「状況判断だ」
ニンジャスレイヤーは言い捨て、ソニックブームとクチュリエールを視界に収めながら屋台の前に出た。
クチュリエールは今日の昼に購入したボディカメラの電源を付け、録画を開始する。
ミッション中、ニンジャスレイヤーと再戦する事があった場合、逃げ切れたときにソウカイヤへ提出して報告し、情状酌量を得る為に買ったのだ。
「私は常に貴様らソウカイヤの狼藉を監視している。殺し損ねたニンジャの所在を追った結果、オヌシを連れて現れた。アブハチトラズとはこの事よ」
ニンジャスレイヤーは無感情に言った。
「そして、何故オヌシを知っているかと訊いたな」
彼は懐からメモをこれ見よがしに取り出し、読み上げる。
「『ソニックブーム』『ソウカイ・シックスゲイツ』『ソニックカラテの使い手』『スカウト部門』『元ヤクザ・バウンサー』『金糸のニンジャ装束、悪趣味な』」
「テメェ……」
「このメモはもう要らなくなった」
ニンジャスレイヤーはそれを破り捨てた。
「当然、今ここでそこのオマケと共に殺すからだ。わかるな。オヌシは私にとって、陳列ケースに飾られ、カタログに記載された獲物の一匹だ。所詮、狩られる獲物でしかないという事を理解した方がいい。ニンジャ殺すべし」
「ザッケンナコラー……」
ソニックブームとクチュリエールはカラテを構えた。
「そのオマケからベントー奪うだけで終わった奴が何言ってるでヤンスか。
ソニックブーム=サンの助けが借りられるなら楽勝でヤンス。後でインセンティブの一割くらいは欲しいでヤンス」
「俺様はそこまでケチじゃねえ、山分けだ!」
二人の軽口を聞いたニンジャスレイヤーもまたカラテを構える。
「……やってみろ!」
ソニックブームとクチュリエールはニンジャスレイヤーを支点に直角の立ち位置にいる。
ニンジャスレイヤーはスリケン同士撃ちを誘う為にソニックブームとクチュリエールの間に飛び出した!
「「イヤーッ!」」
ソニックブームが中腰からのパンチを繰り出す。ブーム!ソニックカラテパンチだ!
クチュリエールも中腰からのパンチを繰り出す。ブーム!ソニックカラテパンチだ!
二人のソニックカラテの衝突する地点にはニンジャスレイヤーがいる!致命的な判断ミスだ!
「イヤーッ!」
ニンジャスレイヤーは二人に挟まれた状態から慌ててジャンプ!ニンジャスレイヤーの爪先スレスレでソニックカラテパンチ同士が衝突し、周囲に衝撃波が撒き散らされる!
「ヌウゥゥゥゥ!」
ニンジャスレイヤーは衝撃波に煽られ、姿勢を崩しながら想定していた身長の三倍より更に高くジャンプ!
崩れた姿勢では狙いが定まらず、まともに反撃出来ない!
何故クチュリエールがソニックカラテを使えるのか?
それはソニックブームとクチュリエールがネンゴロになった後、クチュリエールの仕事が忙しく中々会えなかった時期にソニックブームが逢引する為、クチュリエールへ自身のソニックカラテを習得するミッションを発行していたのだ。
時間を数時間程しか作れず基礎しか身に付けられなかったが、それがニンジャスレイヤーの想定を上回ったのだ。
「スッゾオラーッ!」
「グワーッ!」
ソニックブームは空中のニンジャスレイヤーめがけ拳を繰り出す!ソニックカラテ対空ポムポムパンチだ。ブーム!衝撃波が空中のニンジャスレイヤーに直撃!更に上空へ吹き飛ばす!
「ハイーッ!」
ソニックブームが稼いだ時間を使ってクチュリエールが放ったのは渾身のタタミ・スリケンだ!
フラフープ大のチャクラムスリケンが十枚、ビル壁に反射して様々な方向から襲いかかる!
ソニックブームは勝ちを確信して動きが止まった!
「ヌウゥゥゥゥ!」
「ナニーッ!」
十枚のチャクラムスリケンがニンジャスレイヤーに命中する瞬間、ニンジャスレイヤーの気配が禍々しく膨れ上がった。
ジュゥゥゥゥ!チャクラムスリケンが斬り込んだ箇所から禍々しい炎が吹き上がり、金属が溶けるような音を立てて回転が停止する!
そのまま斬り込んだ箇所が溶け、チャクラムスリケンが崩壊した!
ソニックブームが驚愕する!
「オモチャめ!」
ニンジャスレイヤーが両目からセンコめいた赤い光を放ち、ソニックブームとクチュリエールを睨みつけ、ニンジャスレイヤーは驚愕した。
「ハイーッ!」
「ナニッ!」
一切油断しなかったクチュリエールによる再びのタタミ……腕にチャクラムがかけられていない!ソニックカラテの術理をタタミ・ケンと組み合わせたソニックタタミ・ケンだ!
