「おかえり、2人とも。」
「お待ちしておりました!」
「先生!」
「サトミさん...」
アビドス高校へと戻ってきた私たちを、対策委員会のみんなが迎えてくれた。
「...何か、掴んできた顔だね。じゃあ改めて...」
「"ホシノを助けに行こう!!!"」
「ん、行こう。」
いつも通り表情が薄いながらも、確実に嬉しそうな表情をしたシロコが言う。
「"ホシノを助けて、ここに連れ戻す!"」
「はい、そういってくださると思っていました!」
満面の笑みを浮かべたアヤネが答える。
「"助けて、そのあとは厳しく叱ってあげないと!"」
「うんうん!自分で言ったことを守れなかったんですから、お仕置です!きちんと叱ってあげないと!」
少しの圧を孕んだ笑顔を浮かべながらノノミが言った。
「"「おかえり」って言って、「ただいま」って言わせよう!"」
「うん...えっ!?なにそれ、恥ずかしい!青春っぽい!!背筋がぞわぞわする!!」
少し耳を赤くしたセリカが身震いをした。
「私はする。」
「えっ、えっ?」
「セリカちゃんがしなくても、私もします!」
「えっ、えぇっ!?」
「わ、私も。ちょっと恥ずかしいけど...」
「か、勝手にして!私は絶対、そんな恥ずかしいこと言わないから!」
目の前で繰り広げられる若々しい会話に、私は微笑みながら先生の隣に立った。
「えぇ、そのために、救出の為の準備を進めましょう。...相変わらず私は戦えませんが、それでもみんなが勝ってくれると信じています。」
「ん、もちろん...とはいえ、今の私たちだけじゃ勝てない。誰か協力者を...」
「便利屋は?」
「確かに私たちのことを助けてくれましたが...もう一度お願いしていいのでしょうか?」
「大丈夫だって!またどこに行ったんだか知らないけど、ここまで散々迷惑かけられてきたんだから、これくらいのお願いは聞いてもらわないと!」
「"......私に考えがある。"」
ふとこぼした先生の声に、みんなの視線が向いた。先生はどこか確信したような表情をしていた。
...もしかしなくても...
翌日、早速とばかりに私と先生はゲヘナに来ていた。
先生には「"アビドスで待っていてくれていいよ"」と言われたが、風紀委員会への牽制はやっておかなければいけない。私はゲヘナは治安が悪いためもしもの事があったら、と言って半ば強引に着いてきていた。
そんな私たちを出迎えたのはイオリだった。出たな足舐められ太郎!*1
「はぁ?風紀委員長に会いたい?ゲヘナの風紀委員長に、そんな容易く会えるとでも思ってるのか?そうだな、じゃあ土下座して私の足でも舐めたら...ひゃんっ!?」
はっっや。先生の反応速度が人間のそれじゃなかったよ。
物凄い速さでイオリの足元に跪いて足を舐めだした先生を見ながら私は内心で突っ込んでいた。
...そういう理由で足舐めたってことは、アポ取ってたら避けられたのか...クソ、私のポンコツ記憶力め!
「ちょっ、まだ話の途中...んっ、ちょっと!?大人としてのプライドとか、人としての迷いとかないのか!?」
「"
「おかしい!ヘンタイ!歪んでる!!」
尚もイオリの足を舐め続ける先生がキリッと即答するが、さすがにかっこよさは感じなかった。恋は盲目、という言葉にも、流石に限界はあるらしい。
でも私、先生がどんな特殊な癖を持ってても受け入れますよ?
「なんだか楽しそうね?」
気がつけば私の隣にヒナが立っていてびっくりした。
「自分の望みの為に膝をつく姿なら、これまで何度も見てきた。でも、生徒のために跪く先生を見たのは初めて。顔を上げてちょうだい、先生。
言ってみて、私に何をして欲しい?」
「いや、あの...あれはちょっと違いましてね。」
未だに足舐めを止めることなくイオリの足元に跪く先生を見るように促すと、ヒナはまじまじと先生を観察した。
「.........!!!???」
あ、ヒナも気づいたみたいだ。というかいい加減やめろ!!!
「先生!そろそろやめてください!」
「"まだだよ!まだ誠意を見せられてない!"」
「もう十分ですって!ねぇ!?」
「う、うん...もういい...」
おまっ、満更でも無さそうな表情してんじゃねぇよ!!
