キョート城電算室。
スシを食べ、チャを飲み、ニンジャスレイヤー、ガンドー、ダークニンジャの三名が休憩中のこの部屋には険悪な空気が漂っていた。
ニーズヘグにかけられたムーホン疑惑を晴らす為とはいえ、八百長を持ちかけておきながらニーズヘグとダークニンジャの二人共ブック破りをしてニンジャスレイヤーを殺しにかかったのだから、それも当然である。
元々、マグロアンドドラゴン社襲撃の数日前からブラックドラゴンが荒れ、レッドゴリラに宥められる姿がキョート城内で確認されており、グランドマスターの誰かがムーホンを起こそうとしているのではと疑惑が持ち上がっていたのだ。
戦闘狂ゆえ、ザイバツ相手にイクサするのではとムーホンの最有力候補に上がっていたグランドマスターがニーズヘグである。実際、事実なのでその疑いは正解であった。
その疑いも、ニンジャスレイヤーとのイクサで取り決めが頭から飛んでやり過ぎたせいで両腕を折られ、左足を脛から斬り落とされ、カイシャク寸前まで至った今となっては疑いも完全に晴れている。
ダークニンジャに至っては最初から取り決めを無視して殺す気でかかっていた。おかげで一切疑いはかからなかったが、ニンジャスレイヤーの腸は煮えくり返った。
更に、電算室に着いてからロードのキョジツテンカンホーの自力解除に成功した事で二人の頭に血が昇った。何をやらされたのかはしっかり覚えている。飛び出さずに済んだ理由はここまで協力してくれたり、電算室に用意するスシを握ってくれたり、セカンドプランとして狙撃までしてくれるクチュリエールの顔を立てるためである。
そんな訳で彼等が休む電算室の空気は最悪だ。
ヴィジランス派閥のニンジャ達はそんなニンジャスレイヤー達から目を背けるようにアラクニッドの残したアドレスを辿るナンシーのサポートに勤しんでいる。
普段、この電算室にいる筈の奴隷ハッカー達は全てヨロシサンの電子防御でニューロンを焼かれて死んでしまい、ニンジャスレイヤー達の到着前に死体を全て捨てられた。ヴィジランス派閥の面々にとって幸運な事に、ニンジャスレイヤー達に奴隷ハッカー達の姿を見せずに済んだ。見られていたら協力どころでは無かっただろう。
セカンドプランではスローハンド派閥ニンジャの掃討が終わったタイミングで電算室から通信封鎖をかけた事を確認してから三人で天守閣に向かい、クチュリエールのスリケン狙撃が行われたタイミングで突入する手筈だ。
電算室の面々は掃討の終わりを今か今かと待ちわびていた。
「な、なぁ……狙撃支援してくれるクチュリエール=サンってどれだけの腕なんだ?俺はあの嬢ちゃんについて、ほぼ何も知らないから教えて欲しいんだが……」
「……そうか、ならば今ある一番新しい資料を見せよう」
二人の険悪な空気に耐えかねたガンドーが話題を振る。ヴィジランスが動画を探し、目的の場面を大型モニタに映し出した。
『高速で接近する少女の息遣い! クチュリエール=サンのスリケンだ!』
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キョート城内を駆け、ムーホン人を探す大柄なニンジャが一人。彼の名はコンフロント。
死んだムーホン人のグランドマスター・スローハンドの部下を倒し、キンボシを得る為に琥珀ニンジャの間を飛び出して獲物を探しているのだ。
廊下を走る彼の前でフスマを巻き込んで廊下まで吹き飛ばされたニンジャが一人。首回りには襟巻き状に湾曲させたガラスシリンダーが巻かれ、液体がその中を満たしていた。シリンダーからはLANケーブルめいたチューブが延び、それらは全て両こめかみに直結されている。奇怪な格好の気持ち悪いニンジャだ。
「サヨナラ!」
起き上がろうとする彼の身体に大量のシャボン玉が吹き付けられて連鎖爆発!絶命したらしく更に爆発!四散した。
かつてフスマがあった場所から二体の異形が姿を現す。
片方はエイじみたヒレを持つ奇怪なモンスターだ! 凶悪な恐竜の骨めいた顎をもつ鮫じみた顔! コワイ!もう片方は背中から節くれ立った六本の長い骨、コウモリめいた皮の翼! 奇怪な赤紫色の羽根に覆われた奇怪なモンスターだ! コワイ!
