「学校の借金、このアビドスが陥っている現状、サトミさんの推察と私たちが先生方とともに見つけ出してきたいくつかの糸口...全てが少しずつ繋がり始めている気がします!
カイザーコーポレーションは、アビドスの生徒会が消えてしまってから土地を購入する方法がなくなり、まだ手に入れていない最後の土地であるこの学校を奪うために、ヘルメット団を雇用していた。カイザーコーポレーションの目的はお金ではなく土地だった、というサトミさんの考察は間違いなかったんだと思います!」
「ですね、バッチリかと☆
...でも、そうなると次の疑問が出てきますが...どうして土地なんでしょう?アビドス自治区は、もうほとんどが荒れ地と砂漠、砂まみれの廃墟になっているのに...」
「たしかに...こんな土地を奪ったところで、なにか大きな利益があるとは思えません。」
確かにその通りだ。前々からずっとカイザーコーポレーションの目的を考えていたんだけど、これだけはどうしても分からなかった。土地自体は活用方法はいくつも思い浮かぶ。しかしそれはは全て砂漠化というこの土地のデメリットが打ち消してしまうのだ。
売るにしろ使うにしろ、砂漠化してしまえばそれはどうしても需要を失ってしまう。
それに、ここまで緻密に練られた計画で違法スレスレの行為を続けた結果手に入ったものが土地だなんてのはあまりにも違和感がある。カイザーコーポレーション程の大企業ともなれば、土地を購入するための財産なんて直ぐに出せるだろうし、それを活用して利益をあげることもできるだろう。
ということはカイザーコーポレーションがアビドスの土地を求める理由はアビドス特有の何かしらが欲しいからだと考えるべきだろう。
アビドス特有...砂...気候...思い浮かぶものはいずれもここまでやって求めるほどのものには思えない。まだ私の知らない何かしらがあるのだろうか...
くそぅ、全然分からないぞ。
「"そうだ、砂漠といえば、ちょっと耳に入れたいことが..."」
「...先生?」
「"昨日ヒナ...風紀委員会の委員長の子がね、カイザーコーポレーションがアビドスの砂漠で何かを企んでるって言っていたんだ。"」
そういえばそんなことも言っていたな。アビドスの自治権のことに頭がいっぱいで忘れていた。
「アビドスの砂漠で...」
「カイザーコーポレーションが...」
「何かを企んでる?」
「そ、そんなことをどうしてゲヘナの風紀委員長が...それにどうして先生に?」
「あぁもう!そんな難しいことを考えるより、先にやることがあるでしょ!アビドスの砂漠はうちの自治区なんだから!実際に言ってみればいいじゃん!何が何だか分からないけど、この目で直接確かめた方が早いって!」
セリカがそう叫び、みんなが感心したようにセリカの方を見ていた。
「......ん、そうだね。」
「......いや〜、セリカちゃんいいこと言うねぇ。こんなにたくましく育ってママは嬉しいよ。泣いちゃいそう、ティッシュちょうだい。」
「......な、何よこの雰囲気!?私がまともなこと言ったらおかしいわけ!?」
「あ、あはは...ですが、セリカちゃんの言う通りです。」
「"そうだね、それじゃあ準備できたら行こうか。アビドス砂漠へ。"」
「あ、ホシノ。少しいいですか?」
「んー、どうしたの、サトミちゃん?」
「先程の会議で少し気になることがありまして。
ホシノはアビドスの生徒会所属なんですよね?それなのにホシノ自身にカイザーコーポレーションから土地の取引交渉は来なかったんですか?」
アビドスの生徒会がカイザーコーポレーションとの土地の取引を行ったのは2年前が最後だった。普通に考えるとホシノもカイザーコーポレーションから取引を持ち掛けられていると思ったのだが、だとすればホシノがこれまでカイザーコーポレーションの目的をお金だと思い込んでいたのはおかしい。警戒心を持ち、頭も回るホシノならそれくらいは勘づくだろうに、分かっていなかったとすれば、それはつまりそもそもホシノはカイザーコーポレーションから取引を持ちかけられていないということなのだろう。
「んー...来なかったねぇ。だって私、生徒会長じゃないから。」
「えっ、生徒会長じゃないんですか?」
「うん、前の生徒会長は私を会長に任命する前に......居なくなっちゃってね。私はそのまま副会長の座に居続けてるんだー。」
前任の生徒会長が居なくなったと言った時、ホシノはとても苦しそうな表情を一瞬だけ見せた。こんな状況で人が急に居なくなるだなんて、色々なことが想像できてしまう。きっとそれはホシノも考えたことなんだろう。
「...すみません。」
「いやいや、サトミちゃんが謝ることじゃないよー。」
「ですがそうなると今の対策委員会には会長は不在なんですか?」
「んー?...あぁ、対策委員会と生徒会は別物だよ?対策委員会はあくまで非公認の部活だからね。」
「えっ...!?」
ここに来てまさかの事実だった。対策委員会はアビドスの生徒会ではない。つまりホシノが卒業した時、アビドス高校は生徒会が不在の学校となってしまう。
このキヴォトスにおいて生徒会のいない学校なんてものは、外の世界で言う無政府国家と同じものだ。
政府の...つまり生徒会のない学校は行政能力が不足している。そんな学校がもし、カイザーコーポレーションに襲われたとしても、他の行政機関は動くことができない。
