「ランペイジ! ……グワーッ!?」
ドローカットに手間取るランペイジに苛ついたデスドレインが苦悶する。顔の右半分と左脇腹に無数の結晶が育っている。コワイ!
「痛てェ畜生ッ!」
一体これはいかなるジツか? デスドレインの動きはぎこちなかった。身体の表面に育った結晶は、装束を破って体内に根を張りつつあるのだ。これぞジルコニアの恐るべきジツ、ヒカリ・ジツ!
「イヤーッ!」「グワーッ!」
ジルコニアはこの隙にデスドレインに接近し、顔にもう一発パンチを入れて側転回避した! デスドレインの身体に、細かい結晶が更に生える!
「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」
さらに! 空気中に拡散していた白い輝きの粒が、今、デスドレインの周囲に急速に収束しつつあった。コロナの火球が具現化しつつある! メイガスのコロナ・ジツだ!
「ウオオオーッ! 戻れ! 戻れテメェら!」
デスドレインは錯乱めいて叫ぶ。周囲の暗黒物質がこれに応え、螺旋状に渦巻きながらデスドレインを包み、デスドレインの目、鼻、耳、口へズルズルと滑り込んでゆく。恐るべき速度だ! 1秒後、デスドレインの身体を中心にコロナが爆発! KABOOOOM!
閃光が去ると、そこには仁王立ちする真っ黒の人影が残された。そのすぐそばに光と熱が集積、跪いたメイガスが再実体化した。
「イヤーッ!」
「グワーッ!……イヤーッ!」
割れ鐘のような音と激しい地響きがなる。ランペイジだ。防御を捨て、スリケンとトバシ・キリをいくらか生身の身体に食らい、深々と斬られながらもしゃにむに、床に腕を叩きつけたのだ。
デスドレインであった黒い人体に、ゆらめく炎が灯る。メイガスは万が一の警戒のため、バック転で間合いを取った。身体を光と熱に還元する驚異のコロナ・ジツであるが、使用の度に大量消費される己の血中カラテを再充塡する必要があり、決して万能無敵のジツではない。
「イヤーッ!」
「グワーッ!……イヤーッ!」
ドォン! ランペイジが再度、斬り刻まれて内部機構が剥き出しになった重機の腕で床を打ち、深く穿たれた床の裂け目から、デスドレインの黒いタール噴水が噴き出した。
「うわッ!?」
ドローカットは攻撃を継続しながら飛び退がった。スリケンもトバシ・キリもランペイジに届くが、暗黒物質が壁になった事で明らかに軽減されている!
「アイエエエ!」
ドローカットが嫌な予感に従って真横に飛ぶと、ドォン!という音と共にドローカットがいた所をランペイジが勢い良く通過して壁に衝突!再びドォン!と音が鳴り、今度はジルコニアに突っ込んだ!両腕の内部機構を利用した突進二連撃だ!
「アバーッ!」
ジルコニアは咄嗟にそれをガードしようとしたが、その両腕が身体ごとひしゃげ、壁に半ば埋め込まれるように叩きつけられた!これを成したランペイジの腕はドローカットのスリケンやトバシ・キリを何度も受け続けた事で内部機構まで斬られていたせいか反動に耐えきれず、内部機構が限界を迎えて自壊した。先程の突進はもうできないだろう。
「バカな!?」
メイガスは驚愕した。だがそれだけではない。黒い人体の頭部が剝がれ、中のデスドレインの顔が露わになった。白目が無い。よくよくみればそれは黒目でもない。眼球のあるべき場所を覆うのは、彼の暗黒物質であった。
「アー……」
呻き声。開いた口からドボドボと暗黒物質が流れ出る。生物じみた黒いヘドロはなめらかに流れ落ち、足元の小さな穴に吸い込まれてゆく。彼がその物質で掘った穴であろうか。
「アー……だりィ、だりィよ」
デスドレインは膝から崩れ落ち、両手をついた。今度はランペイジの亀裂から、さらなる暗黒物質が噴き出す。地中でつながっているのだ。モグラめいて穴を掘り進んだというのか。 噴き出した暗黒物質は鎌首をもたげ、一瞬後、壁から這い出そうともがくジルコニアに喰らいついた。
「グワーッ!」
ジルコニアは完全に黒い粘液体に飲み込まれた。もはや助かるまい。ランペイジはドローカットの方向を向いた。壊れた内部機構が剥き出しになりボロボロの有様だが、まだまだ戦えるようだ。
「あーあ……オボッ……オボッ」
デスドレインは四つん這いのまま、口から暗黒物質を吐き出し続ける。黒い粘体に覆われたジルコニアのいる地点から、ミシミシと嫌な音が聴こえ、メイガスが後ずさる。
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
ランペイジは無表情でガードしながらドローカットに駆けより、対するドローカットはランペイジをスリケンやトバシ・キリで攻撃しながら距離を取る。
「イヤーッ!」「グワーッ!」
その時、ランペイジへの牽制として放ったトバシ・キリが四つん這いのデスドレインの尻に当たった!咄嗟に暗黒物質でガードしたが、あっさり貫通して谷間に刺さったのだ!
