忍殺世界にTS転生した話   作:下駄ロボ

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キョート・ヘル・オン・アース 破 ライジング・タイド 1/?

キョート城内、数ある茶室の一室。

 

パーガトリーの立てたチャをドローカットが飲んでいる。何故、ドローカットがパーガトリーとチャを飲んでいるのか……それは、儀式の前に確認したい事があるというパーガトリーから呼び出されたのだ。

 

「して……勝算はあるのじゃろうな?」

「この通りです」

「なんと」

 

チャワンを置いたドローカットがフラフープ大のチャクラムスリケンを生成する。パーガトリーは口元を押さえた。

 

ドローカット……否、クチュリエールが生成したチャクラムスリケンがパーガトリーのニューロンにネオサイタマ制圧部隊から報告を受けた際の記憶を想起させた。

━━━

 

キョート城内部、観戦の間。

 

グランドマスター達が集まる一室でパラゴンが報告書と共に送られてきた動画を再生する。

 

炎上するネオサイタマの一角を撮影するハンディカメラの映像だ。撮影するモスキートの口からマルノウチ・スゴイタカイビル、トコシマ区、ノビドメ、リョウゴク、ついでにマグロツェッペリンを襲撃した事が語られている。

 

モスキートによる解説中に突如、カメラが何も無い空中に向けられる。

 

『高速で接近する少女の息遣い!クチュリエール=サンのスリケンだ!』

 

モスキートが叫ぶとインペイルメントが10フィート長の魔剣「ザオ・ケン」を握り、カメラを向けた先へ飛びかかった。音も無く超高速でフラフープ大の大型チャクラムスリケンが飛来する!

 

『フーンク!』

 

高速回転する大型チャクラムスリケンと渾身の力で振るわれたザオ・ケンが打ち合った事による甲高い金属音が響き、大型チャクラムスリケンが弾かれる!遅れて届く風切り音!このスリケンは音速を越えていた!

 

弾かれたスリケンは速度を落としてなおハヤイ!ビル壁で反射して今度はモスキートに襲いかかる!モスキートはカメラで大型チャクラムスリケンを追いつつ、全速力でインペイルメントの側へ走る!

 

『インペイルメント=サン!』

『フーンク!』

 

インペイルメントによるインターセプト!再度渾身の力で振るわれたザオ・ケンが大型チャクラムスリケンを打ち砕く!しかし、負荷に耐えきれずザオ・ケンの刀身が半ばで折れた!

 

『フーンク!』

『大丈夫だインペイルメント=サン!二射目は来ていない!』

 

モスキートの言葉を受けてインペイルメントはザオ・ケンを撫でる。モスキートの視線とカメラがインペイルメントのザオ・ケンに向く。

 

ザオ・ケンの折れた刀身には深い切り込みの跡が入っており、初撃で深く斬り込まれた事が伺える。

 

『なんと恐ろしい威力……』

『フーンク!』

 

映像はここまでだった。観戦の間に重々しいアトモスフィアが流れる。インペイルメントのワザマエはザイバツ内でも有名だ。スリケンで彼のザオ・ケンを折る程のワザマエを持つニンジャがいるという事実にグランドマスター達はワイルドハントがこれ程までの行動を取る理由を理解した。

 

こんなスリケンが音を置き去りにする速度で追尾して来るのだ。投げられたタイミング次第でグランドマスターでも受けきれずに死んでしまうかもしれない。

 

そんなスリケンを〝少女の息遣い〟とかいう訳のわからない物でインペイルメントより早く察知したモスキートにグランドマスター達は困惑しつつも、脅威への対処という点で考えは一致した。

 

ネオサイタマ制圧部隊への増援が決まったが、派遣する人員の指定に時間がかかり、後の武装新幹線襲撃事件で増援は取り止めになった。

 

━━━

 

「どうりで見つからぬ訳よ……既に内部に入り込んでおったとは……」

「儀式は天守閣で行われるそうなので、ダークニンジャ=サンからの合図を受け次第、中庭から投げて仕留める予定です」

「合図とな?儀式が始まってから投げれば良いのではないかね?」

 

ダークニンジャの勝算に納得したパーガトリーはチャクラムスリケンを分解したクチュリエールの台詞に困惑した。

 

