キョート城中庭。
二度目の投擲を前にクチュリエールがシャドウウィーヴに向き合った。
「シャドウウィーヴ=サン。手伝ってくれる?」
「手伝うって……何をどうするんだよ……」
シャドウウィーヴはクチュリエールの発言に困惑した。スリケン投擲の何を手伝えば良いのだろうか?
「ほら、ハクチョウ・カラテをインストラクションする時に君が編み出した〝影を繋げてカラテをトレースするジツ〟……アレとシャドウドラゴン・ジツを組み合わせて私を増やすんだよ!それで一緒に投げるよ!」
「シャドウトレース・ジツか!それなら確かに出来る!……って、そこまでやるのか?」
「昔の人曰く、〝右の頬を打ち、そのまま左の頬を殴れ〟、〝肉切り包丁で骨も斬る〟って言うからね。やり過ぎるくらいが丁度いいんだよ」
「そ、そうなんですか?」
「そうだとも。両方共ミヤモト・マサシの詠んだコトワザよ。クチュリエール=サンがここまで博識だったのは意外であるが、良くわかっておる」
シャドウウィーヴが思わずパーガトリーの方を向くと、同意で返された。
シャドウウィーヴは気を取り直し、自らを影で包み込むと、クチュリエールの影に飛び込んだ。クチュリエールの身体を影が包み込み、シャドウドラゴンの姿に変わる。影から二人のシャドウドラゴンが現れてクチュリエールの横に並ぶ。パーガトリー派閥の中からニンジャが一人前に出た。
「ドーモ。ヴェラーです。私もジツで手伝わせて頂きたい」
「ドーモ。ヴェラー=サン。ありがとうございます」
ヴェラーのツワミ・ジツにより、三人のシャドウドラゴンのカラテが強化される。三人はニンジャソウル探知でロード・オブ・ザイバツに狙いを定めた。
「「「スゥーッ! ハァーッ!」」」
チャドー呼吸と共に両手に生成したフラフープ大のチャクラムスリケンを高速回転させ、桜色の光を纏わせる。その時、地下から地面をぶち抜いてザワザワと泡立ち分解し再生を繰り返す冒瀆的な龍めいた怪物が飛び出した。その身体には超自然のニンジャがしがみついている。
ピンク色の装束と銀の装甲はテレビノイズめいた不安定なさざ波に乱れ、フルメンポの覗き穴の奥は得体のしれぬ深淵だ。超自然の声を放ってアイサツする!
「やあやあ我こそは! 三千世界にその名を轟かし……」
「……」
その傍ら、邪悪な怪物の背にしがみつく別の存在が何か呟いた。顔はよく見えない。ザ・ヴァーティゴは振り返って何か答え、それからアイサツを続けた。
「我は世界を渡る者! 誇り高き戦士! 万軍の敵! 近くに在りては目にも見よ! 遠くに在りては音に聴け! 我が名はザ・ヴァーティゴだ!」
中庭に飛び降りると一直線に走り出す超自然ニンジャを無視して三人のシャドウドラゴンの上半身が極限まで捻じれ、クチュリエールの上半身は真後ろを向き、ニンジャ装束の下の筋肉が縄めいて隆起する。
01に分解されながら駆ける超自然ニンジャが天守閣に到着し、その身を完全に分解したタイミングでダークニンジャから狙撃命令が下った。
「「「ハイーッ!」」」
六枚のチャクラムスリケンが投擲される。目にも止まらぬ速さでカーブを描き、桜色の軌跡だけ残して天守閣の壁を貫いた。
━━━
「まさかだが、忘れてないよな? 苦労したんだ本当に……俺だぜ」
実体化した銀色装束のニンジャは、天守閣に集う者達をぐるりと見渡そうとして自分の目前に迫る六枚の桜色に光るフラフープ大のチャクラムスリケンを見て驚愕した。ニンジャスレイヤーも慌てた。彼はチャクラムスリケンの射線上に実体化してしまったのだ。
声を出す事すら出来ずにフェイスレス共々チャクラムスリケンの群れが直撃し、爆発四散した。
「シルバーキー=サン!」
ロードが勢い良く踏み込み、純白タタミが跳ね上がる。ロードに憑依したソガ・ニンジャの二つ名は「マスタータタミ」。タタミの扱いはお手の物だ。
「クルシュナイ」
全てのチャクラムスリケンの刃が純白タタミに食い込んだタイミングに合わせてタタミを打った。タタミを介して衝撃が伝わりチャクラムスリケンが砕け散る!純白タタミも深く斬り込まれていた為、バラバラに分解する!
