アビドス対策委員会のみんなへ
まずは、こうやって手紙でお別れの挨拶をすることになったこと、許して欲しい。おじさんにはこういう、古いやり方が性に合っててさ。
みんなには、ずっと話してなかったことがあって。実は私、昔からずっとスカウトを受けてたんだ。カイザーPMCの傭兵として働く、その代わりにアビドスが背負っている借金の大半を肩代わりする...そういう話でね。
なかなかいい条件だと思わない?おじさんこう見えて、実は結構能力を買われててさ〜。
借金のことは、私がどうにかする。すぐに全部を解決はできないけど、まずはこれでそれなりに負担が減ると思う。ブラックマーケットでは急に生意気なことを言っちゃったけど、あの言葉を私が守れなくてごめんね。
これで対策委員会のみんなも、少し楽になるはず。アビドス高校からも、キヴォトスからも離れることになったけど、私の事は気にしないで。勝手なことをしてごめんね。
でもこれは全部、私が責任を取るべきこと。
私は、アビドスの最後の生徒会だから。だからここでお別れ。じゃあね。
先生へ
実は私、大人が嫌いだった。あんまり信じてなかった。
最初にサトミちゃんと砂漠で迷子になったって聞いた時には「なんかダメそうな人だな」って思ってたくらいだし?
でも、先生みたいな大人と最後に出会えて、私は...いや、照れくさい言葉はもういいよね。
先生、最後にわがままを言って悪いんだけど、お願い。シロコちゃんはいい子だけど、横で誰かが支えてないと、どうなっちゃうか分からない子で。悪い道に逸れちゃったりしないように、支えてあげて欲しい。先生ならきっと大丈夫だと思うから。
サトミちゃんへ
最初は先生と同じように、サトミちゃんを警戒してた。
ずっと助けを求めてるのに、1度も手を差し伸べてくれたことのない連邦生徒会が、今更何が出来るんだって思ってた。サトミちゃんは全然戦ってくれなかったしね。
それでもサトミちゃんはアビドスのために色々動いてくれたし、色々考えてくれてた。挙句、戦えないくせに、銃弾の的にされて、気絶してまでセリカちゃんが誘拐されそうなのを止めてくれてさ。
あの時に思ったんだ。「この子なら信用できる」って。
だから、図々しいお願いだと思うんだけど、お願い。
アビドスの助けになってあげて。借金の問題が解決しても、対策委員会のみんなは苦労すると思う。砂漠化とかの問題もあるわけだしね。連邦生徒会のサトミちゃんにしか頼めないことなんだ。
だから、お願い。
シロコちゃん 、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん。
お願い、私たちの学校を守って欲しい。
砂だらけのこんな場所だけど...私に残された、唯一意味のある場所だから。
それから、もしこの先どこかで万が一、敵として相対することになったら...その時は、私のヘイローを「壊して」。
よろしくね。
これが、翌朝登校してきた私たちに残された手紙だった。
「何なの!?あれだけ偉そうに話しておいて!切羽詰まったら何でもしちゃうって、自分でわかってたくせに!
こんなの、受け入れられるわけないじゃない!!」
「...助けないと。私が行く。対策委員会に迷惑がかかるし、私一人で。」
「落ち着いてください、今はまず足並みを揃えないと...」
当たり前のことだが、ホシノからの手紙を読んだみんなは混乱していた。ずっと一緒に過ごしてきた仲間が、唐突に姿を消したのだ。当たり前のことだ。
その上、もし敵対したらヘイローを壊して?仲間に対して頼む内容としては最悪も最悪だ。
何より最悪なのは、こんな手紙でお別れを告げて、それでよし大丈夫だなんて思われていることだろう。
どうして相談してくれなかったのか。
出会ってちょっとの私ですらこれなのだ。対策委員会のみんなの怒りは計り知れないだろう。
そんな混乱のさなか、唐突に学校の外で爆発音が響く。
「うわぁ!?」
「近いです、場所は...!?...そんな!?
