三人のニンジャが来た道を駆け戻り、試練を逆走している。戻る分にはトラップは発動しないらしく、三人は第十の試練門を無傷で通り過ぎた。
「二人とも止まるな!ドローカット=サンなら必ずアイツらを振り切ってくる!絶対にな!逃げて合流しようにも、近くで合流したら確実に奴らまで追い付いて来るぞ!」
「「ハイ!」」
メイガスが稼働する罠があった場合に対応する為、自ら先頭に立って駆ける。その後ろを罠が発動しても巻き込まれないよう、かなり遅れてソルヴェントとシャドウウィーヴが追従する。
ニンジャ身体能力に任せて駆ける三人は風のように遺跡を抜け、メイガスが第九試練門を潜り抜ける!
「……!」
メイガスがニンジャ第六感に突き動かされて上を向き、二人を手で静止した瞬間、急停止した二人の前で風切り音と共に急降下した赤黒の影がメイガスを踏み潰した。
「「メイガス=サン!」」
「サヨナラ!」
爆発四散した煙の中から赤黒のニンジャが姿を現す。周囲の灯りに装束が照らされ、「忍」「殺」のメンポが光を受ける。殺戮者のエントリーだ!
「ドーモ、はじめまして、ニンジャスレイヤーです」
「……ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ソルヴェントです」
「ドーモ、シャドウウィーヴです」
アイサツを交わし、三者三様にカラテを構えた。
ソルヴェントとシャドウウィーヴは二人揃って息を飲んだ。相手はあの〝ベイン・オブ・ソウカイヤ〟。ダークニンジャ=サンと互角に渡り合った猛者の中の猛者にして垂直落下アンブッシュでメイガスに何もさせずに爆発四散させた無慈悲な死神。
「オヌシ達、ザイバツニンジャだな?神器とやらを渡して貰おう。渡せば殺す。渡さなければ苦しめて殺す」
一歩ずつ追いつめるように近付くニンジャスレイヤーに二人は返答できず、後ずさりする。シャドウウィーヴのニューロンに〝ドローカット=サンなら、この状況からも生き残れそうだな〟と現実から逃避した考えが浮かんだ。
相手が悪い。逃げ切れはしないだろう。シャドウウィーヴのニューロンに先程のドローカットがデスドレインとランペイジを翻弄する姿がソーマト・リコールされる。自分達を守る為に囮になったその姿はシャドウウィーヴにはオミヤゲ・ストリートで見たダークニンジャの戦いより崇高な物に見えた。
気付けばシャドウウィーヴの目に涙が溢れていた。期間こそ短いが、一緒に鍛錬を重ねてブラックドラゴン=サンやダークニンジャ=サンから一目置かれる彼女を足止めに置き去りにしてまで神器を持ち帰ろうとしたのに、ここまでなのか。
これが裏切りの末路なのだろう。あの時残れなかった自身の弱さと薄情さへの悔いがハイクとして飛び出した。
「……置キ去リシ/短キ刃ノ/闇裂キヲ……」
「シャドウウィーヴ=サン!?」
その刹那! シャドウウィーヴの影が二個に、四個に、八個に、そして十二個に分裂し、おぼろげな影の外骨格のごとく彼を包み始めた。
「ヌゥーッ!?」
ニンジャスレイヤーは異変を察知し、三連続バック転ののち四連続側転で距離を取りスリケン投擲!
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
5フィート弱の小柄な体格に変身したその影は、影のカタナを抜き放ちスリケンを弾き飛ばす。その黒い輪郭は不完全燃焼する黒煙めいて揺らぎながらも、質量を備えていた。
「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、シャドウドラゴンです」
それは豊満な胸、女性的で華奢な身体、頭にはブラックドラゴンの頭をデフォルメしたような飾り付き帽子を被り、シャドウウィーヴとお揃いのメンポを付け、漆黒の鎧めいたニンジャ装束に身を包むユーレイめいて青白い肌と黒髪、黒目を備えた少女の姿であった。
「ヌゥーッ!?」
「シャドウウィーヴ=サン!?そんな趣味があったのか!?って言うか強いな!?」
「いいから逃げるよ!」
ニンジャスレイヤーもこれには思わず困惑して面食らう。少年が少女の姿に、しかも肌の色こそ違うが見知った少女の姿と声に変身したのだ。本来の〝彼女〟ならチャクラムスリケンを投げる筈だが、カタナを振るう様子から、ニンジャスレイヤーは持ち前の状況判断力で彼女がザイバツ内部に潜入している事を察知した。
二人はニンジャスレイヤーが困惑している隙に逃げ出した。
「イヤーッ!イヤーッ!」
「イヤーッ!イヤーッ!」
気を取り直して猛追して来るニンジャスレイヤーが追尾するスリケンを投げる!追尾するスリケンをシャドウドラゴンが斬り払う!シャドウドラゴンに庇われながら逃げるソルヴェント!
