キョート城中庭。パーガトリー一行にニーズヘグ派閥のニンジャ達が合流すると、IRC通信でその場にいたムーホン側ニンジャ達にヴィジランスから連絡が入る。
『ダークニンジャ=サンとニンジャスレイヤー=サンが電算室から出撃。ロード側ニンジャ達の通信封鎖を開始』
二人のカラテならば道中の妨害込みで遅くとも十数分程で到着するだろう。最後の時は近い。
ドローカット……否、クチュリエールと共に狙撃命令を待つシャドウウィーヴの目の前に炎のリングが生じた。中から飛び出して来たのは……イグナイト!
「ドーモ。パーガトリーです」
「ドーモ。シャドウウィーヴです」
「ドーモ。クチュリエールです」
「ヘル・オー!パーガトリー=サン!シャドウウィーヴ=サン!クチュリエール=サン!イグナイトです!」
ニンジャ達が互いにアイサツを交わす。パーガトリーは派閥代表としてアイサツした。
「お前ッ!お前が、あのヤバイスリケンを投げるニンジャか!」
「そうだよ。今回はロードに投げに来たから味方だよ」
イグナイトはクチュリエールを指差して喚いた。喚かれたクチュリエールは平然と答え、パーガトリーとシャドウウィーヴは呆れた反応だ。
「何故キョートにいる」
「うるせェな! 色々ムカついてんだよ。ロードにカマしてやりに来たのさ」
シャドウウィーヴの質問にイグナイトは苛立ち混じりに答えた。ボウ。炎の輪が生じた。
「じゃあな!スリケンでロードが死ぬ前に一発カマしてくる!」
彼女は輪の中へ飛び込み、消えた。
「ちょっと待ってあげようか?」
「待たなくとも良い」
クチュリエールの呟きにパーガトリーが答えると、轟音と共にキョート城ホンマルへ巨大な金属の怪物が飛来する。中庭のニンジャ達の視線が集まった。
KRA-TOOOOOOM!
金属の怪物がそのままホンマルに突っ込み、その場にいた全てのニンジャが呆然とした。天井が崩壊し、大穴が空いている。
柱を折り、床を抉り、中庭から見えなくなったそれに向け、クチュリエールは投擲の準備を進めた。
「スゥーッ! ハァーッ!」
クチュリエールの両手にフラフープ大のチャクラムスリケンが生成され、引っかけた両手首を支点に猛回転を始める。風切り音を響かせながらチャドー呼吸で内なるカラテを高めると、回転するチャクラムスリケンが桜色の光を纏う。
上半身が極限まで捻じれ、クチュリエールの上半身は真後ろを向き、ニンジャ装束の下の筋肉が縄めいて隆起する。ニンジャソウル探知で金属の怪物にデスドレインがへばりついている事に気付き、デスドレインに狙いを定めた。
「ハイーッ!」
クチュリエールの上半身が霞み、勢い良くチャクラムスリケンが投擲される。二枚のチャクラムスリケンは軌道上に桜色の残光を残して急カーブし、ホンマルに開いた大穴へ突入する。
ズガガガガ!KABOOOOOOOOM!ズガガガガ!KABOOOOOOOOM!
激しく跳ね回る音と共に激しい爆発!金属の怪物めいたニンジャが爆発四散して兵装に引火!更に爆発!黒いヘドロの塊がホンマルから飛び出してガイオンへと落下する。二枚のチャクラムスリケンは桜色の軌跡を残してその後を追い、落下するヘドロ塊に何度も突撃して斬り刻みながら一緒に落下して行った。
「……クチュリエール=サン……ネオサイタマ襲撃の時は手を抜いておったのかの?」
「いいえ。ニンジャスレイヤー=サンにインストラクションしてもらったり、ザイバツに入って鍛えられたりしてスリケンのワザマエが更に上がりました。今は一人を重点して狙わせる事もできますよ」
「そ、そうであったか……」
中庭にいるニンジャ達はあまりの光景に呆然としてしまった。パーガトリーの絞り出すような質問にクチュリエールが答えると、引き攣った顔でなんとか返事を返した。
━━━
キョート城ホンマル。ニンジャスレイヤーとダークニンジャはパラゴン派閥や根無し草、守護者のニンジャ達を蹴散らしながら天守閣へと向かっていた。
「イヤーッ!」
「アバーッ!」
赤く長い髪を床まで伸ばし、やはり赤い隈取りを目元に施したニンジャがダークニンジャのベッピンで背後から貫かれる!ヤミ・ウチ!ニンジャスレイヤーは絶命したニンジャの胸元にかけられた鍵を奪い、鉄門の鍵を開ける。
「「イヤーッ!」」
ニンジャスレイヤーとダークニンジャは回廊の奥、アーチ状の入口をくぐり、次なる広間へエントリーした。
やはり天井は高い。それまでとは対照的に、質素な様式で統一された、礼拝堂じみた空間であった。長椅子が並び、壁にはニンジャ神話のステンドグラス。八つ首の竜を退治するニンジャ英雄の図。