「……ドーモ。コンフロントです」
「ドーモ。コンフロント=サン。ジャバウォックです」
「ドーモ。ブルーオーブです」
二体と一人がアイサツを交わす。
「ヨタモノだ! 俺はヨタモノは興味ねえ。よかったな、オーブ」
「そういうの、やめ「アアァ!?」
コンフロントがブルーオーブの発言を遮った。
「聞こえねェー、聞こえねェー、聞こえねェーのナンデ? 調子に乗ってる気持ち悪りぃゲイのバイオ生物共がひ弱坊やだから、声が聞こえないからかな? ン? そうだよな? もっかい言ってくれネェかな?」
二体の視線がコンフロントを射貫いた。
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キョート城の廊下を部下達を前面に出してパーガトリーが中庭に向かって進む。その後ろに付き従うようにドローカットとシャドウウィーヴがついて行く。
計画ではニンジャスレイヤーとダークニンジャの二人がかりで撃破できないと判断された場合、ムーホンの罪を着せたスローハンド派閥のニンジャ達の全滅を待ち、ロード達が油断したタイミングで中庭からスリケン狙撃する手筈となっている。
パーガトリーはスローハンド派閥のニンジャ掃討をする体で中庭までドローカットことクチュリエールの護衛を行っていた。
キョート城内にスローハンド派閥のニンジャ達の悲鳴と爆発四散する音が響く。腕利きのニンジャであっても、ニンジャが大勢で囲んで襲えば大抵は容易く爆発四散するのだ。
その時、パーガトリー一行の後方……爆発音と共に廊下の壁をぶち抜いて四肢を失ったニンジャが廊下に放り出される。
ニンジャの全身は満遍なく爆破されたらしく、筋肉が剥き出しで服どころか皮すら見えない。顔は爆発によるものか目、鼻、全ての歯と下顎が消失している。
壁の穴から二体の異形がゆっくりとその姿を現す。奇怪な赤紫色の羽根に覆われた奇怪なモンスターはパーガトリーの姿を見つけると、廊下に這いつくばる惨めなニンジャの頭を踏み潰して爆発四散させた。
「ドーモ。パーガトリー=サン。ジャバウォックです」「ドーモ。ブルーオーブです」
「ドーモ。ジャバウォック=サン。ブルーオーブ=サン。パーガトリーです」
集団戦の為、二体のアイサツに代表者であるパーガトリーがアイサツを返した。
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動画を見終わったニンジャスレイヤー、ガンドー、ダークニンジャはぽかんとした表情で呆けていた。
クチュリエールの投げたスリケンが自分の知る物を超えている事に驚いたが、それ以上にそんなスリケンを〝少女の息遣い〟とかいう訳のわからない物でインペイルメントより早く察知したモスキートに三人は困惑していた。
モスキートと戦い、爆発四散させたニンジャスレイヤーはモスキートがどのようにしてナンシーを発見したのか察しが付いたが、それを言う気にはなれなかった。既に殺したニンジャである。話題にする必要は無いだろう。
「今のクチュリエール=サンなら動画以上のスリケンを投げられるだろうな」
ダークニンジャは確信と共に言い切った。モスキートについては見なかった物とする気のようだ。彼はリアルニンジャ化とサクラ・エンハンスメント・ジツによる強化でパワーアップしていると予想した。
「うむ。ラオモト=カンの両足首を普通のスナイパースリケンで斬り飛ばした彼女だ。今なら更にハヤイ、威力のあるスリケンを投げられるだろう」
ニンジャスレイヤーも確信と共に言い切った。彼もモスキートについては見なかった物とする気のようだ。
ニンジャスレイヤーはインストラクションしたスリケンワザと本格的なチャドー呼吸のインストラクションでクチュリエールのスリケンが更にパワーアップしていると予想した。
「オイオイオイ……あの嬢ちゃんがこれ以上のスリケンを投げるって?俺達の出番は無いんじゃないか?」
「〝ハイキングはドア・トゥ・ドア〟……彼女がスリケンを投げられない可能性もある以上、我々の出番はまだあるだろう」
「……そうだな、邪魔が入ったり、ロードとかいう奴があのモスキート=サンみたいな事ができる可能性もあるか」
ガンドーの返答にニンジャスレイヤーがメンポの下で苦い顔をした。
「……これ以上があるのか?」
ヴィジランスはダークニンジャとニンジャスレイヤーの発言に戦慄した。
コンフロント=サンはアデプトの癖に原作でニーズヘグ=サンやダークニンジャ=サン、シテンノを落ちこぼれ呼ばわりしてたヤベー奴なので、これくらいのバカムーブをしてくれそうな気がします。