周囲をクローンヤクザが埋め尽くすトレーニングフロアにて、クローンヤクザと小柄で平坦な胸を持つ少女ニンジャ、ヤモト・コキが睨みあっている。
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
ヤモトの飛び蹴りがクローンヤクザの胸元に当たって吹き飛ぶ!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
着地したヤモトが弾道飛びカラテパンチ!反対側のクローンヤクザが吹き飛ぶ!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
次から次に襲いかかるクローンヤクザをヤモトがカラテで叩きのめす!
トレーニング・ボットとして用意された50人のクローンヤクザが全滅した事でザゼン・トレーニング・プロトコルの最終プログラ厶を達成!
これでヤモト・コキはソウカイ・シンジケートの一員、アンダーカードとなった!
「ヤモト=サン!プログラム達成おめでとうでヤンス!」
「クチュリエール=サンのおかげだよ」
小柄で豊満な胸を持つ少女ニンジャ、クチュリエールはヤモトを拍手で祝った。
ここはトコロザワ・ピラーのトレーニンググラウンド・フロア。ヤモトはクチュリエールの献身的なサポートの元、クチュリエールが二週間かかったトレーニングプランを十日で達成したのだ。
無論、ヤモトの方が良いサポートを受けていたとはいえ、四日の短縮は非常に大きい。これも彼女の努力と潜在能力によるものだろう。
クチュリエールが谷間からマキモノを取り出し、開いて見せた。そこにはミンチョ体で「 ブロッサム」というカタカナが書かれている。
「これがヤモト=サンのニンジャネームでヤンス。予定より早く達成したから考えてくれたソニックブーム=サンが来れないのは残念でヤンスね」
「これがアタイのニンジャネーム……ブロッサム……」
ソニックブームは今日もニュービーニンジャのスカウト活動中だ。ここに来るのは明日になるだろう。
「本来ならここで初ミッションだけど、追加のインストラクションも受けて貰わないといけないでヤンス」
「追加のインストラクション?」
ブロッサムは訝しんだ。
「ハッカー講座の『ダイダロスゼミ』とアッシが教えるザムラ・カラテでヤンス」
自動フスマが開いて数人のクローンヤクザがフロアに入り、オフィスチェアセットとUNIX、マイクセットを二人分設置した。
UNIXが起動し、スピーカーから声が響く。
『ドーモ、クチュリエール=サン。ブロッサム=サン。ダイダロスです。』
「ドーモ、ダイダロス=サン、クチュリエールです」
「ドーモ、ダイダロス=サン、ブロッサムです」
3人はIRC越しにアイサツを交わした。
『これ程早くザゼン・トレーニング・プログラムを達成するとは……素晴らしい、生体LANを繋いでください。そして、電脳IRC空間で私とネンゴロしましょう』
未成年にしてはいけない発言に、その場の空気が凍りついた。
「実際、ダイジョブなの?この人」
「腕は確かだけど、いつもこんな感じでヤンス」
「えぇ……」
ブロッサムは訝しんだ。
━━━
トレーニングフロアに似つかわしくないタイプ音が響く。
ダイダロスとクチュリエールのインストラクションにより、ニュービーの一本指タイプだったブロッサムのタイプは加速して、オフィスの一般タイプスピードに到達した。
クチュリエールのタイプ速度は長くダイダロスゼミを受けていただけあってテンサイ級に達している。
『そんな、これ程までに可愛らしいのに生体LANが無いなんて……』
「ダイダロス=サンが不安になる事をいつも言ってるから生体LANを付けたく無くなるでヤンス。
そもそも、ニューロンへのダメージによる廃人化リスクが怖すぎて手を出せないでヤンス。」
「アタイ達、そんな恐ろしい物を勧められてたの!?」
ブロッサムの発言にダイダロスが慌てて返した。
『ご安心ください。クチュリエールが以前言ってたニューロンダメージを肩代わりしてくれるアイテムことミガワリ・ウォールですが、試作品が完成しました。
このままバージョンを進めれば貴方達も進んで生体LAN端子インプラントを受けたくなるはずです』
「ミガワリ・ウォール?」
「今の生体LANにはサイバー攻撃を受けると使用者のニューロンが物理的に焼けるリスクがあるでヤンス。
だから、『代わりに焼けてくれる外付けニューロンがあれば生体LANへのハードルは大きく下がると思う』って半ば冗談で提案したら、本当に作って来たでヤンス」
二人は姦しく会話していてもタイプ速度は揺るがない。そのまま時間一杯、会話が続いた。
━━━
ハッカー講座の次はカラテ講座だ。UNIXに搭載されたカメラ越しに見つめるダイダロスの前でクチュリエールのカラテ教室が始まった。
「まず、アッシが最終目標の奥義を見せるでヤンス。
目標が見えてると頑張りやすいでヤンス」
『インターラプター=サンのヒサツ・ワザですか?私も気になります』
「だから特大オリガミを生成するのでブロッサム=サンはアッシにそれでオリガミミサイルを撃つでヤンス」
「エエッ!?」
ブロッサムは驚愕した。
『聞いた事があります。インターラプター=サンはガトリングガンのワンマガジン斉射に耐えるニンジャ耐久力の持ち主だと……。
まさか、噂の真相はカラテでムテキ・アティチュードをやっていたという事ですか!?』
「その通りでヤンス。ブロッサム=サン、安心して撃つと良いでヤンス」
「わ、わかったよ、クチュリエール=サン。ところでムテキ・アティチュードって何なの?バリア?」
「似たような物だけど違うでヤンス。守れるのは自分だけでヤンス」
驚き、戸惑いながらもブロッサムはクチュリエールが生成した巨大オリガミにジツを行使する。
超自然的な桜色の光を纏ったオリガミが一つの巨大な具体的形状を作り上げた!
フェニックスの姿を!
「イヤーッ!」
「フンハーッ!」
クチュリエールは奇妙な中腰の防御姿勢で受け止める!フェニックスが着弾して爆発!小柄なシルエットが爆炎に飲み込まれた!
煙の中からクチュリエールが現れる。その身体に傷は一つも無かった。
「こんな感じでヤンス。同じ事を出来るようになって貰うから頑張るでヤンス」
「……アッハイ」
『オォ……』
無傷のクチュリエールを見てブロッサムは驚きのあまり呆然とし、ダイダロスは感嘆のあまり言葉が出なかった。