その足元に跪き、祈り続けるニンジャが一人。ニンジャスレイヤーとダークニンジャの気配を察知しているのは確かだ。だが動かない。
「……そのまま祈っておる気か」
ニンジャスレイヤーは声をかけた。乳白色の装束を着た女のニンジャは跪いたままだ。見もしない。
「ニンジャスレイヤー=サンとダークニンジャ=サンですね」
「そうだ」
「ああ」
「私はディグニティです」
「ドーモ」
「ドーモ」
ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを、ダークニンジャはベッピンを構える。ディグニティは跪いたままだ。
「非礼をお許しください。見えています」
「かかってくるがいい。カラテを構えよ」
静かに告げたディグニティにニンジャスレイヤーは言い放った。ディグニティは跪いたまま答えた。
「お許しください。でき「イヤーッ!」
「アバーッ!」
ダークニンジャがディグニティにベッピンを突き立てる!ヤミ・ウチ!彼女はノロイ・ジツを使おうとしたが、ベッピンの力により不発!そのままニンジャソウルを吸い付くされて絶命!
二人は更に先へ進む!廊下を抜け、鍛冶場を抜け、螺旋階段を登りきる!
その先の広間に踏み込むとKRA-TOOOOOOM!
「「グワーッ!」」
天井が崩壊し、引き裂かれた木と鉄が粉塵とともに降り注いだ。切り取られた闇。その奥の空。何かが起こった……なにが起こった? 質量だ。質量が衝突した。柱を折り、床を抉り、中央の螺旋階段に蓋するようにめり込んだそれは、何らかの怪物……金属の怪物だった。開いた大穴を通って二枚のチャクラムスリケンが広間に突入!金属の怪物めいたニンジャとそれに乗るデスドレインを壁や天井、床を激しく跳ね回りながら斬り刻む!
ズガガガガ!KABOOOOOOOOM!ズガガガガ!KABOOOOOOOOM!
金属の怪物めいたニンジャがアイサツすらできずに爆発四散して兵装に引火!更に爆発!デスドレインは黒いヘドロで自分を包んで塊と化し、塊ごと斬り刻まれながらホンマルから飛び出した!
二枚のチャクラムスリケンは桜色の軌跡を残してその後を追いかけ広間を飛び出した。
「……クチュリエール……リアルニンジャになると、こうも変わるのか……」
「クチュリエール=サンがリアルニンジャ!?何があった!」
「クチュリエールはユカノ=サンに〝ニンジャソウルが無ければ今頃リアルニンジャになってる〟と言われたからと、本当にニンジャソウルを抜いたのだ。
ユカノ=サンから〝帰りを待つ人がいるのに自殺紛いの真似をするんじゃない〟と長々と説教され、ついでにカイデンネームも貰ったそうだ。」
「……なんと……」
「そうだ……言い忘れていたが、クチュリエールのカイデンネームは〝テンセイ・ニンジャ〟だ」
ダークニンジャがニンジャスレイヤーの疑問に答えるとニンジャスレイヤーは頭を抱える。すぐに落ち着きを取り戻し、二人は天守閣へ向かった。
━━━
キョート城、天守閣……。
タタミ、壁、フスマ、ボンボリ。全てが雪のように白く、天井はジェット機格納庫めいた高さがある。非現実的な無限をはらむ光景だ。だだっ広いこの空間の中央に異物めいて在るのは、円形の屋根つき石台座……ユカノはシャチホコ・ガーゴイルに鎖で繫がれたままだ。
今後のキョート城の制御にドラゴン・ニンジャとしての記憶が必要となる可能性があった為、生かされているのである。
「長う……ございました」
パラゴンが、折に触れて口にした言葉を繰り返した。ロードは頷いた。手を後ろで組んで立ち、頭上のホログラフィ地球儀を見上げている。
今やロードは、車椅子も、他者の介助も必要としない。キョート城の恐るべきシステムを起動させ、地上のモータルの生命力を吸収した彼は、既に壮年期の力を取り戻している。
「私が今後経験する生の永遠めいた長さと比すれば、所詮、これまでの人生など、瞬きひとつにも満たぬものだ」
ロードの表情は白金のキツネオメーンの下、窺い知れぬ。パラゴンはゆっくりとオジギし、白いタタミを歩いて行った。その先には白大理石の水盤がある。パラゴンは瞑想的に水面を見やる。
「キョートは一度焼かれねばなりません……この城の糧として……モータルの卑しき命屑を崇高な生命に変換する神聖装置に供されるさだめであったとするならば……惰眠むさぼる堕落都市ガイオン……その醜怪な姿が御身と同じ世に、これまでのさばり続けてきたという事実にも、かろうじて耐えられようもの」
パラゴンは水盤の表面に映し出される光文字を見、眉をわずかに動かした。
「七つめのゲートが開かれようとしている」