「グワーッ!」
衝撃音と共に更に高く打ち上げられ、ニンジャスレイヤーはビルを越えて吹き飛ばされた。
ニンジャソウル探知ではニンジャスレイヤーがそのまま逃げていく様子が感じられる。尋常ではないニンジャ耐久力とスタミナだ。
「何だと?」
意識を集中してニンジャソウル探知を始めたソニックブームもその様子を感知したようだ。顔が引き攣っている。
何故ソニックブームがニンジャソウル探知を使えるのか?
それはクチュリエールも逢引の途中、ソニックブームにニンジャソウル探知をインストラクションしていたのだ。
まだ慣れておらず、意識を集中して漸く使える物だが、スカウト業務の役に立つ技術である。
「クチュリエール、よくアレから逃げ切れたな」
「初手でカラダチ使わされて嫌な予感がしたから、ずっと逃げに徹してたでヤンス」
初手で同士撃ちを狙って駆けた際の動きから察せられるカラテのワザマエ、タタミ・スリケンの直撃を受けた上で生存し、全て無力化してみせた謎のジツ、尋常ではないニンジャ耐久力。
今回もクチュリエールの初見殺しが刺さったから生き残れたが、次があったら死ぬかもしれない。
暫く二人は精神的な疲労感でぼんやりしながら、暫くニンジャスレイヤーが去った夜の空を眺めていた。
━━━
二人がトコロザワピラーに戻った時、入口の前にはヤモトしか立っていなかった。
ヤモト曰く、スーサイドは自殺に巻き込んだ事をヤモトに謝罪した後、一緒にソウカイヤから逃げるように誘い、「ここで逃げたら友達がどうなるのかわからない」とヤモトに断られて一人で逃げ出したのだそうだ。
「ザッケンナコラーッ!」
ソニックブームの咆哮がネオサイタマに響いた。
━━━
「……誰だ」
「ドーモ、はじめまして。フィルギアです。さっきの様子は見てたぜ。怖いニンジャに睨まれて、嫌いな奴の命令で逃げ出して、女の子も口説き損ねてソウカイヤからも逃げ出した。ハハハッ!ブザマで笑える……」
路地裏の一角でスーサイドは背後の男に問いかける。男は笑いながら答えた。
四角いサングラスをかけた、痩せた男だ。真っ直ぐなワン・レングスの長い黒髪、臙脂色のシャツ、首にはインディアンめいたアクセサリー。
「……ソウカイ・ニンジャか?」
「違うんだよなァ」
苛つくスーサイドにフィルギアはチェシャ猫めいて笑う。
「行く所が無いならウチに来ないかと誘いに来たんだ。
俺はお前のトーテム……汝に啓示を与えん。……冗談だ、本気にするなよ」
男の姿が衣服ごと影めいて歪む。一瞬の後、一匹の獣がいた。コヨーテだ。
ソウカイヤから逃げ出し、行き場の無いスーサイドは頭を掻いてトコトコと歩くコヨーテの後を追った。
よくよく考えたらシックスゲイツ級二人を同時に相手する時点でニンジャスレイヤーでもナラク抜きならキツいし、初見殺しはまだ残っていたので、やってやれない事は無かったです。
初手のしくじりが無ければソニックブームとクチュリエールのどちらかは死んでいたでしょう。
Q.スーサイドはなんで逃げ出したの?
A.ソニックブームとの初めての出会いから今までストレスが溜まっており、原作本編のようにミッション中に裏切るとまでは行きませんが、監視が無くなったら逃げ出す程度に鬱憤が溜まってました。
Q.ヤモト=サンは何故ソウカイヤ入りをしたんですか?
A.初対面でちゃんとヤモト=サンを気遣い、丁寧に説得した所にニンジャスレイヤーの出現がダメ押しになりました。
ヤモト視点だとニンジャスレイヤーがニンジャを狙う殺人鬼にしか見えなかった為です。
Q.なんでニンジャスレイヤーは初手でしくじったのですか?
A.ナラク込みの追跡を振り切って自分に大ダメージを与えたニンジャを殺害する為、追跡してたらシックスゲイツまで合流した事に焦ってしまったからです。
**ソニックタタミ・ケン**
タタミ・ケンにソニックカラテの術理を掛け合わせた凄いヒサツ・ワザ。
でも殺すならタタミ・スリケンの方が使いやすく、防ぎにくいのでまず使われない。
クチュリエールの修めたソニックカラテの基礎だけではタタミ・ケンの威力を伝えきれない上に体格等の問題もある為、ソニックブームのジェットツキの方が出が圧倒的に早い上に単発の威力も上で連射可能だったりする。
**ニンジャソウル探知**
ドラゴン・ゲンドーソーのインストラクション・スリーにニンジャソウル探知の戦闘利用があるので、ニンジャなら鍛錬すれば使える技術としています。