チャクラムスリケンが薄い円盤状のスリケンである以上、刃で斬りつける縦の衝撃には込められたカラテもあって非常に強力で頑丈だが、横からの衝撃にはどうしても弱い!しかし、砕けて破片と化してなお、チャクラムスリケンは減速せず桜色の光を纏っている!
「グワーッ!」
無数のスリケン破片が全てロードの全身に深々と突き刺さった!幾重にも重なった予想外の事態への動揺がタタミ越しのカラテを中途半端な物にしてしまった為、破片のホーミングスリケン化を防げずに全てのスリケン破片を受ける事態を招いてしまったのだ!
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ、ベッピンの刃が鳴り響き、落下するダークニンジャの姿がブレる。 ロードがタタミを跳ね上げた隙に、ダークニンジャは回り込み、ロードの後ろを取っていたのだ!
全身に刺さるスリケン破片のダメージに気を取られてロードはダークニンジャに気付けない!
ズグン。ロードの身体が揺れた。その首の後ろからベッピンが貫通し、鎖骨を、肋骨を貫き、切っ先が飛び出した。
「グワーッ!?」
鮮血が天めがけて噴き上がった。
「キリステ……」
「グワーッ!」
「ゴーメン!」
ダークニンジャはロードの身体をうつ伏せに倒し、刃を捻り込んだ!
「アアバーッ!」
「よくやったクチュリエール!お前ならやると信じていたぞ!このまま仕留めるからもう投げなくていい!」
「アアア!」
ロードは抵抗する。だが傷はあまりに深い!ダークニンジャはロードを刺しながら、IRC通信でクチュリエールを褒めつつ、スリケン投擲の中止命令を出した!
「アバーッ! アバーッ! アバーッ!」
ロードは魂を啜り上げられる予感に震えた。そして全力で抵抗した。だが命が失せつつある! 魂を厚くくるむ命の灯が! 血とともに身体から流れ出そうとしている!
「イイイヤァーッ!」
ダークニンジャは刃を捻る! ロードは身悶えした。
━━━
『ドラゴン・ユカノよ。目を閉じろ』
その時、不意に不明瞭な声がユカノのニューロンに流れ込んだ。 ユカノは思わずそれに従った。
『鎖を引きちぎれ』
(((鎖を?)))
『出来る筈だ、ニンジャ六騎士。マスター・チャドー。ドラゴン・ニンジャ=サン!』
彼女は……そうした。両腕に力を込めた。出来るわけが無い……でも、その根拠は? どうしてそんな風に思った?
