決断的に打ち下ろされたアイアンリングの拳がモーターナガサマの頭部を一撃で叩き落とす。
「ピガーッ! サヨナラ!」
頭部はドヒョー・リングを転がり落ち、ボディはスパークを散らして痙攣したのち、動かなくなった。
「勝者アイアンリング=サン!」
「ワオオオオーッ!」
「アイアンリング! アイアンリング! アイアンリング!」
アイアンリングがモーターナガサマにトドメを刺した事で観客達が熱狂する。当のアイアンリングはセコンドと何やら話しているが、人々の熱狂に掻き消されて中継先には届かなかった。
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「……もしかしなくても、ニンジャスレイヤー=サンだよね?」
ホーンドブシに勝利し、控え室で中継を見ていたドローカットは顔を引き攣らせた。このタイミングになってようやくアイアンリングの正体に気が付いたのだ。
ドローカットにセコンドはいない。今日はシテンノ、ダークニンジャ、シャドウウィーヴの全員が任務に向かっている。助言は望めない。
そもそもニンジャスレイヤーとぶつかるのは決勝戦である。まずは次のミラーシェード戦の事を考えるべきだろう。
推薦してくれたニーズヘグの面子を立てるためにも降参はできない。そして、対戦相手であるミラーシェードのカラテのワザマエは明らかにドローカットより上だ。
南斗水鳥拳モドキ改めハクチョウ・カラテはあくまでカタナめいた斬れ味のカラテでしかない。カラテ強者相手にこれまで通りに通用する事は無いだろう。
……ドローカットは全力で挑んでも負けるならニンジャスレイヤーとぶつかる心配がない事に気が付いた。
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「見たか。今のカラテを」
サラマンダーは満足げにユカノに話しかけた。
「ますます楽しみになった」
「そうですか」
ユカノが呟き、サラマンダーは彼女の横顔をじっと見る。
「ショッギョ・ムッジョよな」
「……」
「決勝で奴に対するはシード枠のミラーシェード。ザイバツのマスターニンジャだ。ニーズヘグ=サンには悪いが、ドローカット=サンには負けて貰おう」
これは順当なカードである。マスターニンジャのミラーシェードはサラマンダーの部下であり、勝ち上がってきた強者の実力を測るために存在する。
ホーンドブシの角をチョップで切断して降参させたドローカットのワザマエはアプレンティスながらアデプト上位からマスター下位クラスはあるだろう。だがその程度の実力でミラーシェードに勝てる道理はない。……全てサラマンダーの手の内だ。
アイアンリングが所詮並のカラテ使いの範疇であれば、決勝戦でミラーシェードに倒されるであろう。その程度の存在であればサラマンダーにはハナから用はない。直々に相手をしてやる理由もない。だが彼が期待するように、ミラーシェードを叩き伏せるほどの力を持っているならば……。
「ユカノ=サン。ミラーシェードが奴を倒したとしても恨むでないぞ。その程度のニンジャに価値など無し。オヌシにとっても、俺にとってもな」
「……」
「だが俺は期待しておるのだ。期待をな」
サラマンダーは唸るように笑いだした。
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「ワオオオー!」
「コロセー! コロセー!」
「ドローカット!」
「ドローカット!」
「ミラーシェード! コロセー!」
「処刑!」
「ミラーシェードがドローカットを処刑重点!」
「スゴイニンジャ!」
「コロセー! コロセー!」
凶暴な叫びの中、両者は睨み合い、そしてオジギした。
「ドーモ。ミラーシェードです」
「ドーモ。ドローカットです」
二人のニンジャが顔を上げて構えを取る。
「イヤーッ!」
「ヒョーッ!」
ミラーシェードのストレート!ドローカットはパンチを捌きつつ、カラテで斬りつけようとするも、リーチとカラテの差で斬撃を捌かれて上手く反撃できない!
「イヤーッ!」
「ンアーッ!」
ドローカットがパンチの対応に気を取られた隙にミラーシェードのケリ・キック!かろうじてガードするも、重く鋭い一撃がドローカットにガード越しにダメージを与える!
「イヤーッ!」
「ンアーッ!」
ケリ・キック!
「イヤーッ!」
「ンアーッ!」
ケリ・キック!
「イヤーッ!」
「ンアーッ!」
さらにケリ・キック! 一撃一撃が重くハヤイ!