「ダークニンジャ=サンとニンジャスレイヤー=サンは自分の手で仕留めたいそうです」

「なんと!折角の勝算を棒に振りかねない真似をするのか!?待て……今、誰と言ったかの?」

「ダークニンジャ=サンとニンジャスレイヤー=サンです」

 

パーガトリーは協力者の名前に絶句した。誰がどのようにやったかわからぬが、あの狂人と同盟を取りつけたのだ。

 

「……あいわかった……ムーホンに乗らせてもらおう」

「ご協力頂きありがとうございます。とりあえず、ムーホンの容疑をスローハンド=サンに被せる準備が出来ているので、蹴落とす手伝いをお願いします」

「う……うむ、任されよ」

 

パーガトリーは了承した。周到な準備に彼は恐ろしい物を感じていた。

 

その時、床の間のカケジク型モニタにドゲザするニンジャスレイヤーとダークニンジャの映像が映し出された。パーガトリーは顔を真っ青にして頭を抱えた。

 

━━━

 

「グワーッ!」

 

ダークニンジャの斬撃がニンジャスレイヤーの背中を切り裂いた。浅い。だが、刃を受けたのはこれで二度目だ。一方、ニンジャスレイヤーはダークニンジャから重いダメージを取ることができていない。

 

チャドー呼吸をもつニンジャスレイヤーのニンジャ回復力は非凡だ。さらにニーズヘグとのイクサでは、邪悪なる超自然的回復力をも発揮、ヘビ・ケンの傷を軽減させる事ができた。だが物事には限度というものがある。続けざまの激しいイクサ。ジリー・プアーか?

 

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

更に振り下ろされるベッピンを、振り向きざまのヌンチャクで受ける! 二連撃……否、三度! 稲妻めいた軌跡を描き、さらなる斬撃が襲う!

 

「ヌゥーッ!」

 

打ち返しが間に合わぬ! ニンジャスレイヤーは己の左腕のブレーサーで咄嗟に受ける。KRASH! ブレーサーが破砕!

 

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

ニンジャスレイヤーは左脚でミドルキックを繰り出す! ダークニンジャは右膝を上げてガード、チョップを繰り出す!

 

「グワーッ!」

「グワーッ!」

 

ニンジャスレイヤーの右鎖骨を斬る!ダークニンジャの右脇腹にニンジャスレイヤーの左変形チョップ突きが刺さる!

 

「「ヌゥーッ!」」

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

二者は同時にポン・パンチを繰り出す! ニンジャスレイヤーが一瞬速い! ダークニンジャは吹き飛び、バック転を打ってネコめいて着地! ニンジャスレイヤーはスプリントを開始した。追撃だ! ダークニンジャは身を沈めた。デス・キリの構え!

 

「……イヤーッ!」

 

ニンジャスレイヤーは全ニンジャ感覚を注ぎ込み、不可視の斬撃を飛び越す! そして、見よ! ドラゴン・トビゲリだ!

 

「イヤーッ!」

「まだだ!」

 

ダークニンジャが叫ぶ! ナムサン……ナムサン! デス・キリのリバース斬撃だと!?

 

「グワーッ!?」

 

ニンジャスレイヤーはしかし見事! ドラゴン・トビゲリを瞬時に断念、空中で身を捻り、ヌンチャクと回避動作とで、致死攻撃を最小限のダメージで抑えたのだ!

 

「イヤーッ!」

 

ニンジャスレイヤーは振り返りながらケリ・キックを繰り出す! これはアラシノケン初撃動作だ! だがダークニンジャがハヤイ!

 

「イヤーッ!」

「グワーッ!」

 

ベッピンが閃き、ニンジャスレイヤーは身をそらす!しかし避けきれない!胸の付近の装束が裂ける!

 

「カンジ・キル! イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

二画! ニンジャスレイヤーは渾身のニンジャ筋力で残るドウグ社ブレーサーを叩きつける! KRASH! 破砕!

 

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

三画!ブレーサーは失われたが、体勢は回復した。

 

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

四画! ヌンチャクを振り抜き相殺!

 

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

五画! ニンジャスレイヤーはヌンチャクの鎖を張り、刃を受ける!