「イヤーッ!」
ユカノが目を見開き、ニンジャスレイヤーは彼女を凝視した。ニンジャスレイヤーの目は驚愕に見開いている。ユカノはシャチホコガーゴイルを破壊し、拘束から解き放たれていた。
更に彼女の豊満な裸体に突如、赤い龍の刺青が浮かび上がると、刺青は幻影めいて彼女の身体の周囲を螺旋状に舞う。一瞬後それは、彼女の身体を包む、威厳に満ちた赤と金のニンジャ装束となった。
その時、ロードに心臓を打たれたイグナイト……否、髪が炎色から黒に変わり、何やら雰囲気の違う少女ニンジャが目を覚ます。ユカノとニンジャスレイヤーの視線が集まった。
「アー……ドーモ。エーリアスです」
少女は気まずそうにアイサツした。
「なぁ……ニンジャスレイヤー=サン……もしかして、俺の助けって要らなかったのか?」
「そんな事はない。オヌシがいなければ、私はここまで来れなかった」
エーリアスはダークニンジャに刺されながら足掻くロードを見ながら遠い目でボヤいた。ニンジャスレイヤーは中の人格が誰なのかを察し、背中を擦って慰めた。
「待ちなさい」
「!」
ドゲザ姿勢のままこっそり逃げようとしている小柄で豊満なフェイスレスをユカノが見つけて呼び止める。フェイスレスの手にはインロウ・オブ・パワーが握られていた。
「ド、ドーモ。メイルシュトロムです」
メイルシュトロムは気まずそうにアイサツした。
━━━
罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰ルシュナイ……クルシュナイ、クル……罪罰罪罰ードはダークニンジャのヤミ・ウチから逃れ、タタミ上を這いずった。
罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰ロードはキョジツテンカンホーの網を全力展開し罪罰罪罰彼を動かすものはなんであろう? 体内は全身に深々と突き刺さったスリケン破片によりミキサーをかけられたかのように損壊し、這いずるたび、体中から血や肉が溢れて来る。
意志だ。邪悪な執念が彼の体を動かしている。罪罰罪罰罪罰罪罰罪の意志。そして身に宿すソガ・ニンジャの、自我無き精神力が、その体を動か罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罪罰あるいは彼の肉体そのものがキョジツテンカンされ、肉体が自らの死をも忘れているとでも罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰
「ヤンナルネ……」
罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰ードは琥珀の玉座に深々ともたれた。玉座は既に認証を行ったこのロード・オブ・ザイバツを主として受け入れる。玉座が輝きを放った。ロードの肉体もまた光り始め、輪郭がぼやける。
細かい0と1で構成された超自然の霧に罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪
「大儀でアバーッ!?」
「イヤーッ!」
「アバーッ!」
エーリアスのユメミル・ジツによってニューロンにダメージを受け、キョジツテンカンホーを妨害されたロードの胸にベッピンが突き刺さる!鍔まで埋め込まれ、玉座ごと貫通する!
「イヤーッ!」
「アバーッ!」
更にニンジャスレイヤーが赤黒の炎を纏わせたツヨイ・スリケンを投擲!ホーミングスリケンの技術でダークニンジャを迂回させ、ロードの側頭部に深々と突き刺さる!琥珀玉座によって生命維持されているのであろうか、まだ死なない!
滅び行くロードの肉体は琥珀玉座の転送システムによって01還元され、キンカク・テンプルに転送されようとしている。全身に食い込んだスリケン破片の桜色の光による物か、恐ろしい速度で01還元されている。
彼は01還元されかかる手でダークニンジャに触れた。ダークニンジャは目を見開く。ベッピンを握る手が金色の霧じみて霞む。そのまま、ロードごと彼の存在が消失した。
「俺の出番……あったじゃねぇか……」
「だ、大丈夫でヤンスか!?しっかりするでヤンス!」
血涙と鼻血を流しながら崩れ落ちるエーリアスをメイルシュトロムが抱えた。
**メイルシュトロム(今作版)**
クチュリエールが抜いたレッサーニンジャのニンジャソウルがキンカクからフェイスレスとして現れた後、パラゴンの落としたインロウ・オブ・パワーに触れて自我を得たニンジャ。
原作と違って小柄で豊満。生前の記憶は無いが、クチュリエールとしてニンジャソウルを抜くまでの記憶がある為、下っ端気質でニンジャスレイヤーやダークニンジャ、シテンノ、ソニックブーム等に頭が上がらない。
原作同様、肉体が不安定。
Q.クチュリエールが運命を掻き乱す云々はどうなったのですか?
A.ニンジャスレイヤーは運命論が強い作品なので、クチュリエールが頑張っても大筋は変えられず、死傷者が増減して生き残りの数が変わる程度の影響力しかなかったりします。デスドレインと同じくらいの影響力だと考えてます。
Q.01還元の進行が早すぎませんか?
A.サクラ・エンハンスメント・ジツの光はオヒガン由来の力なので、キンカク行きの01還元をブーストする効果がありました。
これのおかげで粉砕されたスリケンが破片になってもホーミングスリケンとして機能し続けたので痛し痒しですね。