「もう〝お父さん〟とは呼んでくれないのか……サユリ……」
「…………何のつもりでヤンスか?端末を壊すと私達が管理責任を問われてケジメする羽目になるのは知ってるはずでヤンス、〝お父さん〟。オハギの量は増えたでヤンスか?」
インターラプターの発言に対し、クチュリエールは困惑して固まった後、呆れた様子で答えを返した。
ブロッサムは状況がわからず困惑しつつもインターラプターに対して警戒を解かない。クチュリエールの口からオハギと聞いてより警戒を強めた。
「オハギのペースは変わってないから大丈夫だ。……もうお前にソウカイヤの……殺しの仕事をして欲しくないんだ。オハギ中毒者の、情けない父親に言われたくないだろうが、こんな事は辞めるべきなんだ。……そこのお友達も含めてな」
「それでホームレスになってソウカイヤに喧嘩を売れと言うでヤンスか?アッシはブロッサム=サンの命を預かっているでヤンス。そんな無責任な話は聞けないでヤンス」
「クチュリエール=サンをおいて逃げた癖に何言ってるの?この半年、クチュリエール=サンはアタイを庇って酷い目に遭ってたのに……」
「返す言葉も無い……だがそれでも辞めて貰う。力づくでもな。……酷い目にも、もう遭わせない」
睨み合い、空気が緊張する。
「やめるでヤンス、ブロッサム。この距離だとアッシら2人がかりでも勝てないでヤンス。アッシの……ザムラ・カラテのメンターでヤンスから……」
クチュリエールの台詞を聞いてインターラプターはほっとした表情で拳を収め、ブロッサムもまた渋々拳を収めた。
「二人共ついて来てくれるか?俺の今の家に案内しよう」
「ちゃんとした家でヤンスか?ダンボール箱の中で寝泊まりなんて言われたら、宿を取りに行くでヤンスからね」
二人はインターラプターの後を渋々ついて行った。
安宿街の雑魚寝ホテルはほとんどが灯りもつけず、扉を閉ざして静まり返っている。強盗対策である。二つめの十字路で、インターラプターは立ち止まった。地面のマンホールの蓋をずらし、二人へ降りるように促した。
「ここを降りるんだ、二人共」
「「エェ……」」
下水道を通らされる状況に二人は嫌な顔して顔を見合わせた後、クチュリエールから梯子に足をかけようとした。
そのときである。二人を見守っていたインターラプターが突然ぶるぶると震え出し、地面に両膝をついた。
「畜生きやがった!やばい、オハギ、オハギ、オハギ……」
「はーい、動いちゃダメでヤンスよぉ」
クチュリエールは慣れた手つきでインターラプターの懐に右手を入れてプラスチック製のタッパーを取り出して開封し、中のオハギを一つインターラプターの口に押し込む。
モッチャモッチャと咀嚼音が響き、ゴクリと飲み込んだ。
「アアー、アマーイ……キクキク、アーッ……遥かに良い……遥かに……」
途端にインターラプターの震えが収まり、恍惚とした酩酊が訪れた。
暫くインターラプターは二人の事を忘れて快楽の波に浸っていた。
「今の内に逃げない?」
「このまま逃げると絶対面倒になるでヤンス。インターラプター=サンはかつてソウカイ・シックスゲイツ最強……ソニックブーム=サンでも無理だから、取り押さえられるニンジャはもうソウカイヤに残ってないでヤンス。
更にIRC端末の破損を見逃して貰うのに何か手柄がいるでヤンス。……その辺にザイバツニンジャでも居れば、たしか首5つ位で見逃して貰えるはずでヤンス」
「もうミッションで殺した後だから見つけようが無いね」
「だから困るでヤンス。オハギ中毒でインターラプター=サンの記憶がどうなってるのか確認する必要もあるから、ついて行くしか無いでヤンス。アッシにはこの手の潜入経験があるからブロッサムはアッシに合わせて欲しいでヤンス」
「わかった」
「ああ……すまんな、恥ずかしい所を見せて……降りようか、お二人さん」
インターラプターが酩酊から戻ってきた。酩酊中の会話は聞こえてなかったようだ。さっきと同じように下に降りるよう二人を促している。
二人が縦穴を降りきったのを確認してから、インターラプターもまた地下に降りた。
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目に刺さるようなアンモニア臭を立ち昇らせる水路を左手にまっすぐ進む事、数分。
三人は錆びた鉄の扉の前に立った。扉には奥ゆかしい字体で「お先です」と書かれている。どこか他所から持ってきたのだろう。
「ここだ、二人共。みんな気のいいやつだよ。しばらく居るといい」
男は軋む扉を押し開き、二人を促した。オレンジ色の光が目に飛び込んでくる。
「ここは『キャンプ』だ。で、俺がここの、ヨージンボーというわけさ」
貯水槽かなにかを利用した場所であろうか、天井は高く、どこから電気を引いてきたのか、あちこちに据えられた電気ボンボリに照らされ、非常に明るくなっている。
広さから察するに三十から四十軒のテント、ダンボールハウスが設置されているようだ。それら全てがつぎはぎだ。
「村長に紹介しよう。ついて来てくれ、二人共」
三人は一番奥にある水牛革製のテントのノレンをくぐる。そこにはサイバネティック義手をした、太った老人が座っていた。インターラプターは老人にオジギした。
「ドーモ、タジモ=サン。二人、上で困っていたのを連れてきたんだ」
老人は座ったまま手を合わせた。
「ドーモ、ワタナベ=サン。なんで若い女の子をこんな所に?女の子には辛い所だよ」
「そうなんだが、家出してそれっきりの娘とその友達に会えてな……」