「九つのゲートが開ききった先には」
ユカノが不意に問いを発した。彼女はドラゴン・ニンジャの記憶を断片的にしか取り戻していないのだ。
「先には何が」
「……」
ロードはホログラフィ地球儀を見上げたまま動かない。パラゴンは首を振った。
「悲しいかな」
パラゴンはユカノを見る。
「この城は、貴方自身が数千数万の奴隷と人柱をもちいて構築させた装置だ。我らにとっていまだ不完全な情報を、創り手に語ってきかせねばならぬとは。ブッダと問答するにも等しい。残酷なお方だ」
「……」
ユカノは歯嚙みした。パラゴンはわざとらしく嘆息し、続けた。
「神器は羅針盤です。動力装置の琥珀ニンジャ像に力を与え、同時に、キンカク・テンプルの位置を示す」
「私は何の為に、これを創ったと? 無益な殺戮の為にですか? バカな」
「むしろ教えて頂きたい。その真意を」
パラゴンは冷たく言い放ち、続けた。
「ともあれ我らは正しき目的の為にこの装置を用いる事ができる。神聖な目的の為に。……九つのゲートの先に、キンカク・テンプルを繫ぐ。神器の導きによって」
「キンカクを?」
「覚えておいでですか? キンカクを。ニンジャのヴァルハラを!」
パラゴンは言った。
「オヒガンの果てにあるキンカク・テンプルは、九つのゲートで隔離されたエーテル通路を通り、現世に顕現する。それを可能にするのがこの装置だ。全ニンジャが現世に顕現するのだ!」
ロードは一切の感情を表現せず、頭上の地球儀を眺めるばかりである。一方パラゴンは殆ど叫んでいた。
「現世に出現したキンカク・テンプルから、血肉備えしニンジャ達が蘇る! それらを支配するのは、唯一絶対の超ニンジャ存在……即ちヌンジャとなられたマイロードだ。貴様ら古代の悪獣を奴隷使役する神だ!」
「なんと大それた事を……私の記憶はおぼろです。ですが、あなた方の為そうとしている事がまったくの誤りである事は、はっきりとわかる。記憶を失う前の私が……ソガ・ニンジャとともに……この装置を創った理由は……支配のためなどでは……」
ユカノが蒼褪め、鎖がジャラジャラと鳴った。ロードが口を開く。
「まさにそのソガ・ニンジャの魂を身に宿す者こそが、私だ」
「ハイ」
ユカノは頷いた。反抗意志の全き漂白。ロードのキョジツテンカンホーはあまりに強大である。ロードは続けた。
「ニンジャなど所詮は獣。ソガ・ニンジャとて同様である。なべて、我、罪罰罪罰罪罰罪罰罪の永遠世界の歯車となるべく宇宙創造時点から決定づけられた奴隷に過ぎぬ」
「ですがそれでは……あなた方は禁断の門を……」
「ヴォラッケラー!」
パラゴンのヤクザスラングが響き渡った。
「スッゾコラー!」
「よい……老いた肉体を抱えていた私はキョートを動く事ままならず、キョジツテンカンホーの為にはガイオン街路のチェスボードめいた魔法陣構造を必要としてきた」
「だが既に私は、老いた肉体の枷を脱した。ガイオンの全モータルソウルを吸い尽くした暁には、我が完全性は揺るぎなきものとなる。
さらには東へと城を移動させ、暗黒メガコーポの数々を滅ぼし、ネオサイタマのモータルソウルも吸い上げる。キョジツテンカンホー・ジツを全世界に拡大し、以て、キンカクから蘇生させたニンジャ達を支配する。カツ・ワンソーは所詮ニンジャに過ぎぬ。ヌンジャとは私なのだ」
「それは……しかしそれは……」
ユカノは頭を揺らした。彼らの行おうとしている方法は明らかにイビツ……イビツに過ぎ罪罰罪罰だがロードの正当性は既に確かめたではないか。キョート城はソガ・ニンジャのものであり、故にロードのものなのだ。現にこうし罪罰罪罰……
ボウ! ロードの背後に炎のリングが生じた。中から飛び出して来たのは……イグナイト!イグナイトはロード罪罰罪罰罪罰グナイトは罪罰罪罰罪罰ードは罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰イトが仰向けに叩きつけられた。
イグナイトが跳ね起きると、ロードは右手を振り下ろして心臓を打った。イグナイトの手が燃え上がる。イグナイトはロードに攻撃を加えようとして、ロードはイグナイトの心臓をもう一度打った。
ロードが離れると、イグナイトは両膝をついた。血を吐き、炎を発しようともがき、倒れた。
「クルシュナイ」
こうしている内に九重扉のオブツダンがすでに八割がた開きかけていた。それと呼応するように、キョート城の真上に形成されていた巨大な黒渦が……オヒガンへの門がなお巨大に成長し、その闇の中から数多のニンジャソウルが地上へと放たれ始めたのだ!
