親愛なる隣人のさらに隣人 作:九曜の翁
やぁ皆、マックス・ジョンソンだ。
いきなりで悪いが、皆は会うのが物凄く気まずい相手にどうしても会わなくてはいけなくなった時どんな気分になる?
僕かい?正直言って最悪の気分だ。
主に罪悪感でね。
「マックス、居る?」
「ピーターか?今開けるからちょっと待っててくれ」
メリアの言う通りマックスは部屋にいた。
でも何かがおかしい…何か大事な事を忘れているような?
「おや?マイルズがいないみたいだけど今日は1人で帰ってきたのかいピーター」
「あれ?僕は確かマイルズとネッド、それから…それから誰と一緒に帰ってたんだっけ?」
「大丈夫かいピーター?疲れているなら早く休んだ方が良いよ」
「うん、そうするよマックス」
この時の僕は思いもしなかった。
僕と会話をしたその後すぐにマックスは数日間行方不明になった。
そして、数日後に帰って来た時。
マックスは、酷く疲れ果てた寂しそうな顔をしていた。
取り返しのない喪失と苦痛、戻っては来ないかつての日々。
それはいつだって突然に、理不尽で残酷に訪れる。
だから人は嘆くのだ。
なんでもっとあの日々を、あの家族と過ごす為の貴重な時間を大切にして来なかったのかと。
だから、せめて後悔だけはしない選択をしたいと人は願う。
例えそれが決して叶わない願いなのだとしても。
「居るんだろうメリア」
「Hey兄さん、暫く見ない間に随分とみすぼらしくなったんじゃない?まぁ前よりは見れる顔になったかも。
でもやっぱり駄目、相変わらず目の奥にある甘ったるさが全然消えていないもの」
「随分な挨拶だねメリア、久しぶりの兄妹の会話なんだからもう少し楽しいものにしたかったんだけど」
メリア、お前は相変わらず変わっていないんだね。
僕に向けられる視線は、まるで罪人に向けられるそれだ。
やっぱり、お前にとって僕は大嫌いな犯罪者と同じかそれ以上に憎い誰かのままか。
「メリア…僕が嫌いなのはわかるし殺したいほど憎んでいるのもわかってる。
それでもね…それに関係ない他人を巻き込むのは流石に許容出来ないんだ。
町で起きた2人組のごろつきが互いに殺し合った事件。やり口がちっとも変わっていないからすぐにわかったよ。
僕が家を去ってからこの数カ月の間。似たような事件が他の町でも起こっていた。
やったのは、お前だね?」
「兄さんのやり方は甘過ぎる…あんなやり方じゃ罪人たちはどうせまた同じ事を繰り返すに決まってるじゃない」
あぁやっぱり何も変わっていない。
「メリア、オールド・メアの力は誰かを殺す為にあるんじゃない。お前はわかっていた筈だろう?家族の中で一番父さんの背中に憧れていたのはお前じゃないか」
「果たしてそうかしら?確かに父さんは誰一人として罪人たちを殺した事がなかった。
でも、昔のオールド・メアたちはちゃんと罪人たちに裁きを下していた事も兄さんも知っているでしょう?本当は夜に紛れて罪人たちを狩るのがオールド・メアの役目だって事も全部知ってるのに、知ってて兄さんは罪人たちを見逃してる。
本当に甘くてつまらない人。そんなにもその力が嫌いならさっさと手放しちゃえば良いのに、兄さんだって本心ではそれを望んているでしょう?」
確かにこの力を手放したいと思った事はある。
こんなものさえなければ、メリアとずっと仲良くいられたのかもしれないと思った事など何度あっただろう。
それでもこの力を父さんから受け継いで1つだけ良かった事もある。
「この力が僕の体に宿ってから初めてわかったよ…この力を継いだのが僕で良かった。
だって、お前にこんな苦痛と苦しみを味あわせずに済んだんだから」
「何それ、ふざけてるつもり?」