「"あれ、ヒナ。こんにちは。"」キリッ
「え、えぇ、先生。こんにちは...」
「"実はヒナにお願いしたいことがあってね..."」
今更キリッとした表情をしても、もう手遅れだよ。
それからアビドス高校に帰ってきた私たちは、準備を進めていた対策委員会に支援が受けられるようになったということを伝えた。
「ん、どうやったの?」
「いやー...その、あはは...」
「?」
言えるかぁ!!
「ん、準備完了。」
「補給も十分!おやつもたっぷり入れておきました!」
「こっちも準備できたわ!睡眠もしっかりとったし、お腹もいっぱい!どっからでもかかってきなさい!!」
「私の方も、アビドスの古い地図を全て更新しておきました。先生に伝えていただいた情報によると、ホシノ先輩はカイザーPMC基地の第51地区の中央辺りに居るはずです!」
そうして準備を終えた私たちは砂漠地帯を進んでいく。そうして数時間程歩いたところで、巨大な基地が見えてきた。
「あれが、カイザーPMC基地ですか...」
『そういえばサトミさんは初めて来たんでしたね。はい、あそこに...ホシノ先輩が居るはずです!』
そのまま私たちは、PMC基地の分厚そうな扉を破壊して中に入っていく。そのまま流れるように、中にいたPMC兵士達との戦闘が始まった。
砂漠を歩いてきた疲れを癒す間もなく始まった戦闘だが、前線で戦っている全員がその疲れを一切感じさせないほどの暴れっぷりを見せていた。
単純に私以上に砂漠に慣れているというのはあるだろう。しかし、それ以上に全員がホシノを助けたいという想いで戦っているというのが大きいのだろう。それほどに、アビドス対策委員会の絆は大きいのだと、傍目にも分かった。
『前方に敵部隊接近中!距離は2km、もうすぐ接敵します!皆さん、対応の準備を...』
ドゴオォォォン!!!
アヤネの警告に、全員が戦闘態勢に入った瞬間、前方遠くに見えていたPMC部隊が爆発と共に吹き飛んだ。
「支援射撃?」
『...L118、トリニティの牽引式榴弾砲です!一体どうして...』
アヤネが疑問をこぼした瞬間、アヤネがt映っていたホログラムの隣に新しいホログラムが現れた。
『あ、あぅ...私です...』
「あっ、ヒフ──」
『ち、違います!私はヒフミではなく、ファウストです!』
自分で言っちゃったよ。
そこに映っていたのは、5と書かれた紙袋を被ったヒフミだった。
「わあ、ファウストさん!お久しぶりです!ご自分で名前を言っちゃってましたが、そこはご愛嬌ということで☆」
『あ、あれ!?あぅぅ...!
そ、その、このL118はトリニティの牽引式榴弾砲ですが...と、トリニティ総合学園とは一切関係ありません!射撃を担当している皆さんにも、そう伝えておきましたので...』
無理があるよ。でも、カイザーPMCの不法行為の証拠は既に持っている。それを通せば、もしトリニティ総合学園がカイザーコーポレーションに訴えられたとしても問題は無い。そもそもがシャーレの依頼ということにすればいいのだ。
『す、すみません。これくらいでしか、お役に立てず...』
「ううん、すごく助かった。」
「はい!ありがとうございます、ファウストちゃん!」
「火力支援に突撃、定石通りだね。」
『はい!敵は砲撃により混乱状態です!今のうちに突破しましょう!』
『目標の座標地点に到着!この辺りに、ホシノ先輩が閉じ込められているはずです!この周囲のどこかに、きっと...!』
「...ここ、学校?」
「砂漠の真ん中に学校...もしかして...」
「ああ、ここは、本来のアビドス高等学校本館だ。」
「「「「『!?』」」」」
唐突に聞こえてきた声に、全員がそちらを向いた。そこに居たのはカイザーPMC理事。普通に出てくるとは思わなかったな...もう自分が詰みの状況だって気づいてないのか?
