キョート城内のとある茶室。グランドマスターであるニーズヘグと懲罰騎士であるダークニンジャ、その部下であるシテンノ一同とアプレンティスのシャドウウィーヴはドローカットの報告を聞いていた。
「……という訳で、ユカノ=サンはドラゴン・ニンジャの記憶を取り戻しました。あと、彼女にこちらで調べた情報を見せて確認した結果、〝キョート・ヘル・オン・アース〟はガイオン中のモータルを生贄にしてカツ・ワンソーが入ってるキンカクをこじ開ける儀式であると予想されるそうです。」
報告を聞いたニーズヘグは「ほう」と面白そうに笑い、ダークニンジャは顎に手を当てて考え込んだ。シテンノとシャドウウィーヴは驚いて呆然としている。
「ねェ、ドローカット……なんで貴方がシ・ニンジャのジツを使えるようになったの?」
すぐに我を取り戻したパープルタコが問いかける。
「私がネオサイタマにいた頃にシ・ニンジャのソウル憑依者と共同生活するついでにジツの練習で色々やってた事と、ミラーシェード戦で死にかけた事が原因だと思いますね」
「まさか……」
「ドーモ、クチュリエールです。もう隠す必要も無いでしょう」
ドローカット改めクチュリエールのアイサツにニーズヘグは呵々と笑い、パープルタコ以外のシテンノは成程と納得し、シャドウウィーヴは驚愕した。ダークニンジャは元々知っていたので無反応だ。パープルタコは頭を抱えた。
「あの経歴は全部カバーだったのね……」
「新幹線以外で目立つ事はしてないから必要な状況が来るとは思わなかったんですけどね」
クチュリエールの目がシャドウウィーヴに向き、全員の視線が彼に集まった。
「キンボシ・オオキイだったな、シャドウウィーヴ」
「アッハイ……あの、マスター?なんで貴方はそんなに落ち着いているのですか?」
肩を叩いて労うブラックドラゴンの落ち着きにシャドウウィーヴは恐ろしい物を感じて思わず問いかけた。
「……発信機をサイバネされたニュービーの件を調べた結果、似たような案件がいくつも見つかってな……手を尽くして調べた結果、更にザイバツが所有する物件の全てがここ十数年前まではザイバツと関係ないモータルの所有だった事がわかった」
「マスター、どういう事ですか?」
「……ザイバツの目的であるニンジャ理想社会はどこまで本当か怪しい上に、実際は結成から二十年も経っていない組織で、伝統や歴史は我々がキョジツテンカンホーで信じ込まされた偽物の可能性が高いという事だ」
「「「「!?」」」」
底冷えする程の怒りを滲ませたブラックドラゴンの回答にシテンノ達とシャドウウィーヴは再び驚いた。
「ザイバツが皆を裏切っていた事実に比べればこの程度ノ事……ふう……レッドゴリラ、俺を掴んで抑えつけてくれ……これ以上思い出すと俺はロードの元に殴り込むかもしれん」
「う、うむ、わかったから落ち着こうか。一旦ワシらは席を外すから、後で教えてくれ」
レッドゴリラは怒りで震えるブラックドラゴンの肩を抱き、宥めながら二人で茶室を出た。
「ラオモトが死んだ日にネコソギ・ファンドの株で大儲けしたせいでニンジャスレイヤーとの内通をアマクダリに疑われたクチュリエールが禊の為に受けた依頼は、ザイバツ相手に一暴れしてガイオンに来た事を察知させた後、ガイオンで一ヶ月以上潜伏してそのまま帰る任務だった。まあ、シャドウウィーヴがシテンノ一同連れて来店した事でドローカットとしてザイバツに入る事になったのだがな」
「!?……色々気になる事はありますが、ええと、ドロー……じゃなくてクチュリエール=サン。これまでの任務……お前は手を抜いてこなしていたのか?」
ダークニンジャの補足説明で再度注目されたシャドウウィーヴがクチュリエールに問いかけた。
「いつものスリケンと突っ込まれそうなカラテを使わなかっただけで全部手を抜かずにこなしてたよ。そこは誤魔化せる気がしないからね」