こちらに向かって、数百近いPMCの兵力が侵攻中!同時に、市街地を無差別攻撃しています!」
「カイザーPMC!?なんでこのタイミングで!」
「お、応戦しないとです!!何はともあれ、アビドスが攻撃されているのを見過ごす訳には...!」
みんなが出撃準備をしている最中、会議室の扉が乱暴に開かれた。
「対策委員会を発見!こっちだ!」
そう叫ぶロボットに真っ先に反応したシロコが銃撃を浴びせかけた。
入ってきたロボットは瞬く間に制圧されたが、問題はこんな所まで既に来ているという事実である。
「カイザーPMC、何故今になって...タイミングはホシノが居なくなったから?だとすればまさか...!」
アビドス高校に入り込んだカイザーPMC勢力が暴れている。まさかこれ、昨日危惧したばっかの状況になったってこと...?
それから学校内にいるロボットたちを一掃、学校の外に出てアビドス市街地で暴れる軍隊の元までやってきた。
『何者かの接近を確認...カイザーの理事です!』
アヤネの言葉の通り、ロボットの軍をかき分けて一際大きく派手な服装に身を包んだロボットがやってくる。
「ふむ。学校まで出向こうと思ったのだが、お出迎えとは感心だ。」
「これはなんの真似ですか?企業が街を攻撃するなんて、いくらあなたたちが土地の所有者だとしても、そんな権利はないはずです!」
『それに、学校はまだ私たちアビドスのものです!侵攻は明白な不法行為!連邦生徒会に通報しますよ!』
「スカウトなんて最初から嘘だったってこと?...いや、それよりもホシノ先輩はどこ?」
「この悪党め...ホシノ先輩を返してっ!!」
対策委員会のみんなの批難を受けて尚、ロボットは相手を小馬鹿にしたような雰囲気を隠さず言う。
「くくっ...何を言っているのやら。
連邦生徒会に通報だと?面白いことを言うじゃないか、今すぐにでもやってみたらどうだ?
君たちはこの状況について、今まで何度も連邦生徒会に嘆願してきたのだろう?それで、1度でも動いてくれた事があったか?」
その言葉を受けて、私はそっと先生の後ろから手を挙げた。
「あのー...居るんですけど...」
「...無かったはず...!?何故ここに連邦生徒会が!?」
私先生がやってきた時には既に居たんですけど、そのカメラ大丈夫?壊れてない?メンテナンスしてる?
「し、しかしアビドスの最後の生徒会のメンバー、小鳥遊 ホシノは既に退学した。アビドスの生徒会は、もう存在しないも同然だ。アビドスのこの生徒たちはもう、何者でもない。
公的な部活も、委員会も、生徒会も、自治区すらないアビドスは、学園都市の学校として自立・存続が不可能なのだ。
アビドスに存在する箱だけの学校を不当に占拠する学生がいるようだな...仕方がない、我々カイザーコーポレーションがその学校を運営していくこととしよう。」
...まさか昨日たまたま気付いたことが、ここまで上手く噛み合うとはね。
私は先生の影から出ると怒りを露わにするアビドス対策委員会を手で制しながらのみんなよりも前に行く。そしてそのまま理事の目の前まで行くと理事に話しかけた。
「それはそれは...大変ご苦労な事ですねぇ。」
「あ、あぁ...ここまで来るのに多くの苦労があった...」
アホか、なんで肯定するんだよ。焦りすぎて制御回路おかしくなってない?
「ところでこんなニュースを知っていますか?今朝、連邦生徒会の審査が通りまして、アビドス対策委員会は連邦生徒会公認の委員会になったんですよ。
連邦生徒会公式サイトの、日々更新されるお知らせの欄に小さく書いてある程度ですから、見逃した可能性もありますが...まさかカイザーコーポレーションともあろう者が、そんなことすら調べずに来ませんよねぇ...」
「なっ...!?」
私の言葉を聞いた理事はその場に固まり、すぐさま近くのロボットに事実確認をさせているみたいだが、実際にここに来る間に確認した事実なので無駄だ。
どうやらリン行政官は何とか間に合わせてくれたようだった。
リンちゃん大好きありがとー!!
