ネオサイタマ郊外、草木も眠るウシミツアワー。ビルの屋上に風切り音が響く。少女の手首を支点にフラフープ大のリング状スリケンが勢い良く回転しているのだ。
「スゥーッ! ハァーッ!」
そのまま少女の上半身が極限まで捻じれ、少女の上半身は真後ろを向いた。狙いは既についている。少女のニンジャソウル探知能力はデミチャドー呼吸によって高められ、地平線近くに存在する砂粒めいて見えるターゲットをしっかりと捉えた。
「ハイーッ!」
少女の上半身が霞み、勢い良くチャクラムスリケンが投擲され、地平線に消えて行った。
「当たりました!そのまま跳ね回って近くのニンジャも巻き込んで皆殺しです!」
側にいた双眼鏡を構えたニンジャ、ウィンドマジックが観測結果を伝えると、後ろから少女の様子を見ていたニンジャ、エイトベクトルから歓声が上がった。
隣にいるブロッサムはニンジャ二人のテンションについて行けず、戸惑っている。
「流石はクチュリエール=サン……シャーテックにホーミングスリケンのカラテ技術を齎した天才スリケン使い……」
「今は亡きガントレット=サンが教えを乞うた方だと仰っていたがこれ程とは……」
ウィンドマジックとエイトベクトルは興奮が収まらないようだ。
「ウィンドマジック=サン、エイトベクトル=サン、やったアッシが言って良いのかわからないけど、アッシのスリケンってスナイプって言って良いのでヤンスか?」
「「良いのです!」」
クチュリエールの発言に二人揃って肯定で返した。
クチュリエールとブロッサムは困惑している。
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Inter City Ballistic SURIKEN……都市間弾道スリケン、略称をICBSと呼ばれる思想がある。
都市に張り巡らされたIRC監視網を共有し、あらゆる武力・カラテを蜂起前に遠投スリケンで殺し、それを全世界に広げることで、スナイパーニンジャを「他を圧倒しすべてを裁く、さながら審問官めいた支配階級」にするという思想である。
ソウカイ・ニンジャの一人、ガントレットが提唱し、ICBS思想実現の為にスナイパーニンジャを育成、各ニンジャ組織に送り込む組織。その名もシャーテック。
クチュリエールはそんなシャーテック創始者ガントレットにスリケンを疑似カラテミサイル化して誘導能力を持たせる技術「ホーミングスリケン」を授けたニンジャとしてシャーテック内で信仰されているのだ。
そんなシャーテックの二人と今回同じミッションを下され合流した結果、天才ニンジャのスリケン捌きを見たがった二人に大金と共に懇願され、今回のスリケンスナイプに至った。
ウィンドマジックとエイトベクトルはミッションの後、クチュリエールからサインを貰い、はしゃぎながら帰って行った。
濃い思想の持ち主達にクチュリエールとブロッサムは終始困惑していた。
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夜明け前のトミモト・ストリート。シャッターが閉まりきった安宿街を可愛らしい少女が二人で歩いている。クチュリエールとブロッサムだ。
ミッションの帰り道、あまりにも思想が濃い二人の相手で精神的に疲弊した二人はゆっくり歩いて帰る事にしたのだ。
二人は明滅するネオンに照らされながら、朝食をどこの店で取るかについて相談していた。
こんな時間帯に少女が二人で出歩くなど絶対に避けねばならないことである。彼女達がニンジャでなければ。
見よ、少女達の後方3メートルを。鉄パイプ、拳銃、そして廃材から作ったポンプとポリタンク、100円ライターを組み合わせて作り上げた、可燃性汚染工業廃液を吹き付けつつ燃やすDIY火炎放射器だ!コストに対して火力がある。製作者の偏差値は高い!