「カラテを鍛えたモータルがニュービーニンジャになった際の上澄みがあれくらいだから、大型新人が入ったと思っちゃったのよねェ……」
クチュリエールの回答にパープルタコが呟いた。
「もしかして、ソウカイヤにいた頃からトバシ・キリやハクチョウ・カラテみたいな新しいカラテワザを考えたりしてたのか?」
「そうだよ。ダーク・エッジ・ツキとか」
「俺が名付けたワザだ」
シャドウウィーヴはダークニンジャから伝授されたワザ名を挙げられて、思わずダークニンジャの方を見る。ダークニンジャは得意気に答えた。
「アッ、そうだ。私、ユカノ=サンからニンジャソウル抜いたらリアルニンジャになれるってお墨付きを貰ったんですけど、ニンジャソウルを抜く方法って知りませんか?」
思い出したようにクチュリエールの口からとんでもない発言が飛び出す。茶室の空気が凍りついた。
━━━
(慣れた様子で顔中の穴という穴に触手を受け入れていたな……)
ダークニンジャことフジオはマグロアンドドラゴン社屋ビルのエレベーター内で、ふとクチュリエールがパープルタコにニンジャソウルを抜かれる様を思い出していた。
ニンジャソウルを抜かれたクチュリエールはすぐに息を吹き返し、体調に全く影響は無いようだ。抜かれたニンジャソウルはこれまで世話になったから開放して欲しいというクチュリエールの頼みで吐き出されて霧散した。
音が鳴り、エレベーターが目的の階に止まった事を告げる。フジオはカフェテリアに入ると野球帽を目深に被り、革のブルゾンを着た男の背後の席に背中合わせのように座る。
「ドーゾヨロシク」
「……ハイヨロコンデー」
フジオがメニューを指差してオーダーするとウエイターは去って行く。背後の男は耳をそばだてて聴いているようだ。
「知っているか」
フジオは椅子に深くかけると、背後の男に低く呟く。
「……振り向かずに」
フジオが付け加えると、背後の男は冷や汗をかいた。
「ビュッフェの横の店員」
フジオが呟くと、背後の男は横目でそちらを見る。
「腕の付け根のあたりに不自然な膨らみがある。わかるか。あれはオートマチック・ピストルだ」
背後の男は青褪めた。
「それから、店内を巡回しているあの白服」
「……!」
「トレイで片手を隠している。当然、その手に銃」
「あんた……」
「こちらを見ず、チャでも飲んでいろ……それからバーテンダー。カウンターの裏にはショットガンがある。つまり……君は? 銃はその紙袋の中か? それとも風変わりに帽子の中か? どちらにせよ、やめておいたほうがいい。返り討ち……犬死にだ」
「なんでそんな、事を?」
背後の男は声を絞り出した。
「俺を始末するのか?」
「……この前、偶然に君を見かけ、もしやと思って後を尾け、色々と調べさせてもらった」
「畜生……!」
「インディアンは?」
唐突にフジオが言った。脈絡のない文言を。背後の男は雷に打たれたようにびくりとした。
「さ、魚の舟」
背後の男は震え声で言った。
「夜に網打ち」
「太陽に……うう……太陽に、弓撃つ……た、太陽……」
背後の男の目に涙が浮かぶ。彼の言葉に嗚咽が混じる。
「振り向くな、まだ。マコ=サン」
「う……あんたは……あんた……まさかそんな……フジオだっていうのか……?」
「その通りだ」
「なんでキョートに……げ、元気だったかよ」
フジオは呼び鈴を鳴らし、ウエイターに言った。
「席を替えていいですか」
「ヨロコンデー」
彼はマコの向かいに座り直した。
「……ドーモ。無事でなによりだ」
「お前こそ」
マコは涙を拭い、フジオは頷いた。
「俺に免じて、乱射はやめておけ」
ニンジャソウル抜きはベッピンで刺すか、ディープ過ぎるキスで吸い出すかで正直迷いました。
山場で使いたいけど、思い付いたキョジツテンカンホー破りの方法を使うとドラマティックにニンジャソウルを抜く機会が来ない事に気付いた為、この場で引っこ抜きました。