「お前はわからなくて良い…お前は知らなくて良いさ。こんな痛みは知らない方が絶対に幸せなんだから」
「本当に理解出来ないわ…兄さんほどその力を使いこなしているなら幾らでも罪人を裁けるのにどうしてそうしないの?」
それは純粋な疑問、理解出来ないものに対する心の底からの問い。
だからこそ僕の答えは決まってた。
それをやってしまったら、僕はもう二度と今の自分には戻れないと知っているからだ。
「メリア、お前はオールド・メアじゃなくてお前の中にある理想のオールド・メアに憧れてしまったんだね。
お前がいつその魅力に取り憑かれたのかはわからないけど。僕の中に宿るこの力は決してお前の思っているようなものじゃない。
これは、呪われた力だ」
「そう…やっぱり私には兄さんがわからないわ。昔はあんなにも父さんと兄さんの背中が大きく頼もしく見えたのに、今ではこんなにも小さく見える。
ねぇ兄さん、私は貴方を殺すわ。
どうせ分かり合えないのならそうするしかないでしょう?」
ずっと前からお前がその答えに行き着く事はわかっていた。
わかっていたんだ。
だからこそ僕は、二度とお前に会う事がないように家を離れたのに結局はこうなるのか。
『悲しいねメリア、僕は今でもずっとお前を妹だと思っているのにお前の目に写る僕は、もうただの裁くべき罪人でしかないんだね。
良いよ、殺しに来れば良い、でもここは駄目だ。お前が僕を殺しに来るというのなら誰にも迷惑がかからない場所でなければならない。
サン・ザラゾスで会おう…待っているよメリア』
丁度夜だ。
誰にも迷惑をかけずに消えるには一番良い時間だ。
…大丈夫、僕が居なくなったとしても3人ならきっと大丈夫さ。
「相変わらず私の前から消えるのだけは早い人。良いわ、兄さんの望み通りにしてあげる。
でも残念だわ、同じ歳くらいの子と友達になるのも中々楽しかったのだけれど優先事項は守らないとね。
待っててね兄さん。私が必ず貴方を殺してあげるわ。
そして証明して見せるの。やっぱり私の方が正しかったんだって、そうする事で私たちは初めて分かり合えるの!そうでしょう兄さん?」
メリアはこの上ない満面の笑みを浮かべていた。
【登場人物紹介】
『ピーター・パーカー』
・実は初手思いっきりメリアにお薬ぶち込まれてマックスの元へ案内させられた(スパイダーマンに目覚めていたらスパイダーセンスで避けられた)
・やべぇ女に引っかかりそうだったが、そいつのクソデカ矢印が兄貴の方に向いていたのでギリ助かった。
『メリア・ジョンソン/ターモイル』
・前話で既にやべぇやべぇと大反響を頂いたのて気合入れて書いた。
なんかもう和解とか全然出来なさそうで理解不能なタイプのやべぇやつを目指して書いたが果たしてうまくやれているのだろうか?
・ちなみになんだかんだ普通に兄の事は好き、好きだからこそ理解出来ないので殺す。
・最初期の構想だと反抗期の妹ちゃんって感じの子だったのにどうしてこうなってしまったんでしょう。
『マックス・ジョンソン/オールド・メア』
・もう完全にガンギマリ状態でメリアを迎え撃つ覚悟を決めているがやっぱり妹なので愛する事をやめられない。
・なんか死亡フラグとは別ベクトルでヤバいフラグが立っているような気がするが多分気のせいだろう。
・ちなみに生家のあるサン・ザラゾスはサン・ヴェンガンザ(出典:ゴーストライダー)の近くなのでわりとヤバい場所である。
・なおピーターがスパイダーマンに目覚めるのが遅いものだから一番身近にいるマックスにお辛い要素が集約されている。
主人公マックス・ジョンソンの変身後の姿『オールド・メア』のイメージイラストって必要でしょうか?
-
必要
-
必要ない