それぞれの武器を持った3人の武装ヒョットコが、少しずつ距離を狭めながら、二人の後をつけてゆく。
ヒョットコは、センタ試験と呼ばれる過酷な選抜試験からドロップアウトし、家を追われた十代の浪人生で構成された、巨大なストリート・ギャング・クランである。このトミモト・ストリートも、奇怪なマスクを被る彼等の掌握下にあった。
彼等にはルールも良心も無い。そして、産まれてこの方、縁が無かった美少女が二人で歩いているのであれば、それはこの先、一生訪れないであろう美少女と前後するチャンスである。ネオサイタマならどこであれ、深夜に少女だけで出歩いて良い道理は無いのだ。彼女達はニンジャなので問題は無いが。
両端の二人、鉄パイプ持ちとDIY火炎放射器持ちのヒョットコがクチュリエールとブロッサムの前に回りこんだ。
鉄パイプ持ちと拳銃持ちは爆笑しながら少女達を取り囲む。
DIY火炎放射器持ちはクチュリエールを見て驚愕した。
「まさか、サユリなのか?」
DIY火炎放射器持ちがマスクを外してクチュリエールに話しかける。
少女の返答はスリケンだった。ヒョットコ達の頭は弾け飛び、ネギトロめいた物と化して道路に散乱した。
DIY火炎放射器が道路に落ち、漏れた可燃性汚染工業廃液に100円ライターが引火、倒れた持ち主を火葬した!雑な作りだ、製作者の偏差値は低い!
「知り合いみたいだけど良いの?」
「良いでヤンス。アッシの仇でヤンスから」
クチュリエールの据わった目を見てブロッサムはそれ以上触れなかった。
BEEP!BEEP!BEEP!
二人のIRC端末が同時に鳴り出す。
「イヤーッ!」
取り出して応答の為に通話ボタンを押した瞬間、飛来して来た二つのスリケンが二人のIRC端末を破壊した。
二人は瞬時にスリケンが飛んで来た方向を睨み、クチュリエールは驚愕した。
「ドーモ、ワタナベ・サユリ=サン。ワタナベ・サカキです」
「ドーモ、インターラプター=サン。クチュリエールです」
「ドーモ、ブロッサムです」
恐ろしいスピードの踏み込みでカラテの距離まで近付いてアイサツしたのは出奔したシックスゲイツ、インターラプターだ!
「もう〝お父さん〟とは呼んでくれないのか……サユリ……」
クチュリエールへ悲しそうに告げたインターラプターの発言にクチュリエールとブロッサムは困惑して固まった。
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クチュリエールとブロッサムの失踪から二週間が経過した。
アースクエイク、ヒュージシュリケン、ビホルダー、コッカトリス等、シックスゲイツを含めた多数の実力者達を失った今、二人を失うのはソウカイヤにとって大問題である。
IRC端末の最後の通話記録から二人が死亡した可能性は低いと判断したセキュリティ部門は捜索用の人員を増員した。
「ドーモ、ウォーロック=サン。ダイダロスです」
「ドーモ、ダイダロス=サン。ウォーロックです」
そのニンジャは紐めいて痩せた小柄なニンジャであった。
Q.ICBS?シャーテック?そんな胡乱な連中、原作にいるわけ無いだろ!
A.存在します。
Q.「アッシの仇」ってあのヒョットコは何者なの?
A.ディセンションの原因になったネトリ・サレル君です。
Q.ダイダロスを廃人化させる算段はどうなりましたか?
A.「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」の前なので、ウォーロック=サンがなんとかしてくれますよ。多分。
Q.インターラプター=サンとクチュリエール=サンに血縁関係はありますか?
A.ありません。脳内に溢れ出した存在しない記憶を信じてる〝父を名乗る不審者〟です。
**ツヨイ・タタミ・スリケン**
一枚のフラフープ大チャクラムスリケンを回してあらかじめ勢いを付けた状態でタタミ・ケンのモーションを利用して投擲するワザ。
威力が一枚に収束した上に予めつけた勢いが乗る為、凄まじい斬れ味と射程距離を誇るとんでもないスリケンワザ。
ガントレットからはICBS思想に最も近いワザと言われた。
**デミチャドー呼吸**
ラオモトが大量のカラテミサイルを撃つために使ったカラテを高める呼吸。
ゲイトキーパー=サンからインストラクションされた物としてます。