「よくぞここまで来たものだ、アビドス対策委員会。」
『...敵の増援多数...!この数、おそらく敵側の動ける全兵力が...カイザーPMCはきっと、ここで総力戦に持ち込むつもりです...!』
気がつけば理事の後ろに、そして私たちの周りに大量のロボットが居た。
「砂漠化が進行し、捨てられたアビドスの廃墟...ここが、元々はアビドスの中心だった。...かつてキヴォトスで1番大きく、そして強大だった学校の残骸が、この砂の下に埋もれている。
ゲマトリアは、ここに実験室を立てることを要求した。」
「実験室...!?」
「そんなことよりも、ホシノ先輩はどこですか!」
「あの副生徒会長なら、向こうの建物にいる。もしかしたら既に実験が始まっているかもしれないが...彼女の元に行きたいのであれば、私たちのことを振り切っていけばいい。君たちにそれができるのなら、の話だがな。」
なんか...思ったよりも冷静だな。もっと怒りを顕にしてるかと思ったけど。
とはいえ、流石にこれを抜くのは骨が折れるよね。私戦えないけど。
「ん、じゃあここは私が───」
ドカアアァァァン!!!
唐突に起きた爆発が、私たちを包囲していた輪の一部を大きく欠けさせた。
全員がそちらを向くと、巻あがった砂嵐がやがて晴れていき...
「じゃーん!やっほ〜☆」
「はぁ...」
「お、お邪魔します!」
そこには便利屋68の姿があった。
『べ、便利屋の皆さん!?』
「やーっと追いついた!けどなんかこれみんな集まってるし、もしかして大事なシーンに割り込んじゃった感じ?」
「...ふん、こっそり助太刀しようと思ったのに、そう上手くは行かなかったわね。」
「あ、あんたたち...!」
「このタイミングに登場、ということは...!」
「...なるほど、そういうことだね。」
...あっ(察し)。アビドスのみんな、そういうこと言ったらダメだよ。アルちゃんはカッコ良さと見栄とノリで生きてるんだから。
「ふふっ、勘だけは鈍ってないようね、対策委員会。私たちがここに来た理由なんて、決まってるでしょう?
ここは私たちに任せて、先に行きなさい!!!」
あ、アルちゃーん!!
絶対あの子ノリで言ったよ。内心「言っちゃったーー!!」って言いながら白目剥いてるよ多分。
「うっわー...それは惚れちゃうよ、アルちゃん...」
「さ、流石です!一生着いていきます!アル様!!」
「もうっ、お礼は言わないからね!
...でも、全部終わったら...その時は一緒に、ラーメンでも食べに行くわよ、便利屋!!」
ツンデレの模範過ぎるだろ。まあストーリーの流れとしてはこれで正しいだろうし、それなら便利屋に任せても大丈夫そうだね。
そう言って私たちが奥にある建物に向かおうとした時、数機のヘリコプターの音が聞こえてきた。
『ヴァルキューレ警察学校だ!カイザーPMC理事!貴方に市街地における傷害罪、建造物等損壊罪、その他諸々で逮捕状が出ている!大人しく投降しろ!!』
「んなっ!?」
「ヴァ、ヴァヴァヴァルキューレ!?不味いじゃない私たち指名手配犯よ!?」
はい、私が呼びました。こないだ撮った映像を送って一発よ。連邦生徒会公認の学校に襲撃しかけたんだからそりゃあね。便利屋だけじゃなくてヴァルキューレ警察学校も入ってくるんだったらここは安心して任せられそうだね!!
便利屋の処遇は知らん!!
「"みんな、ありがとう!アビドス対策委員会、行くよ!!"」
先生の号令で全員が一気に駆け出す。ここまでお膳立てされたんだから、しっかりホシノを助けないとね!!
『...ホシノ先輩の位置、確認できました!あそこです!あそこのバンカーの地下に!』
「急ぎましょう!」
「行こう。」
そう言って進もうとしたところに、ひとつの影が立ちはだかった。
『...カイザーの理事...!』
「しつこい...」
「ああもう!どこまで邪魔すれば気が済むのよ!」
「どいてください!さもないと...」
「......対策委員会。お前たちがずっと目障りだった。これまで、ありとあらゆる手段を講じてきた。それでもお前たちは、滅びかけの学校に最後まで残り、しつこく粘って、どうにか借金を返済しようとして!