「アッ、ンアーッ!」
ゴウランガ!シャドウドラゴンがスリケンに気を取られた隙に、ニンジャスレイヤーはドウグ社製のフックロープを彼女の足に引っかけた!そのまま勢い良く引いて引き寄せつつニンジャスレイヤー自身も猛回転!姿勢を崩しながら引き寄せられたシャドウドラゴンがカラテ距離に近付いた瞬間、破裂音めいた奇妙な音が轟いた。
ニンジャスレイヤーは空中にいた。彼は両手を横へ伸ばし、十字架めいた姿勢で一回転しながらシャドウドラゴンの懐から吹き飛ばされたヌンチャクをフックロープで回収すると、通路の壁際へ体操選手めいて着地した。
その対角では、四重の打撃を一瞬のうちに叩き込まれたシャドウドラゴン……否シャドウウィーヴがソルヴェントの傍に着弾していた。ダメージの大半を影の殻が受け止めてくれたおかげで中身が飛び出し、シャドウウィーヴ自身は失神と軽いダメージで済んだようだ。ソルヴェントは慌ててシャドウウィーヴを掴むとドトン・ジツで離脱した。
「……」
「フーッ……探偵の業務で隠れるのには慣れてるが、間近でニンジャのイクサの音を聞くなんてのは初めてだぜ……それにしても、そいつがヌンチャク? 結果オーライ! まあ、ニンジャのイクサの中に俺が紛れ込んだら実際邪魔になっちまうだけか? ハハハ!」
柱の陰から白髪の偉丈夫が現れる。彼の目は血走り、その高揚がZBR摂取によるものであると容易に見て取れる。ニンジャスレイヤーは彼の背中をどやした。
━━━
マスター・クレインは確かにドローカットを持ち帰った。巨軀の運命者はドローカットをその場に降ろすと、片膝をついてオジギした。ダークニンジャは運命者に合わせてオジギしたドローカットを見下ろした。
「マスター・トータスが戻らぬな」
「滅びました」
ダークニンジャはシシマイを見据えて言った。マスター・クレインは、ごまかす事なく即答した。機械めいたこの運命者は、ある意味で人間よりも遙かに賢く、ある意味では全く単純で、愚かだ。
「何故だ」
「わかりませぬ。ニンジャの手で滅びました」
「ランペイジ=サンでは?」
ドローカットの発言にダークニンジャの視線が向いた。
「続けろ」
「ランペイジ=サンは斬り落とされた両腕に重機をサイバネ化してデスドレイン=サンと共に襲撃して来ました。その時に重機の機構をジツで強化したのか、一撃でジルコニア=サンの両手をへし折って壁にめり込ませる威力の突進をやってきたので、それが直撃したのかもしれません」
「……そうか」
マスター・クレインはダークニンジャにオジギした。
「貴方こそ器なれば」
その巨軀を風が包み、かき消えた。
「ドローカット、遺跡で起こった出来事について、何か話せる事はあるか」
「ボディカメラで撮影してましたので、見せながら解説いたしますね。」
「……準備が良いな」
「おう小娘」
フスマが開き姿を見せたのは、誰あろう、グランドマスターのニーズヘグである。ドローカットは驚いた。
「戻ったか。チョージョー……では事情の説明は、しっかりせよ。お前がセプクか、ケジメか、お咎め無しか。この後に頑張るのはワシじゃ」
ニーズヘグは短く笑った。
「上へのあれこれはワシに任せれば良い。せっかくのグランドマスター位階のこのワシを、使わにゃ損じゃ」
「実際有難い」
ニーズヘグがダークニンジャに囁き、ダークニンジャは頷いた。ボンボリモニタにボディカメラを接続しようとするドローカットを眺めながら、彼は沈思黙考した。……運命者の一体が滅びた。これは吉か凶か。
(((まさか、あの囚人ニンジャ共がこれ程のキンボシ・オオキイを挙げるとはな……ドローカットにスシを握らせるか)))
「どうした」
「……ドローカット=サンは元イタマエでな。説明の後にスシを握らせるか考えていた」
「ほうほう、それは良いな。ワシの分も頼む」
この後、二人は戦闘の様子を見て腹が捩れました。
Q.なんでシャドウドラゴン=サンは黒一色じゃないんですか?
A.肌も白目も黒一色な女の子はあんまりな気がしました。
**シャドウドラゴン・ジツ**
ドローカットの奮戦に脳を焼かれたシャドウウィーヴがニンジャスレイヤーを前にドローカットを置き去りにした事を悔やむハイクを詠んだ事でニンジャソウルがアレコレして産まれたジツ。
イマジナリードローカットに戦闘を任せる事で一時的にカラテ強者になれるが、変身シーンを見られた場合、周囲の視線が冷たくなる。
頭のデフォルメブラックドラゴン帽子はイマジナリーブラックドラゴンの意思で喋る上に原作シャドウドラゴン準拠の強酸ブレスを吐けたりする。
原作と違ってニンジャソウルに囚われてないのでジツの解除も可能だが、代わりに原作シャドウドラゴン程強くない上に変身シーンを見られると人間関係にダメージを受けるリスクがある。