デスドレイン一味の排除作戦の表彰式が終わって数日後。
アンダーガイオン第七工業廃水路は、上階層から滲み出した汚水がパイプや亀裂から滝のように流れ込み、さながら荒れ狂う大河の如く悪臭を放ちながら氾濫していた。強化コンクリートで塞がれた空は、今夜も陰鬱な汚染スモッグに覆われている。
そんな区画の下水道で、ザイバツを破門されたニンジャ、ブラックウィッチがデスドレイン一味の排除作戦の褒賞で懲罰騎士の座に就いたダークニンジャとドローカットの二人に追い詰められていた。
「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」
ドローカットの自重しないソニックカラテが、標的であるブラックウィッチをその配下のネズミやオポッサムを衝撃波で粉砕しながら滅多打ちにして壁に磔にする。
「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」
シックルは既に落として下水に沈み、全身の骨はソニックカラテパンチの連射で下水道の壁のようにミシミシとヒビが入っていく。狭い下水道という避けようが無い環境で放たれるソニックカラテの衝撃波はあまりにも凶悪であった。
「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「アバーッ!」
ソニックカラテの連射になす術の無いブラックウィッチはネズミやオポッサムを呼んで足掻こうと肉盾にしたが、下僕達はショージ戸のようにたやすく粉砕される為、肉壁として全く機能していない。
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
ドローカットの背後から奇襲させようとしたネズミやオポッサム達は全てドローカットの傍で後ろを守るダークニンジャが連続で放つ飛ぶ斬撃……トバシ・キリで纏めて迎撃されている。
ドローカットが自分からトバシ・キリの技術をダークニンジャとブラックドラゴンに共有して使えるようになったのだ。ワザ名はダークニンジャの発案である。
「イヤーッ!」「アバーッ!」
「イヤーッ!」「アバーッ!」
「イヤーッ!」「アバーッ!」
「イヤーッ!」「サヨナラ!」
ブラックウィッチの身体が限界を迎えて全身が潰れ、そのまま首を残して爆発四散する。ソニックカラテは本編ではニンジャスレイヤーに攻略されたが、ワンインチ距離に近づけない環境なら何もさせずに封殺できる恐ろしいカラテなのだ。
残されたネズミやオポッサム達はブラックウィッチの後を追って水中に飛び込み、レミングスめいて連鎖自殺した。あまりにも呆気なく、身も蓋も無い終わりである。
カタナとスリケンだけでネズミを殺す事で大した事のないニンジャと思わせて挑発し、本人がカタナが届かない程度の距離まで近付いて来たらドローカットのソニックカラテで相手の射程距離外からネズミごと纏めて潰す作戦が見事にハマった結果である。
ダークニンジャは淀みの中に手を伸ばし、潰れたブラックウィッチの首と錆びたシックルを戦利品として拾い上げた。
「コレで臭い下水からオサラバできますね。シャワー浴びたら打ち上げ行きましょうよ」
「まだだ。コイツが何をしていたのか調べるんだ」
「そんなぁ……」
二人は袋に生首とシックルを入れると、ブラックウィッチが何か残していないか周辺地域の捜索を始めた。
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ソミチタ建設社の大型採掘施設跡。その南西ブロックにある廃格納庫。天井の錆び付いた大型排気フィンから差し込む鈍い金属光が、遺棄された大型掘削機と二人のザイバツ・ニンジャを照らす。
壁に貼られたポスター、ショドー、オフダ、グラフィティ等が、この廃格納庫の今の所有者がカルト教団と浮浪者である事を物語っている。
崩壊しかけた隔壁ロックドアの前で、ドローカットがUNIXコンソールの有線端子に接続してハッキングする。
重いロックドアが開き、岩盤と一体化した迷宮の如きソミチタ社地下資源掘削施設が、彼らを出迎える。二人のザイバツ・ニンジャは、長く暗い回廊をしめやかに渡った。
時折、浮浪者の寝息が、錆び付いたヨロシサン製薬の風邪薬コンテナから聞こえて来るが、彼らはそれを無視して進む。
ダークニンジャの引き連れるモーターチビが静かな駆動音を放ち、サイバーヒトダマじみた青白い微小光で道を照らす。常人には物足りない光だが、ニンジャには十分な明かりを頼りに二人は更に奥へと進んでいった。
「クチュリエール=サン、何故お前はザイバツに入った?」
「いきなりでヤンスね……アマクダリから一暴れしてから一ヶ月以上ガイオンに潜伏する依頼を受けて潜伏してたら、潜伏先にシテンノが勢揃いで来店して、オーナーがニンジャ・リアリティ・ショックで死んだせいで重要参考人として拘留されましてね。身元引受人としてパープルタコ=サンが来て、ニンジャとバレてザイバツ入りしたでヤンス」
「……何故そんな依頼を受けたんだ?」
「ラオモト=サンが死んだ日にネコソギ・ファンドの株が暴落したのは知ってるでヤンスね?暴落する前に全て売り抜けて、紙切れ同然になった株を関連企業の株と一緒に買い叩いたせいでニンジャスレイヤー=サンとの内通を疑われたでヤンス。潔白の証明の為にこんな事をやる事になったでヤンス」
「…………!」
事の経緯を聞いたダークニンジャが笑いを堪えて悶絶し、口元を押さえて屈み込む。相当ツボに入ったらしい。その反応にドローカットは困惑した。
「……そんなに面白かったでヤンスか?」
「……ふぅ……確かに面白かった。本当に、本当にお前は自由な奴だな」
「えーっと……言葉を選んでくれるのはうれしいでヤンスね」
「ああ、お前はずっとそのままでいてくれ」
「反応に困る返しでヤンスね」
ダークニンジャが再び歩き出す。微妙な表情でドローカットはその後ろに付いて行った。
**トバシ・キリ**
ダークニンジャの鶴の一声で名前が決まった飛ぶ斬撃。
ダークニンジャやブラックドラゴンのワザマエなら結構な速度で連射が可能。
ブラッシュアップの為に自分以上の使い手にインストラクションしたとはいえ、改善して編み出した自分より遥かに上手に使う様を見てドローカットは微妙な気持ちになった。
Q.ダークニンジャが懲罰騎士になりましたが、ブラックドラゴンとの間に問題は起こらなかったのですか?
A.ブラックドラゴンはダークニンジャのワザマエを見た上に前回で跪くまでした事もあり、懲罰騎士の座を譲って部下になる事を快諾しました。
レッドゴリラもアイボリーイーグルが撮影したデスドレイン一味の排除作戦の動画を見ているのでシテンノ全員が部下ごとダークニンジャの部下になりました。