あれほど苦しめたのに、徹底的に苦しめたのに、毎日毎日楽しそうに!!お前たちのせいでっ、計画が!!私の計画があああ!!!」
カイザーPMC理事は私たちの目の前ででかいロボットに乗り込んだ。
最後のボス戦ってやつかな?冷徹で残忍な大人(笑)を演じていたやつが、最後は激情に任せて主人公の前に立ちはだかるなんて三流もいいとこだけど、まああいつにはそれがお似合いなのかもしれない。
障害物の影に隠れたみんなに対して、両手のガトリングをこれでもかと撃ち続けるPMC。その頭に着いた大砲は何のためにあるんだよ...もう完全に周りが見えてないね。
そのまま弾薬尽きるまで撃ち続けたPMCは、弾が切れたタイミングで同時に飛び出してきたシロコ、ノノミ、セリカの3人にフルボッコにされて、大きな爆発とともに消えていった。
3人は宿敵を倒したことを確認すると、喜ぶでもなくホシノが居るバンカーへと走り出した。
目に映ってすらないってか?三流ですら無かったらしい。
「ホシノ先輩はすぐそこに居るはずです!!」
ホシノが拘束されているという件のバンカーを見つけたノノミがバンカーに銃弾を叩きつけながら言う。
跳弾が自分にも当たって痛いだろうに、気にも留めていない様子だ。
「ノノミ、どいて...ん、壊れない。もう一度...」
ノノミに変わって爆弾を取り付けたシロコが爆発に耐えたバンカーにもう一度爆弾を取り付けていた。
退避する時間も惜しいようで、少し下がると同時に爆発させていた。
「...あ、アヤネちゃん!?どうしてここに!?」
そんな2人をハラハラと見ていたセリカは何も出来ないことから不安なのか、忙しなく周りを見ていた。
そこで遠くから飛んできたヘリコプターにいち早く気が付く。
「シャーレに貸してもらったヘリで!ホシノ先輩は!?」
通信で見ているだけという状況に耐えられなくなったらしいアヤネが現場に急行してきたらしい。
ハシゴを下ろす時間ももったいないとばかりにヘリから飛び降りていた。
「この中にいるはずです。ですがなかなか開かず...」
私の言葉に、バンカーを睨みつけたアヤネが持ってきた爆薬をありったけバンカーに投げ込む。
そのままシロコの爆弾を起動させ、今度は一際大きな爆発が起きたかと思えば、ようやくバンカーの扉が吹き飛んでいた。
そうして全員がバンカーに近づいた時、そこから人影が現れる。
その影は小柄でピンクの長い髪をしており、ショットガンを携えて、見間違うはずもなく、見慣れた制服を身につけていた。
「「「「ホシノ先輩!!!!」」」」
対策委員会のみんながそう叫ぶと、急に光に目が慣れないらしいホシノが目を瞬かせていた。
「あれ、みんな...どうして...?どうやって...だって...私は...」
「"ホシノ。"」
先生の声にそちらを向いたホシノは、どこか憑き物が落ちたような表情を浮かべていた。
「あぁ、そっか...みんなが、先生が...
...大人が、ね。はは...」
そうつぶやくホシノは破顔していた。
「ホシノ先輩、おっ、おかえり!」
セリカが真っ先に言う。そのことをノノミにからかわれていた。
「ホシノ先輩、おかえりなさい!」
アヤネがそれに続く。
「おかえりなさいっ、です☆」
ノノミもいつもの以上笑顔を浮かべて言う。
「おかえり、ホシノ先輩。」
シロコもホシノに手を差し出しながら言う。
「あはは...なんだかみんな、期待に満ちた顔だけど...求められてるのは、あのセリフ?」
「も、もう!分かってるなら焦らさないでよっ!」
「うへ〜...全く、可愛い後輩たちのお願いだし、仕方ないなぁ...」
そうしてホシノは、みんなに向けて最高の笑顔を浮かべながら返した。
「ただいま。」
こうして長かった私たちの、アビドス対策委員会での戦いは、ようやく幕を下ろしたのだった。
「うぅ...グスッ...良かったぁ...!」
「"サトミ...大丈夫?"」
「だいじょぶでずぅ...ずずっ!」
そんな様子を眺めながら私は号泣していた。
だって私、こういうの弱いんだもん!画面の前ですら泣いてたのに、実際に目の前でやられて我慢出来るわけないでしょ!!!
締まらない?うるせぇ!!
思ったより早く対策委員会編終わったね。もうちょっとかかるかと思ってたよ。
ストーリー以外の何かしらに触れるくらいの余裕と表現力が欲しいところです。
それはそれとしてようやくサトミの先生LOVE要素を出せそうで一安心。