門は開かれた! そしてその一部が、流星めいて天守閣へと墜落してくる! 多くのニンジャソウルは星座のように散らばり、キョートのみならず、日本全土へと落下していった。しかしその中のひとかたまりが……天守閣に!
ZANK! ZANK! ZANK! 十数個の黒い光が天守閣のカワラ屋根を突き抜け、タタミに突き刺さる! ニンジャソウル憑依現象か? だがそこには、憑依先など存在せぬ筈……!
次の瞬間、タタミから立ち上った煙が凝縮するかのように、人型をとって立ち上がる。ナムアミダブツ! 肉体無しでソウルが実体化するとは!?
「……」
「……」
「……」
アイサツは無い。無個性な漆黒のニンジャ装束と黒漆塗りの防具を纏ったそれらの人型は、顔を持たず、名を名乗る口も持たなかった。
「ネームレス……フェイスレス……」
ユカノが古の記憶をたどるように呟いた。
「我が名は……ロード・オブ・ザイバツなり! ショーグン・オーヴァーロードの末裔! ソガ・ニンジャの名において、ムーホン者どもを屠るべし!」
ロードが叫ぶ! パラゴンは、隠し持っていたインロウ・オブ・パワーを掲げた!
「ヒカエオラー!」
「ズガタッキェー!」
ロードもまた古代ニンジャスラングを詠唱する! すると……おお、見よ! 顔無しニンジャたちは一斉にドゲザし、ロード・オブ・ザイバツへの忠誠を示したではないか! これもキョジツテンカンホー・ジツか?
「Wasshoi!」
疾風怒濤の直線的突入! 瞬時にパラゴンの背中を羽交い締めにした赤黒のニンジャはそのまま天地逆さになり、キリモミ回転しながら垂直落下した!
「イヤーッ!」
ゴウランガ! 見よ! 凝視せよ! これは必殺のカラテ! アラバマオトシ!
「な……これは……グワーッ!」
「イヤーッ!」
「アバーッ!」
KRAAAAAASH! 白いタタミが衝撃で跳ね飛ぶ!オブシディアンのニンジャがカタナを突き立ててヤミ・ウチで追い打ち!赤黒いニンジャはオブシディアンのニンジャと入れ替わるように回転ジャンプで飛び離れ、ユカノを護るように着地すると、電撃的にアイサツし、パラゴンを仕留めたオブシディアンのニンジャもそれに続いた。
「ドーモ。ニンジャスレイヤーです。ザイバツ・シャドーギルド、滅すべし」
「ドーモ。ダークニンジャです」
「ふむ……ほう、お前が」
ロード・オブ・ザイバツは手を後ろで組んだまま、彼を振り返った。
「パラゴン=サン」
ロードは崩れたタタミを一瞥して呼びかけた。……答えは返って来ない。
「先程ドゲザし、再びまたドゲザしに参ったか。愛しきマジックモンキーよ」
ロードがニンジャスレイヤーを挑発すると、彼らの間に風が割って入った。01のノイズの風が。
「001」
人の形をした白いノイズはニンジャスレイヤーに何かを促した。ニンジャスレイヤーは懐から銀の鍵を取り出した。
「0100010」
「……」
ロードが阻止するべく近づく。ノイズの塊からロードに向かってひとつ、人間型の影が分離した。それがロードの行く手を阻むように立った。どこかロードに似たシルエットの影である。
そして、銀の鍵……ニンジャスレイヤーの手から鍵が離れた。空中で停止した。0と1のノイズが鍵にまとわりつき、そちらにも人体を形成した。
「幻め」
ロードが苛立たしげに呟いた。
「去れ」
「すぐに去るとも」
立ちはだかる影は思いがけず返事をした。影は今や、ロード同様、キツネオメーンを被ったニンジャの姿を取っていた。
「お前に会いたかった気持ちがある。俺のひとつのケジメだ」
ニンジャの幻影は言った。
「よく見える。お前の思考パルス。ニューロンのパルス。何しろ、俺はお前だ。俺はお前と同じだから」