「畜生ォ!……ランペイジ!何遊んでやがる!ケツが割れちまったじゃねェか!」
「落ち着け、尻は元から割れている」
「巫山戯てんじゃねェ!」
深々と斬られた尻に暗黒物質を塗り付けながらデスドレインが喚き散らし、ドローカットを睨みつける!
「いい加減、鬱陶しいんだよ!このメスガキ!」
ジルコニアにトドメを刺しきったのか、デスドレインまでもが暗黒物質に乗ってドローカットを追い回し始めた!暗黒物質をトバシ・キリで吹き飛ばし、ランペイジとデスドレインを牽制しながらドローカットは広場を逃げ回る!
「ドーモ。シャドウウィーヴです」
「ランペイジ」
メイガスの後ろから、もう一人のニンジャが進み出る。オジギし、ドローカットを追い回すランペイジを睨んだ。走りながらランペイジが応じる。少し遅れてソルヴェントが地中から現れた。
「丁度いい所に来たな、ソルヴェント=サン。俺とシャドウウィーヴ=サンを連れて撤退しろ。神器の回収が優先だ」
「エッ!?ドローカット=サンはどうするんですか!?」
「あの様子を見ろ、俺達に流れ弾やヘイトが向かないよう上手く牽制して逃げ回っている。戦闘面ではマスタークラスだ。一人でも撤退できるだろう」
「「アッハイ」」
ソルヴェントとシャドウウィーヴはメイガスに言われた通りにドローカットの方を見て、命令に納得した様子で頷き、ソルヴェントのドトン・ジツで三人は地中に潜航して離脱した。
「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」
デスドレインとランペイジはそのままドローカットを追い回す!しかし、防ぎ切れないスリケンとトバシ・キリが着実に二人にダメージを与える!
「……あン?」
他のザイバツニンジャが撤退し、逃げ回る範囲が広がった事で、デスドレインもドローカット以外のザイバツニンジャがいない事に気付いた。
「オイオイ!カワイソーな奴だなぁ!お仲間達はみぃんなお前を見捨てて逃げちまったようだぜェ!」
「そんなカワイソーな奴を二人がかりで捕まえられないなんて恥ずかしくないの?ざぁ〜こ」
「アァァァア!?畜生が!このメスガキ!わからせてぶっ殺してやらァ!」
売り言葉に買い言葉。デスドレインに煽られたドローカットが煽り返した。瞬間、地面に亀裂が走り、より多くの暗黒物質が噴き出して洪水のように襲いかかる。
「イヤーッ!」
ドローカットのソニックカラテパンチ!洪水のような暗黒物質に風穴を開けて自分が通れるだけの道を開き、そのまま走って突破する!
「てめえ!ここまで手ぇ抜いて舐めてやがったな!」
「イヤーッ!なんかやってみたら出来た!」
「ザッケンナコラーッ!」
「落ち着けデスドレイン」
「アァァァア!?」
暗黒物質を吹き飛ばし、ドローカットは二人を牽制しながらデスドレインを煽る!激情の儘に操る暗黒物質がランペイジまで巻き込んで妨害する!
(((アレ?ランペイジの腕、内部機構が金属製の筋肉めいた物に変わってきてるような……もしかしなくてもヤバイやつだ!)))
その時、ドローカットのニンジャ視力はランペイジのサイバネ重機アームの内部機構が金属で出来た筋肉めいた物に侵食されている様子を捕らえた!
そこへ新たに虚空から二人のニンジャが出現した。風と共に現れた二人のニンジャは、どちらも異常なほど長身のニンジャで、シシマイめいた異様な仮面を装着している。一方の装束には「ツル」とあり、もう一方には「カメ」とある。
「ドーモ。マスター・クレインです」
シシマイニンジャの片方、ツル装束のニンジャが先回りしてドローカットのもとへ近づき、その首根を摑んだ。
「ダークニンジャ=サンの御命令です。お連れ致します」
「ドーモ、ドローカットです。よくわかんないけどよろしく!」
ドローカットとマスター・クレインの身体はつむじ風に包まれた。
「……ハァ?」
いかなるジツによる物か、目の前で消えるドローカットとマスター・クレインの姿にデスドレインとランペイジは思わず呆けた。
「ドーモ、マスター・トータスです」
残された二人にマスター・トータスはアイサツしながら両手を向けた。
気が付いたらドローカット=サンが命懸けでメスガキ煽りしてた……
Q.ランペイジの腕が原作と違いますよね?
A.パイルバンカーみたいな機構の反動で突進するシーンが書きたくなったので変更しました。原作と違う重機をサイバネ接続した上にソウル由来のジツで重機が変質した感じです。コミックスと原作のミックスですね。
始めから突進を連発しなかったのはジツが馴染むまで時間がかかったからですね。
Q.シャドウウィーヴ=サンのシャドウコピー・ジツはどうなりましたか?
A.どうしよう……
Q.ソルヴェント=サンのドドン・ジツってそんなに便利でしたっけ?
A.ミッションの内容的に〝あなぬけのヒモ〟要員な気がするので行ける物としました。