なぜならそもそも生徒会がない学校は学校とはみなされないから。無い学校には支援を送ることも、擁護することもできない。
つまりカイザーコーポレーションはあと1年、ホシノが卒業するまで待てばアビドスを力技で手に入れられるというわけだ。それはまずい、本当にまずい。
「...サトミちゃん?...おーい!」
「...あぁ、すみません。
いきなりで申し訳ありませんが、もう1度全員を集めて貰えますか?」
「それで、一体どうしたの?」
「いきなりですみません。突然ですが、皆さんに書いていただかなくてはならない書類がありました。」
再度全員を集めた私は会議室で急遽用意した書類を机に叩きつけた。
「これは...部活動申請届?」
「はい、このアビドス対策委員会は、現在アビドスの生徒会からも、連邦生徒会からも承認を受けていない非公認の委員会です。」
「そうだね。対策委員会ができた時には生徒会長が既にいなかったから。...でも急にどうして?」
「キヴォトスにおいて生徒会、あるいは公的な部活動・委員会の存在しない学校は行政能力が不足しているとみなされ、学校として認められません。
そんな学校がもし、カイザーコーポレーションに乗っ取られたとして、果たして連邦生徒会や他の行政機関がどうやって動けるでしょうか?」
「...!?」
私の言葉を受けてほとんど全員が私の言いたいことに気付いたようで、驚愕の表情を見せていた。...セリカだけはピンときてないみたいだけど。
「つまり、アビドス高校の生徒会役員であるホシノがこの学校を卒業、あるいは何らかの都合で退学となった場合、このアビドス高校は公的に学校だと認められなくなるんです。そうなった時、アビドス高校がカイザーコーポレーションの武力組織に襲われたとしても連邦生徒会は動けないんですよ。最悪の場合、シャーレすらも動けないかもしれないんです。
しかも彼らの目的が土地そのものである以上、そういった強行手段を取ってくるのは想像に難くありません。」
「えっ、な、なにそれ!?ヤバいじゃないの!?」
ようやく事の重大さに気付いたセリカが慌て出す。
「そこでこの書類です。私から連邦生徒会を通して、アビドス対策委員会を正式なアビドス高校の委員会として認めます。ですので皆さん、どうかこの書類にサインをお願いします。」
セリカが慌てて書類にサインを書き出し、他のみんなもそれに続く。そんな中、ホシノだけは顔を青くして目を白黒させていた。
「...ホシノ?」
「...いやぁ、危なかったねぇ。おじさんなんにも気付かずに卒業しちゃうところだったよー。」
そう言ってホシノも他のみんなに続いて書類にサインをした。もしかしたらホシノは最後の生徒会として今まで気付けなかったことに責任を感じているのかもしれない。
「...はい、確認しました。
先生、これからのアビドス砂漠探索ですが、私は不在にします。この書類を大急ぎで届けなければ行けませんし...どうせ私は、戦闘じゃ役に立たないですしね。」
「"いや、そんなことは.........うん、書類をよろしくね。"」
:(◜ཫ◝):グフッ
無理に庇おうとした結果の(こいつほんとに役に立ってないもんな)っていう間が心に突き刺さる...
先生が生徒相手にそんなこと思うわけないだろ!!!*1
そんなこんなで私は一人、サンクトゥムタワーへとやってきていた。
他のみんなはもう砂漠を探索しているところかな?もはや例のごとくストーリーで何が起こるのかは覚えてはないんだけど、ヒナからの情報によればそこにいるのはカイザーコーポレーションだ。何かを企んでるって言ってたけど...十中八九その何かとは、カイザーコーポレーションがアビドスの土地を求める理由なんだと思う。
そう考えると私も向かうべきだったか?
人伝での情報だと大切な内容を逃してしまうかもしれないし、連邦生徒会所属の私とアビドス対策委員会のみんなとでは、認識に多少なりとも差があるってことはついさっき思い知ったばかりだ。とはいえこの書類を後回しにするのも危険だ。
透き通るような()青春ゲームのストーリーでそんなことは無いだろうって言うメタ読みで大丈夫だとは思っているが、ホシノが誘拐なり事故なりで姿を消してしまわないとも言いきれないのだ。そしてカイザーコーポレーションが
「サトミせんぱ〜い!」
そんな事を考えながらサンクトゥムタワーの中を進んでいると後ろから声をかけられた。
「モモカですか。この間はありがとうございました。」
「あぁ、別に簡単な仕事でやってる感を出せたからいいんだよ。」
良くねぇよ。
「そんなことよりサトミ先輩!新しい交通室長厳しいんだけど!おちおちお菓子も食べられない!」
仕事中に食べるんじゃねぇよ。
「それについては前任の私があなたを甘やかしすぎただけですね。仕事はちゃんとしてください。新任の子に迷惑はかけないように。」
「がーん...そ、そんな...」
私が最後の砦だったらしく、モモカはその場に崩れ落ちた。私も普通にお菓子食べてんのは注意してたんだけどな...もっと強く言ってあげないとダメだったか。
前世でハラスメント云々、コンプライアンス云々って言われまくったせいか、知らず知らずのうちに自分が思っている以上に甘やかしてしまったみたいだ。
まあモモカ自信が甘え上手な部分もあるけど。
でも新任の子は私と違って厳しくやってくれてるみたいだし、このままモモカがちゃんと仕事をしてくれるようになってくれるといいんだけど...