幻影は呟く。
「俺はただ、確かめようとした。お前の望みの終着点をな」
彼は見据え、無感情な声で言った。
「くだらないな」
「……」
笑いめいた残り香を漂わせ、幻影は薄らいだ。 ニンジャスレイヤーは……目の前に立つ存在を認識した。銀色のノイズで構成されつつある人の姿を。思えば、そう昔の事でもない。この男がマルノウチ・スゴイタカイビルの地下で彼と銀のオベリスクをつなぎ、去ってから。
不意に彼は、あの日の事だけでなく、キョートを初めて訪れた過去、さらにはラオモトとのイクサ、さらにはあの……全ての始まりとなった悲劇に……全ての発端のあの日に……記憶をフラッシュバックさせた。
「まさかだが、忘れてないよな? 苦労したんだ本当に」
銀色の影が言った。
「俺だぜ」
その時、天守閣の壁を斬り裂いて六枚の桜色に光るフラフープ大のチャクラムスリケンが天守閣に飛び込んだ。
━━━
「ポータルを……広い場所で……お願い!」
キョート城ヨロシサン・トンネル。ダイブから目覚めたナンシーは顔面蒼白で、まるで冬の海から救い出されたタラバーカニ漁船員のように震えていた。だが言葉の響きは決断的であった。ディプロマットとキンギョ屋は目を見交わした。
「アンバサダーと繫ぐのか?しかし……」
「違う、出口は要らない。通路から引きずり出すの!」
「通路から?」
ディプロマットは眉根を寄せた。ナンシーは頷いた。
「説明している時間は無い……そのまま聞いて、実行して。ポータルはコトダマ空間を経由して現世の二地点を結ぶ。今回はコトダマ空間に扉を開いて!」
「わかった」
ディプロマットはポータルを開いた。ポータルを通過して飛び出した超自然の何かは天井を貫き、中庭を越え、空高く飛び上がった!
中庭のニンジャ達も頭上の空を旋回する巨大な影を見上げた。リュウグウノツカイ? 蛇? ワカラナイ!
「これは!」
ディプロマットは巨大な半径のポータルを維持すべく全身に力を込め、歯を食い縛った。ナンシーはその傍で会心の笑みを浮かべた。
「銀の鍵の門」
ザワザワと泡立ち分解し再生を繰り返す冒瀆的な龍めいた怪物の背に立つニンジャ有り! ピンク色の装束と銀の装甲はテレビノイズめいた不安定なさざ波に乱れ、フルメンポの覗き穴の奥は得体のしれぬ深淵だ。超自然の声を放ってアイサツする!
「やあやあ我こそは! 三千世界にその名を轟かせし……」
「……」
その傍ら、邪悪な怪物の背にしがみつく別の存在が何か呟いた。顔はよく見えない。ザ・ヴァーティゴは振り返って何か答え、それからアイサツを続けた。
「我は世界を渡る者! 誇り高き戦士! 万軍の敵! 近くに在りては目にも見よ! 遠くに在りては音に聴け! 我が名はザ・ヴァーティゴだ!」
「010111」
超自然ニンジャはナンシーを振り返り何かを問うと、ナンシーはホンマルを指差した。
「天守閣へ!」
「0100」
超自然ニンジャは頷き、中庭に飛び降りると一直線に走り出した。
「010」
超自然ニンジャは恐るべき速度の全力疾走で塀の穴へ飛び込み、くぐり抜け、さらに走った。 ああ、ああ、ああ、ああ、 疾駆する超自然ニンジャの身体は既に二割程が01のノイズに分解されていた。
だが肉体の拡散が進むほど、彼は質量から解き放たれ、そのスピードが益々速くなるのだった。 拡散分解するノイズの矢は、白砂を噴き上げながら地を這い、ホンマルの壁を這い、目指した。天守閣を。銀の鍵を!
え?チャクラムスリケンの数が多い?ネタばらしは次の回でやるよ!
Q.パラゴン=サンがあっけなさすぎませんか?
A.ニンジャスレイヤーとダークニンジャの二人がかりでアンブッシュされたら死にます。