忍殺世界にTS転生した話   作:下駄ロボ

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ゲイシャ・カラテ・シンカンセン・アンド・ヘル 2/?

「ザッケンナコラー!!」

 

新幹線が走り出してから数時間後。クチュリエールとモリタが乗る七十二号車で目を血走らせたサイバーウェアの若者が、不意にヤクザスラングで叫んだ! 前の列でLAN直結ショウギを楽しんでいたサイバーパンクス達がクチュリエールに因縁を付けたのだ!

 

「アッコラー!? 嬢ちゃん、俺の違法生体LANケーブル引っ張ったか!? 引っ張ったな!?」

 

サイバーパンクスたちは高圧的な態度で問いつめる。

 

「ザッケンナコラー!! 俺らは違法生体LAN端子埋め込んでんだよ! 命賭けてんだよ!! スッゾコラー!?」

「うるさいでヤンスね……」

 

小柄な身体、豊満な胸。無軌道なサイバーパンクスたちが、この手軽そうに見える獲物を見逃すはずはなかった。

 

「ザッケンナコラー!? 俺の親友のトミオ=サンが引っ張られたつってんだよ!」

「アッ! アッ! アッ! データ、データ飛ぶ!! 焼き切れ!! アッ! LAN端子! アッ!!」

「見ろやコラー!!」

 

三人のパンクスが一斉にまくし立てる。

 

「謝罪しろやコラー!!」

「LAN直結して謝罪しろやコラー!!」

「ハァ……しょうがないでヤンス」

 

クチュリエールはパンクスが突き付けたケーブルを掴んでLAN直結!あまりの速さにパンクス達の反応が追い付かない!

 

「「「アバーッ!」」」

 

パンクス達が鼻血を垂らして崩れ落ちる!クチュリエールはパンクス達同士でLAN直結していた事を利用し、纏めてハッキング!ニューロンにダメージを与えて気絶させたのだ!

 

ミチルはケーブルを外すと、倒れたパンクス達をうつ伏せにして積み重ね、その上に腰掛けた。モリタを挟んで向こう側にいるゲイシャが白昼夢を見ているように呆けながらジェノサイドやらリー先生、キョートといったワードをブツブツ呟いている。

 

「ミチル=サン、ちょっとやめないか」

「これくらい迷惑料でヤンス。いいからモリタ=サンも座るでヤンス」

「遠慮させてもらう」

(少しでも休める時に休むべきでヤンス。モリタ=サンもダイミョ・クラスにクローンヤクザが大勢入って行ったのを見た筈でヤンス。備えておいて損は無いでヤンス)

 

立ち上がったクチュリエールに耳打ちされたモリタは数秒程逡巡した後、ため息をついてパンクス達に腰掛ける。腰掛けた事を確認したクチュリエールが座り直し、カバンから使い捨てケースに入ったイナリズシベントーと紙パックのチャを取り出してモリタに手渡した。

 

(結構な数のクローンヤクザがダイミョ・クラスに乗り込んだ以上、この列車にニンジャが乗り込んでいる事は十分ありえるでヤンス。アッシに寄りかかって寝てでも休まないとニンジャ戦が辛くなるでヤンス)

 

再び耳打ちされたモリタがイナリズシを食べ始めた瞬間、KABOOOOM! 鈍い衝撃音と共に車輛が激しく揺れた!アラートと共に全車輛内の非常用ボンボリが点滅し、レッドアラートの様相を呈する。

 

「アイエエエエエ!」

「コワイ!」

 

あちこちから混乱の悲鳴が上がる。果たして何が起こっているのか!?乗客たちは前方のLED液晶板に注目し、ゆっくりと右から左へと流れる文字を、固唾を吞んで見守った。

 

「乗 客 の 皆 さ ん へ 。 物 理 攻 撃 下 な 。」

 

何たる不運か! 無表情な電子ミンチョ体で構成されたLED文字は、列車強盗団の攻撃を告げていたのだ!

 

「皆 さ ん を 守 る オ ム ラ 社 の マ シ ン ガ ン」

 

次いで暗黒メガコーポの偽善的コマーシャル!モリタはこの状況でもニンジャ身体能力でイナリズシを落とすことなくチャを挟みながら食べ進めている!

 

その後、数回の爆発音が響き、マケグミ・クラスの最後尾車輛が無慈悲にも切り離された事がアナウンスされた!ナムサン!切り離された乗客達が助かる事は無いだろう!ショッギョムッジョ!

 

「アイエエエ! 助けて、だれか助けて!」

 

若い男の叫び声が上がった。紫髪のサイバーゴスが、体調不良と思しきピンク髪の友達に肩を貸し、乗客たちを押しのけて前方に移動してきたのだ。

 

「ちょっとやめないか!」

「ここは私の指定席だぞ!」

 

浴びせられる痛烈な罵声!

