチュリエールの持つジツ、ハリコ・ジツによって通常のスリケン以上にカラテを込めて生成することで対象を追尾し続ける疑似的なカラテミサイルと化すのだ!
クチュリエールはビルからビルへと三角飛びの要領で飛び移りながらチャクラムスリケン投擲を続けて実行!
ゴウランガ!ニンジャスレイヤーが動けぬ隙にスリケン投擲と逃走を同時に行っているのだ!
「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」
痺れながらももがくニンジャスレイヤーの身体を無数のチャクラムスリケンが斬り刻んだ。
━━━
「ヤバイでヤンス!あれだけスリケン食らっても生きてるとか、やっぱりネオサイタマの死神は伊達じゃないでヤンス!」
ビルからビルへと飛びながらチャクラムスリケンを連射するクチュリエールはビルの一つの屋上に着地した後、かなりの距離を稼いだ事を確認してニンジャスレイヤーのいる方角を向いたまま深呼吸して呼吸を整える。
「スゥーッ!ハァーッ!」
いくらか呼吸を整えた後、クチュリエールは後ろを向いた。否、上半身を極限まで捻ったのだ。
そのままフラフープ程の大きさのチャクラムスリケンを両腕に5枚ずつ引っ掛けるような形で生成すると、クチュリエールの上半身が霞んだ。
捻りを利用した急加速による大型チャクラムスリケンの十枚同時投擲だ!
「ハイーッ!」
大型チャクラムスリケンの群がこれまでに投擲されたチャクラムスリケンとは比べ物にならない速度で放たれた!
「アイエッ!とにかく逃げるでヤンス!」
瞬間、ニンジャスレイヤーのソウルが爆発するように膨れ上がった事を察知して血相を変え、投げた大型チャクラムスリケンがどうなったのか確認もせず、脇目も振らずに逃げ出した。
━━━
「イイイヤァーッ!」
ニンジャスレイヤーの全身をカラテが漲り、カラテ尽くで麻痺を解除!全身の傷口から禍々しい炎が噴き出して止血完了!
「イヤーッ!」
ハンドスプリングからのキリモミ回転ジャンプしつつスリケン投擲、ヘルタツマキでチャクラムスリケンをスリケン迎撃する!
若干、弾くだけに終わったチャクラムスリケンが残ったが、意に介せず両目からセンコめいた光を放つ!
「弱小ニンジャクランのレッサーニンジャソウル風情がよくもやってくれたな!痛め付けて殺してくれる!」
ニンジャスレイヤー……否、ニンジャスレイヤーのニューロンに潜む邪悪なニンジャソウル、ナラク・ニンジャがニンジャスレイヤーの肉体を乗っ取ったのだ。
ニンジャスレイヤーは飛来するチャクラムスリケンをカラテで迎撃しながらクチュリエールの追跡を開始した!
ニンジャスレイヤーが一つ、二つビルを飛んだ頃、チャクラムスリケンの群に混ざって10枚の大型チャクラムスリケンが前方から恐ろしいスピードで飛来する。
「オモチャめ!少しばかり大きなスリケンでこの儂を止められると思うなよ!」
ニンジャスレイヤーはチャクラムスリケンの群に飛び込みながら再びキリモミ回転を開始してヘルタツマキ!チャクラムスリケンのスリケン迎撃を再開した。
━━━
「アイエェェ……ヤバイでヤンス……ナラク入ってるでヤンス……」
クチュリエールは徐々に近付いて来るニンジャスレイヤーのソウルに恐怖しながら必死に逃げている。
賢明な読者諸君は気付くであろう。このクチュリエールは現実世界からの転生者である。
読者としてニンジャスレイヤーの恐ろしさを知ってるが故にニンジャスレイヤーに隙ができても逃げる事に専念していたのだ。
「追いついたぞ!クチュリエール=サン!どのように死にたいかリクエストさせてやる!」
「アイエェェ!」
背後から聞こえる恐ろしい声にクチュリエールは思わず悲鳴を上げた。
「ナッナントカナレェーッ!」
瞬間、クチュリエールのニンジャ装束に着けられたケースに何かが引っかかった。
ニンジャスレイヤーが投げつけたのは、ニンジャのイクサにも耐えるドウグ社製のフックロープだ!
しかし、引っかかったケースはあっさり外れ、ケースだけがニンジャ腕力でニンジャスレイヤーの元に引っ張られて行った。カラテ不足の自覚があるクチュリエールは自身のニンジャ装束に対し、掴まれた時に脱出できるよう、容易く外れる仕掛けを施していたのだ。
「ヌゥゥ……いかん、血を流し過ぎたか……」
ニンジャスレイヤーの速度が落ちる。ここまでの出血で動きが鈍ったのだ。
そのままクチュリエールはニンジャスレイヤーの追跡を振り切り、ネオサイタマの闇に消えて行った。
クチュリエールに逃げられ、ナラク・ニンジャから肉体の主導権をなんとか取り戻したニンジャスレイヤーが何か手がかりはないかと屋根の下に入って手に入れたケースを開くと、そこにはイナリズシが6つ納められていた。
ニンジャスレイヤーは大量出血で消費した体力を取り戻す為、中のイナリズシを口に放り込む。中のシャリは小さな成形マグロブロックのヅケ、ショウガ、シソが混ぜられている。家庭的な味と共に強いニンジャ回復力の高まりを感じた。
「おのれクチュリエール=サン、次は殺す、必ず殺す!」
ニンジャスレイヤーはニンジャへの憎悪と共にイナリズシを飲み込んだ。
クチュリエール=サンは余裕で逃げたように見えるかもしれませんが、初見殺しが刺さった上でインストラクション・ワンを実行しつつガン逃げしたのでニンジャスレイヤーからなんとか逃げられました。
クチュリエール=サンはインターラプター=サンの弟子です。
ソニックブーム=サンのスカウトに素直に応じ、トレーニングを文句一つ言わずにやり遂げる事でソニックブーム=サンからの評価を上げてインターラプター=サンにインストラクションして貰えるよう便宜を図って貰いました。
**ハリコ・ジツ**
スリケン生成の形状、大きさ、色、硬度等を自在に調整するジツ(装束、小道具、簡易工作物、投擲刃物、マキビシなど)。
強度は現状「少し丈夫なスリケン」程度が限界。
鍛錬の結果、投げたスリケンを疑似的なカラテミサイルとして軌道制御可能になった。
ジツで生成されたニンジャ装束には細工を施してあり、掴まれた際の脱出用に掴まれやすい部位が外れやすくなっている。
**イナリズシ**
緊急時の治療兼お弁当として常に持ち歩いている自作のイナリズシ。
ニンジャ回復力を高めつつ、食べやすくする為に中身には拘っている。