「イヤーッ!」
「ンアーッ!」
「イヤーッ!」
「ンアーッ!」
ガードが下がったドローカットの顔面にストレートが突き刺さり、仰け反ったところに追撃のヤリめいたサイドキックが腹を捉える!ドヒョー際へ吹き飛ばされるドローカット!
ゴウランガ!ミラーシェードはカラテ尽くで防御を強いる事でドローカットのカタナめいた斬れ味を誇るハクチョウ・カラテを封じたのだ!
顔面へのストレートが効いたのか、フラフラと立ち上がろうとして膝立ちになったドローカットをKOする為、ミラーシェードがダッシュで接近する!
(((よくもボコボコにしてくれたな!一発くらいは殴り返してやる!)))
「イヤーッ!」
「ヒョーッ!」
ミラーシェードが放つ追撃のサッカーボールキックをドローカットは両手でドヒョーを叩き、逆立ち状態でジャンプ回避!高く跳び上がって宙を舞う!
「「「おおっ!」」」
ミラーシェードは照明の逆光が見せるドローカットが優雅に宙を舞う黒いシルエットに、サラマンダーとユカノは照明に照らされながらドローカットが優雅に宙を舞う姿に白鳥が舞う幻影を見た!
会場が静まり返る。シャドー・コンが始まって以来、ここで振るわれたカラテは全て殺意を研ぎ澄ませた武器めいたカラテであった。ニンジャのカラテとは始祖の時代からそういう物である。
観客も、ニンジャも、ここにいる全員にとって優雅さと殺意を併せ持つカラテを見たのは産まれて初めてであった。荒削りであっても想像すらしていなかったカラテを見たカルチャーショックが会場から声を奪ったのだ。
舞い降りるドローカットが振り下ろした両手チョップがミラーシェードを斬り伏せた。
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「バカな。なんという事だ」
パラゴンはUNIXモニタに映るIRC秘密中継映像を前に呻いた。
「あの様なカラテが存在していたとは……」
メンポを掌で覆い、繰り返した。
「……あれで未完成という話であったな?」
「うむ。初めて見た時はドローカット=サンが編み出したばかりで名前も決まってなかったからのう……上司特権でワシが名付けた。その名もハクチョウ・カラテじゃ。良いじゃろう?」
「なんと羨ましい……」
同席者のニーズヘグが笑い、パラゴンから少し妬ましげな視線が刺さった。
「……あの突きが少ない動きは手足をカタナとして振るう為の物だろう。ヌンチャク奪還任務の際に使っていたトバシ・キリと組み合わせる事を想定している筈だ」
「うむ。初めて見た時に素手でトバシ・キリをしておったな」
パラゴンの解説にニーズヘグも同調する。
パラゴンがニーズヘグからドローカットをシャドー・コンに出場させた事を聞いて中継映像を取得したのは、丁度準決勝が始まり、ドローカットがドヒョーに上がった時の事である。
ユカノとおぼしき女を移送する事を何かと理由をつけて先送りするサラマンダーに、パラゴンは疑念を抱いていた。ドラゴン・ドージョーゆかりの何らかのセンチメントが、あの男の判断を狂わせているのではないかと。
ニーズヘグから見逃したくない試合があると話を急かされたパラゴンは、ニーズヘグの発言に乗って疑念を確かめる為にIRC中継映像を展開したのだ。
中継映像では勝ち名乗りを受けたドローカットが限界を迎えて崩れ落ち、担架に乗せられて医務室へ運ばれて行く。ドクターストップにより、決勝戦はアイアンリングの不戦勝が決まったようだ。
「しかし、アデプト手前のアプレンティスがミラーシェード=サンに勝つとはのう……」
「初見であれを間近で見せられたなら、私もあの様に呆けてしまうかもしれん。ドローカット=サンのキンボシ・オオキイですな」
中継映像にサラマンダーがアップで映り、二人の視線が映像に向けられる。狭い象牙茶室が緊迫したアトモスフィアでつつまれ、奴隷オイランが本能的にドゲザした。
飛翔白麗を見せてユダ様みたいな反応をさせたくてついやってしまいました。
ミラーシェードに一方的に殴られ続けてドローカットが一発くらいは殴ってやるとキレた為、シャドウウィーヴみたいな反応する事を期待して飛翔白麗をぶちかました感じです。
Q.いくらなんでも観客やニンジャ達の反応が大袈裟過ぎませんか?
A.ユダ様に近い方向性のショックを受けたと思ってください。