 

「イヤーッ!」

 

六画!ニンジャスレイヤーは側転して回避! さらにバックフリップ! 「死」のカンジを逃れ、カワラ上に着地!

 

「ヌ……グワーッ!」

 

ニンジャスレイヤーの胸板にさらに斜めに裂傷が開き、血が噴き出す! 最後の斬撃を躱しきれなかったのだ。だが……だが見よ! 彼の目の闘志は衰えておらぬ! ヌンチャクを振り回し、構え直す!

 

ダークニンジャはベッピンを納刀して休ませ、ガントレットを……ハクチョウ・カラテを構えた……!

 

……キィ……キィ……。

 

二者はカラテを構えたまま、その異音に微かな注意を向けた。

 

……キィ……。キィ……。

 

音は車輪の軋み音だ。 カワラの上を車椅子が接近して来る。病的に瘦せたニンジャがそれを押していた。車椅子には、ヴェールつき王族帽を被った白手袋のニンジャが座る。

 

……キィ……。……キィ……。

 

ダークニンジャは車椅子を押すニンジャを当然、知っている。異常に瘦せて、錆塗れのメンポを着けたそのニンジャの名は、ジェスター。

 

ワッチドッグやレッドクリーヴァー同様、虐げられたニンジャであり、脳の一部を切除されている。 ジェスターはキョート城の後ろ暗い区画で労働するスモトリ奴隷の使役者であり、踊り手であり、そして……おお……思考能力を破壊されているがゆえ……ロードの側に侍る事を許される。車椅子を押す事も。

 

「ムーフォーフォーフォー……大儀であった。ダークニンジャ=サン。そしてニンジャスレイヤー=サン」

 

車椅子のニンジャは肩を揺らして笑った。その顔はノレンめいたヴェールゆえに窺い知れない。ニンジャスレイヤーはドゲザした。 同時に、ダークニンジャもドゲザした。たった今まで神話めいたイクサを繰り広げていた二者は、車椅子のニンジャに向かい、カワラに額を擦り付けた。

 

「ムーフォーフォーフォー。クルシュナイ。クルシュナイ。クルシュナイ」

 

二者は額を上げ、車椅子のニンジャを見た。

 

「ウフッ……ウフフーッ!」

 

ジェスターが笑い、四つん這いになって車椅子のストッパーを作動させると、スキップしながら二者へ近づいた。

 

「ウフッ! ウフッ! ウフッ!」

「ムーフォーフォーフォー……ムーフォーフォーフォー……」

「踊るがよい。ジェスター=サン。余は踊りが見たい」

「ウフッ! ウフフーッ!」

 

ジェスターは瘦身を病的にくねらせ、痙攣し、禍々しい、狂気じみた踊りを踊った。車椅子のニンジャは手を叩いて拍子を取った。

 

「ヒー、トリ、コマキタネー……ミスージノー、イトニー……」

「ムーフォーフォー……ああ楽しかった。ジェスター=サン、やめよ」

「ウフフーッ!」

 

手拍子をすぐに止めると、ジェスターはピタリと直立姿勢を取り、軍隊じみて敬礼した。

 

「ニンジャスレイヤー=サンとダークニンジャ=サンの大儀なクエストを労い、ありがたく神器を受け取るべし」

「ウフーッ!」

 

ニンジャスレイヤーとダークニンジャ、二者は競い合うように、己が神器を恭しく捧げ上げた。U字に収納されたヌンチャク。元の形に戻り、腕から外したブレーサー。ジェスターは二人の頭を愛おしそうに撫で、神器を受け取って、難儀そうに抱えた。そして車椅子のニンジャのもとへスキップした。

 

「ムフゥーン……」

 

車椅子のニンジャはブレーサーをジェスターから受け取り、装着した。次にヌンチャクを受け取り、腰に吊るした。

 

「麗しき心地ゆえ、アイサツいたす。ドーモ。ロード・オブ・ザイバツです」

 

ニンジャは車椅子からオジギした。一陣の風がヴェールを揺らし、ロードのメンポを垣間見せる。最後の神器を。その表面には「罪」「罰」の神秘的漢字が浮かび上がり、光を放っている。

 

