「何が起きましたか?」
「水牛殺しの猛獣狩りで張り込んでたら襲って来ました」
「返り討ちにしてやったでヤンス」
カウボーイハットを被ったレンジャーマッポの質問にクチュリエールとブロッサムは起きたままの出来事を語った。
二名のレンジャーマッポはキャンピングカーに貼られた「紛うことなきハンター」と「実際スゴウデ」のステッカーを見て納得しかける……が、周囲の死体はクローンヤクザだ。
その辺に転がる斬首された死体はカタナを持っている方のハンターがやったとしても、無傷なのはおかしい。武装ビークル内の死体に至っては全てバラバラ死体だ。斬首の時点でハンターの殺し方ではない。車内には車外からも確認出来る薄い板状の物体が貫通した跡と無数の鋭い刃物で斬りつけたような跡がついている。
もしかすると、この二人の少女がハンターというのは欺瞞で、その正体はニンジャなのではないか?そもそも何故この年頃の少女達がハンターをやっている?何故この少女達は無傷なんだ?
ハンター二人を担当したレンジャーマッポ達は気付いてはいけない真実に近付いたと直感してしまい、二人の少女達を前に動けなくなっていた。
「全て証言します。ハンターの彼女達は関わっていません」
タケシタと名乗っていた研究員が彼から事情聴取していたレンジャーマッポにあっさりと白状した。藪をつついてタイガーを出さずに済むと安堵したレンジャーマッポ達はこれ幸いにハンター二人を解放した。
「ナンシー=サン、あとどれくらいかかりそうですか?」
((余計な事を聞きやがって!美女だけ置いて帰ってくれ!))
ハンター二人を担当したレンジャーマッポ二名の心が一つになった。スーツを着た金髪コーカソイドの美女はハンターの連れだったから彼女の聴取が終わるまで帰ってくれない!
「私は大丈夫。先に帰ってて良いわよ」
「そうでヤンスか?それならアッシらはお先に失礼するでヤンス」
「ナンシー=サン。迎えが要るならいつでも呼んでくださいね」
ナンシーの言葉を受けた二人はキャンピングカーに乗ってジャングルの中に消えて行った。
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キャンピングカーがタマチャン・ジャングルを進む。重金属酸性雨をワイパーで拭いながら旧世紀の国道を駆け抜ける。
夜でもバイオパンダの襲撃が予想される為、キャンピングカーのルーフではギリースーツを着たクチュリエールが座って警戒し、ブロッサムが運転を担当していた。
バイオバンブーが揺れ、ジャングルから飛び出した赤黒の影がクチュリエールの隣に着地する。ナンシーを抱えたニンジャスレイヤーだ。
「クチュリエール=サン。チュパカブラは始末した。ナンシー=サンを中に入れてくれ」
「オツカレサマでヤンス。ニンジャスレイヤー=サン。ちょっと待つでヤンス」
クチュリエールが有線LAN直結したIRC端末越しに運転席のブロッサムに連絡を入れると、キャンピングカーは停車した。
「アッシが警戒してるからニンジャスレイヤー=サンも休むでヤンス」
「クチュリエール=サン……かたじけない」
リビング部分に二人が入り、何やら話し込む。ブロッサムは気にする事なくキャンピングカーをネオサイタマへ走らせた。
━━━
キャバァーン!IRC端末から銀行口座に入金された事を示す電子的効果音がトコロザワ・ピラーのエレベーター内に鳴り響く。
ソウカイヤのツテで闇オークションに出したチュパカブラの剥製が競り落とされたという通知だ。この手の経験が無い為に剥製作りから出品まで全て外注になったので落札価格の三割程しか振り込まれなかったが、好事家が高値を付けてくれたおかげでそこまで悪くない金額になった。
「どうしたんだ?クチュリエール=サン」
「オークションに出した剥製の落札通知でヤンス。先々週、タマチャン・ジャングルに水牛を襲う謎の生物が出たと聞いて、そいつを狩ってきたでヤンス」
偶々同乗したダークニンジャからの質問に端末の画面で出品した剥製を見せながらクチュリエールが答えた。
「謎の生物?」
「アイサツしたら返されたので、多分ヨロシサンから脱走したバイオニンジャでヤンス。アッシが狩ったあたりにはバリキドリンク工場跡地しかヨロシサンの施設が無かったから他から流れてきたのかもしれないでヤンス」
「またヨロシサンが何かやったのか……」
欺瞞!クチュリエールはヨロシサンが現地で何か作っていた事を原作知識で知っていたが、うろ覚えなので適当な事を言っているのだ!
ダークニンジャが思案する。ヨロシサンがバイオ改造等で妙な物を作るのは何時もの事だ。
「ところで、あの〝イアイめいた変形チョップ突き〟に名前は付けたのか?」
「名前?そういえば付け忘れてたでヤンス。良さそうな名前が浮かばないから保留して、そのまま忘れてたでヤンス」
ダークニンジャから再びの質問。クチュリエールは自分が技名を付け忘れていた事を思い出した。
「それなら、〝ダーク・エッジ・ツキ〟なんてどうだ?」
「ダークニンジャ=サンが編み出したような名前でヤンスね……他に候補も無いから、それで行くでヤンス」
エレベーターが目的の階に到着した。
Q.なんでみんなステッカーに騙されるんですか?
A.マシン・オブ・ヴェンジェンスでオムラ社がミサイル攻撃をマイコ音声で宣伝扱いして誤魔化したので、キャンピングカーのステッカーでも騙せる物としました。