 

「コイツ、心臓が悪いんです! カチグミに乗せてください! どうせ空席でしょ!?」

「車輛間移動はできません」

 

七十二号車のドアの前に立つ車輛警備員が腕を組み、逞しい上腕二頭筋とブラックジャック警棒でサイバーゴスの身勝手な訴えを却下して威圧した。

 

「皆我慢してるんだ!」

「お前も我慢しろ!」

「ずうずうしいぞ!」

 

他の乗客もサイバーゴスを痛烈に批判!

 

「アイエエエエエエエ! アイエエエエエエエ!」

 

サイバーゴスがブラックジャック警棒で殴られる!見て見ぬ振りで吊り革に摑まるマケグミ・クラスの乗客たち。何たるサツバツか!

 

KABOOOM! 再び最後尾車輛に着弾! 七十三号車が攻撃を受けたのだ!

 

新幹線は先頭から機関車輛、サイバー司令車輛、ダイミョ・クラス車輛、カチグミ・クラス車輛、ダイミョ&カチグミ・クラス荷物車輛、と並んでおり、以降全てがマケグミ・クラス車輛である。

 

列車強盗団は機関車輛の攻撃を諦め、後方車輛を襲い始めたのである!

 

「後ろの車輛が攻撃されていますよ」

「押さないでください」

「さっき七十四号車が切り離されました」

「次はここなのでは」

「大丈夫だと思いますが」

「そうですよね」

 

フジキドがいる七十二号車の乗客も、にわかにざわめき始めた。彼らの交わす言葉は緊急事態下でもムラハチを恐れ、不自然なまでに丁寧だ。

 

「奥ゆかしくしてください」

 

車輛警備員がブラックジャック警棒をしごきながら、拡声器で注意喚起する。その時、不意に緊急アナウンスが始まった。全員、押し黙る。

 

「呼び出しドスエ。お客様の中にリアルゲイシャかリアルオイランの方がいらっしゃいましたら、警備員までお申し出ください。大変お世話になっております」

 

電子マイコ音声が全車輛に響く。モリタの隣にいたゲイシャとジツでゲイシャ的な衣装に瞬時に着替えたクチュリエールが反射的に手を上げ、車輛警備員にアッピールした。

 

「「実際ゲイシャです!」」

「前に来てください」

 

警備員はサイバーサングラスのアンテナを伸ばし、新幹線のIRCネットワークを介して、彼女達の全身像を上司に送った。続いて音声通話を行う。

 

「ハイ! ハイ! お世話になっております! ハイ! ゲイシャ! ハイ! 胸? 胸は豊満です! ハイ? ……ハイ! ハイ! ハイ! ハイヨロコンデー!」

「では、ずっと前の車輛まで行ってください」

 

警備員はロック解除素子を取り出し、彼女に手渡す。

 

「エッ、ずっと前の車輛って」

「行けばわかります」

 

ゲイシャの発言に対して警備員が無表情に言った。ゲイシャに扮したクチュリエールは警備員の反応や新幹線の状況そのものからニンジャの存在を予感した。

 

「お客様の中にサイバーゴスの方がいらっしゃいましたら、警備員までお申し出ください」

 

再度の電子音声アナウンス。ブラックジャック警棒で殴られていたサイバーゴス二人が弱々しく手を上げ、車輛警備員にアッピールした。再度の音声報告。

 

「ハイ! お世話になっております! ハイ! サイバーゴス! ハイ! 髪? ピンクと紫です! ハイ! ハイヨロコンデー!」

 

かくして、合計四人の乗客が七十二号車を離れ、ダイミョ・クラス車輛へと向かう事になった。

 

だが、レッドアラート警報に震える乗客たちは気付かなかったであろう。実は密かにこの車輛を離れた、五人目の乗客がいた事に。

 

倒れたパンクス達を椅子にしてスシを食べていたはずのモリタも忽然と姿を消していたのだ!

 

モリタ……否、フジキドは今、赤黒い装束に身を包んだ一人のニンジャとなって、武装新幹線の上を死神の如き足取りで歩んでいた。その口元を隠すのは「忍」「殺」の鋼鉄メンポ。時速六六六キロメートルで走る武装新幹線の風が、彼の首に巻かれたマフラー状の襤褸布を後方へと吹き流す。

 

(((……リー先生。ジェノサイド。不自然な車内放送。……あのゲイシャ、何かある……クチュリエール=サンの勘が当たったようだ)))

 

ニンジャスレイヤーは、この新幹線内で暗躍するニンジャの影を感じ取っていた。

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