ダークニンジャはすぐにそれが、ショーグン・オーヴァーロード、エド・トクガワの武者鎧に由来するメンポであるとわかった。オムラ・グループが投機目的で所有していた鎧兜一式の一部である。

 

彼はそれ以上考える時間はないと判断した。ロードへの忠誠こそが地上における絶対至上の価値であり、今こそそれが試されている。

 

「今宵はめでたい。ドラゴン・ニンジャと三神器が還って来た。祝ってたもれ」

「「ヨロコンデー!」」

 

ニンジャスレイヤーとダークニンジャは競って大声を張り上げた。

 

「「オメデトゴザイマス!」」

「ムーフォーフォーフォー……クルシュナイ。クルシュナイ。クルシュナイ」

「「ハイ!」」

 

二者は素早く立ち上がる。

 

「「幸せです!」」

 

そして角度一二〇度のオジギをした。

 

「クルシュナイ。クルシュナイ。クルシュナイ」

 

ロードがジェスターに手振りすると、ジェスターは車椅子の向きを変え、押し始めた。

 

「だが、かようなおぼつかぬ足場への旅、実際難儀であった……ヤンナルネ……」

 

キィ……。キィ……。……キィ……。

 

「「……」」

 

二者はオジギしたまま、見送った。

 

……やがて彼らは顔を上げ、向かい合った。互いのカラテを構えた。じりじりと、円を描くように動き、間合いを測り始めた。ともに恐るべき使い手。不用意な先制攻撃は致命的なカウンターを招くであろう。

 

倒す……必ず勝つ! 妻子の仇……あの日のマルノウチ・スゴイタカイビル……! ニンジャスレイヤーの目に憎悪と怒りが灯る!

 

「イヤーッ!」

 

最初に仕掛けたのはダークニンジャだ! ニンジャスレイヤーはハイキックを側転で回避!

 

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 

ニンジャスレイヤーのヤリめいたサイドキックがダークニンジャの胸を狙う!

 

「イヤーッ!」

 

ダークニンジャはギリギリで上体を反らし、これを回避!

 

「イヤーッ!」

 

至近距離から素手のトバシ・キリ!

 

「イヤーッ!」

 

ニンジャスレイヤーはブリッジでこれを躱す! ダークニンジャはベッピンを抜かない。彼のカンジ・キルは恐るべきヒサツ・ワザであったが、恐らく何らかの機能的制約から、繰り出した後、しばらくベッピンを納刀せねばならぬ時間があるのだろう。

 

制約はどれほどの時間であろう? 数分か? 数十分か? 数時間か? この機に畳み掛けるべし!

 

二者のカラテがぶつかり合った。

 

━━━

 

ロードが去った所で中継映像が消え、パーガトリーとクチュリエールは向き合った。

 

「もしかして……初期からいるグランドマスター達って皆こんな目に遭ってたりしたのでしょうか?」

「うむ……もしかするとそうかもしれぬ。とにかく、クチュリエール=サン……こうなったらそなただけが頼りじゃ……」

「ヨロコンデー!」

 

パーガトリーの縋るような頼みにクチュリエールは胸を張って答えた後、思い出したようにIRC通話をニンジャスレイヤーとダークニンジャに繋げた。

 

「ダークニンジャ=サン、ニンジャスレイヤー=サン。もう中継は終わってるからイクサはそこまでにして欲しいでヤンス。電算室にスシと医療キットを用意してるから、電算室の案内通りに来て欲しいでヤンス。

ところで……迫真のカラテでしたけど、まさかアリバイ作りの為にやってる事を忘れてないでヤンスね?」

『そんな事は無い』

『考え過ぎだ』

 

二人揃って即答した。




ザイバツ側はクチュリエールのスリケンワザについて、フルチャージ版ツヨイ・タタミ・スリケンとタタミ・スリケンまでの情報しか持ってなかったりします。

Q.音速超えのスリケンを投げたのに、なぜ衝撃波が出ないのですか?

A.良く切れる刃物で生き物を上手に斬ると断面同士が綺麗にくっつくという話がありますが、スリケンに込めたカラテで物理法則をねじ曲げる事で空気に同じような事をやってます。
凄いカラテパワーで音の壁を作らずに音速超えを果たしたと思ってください。
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