思わず歓喜からニヤケてしまいそうになるのを必死に我慢しながら、私は理事に向き直った。
「さて、そろそろ問いましょうか。
ここで、何を?」
私の質問を受けて理事は後ずさる。
私をそれを好機と、威圧的に前に進みながらさらに問うた。
「まさか、キヴォトス1の企業組織であるカイザーコーポレーションが、連邦生徒会公認学校であるアビドス高校に侵略攻撃を仕掛けたと?
...先程言っておりましたねぇ、「学校を不当に占拠している。」「解放してあげようとしていた。」一体何から何を解放しようとしていたんですか?
...あっ、もしかして、日々借金に追われるかわいそ〜なアビドス対策委員会の皆さんを、借金地獄から解放してくれるんでしょうか?さすがは天下のカイザーコーポレーション!!9億にも上る借金を帳消しにしてくれるだなんて、懐が深〜いですねぇ!!」
「ぐっ...粉バナナ!!*1連邦生徒会がカイザーコーポレーションを陥れるために仕組んだ罠だ!!」
粉バナナ?もうちょっと落ち着いて喋った方がいいよ。
「チッ!もういい!どうせ相手は少人数!制圧さえしてしまえばこちらのものだ!総員、かかれ!!」
「きゃーこわーい!カイザーコーポレーションに襲われるー!助けてせんせー♡」
そう言いながら私は後ろに引き、そのまま先生に抱きついた。役得やったぜ。*2
「"サトミ、ありがとう。
...よくも、私の大事な生徒を。ホシノのこと、返してもらうよ。"」
「ふ、ふざけるな!先生、貴様にそんな権利が...!」
先生カッコイイ...♡
というかシャーレって超法規的機関だよ?むしろ生徒を保護するって程度の権利すら持ってなかったら存在意義無くなっちゃうよ。
そうして襲いかかってくるロボットたちを先生の指揮で撃退をする。ちょっと数が多いけど、少し前に相手にしたゲヘナの風紀委員会よりは少ない。まああの時は便利屋もいたわけなんだけどね。
ドカアアアァァン!!!
「な、何事だ!?」
そんなことを考えていると、何処かで大きな爆発音が聞こえてきた。アビドス対策委員会にそんな爆発物を使う人はいないはずだけど、誰だろう?
「対策委員会!助太刀に来たわよ!」
『便利屋の皆さんです!どうしてここに...?』
「はあ...ラーメンを食べに来ただけなのに、どうしてこんなことに...」
「くふふ〜、メガネっ娘ちゃん、助けに来たよ〜!」
「許さない許さない許さない...」
現れたアルちゃんの後ろから、ほかの便利屋の面々も姿を表す。最後に現れたハルカが、何やら呟きながら手に持ったスイッチを勢いよく押し込むと、私たちを取り囲むカイザーPMCの部隊を大量に巻き込む大爆発が起きた。...いつ仕込んだんだろうか...?
ドカアアアァァン!!!
「ぐあああぁぁぁ!?
