真夜中のネオサイタマ、ノビドメ・シェード・ディストリクトを5つの影が走っている。
影達は人間には不可能な速度で屋根の上を音も無く駆け、鉄橋に向かって進んでいる。
「ハイーッ!」
「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」
「「「「サヨナラ!」」」」
影達は突如飛来したフラフープ大のチャクラムスリケンの群れに襲われ、四つの影がバラバラに斬り刻まれて爆発四散した。
影達はニンジャだったのだ。
「ドーモ、ザイバツニンジャ=サン。はじめまして。クチュリエールです」
「ドーモ、ブロッサムです」
「ド、ドーモ、クチュリエール=サン。ブロッサム=サン。コーナーラットです」
一人だけ残ったザイバツニンジャ、コーナーラットは怯え竦んだ。
ザイバツ内部で指名手配されてるソウカイ・ニンジャの一人、クチュリエールと出会ってしまったからだ。
「ブロッサム=サン。アブナくなったらサポートするから頑張るでヤンス!」
「まかせて!クチュリエール=サン!」
対するソウカイ・ニンジャ側はコーナーラットを新人教育の実験台としか見ていない。
クチュリエールが見守る中、ブロッサムはコーナーラットに向けてオリガミミサイルを飛ばしつつ駆け寄った。
「舐めやがって!お前だけでも道連れにしてやる!」
「イヤーッ!」
コーナーラットはオリガミミサイルをすり抜けつつスリケンで撃ち落とし、ブロッサムのワン・インチ距離まで接近!
この距離ならスリケン援護はフレンドリーファイアの可能性があり実際危険!そしてニュービーの経験ではこの距離のカラテは難しい!タイガーマウスに飛び込むが如き英断だ!
「ナムサン!」
「フンハーッ!」
コーナーラットは胸部に仕込んだクレイモアを起動しつつ右手下腕部の仕込みカタナを展開してチョップ攻撃!カラテが物を言う至近距離ならキンボシ・オオキイも狙える仕込み武装のコンビネーション攻撃だ!
対するブロッサムは中腰の奇妙な防御姿勢で受けて立つ!
発射された無数のベアリング弾と右手の仕込みカタナ付きチョップがブロッサムの全身を撃ち抜き、真っ二つに……ならない!?
おお、見よ!ベアリング弾とカタナ付きチョップは何か超自然の力によって捉えられている!
ブロッサムの上半身が捻じる、捻じる、捻じる!
上半身のみ真後ろを向いた姿勢から右腕が高く掲げられ、桜色に発光する!
「ハイーッ!」
捻りが解放され、急加速した右拳がコーナーラットの胸部に叩き込まれて上半身が四散する!
「サヨナラ!」
四散した上半身が花火めいて爆発した。
ブロッサムは荒く息を吐きながら、クチュリエールから受けたインストラクションを改めて思い出した。
━━━
「ブロッサム=サン、行くでヤンス!」
クチュリエールが後ろを向く。否、上半身を極限まで捻ったのだ。
そのままフラフープ大のチャクラムスリケンが両腕に5本ずつ生成される。
タタミ・スリケンの姿勢に入ったクチュリエールを前にブロッサムのニューロンが稼動し、脳裏にソーマト・リコールめいてクチュリエール=サンが撮影したニンジャスレイヤー戦の様子が映し出される。
ソニックブーム=サンのソニック対空ポムポムパンチで更に打ち上げられたニンジャスレイヤーに、クチュリエール=サンの放った十枚のフラフープ大チャクラムスリケンがビル壁に反射してあらゆる角度からニンジャスレイヤーに斬り込む様子がスローモーションで映し出される。
チャクラムスリケンの刃はしっかりとニンジャスレイヤーの肉を斬り裂いたが、重油めいた血と異様なニンジャ耐久力により回転速度を落として停止。
血が禍々しく燃え上がり、刺さったチャクラムスリケンを崩壊させながら傷が繋がった。
普通ならば……否、普通じゃなくても死ぬ攻撃だがニンジャスレイヤーは異様なジツで防ぎきったのだ。
ブロッサムがそのまま受け止めたのでは1人分のツキジが出来るだけだろう。
(アタイなら余裕で防げるってクチュリエール=サンが言ってくれた!アタイなら出来る!)
「ハイーッ!」
「フンハーッ!」
クチュリエールの投げたチャクラムスリケンをブロッサムは中腰の奇妙な防御姿勢……クチュリエール直伝の奥義『カラダチ』で受け止める。
高速回転する十枚のチャクラムスリケンはブロッサムに当たる直前で吸着のカラテ振動により停止した。
その様子を見たクチュリエールは駆け寄り、チャクラムスリケンを分解するとブロッサムを抱きしめた。
「アハハ、やったねブロッサム=サン!出来るとわかってたでヤンス!」
「クチュリエール=サンのインストラクションのおかげだよ!」
クチュリエールの豊満な胸がブロッサムの胸に当たり、柔らかく歪む。
二人は喜びのあまりその場で飛び跳ね、クチュリエールの豊満な胸も慣性に従い、二人の間で上下に弾んだ。
二人はひとしきり喜び合うと手を繋ぎ、奥義習得の打ち上げをする為、トコロザワ・ピラーのトレーニンググラウンド・フロアを去って行った。
『アーイイ……遥かに良い……オォォォォ……フウ……』
スピーカーから漏れるダイダロスの声は二人の耳には届かなかった。
━━━
「困りましたね、テストができないとクチュリエール=サンやブロッサム=サンと三人でLAN直結する目処が立ちません……」
無数のUNIXの間に所狭しとコードが張り巡らされたソウカイ・シンジケートセキュリティ部門の暫定電算室にて、ダイダロスは生体LANを繋がれたクローンヤクザを見て頭を抱えていた。
クローンヤクザは電気椅子めいた椅子に四肢を縛り付けられ拘束されている。
「参りました、ミガワリ・ウォールを試す為にも私のニューロンを焼く程のヤバイ級ハッカーはどこかに転がっていないでしょうか?」
睡眠不足でオーバーワーク気味なダイダロスの思考が「その辺のサイバーゴスを拉致し、ニューロンを焼いてテストすれば良い」という事に気付いたのは数時間後の事であった。