「再会は喜ばしいけどね、せめて安宿暮らしかトレーラーハウス生活位は出来るようになってから会うべきだよ。
父親のソンケイとかそういう物があるだろう?」
「返す言葉も無い……」
老人が二人に向き直る。
「さて、あんた達、名前は」
「ワタナベ・サユリです」
「ヤモト・コキです」
「よくここに来てくれたね。ここで暮らすのは辛いと思うが、もしそのつもりなら仕事をしてもらうよ。ここでは、皆ができる事をするのさ。助け合いで成り立つコミューンなのだ。ワタナベ=サンはここでヨージンボーをやっている。揉め事を解決してくれるのさ」
老人はニッコリ笑った。
「アッシとヤモト=サンは料理が出来るでヤンス。もし良ければソバでもスシでも作るでヤンス」
「ここで女の子の手料理を食べられるとは思わなかったよ。わかった、キッチンや調理器具、食材等の手配をしてこよう」
「「ありがとうございます」」
クチュリエールとブロッサムは老人に礼を言い、三人でテントを出てインターラプターのテントに向かった。
━━━
キャンプ暮らしを始めてから一ヶ月、クチュリエールとブロッサム……もとい、サユリとヤモトの食堂はずっと盛況だった。
ソウカイヤにいた頃、各種ミッションを完璧にこなして得た高い給料とインセンティブ、そして鍛えて磨いたニンジャ学習能力で一流店のソバシェフやスシ職人等の動きを見て、食べて盗み、我が物としたサユリと元々料理上手なヤモトの料理のワザマエはキャンプの住人達を驚かせた。
二人はあっという間にキャンプ住人達の胃袋を掴み、キャンプに馴染んでいた。
「ヤモト=サン。ロン先生と患者さんへの出前がラストオーダーだったよね?」
「そうだよ、サユリ=サン。スシとソバのセットが二つ」
料理を載せたオボンを受け取ったヤモトはロン先生の医療テントに入って行った。
ロン先生の医療テントは消毒用アルコールが香り、注射器やピンセット等の一般的な医療機器から謎のよくわからない医療機器まで並ぶ零細診療所のような様子だった。
そして、奥に並ぶ四つの医療用ベッドの内の一つ。深い怪我をした男が目を閉じて座っている。
上半身は裸で、血の染みでまだら模様になった包帯をサラシのように巻いていた。肩口と胸の辺りに大きな染みがある。その箇所の出血がひどかったようだ。
「スゥーッ! ハァーッ!」
だが、上半身裸の男は傷を気にすることもなくアグラ姿勢で深く強い呼吸を繰り返している。ただの深呼吸とは違う、息吹く大地めいた力強い呼吸だ。
ヤモトのニンジャ第六感が目の前の男が只者ではないと訴えている。ヤモトはロン先生へと視線を向けた。
「ドーモ、ロン先生。こちらの方は?」
「彼はモリタ・イチロー。モリタ=サンはすぐそこの下水のところで倒れていたのだ。今朝の事だよ。意識を失い極めて危険な状態だったが、なんとか息を吹き返した。驚くべき生命力だよ」
ヤモトの存在に気付いた男はヤモトを見て驚いたが、すぐに表情を取り繕い真顔に戻った。
「ドーモ、はじめまして。ヤモト・コキです」
「ドーモ、はじめまして。モリタ・イチローです」
「もしかして、どこかでお会いしましたか?」
「いいえ、これが初めてです。知り合いに似てて驚きました」
ヤモトはモリタの反応に疑問を感じながらも、二人分のスシとソバのセットを事務机に置き、片付けの為に食堂へ戻って行った。
━━━
(何故ヤモト=サンがここに?ソウカイヤになったのではなかったのか?)
再び呼吸を再開したモリタ……否、ニンジャスレイヤーことフジキド・ケンジはヤモトとの対面に驚いていた。
悪趣味な格好をしたソウカイヤのスカウト、ソニックブームがヤモトを勧誘している時を狙い、ソニックブームとクチュリエールにテンプラ屋台によるアンブッシュで戦いを挑んで以来の再会だ。
彼女はあれからソウカイヤに入ったのだろう。モータルを装っているとはいえ、動きの一つ一つから実戦で磨かれた腕の立つニンジャらしい物を感じる。しかし、立ち振る舞いには少女らしさが残っており、出会った場所がおかしい。ソウカイヤから逃げ出したのだろうか?
「スゥーッ! ハァーッ!」
フジキドは雑念を祓うように呼吸を繰り返した。
原作のキャンプ描写を見直したら女の子を連れて来たい場所じゃ無さ過ぎて笑いました。
Q.ブロッサム=サンをクチュリエール=サンが庇う?何のことですか?
A.ダイダロスとのLAN直結です。ブロッサム=サン視点だと自分を庇って全て引き受けたように見えてます。
実際はダイダロスは豊満派なのでブロッサム=サンを狙わなかっただけです。
ゲイトキーパーからダイダロスにはアーチ級ニンジャソウルはサイバネと相性が悪いからやめろとブロッサムへの手出しを止める以外されていません。
クチュリエールの扱いを放置してるのはダイダロスのモチベーション維持とクチュリエールの身辺調査でスルゾウとモツアキに何をされたのか知っている為、経験済みなら平気だろうと思われてる為です。
また、ダイダロスがクチュリエールに行ったLAN直結はひたすら気持ち悪いだけでニューロンへのダメージはありませんが、受けた時の反応のヤバさで身体的にもヤバい事になってるとブロッサムに思われてます。
Q.ブロッサム=サンはインターラプター=サンの事をどれくらい知っているのですか?
A.クチュリエール=サンのメンターだった事しか知りません。
また、クチュリエール=サンの過去も知らないのでインターラプター=サンがクチュリエール=サンの父親だと信じています。