貴様ら!飼い犬の分際でよくも...っ!」
「うるさいわね、そんなの知ったこっちゃないわよ!あなたなんかより先生の方が、一緒に仕事がしやすかった!それだけの話!」
「あはっ。雇い主を裏切ることくらい、悪党としては当然でしょ!そんなことも予想できなかったの?」
そうして私たちの側に立った便利屋68と、アビドス対策委員会vsカイザーPMCの戦いが幕を開けた。
私?私は先生の隣で証拠映像でも撮っておこうかな。
即席のしては息のあった連携をとる対策委員会と便利屋68は、あっという間にロボットたちを制圧していく。
さもそれが当たり前かのように息のあった対策委員会と便利屋68を止められるほどの実力は、カイザーPMCには無いようだった。
最後に出てきた一際でかいロボットさえも、ものすごい速度で制圧を終えたみんなはそこから出てきたカイザーPMC理事を睨みつける。
「理事、傷が...!!すぐに治療を!」
「くっ、一度退却だ!兵力の再整備にかかれ!」
「は、はいっ!」
「...覚えておけ!この代償は高くつくぞ...!!」
いかにもな捨て台詞を吐きながら大量のシールド兵を殿に退却していくカイザーPMC理事。
それを私含めたみんなは冷めきった目で見ていた。
『敵兵力、撤退していきます。』
「いや〜、あれこそ正に本物の3流悪党のセリフって感じだね。「覚えておけ〜」なんて、実際に初めて聞いたよ。」
もはや狙ってるんじゃないかってくらい完璧な捨てゼリフだったね。覚えておけも何も、動画で撮ってあるから覚えておく必要は無いんですけどね。さてこの動画、どうしてくれようかな。
「想定通り、だいたい上手くいった。風紀委員会にも同じ手が通用するといいけど...」
「"...とりあえず、帰ろうか。"」
『はい、先生。きっとこの次は...今までで一番大きな戦いになると思います。まずは帰って、ホシノ先輩を助ける方法を探さないと行けません。』
そうしてアビドス高校に帰る途中のこと、先生は何処か別の場所へと行こうとしていた。
「先生?どこに行くんですか?」
「"野暮用だよ。サトミはみんなと、先に帰っていて。"」
うん?この後でどこかに行く予定ってあったっけ?あとやってないのは...あ、イオリの足舐めだ!!
「先生、私も行きます!」
「"ダメだよ。ここからは大人の戦いだ。"」
大人?ゲヘナに行くのに大人の戦いってのはよく分からないけど...でもイオリの足舐めに行くのに私が行かないと、風紀委員会への牽制ができないじゃないか!分かりやすく先生好きのヒナはもちろん、妖怪ヨコチチ女とか足舐められ太郎と混浴女*3でしょ!?先んじて牽制しておかないと絶対だめだ!
それに大人の戦いって言ったって、私も一応(元)大人ですし!
「いいえ、私も行かせてください。」
("そんな真剣な目で...サトミは本気でホシノを救う気でいるんだ。なら私がやるべきは生徒を信じることだね。")
「"分かった、サトミも一緒に行こう。"」
どうやら私の熱意*4が先生にも伝わったらしく、先生は私の同行を承諾してくれた。良かった、あとはあの足舐めの場でどうやって牽制をするか考えておくか...
そんなこんなでやって来ました!ゲヘn...うん?ここアビドス自治区ですけど?ここ何処?このビルは何?
私の混乱を他所に、先生は躊躇いなくビルへと入っていく。そのまま案内板を見ることもなくエレベーターに入り、ボタンを押した。
...ゲヘナじゃないってこと?
「...お待ちしておりました、先生。
あなたとは一度こうして、顔を合わせてお話してみたかったのですよ。
...この場に生徒を連れてこられたのは、少々予想外ですが。」
そこには、真っ黒なスーツに身を包み、真っ黒な肌、右目のいちから漏れ出す光とそこから広がるヒビが口のように裂ける異形の姿があった。
...あっ。
なんか上手いこと噛み合ってカイザーPMCのアビドス襲撃の大義名分が潰れました。
この展開は感想欄で助言を頂けたことで出来上がりました。
ライナ様、ありがとうございました<(_ _)>
サトミのにわか知識ゆえの雑介入は健在です。彼女はバタフライエフェクトとか考えることなく「良い方向に変えたろ!」ってな感じで動いてるのでご容赦ください。どっかで気付くか、報いが帰ってくるかは、未来の私次第。今んとこその予定は無いです。