その後、モモカを回収に来た交通室の子に任せて私はリン行政官のもとを尋ねていた。
「失礼します。」
「おや、サトミでしたか。どうしましたか?」
「私と先生が現在出張中のアビドス高校において、連邦生徒会非公認の部活を承認してもらいたいんです。」
「アビドス高校...砂漠地帯の学校ですか。それにしても直接とは、一体どうしたんです?」
私はリン行政官にアビドスの事情とカイザーコーポレーションの悪事を報告した。
もちろんカイザーコーポレーションの方は「あくまで推測ですが」と付け足しておく。現状カイザーコーポレーションは法に触れた証拠は残してないからね。
しかしまあカイザーコーポレーションがグレーゾーンすれすれ、あるいは証拠が無いだけで法に触れるようなビジネスに手を出してるのはほとんどみんなが知っている。別に目新しい情報ってわけでもないんだよね。
「そういう事情でしたか。分かりました。明日までには通しておきます。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
「...ところでサトミ、現在出張中ですがシャーレの業務の進捗については...」
「ははは...出張が終わったら私と先生で仲良くデスマーチですよ...」
仲良くね!
...はぁ。こんなこと考えないとやってられないよ...
あれからサンクトゥムタワーを後にした私はアビドス高校へと戻ってきていた。
私が会議室に入ると、そこではアヤネが項垂れていた。
見るからに元気がない。
「あの、どうしました?砂漠の方は...」
「えっとですね。ホシノ先輩たちは今戻ってきているので、先に説明しますね。
私たちの方は砂漠を探索していたところ、カイザーPMCの軍事施設を発見しました。そこで戦闘行為を行ったのですが、そのせいで学校の信用が落ちたとかで...借金の利息が増えてしまい、月の支払額が9000万円にまで上昇してしまったんです...」
「...は???」
...それは気が滅入るわぁ...聞いたところ理由としては正当に聞こえはするしね。不当だと責められない以上返済する以外の選択肢がないのだ。
「それにしてもPMC...民間軍事会社ですか...軍事施設を砂漠に...?一体なぜ...」
「それについては、カイザーコーポレーションの理事を名乗るロボットがちらりと、宝探しを妨害された時のためだって言っていました。デタラメだと思いますけど...石油など、お金になりそうな地下資源は何一つ残っていない...はるか昔にそういう調査結果が出ているんです。」
宝探し?なんだそれ?
一見荒唐無稽だし、そもそもが嘘である可能性もあるが、これはかなり重要な情報だと思う。
その情報が本当だと仮定して、カイザーコーポレーションの目的は宝探し。それも広大な砂漠で行うってことは、おそらく捜し物は砂漠のどこかに埋まっている何か。加えてそれを妨害...つまりその宝物の発見で不利益を被る、あるいはカイザーとは別にその宝物を求める存在がいるということだ。
彼らの目的がお金になりそうな資源でないことは、もう既に分かっている。つまり過去に見つけたにしろ見つけていないにしろ、アビドス高校が見逃している何か。カイザーコーポレーションが求めているのはそれだ。
宝探しとやらが嘘だろうと本当だろうと、物資の輸送すら大変な砂漠に軍事施設を築いてまでことを進めている以上、奴らの企みには邪魔をする何者かの存在があるのは確定事項。その影でも見えてくれればいいのだが...現状アビドス砂漠には対策委員会を除けばチンピラ不良集団が点在している程度。軍事施設ほどの対抗手段を用意しなければいけない敵というのはそうそう思いつかなかった。
「...考え込んでも答えは出ませんね。他になにか手がかりになりそうなものはありましたか?」
「うーん、特に気になったことは...すみません、正直増えた借金のことで手一杯で、あんまり周りを見れてませんでした。」
「...いえ、仕方の無いことだと思います。」
その後砂漠に行っていたみんなが戻ってくる。
砂漠に建てられた軍事施設、大幅に増えた借金の利息。積み上がり続ける問題に押し潰されそうになったみんなは、あわや喧嘩にまで発展しかけたがホシノが上手いこと止めに入ってくれたおかげで何とか落ち着いた。そのままホシノの言葉で今日のところは頭を冷やして明日また話をするということになった。
みんな色々なことが積み重なって気が立っているし、そうした方がいいだろうと私も賛成する。
...そして私は、翌日にその選択を後悔することになるのだった。
タイトルとは違ってサトミは行かないんですけどね。
連邦生徒会所属のサトミがいるとPMCが横暴なことやるかな...って言うわけでして。
やるかな...やるかも。