「"「G.Bible?」"」
モモイからの質問に、私と先生は声を揃えて聞き返していた。
やっぱり私たち息ぴったりですね!結婚しましょう!
「そう!簡単に説明すると...ミレニアムには、ううん、昔のキヴォトスにはね、伝説的なクリエイターがいたの。その人がミレニアムに在学中に作ったのが、「G.Bible」。
詳しい中身までは分からないみたいなんだけど...その中には、「最高のゲームを作れる秘密の方法」が入ってるんだって。」
「...それ、どこかのゲームクリエイター学校の広告じゃなくて?」
ミドリの質問に、私も同じことを思った。情報が不明瞭なだけでなく、その内容までもが怪しすぎる。最高のゲームを作れる秘密の方法って、抽象的が過ぎるぞ。そもそもそんな方法があるのだとしたら、誰かが試してないはずがない。
...いや、だからこそ隠されてるのかもしれないけど、それをその情報を隠した人間が試してないとは限らない。その上試しているのだとしたら、モモイたちがその方法でゲームを作ったところで所詮は二番煎じになってしまう。パロディネタとして扱う分にはいいかもしれないが、そういうゲームがミレニアムプライスで受賞できるかと言われれば微妙だろう。
もしG.Bibleに隠された方法が誰も試したことが無いものだとしても、果たしてそれが今でも通用するかどうかも分からないものだ。物事は、特にゲームなんかは流行り廃りがどんどん進んでいくものだ。少なくとも最近作られたものではないであろう、そのG.Bibleに頼るよりかは、今からでもゲーム作りに専念した方がいいように思えるけど...
「違うよ!G.Bibleはあるって!読めば最高のゲームを作れるようになる「ゲームの聖書」は、絶対にある!」
「分かりました。仮にそのG.Bibleが存在するとして、それが廃墟とどう関わってくるのですか?」
「えっとね、私もヴェリタスからちょっと聞いただけだから、分からないことだらけだけど...」
「"ヴェリタス?"」
今度の疑問の声は被らなかった。
くそう、私も疑問に思ったし声に出しておけばよかった!
「あ、分からないよね。ヴェリタスっていうのはミレニアムの部活のひとつ正確には部活じゃないらしいんだけど...ミレニアムが誇るホワイトハッカー集団のことだよ!
とにかくそのヴェリタスのヒマリ先輩によればこの廃墟は、「キヴォトスから忘れ去られたものが集まる、時代の下水道みたいな場所、なのかもしれない」...って。」
「ヒマリ先輩?」
今度の疑問の声も被らなかった。
くそう、今度は先生が言わないのか...意識しない方が被るのかもしれない。
私がそんなことを考えているうちに、私の疑問の声を聞いたミドリが答えてくれた。
「ヒマリ先輩っていうのは、ヴェリタスのひとりで、いつも車椅子に乗ってる美人な人でね。いつもRPGの賢者みたいに「私はなんでも知っていますよ」って感じの雰囲気を纏ってる人なんだけど...そのヒマリ先輩が「かもしれない」なんて言うのは珍しいね...それくらい、未知の世界なんだ。
でも、なんでそんな所にG.Bibleが...
...まさかとは思うけどお姉ちゃん、「キヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる」って聞いたから廃墟にG.Bibleがあるって思ってるんじゃないよね?」
ジト目でモモイを問い詰めるミドリだが、対するモモイは自信満々に無い胸を貼りながら答えた。
「それだけじゃないよ。ヴェリタスにG.Bibleの捜索を依頼したら、座標を教えてくれたの。最後にG.Bibleの起動が確認された座標をね。その場所は「普通に地図には存在しない場所」だった。
そのふたつを合わせて考えると、G.Bibleはきっと...ずっと隠されていた廃墟にあるはず!」
「...ですが分かっているのですか?件の廃墟は、連邦生徒会によって「危険だから」とその存在を隠されていた場所です。そんな中にこんな少数で出向くなんて、何があるか分かりませんよ?」
「大丈夫!バレないように動くし、もし見つかっても私たち3人で切り抜ければイケるでしょ!!」
そう自信満々に宣言するモモイだったが...
「あ、私は戦えませんので、見つかった時はモモイとミドリのふたりで戦うことになりますよ。」
「「えっ...」」
絶望的な表情を見せるふたりに、私は大丈夫かなぁ...と他人事のように考えるのだった。
そうしてやってきた廃墟。
最初の方は廃墟内をうろつく、大量にいるロボットの目を避けながら順調に進んでいたのだが...
「いやぁー!どんどん増えてるよ!」
「このままじゃ包囲されちゃうよ!どうにかしないと!!」
「モモイが不用意に大声をあげるからですよ!責任取って殿をしてください!」
「嫌だよ!それに仕方ないじゃん、急に虫が出てきてビックリしたんだから!」
虫にビックリしたモモイの叫び声に反応したロボットに見つかってしまい、私たちは揃って走っていた。
アビドス砂漠で迷子になって以降、運動不足にならないように定期的に走ったり、運動をしたりしていたんだけど、そんな私よりもモモイとミドリの方が余裕がありそうだ。君たち部屋にこもってゲームばっかりしてるインドア派な訳じゃないのね。
「"あっち、工場みたいなのが見える!"」
先生の声に従ってそちらを見てみると、そこには確かに工場のようなものが見えた。追われることには変わらないだろうが、それでもこんな隠れる場所が一切ないようなところよりはマシだろう。というかいい加減どこかで休まないと限界が来そうだ。
「お、先生ナイス!急いでロボットたちを突破して、あの工場に逃げ込もう!」
「先生、戦闘の指揮をお願いします!」
そうして1度ロボットたちに向き直り、モモイとミドリが戦闘に入っていった。
先生の指揮ももちろんあるだろうけど、さすがは双子と言ったところか、モモイとミドリは完璧なコンビネーションでロボットを一人一人片付けていく。
一見厄介に見える盾持ちのロボットも、一方が銃撃を浴びせている間に回り込んだもう片方の銃弾に沈んでいく。アビドス対策委員会のみんなもかなり洗練された連携だと思っていたが、連携力だけで言えばどうやらこのふたりはそれ以上な様子だ。
わざわざ連邦生徒会長が危険区域として封鎖したと聞いて警戒していたが、そこまで心配する必要はなかったみたいだ。
...と言うよりも、今は私の方が問題である。さっきから走り続けてるせいで足が限界に近いのだ。うげ、止まったせいで逆に横腹まで痛くなってきたぞ...
「"サトミ、大丈夫?"」
挙句、先生の心配される始末である。
逆に先生もモモイとミドリの2人も、なんで戦闘にはいる余裕があるんですかね...
「全然だいじょばないです...お腹痛い...」
私はお腹を押さえながら、モモイとミドリがロボットを引き付けてくれているのをいいことに、先に工場の方へとフラフラと歩いていった。
先に工場内に入って、入口の影で座り込んでいると、派手な銃声を鳴らしながらモモイとミドリ、先生が工場内に走り込んできた。
よし、私もちょっと休んだしまた逃げる余裕は生まれたぞ。
私がまた襲いかかってくるであろう腹痛に怯えながら覚悟を決めていると、その後ろでモモイの声が聞こえてくる。
「あれ...?あのロボットたち、急に追ってこなくなった?この工場に入るまでは恐ろしい勢いで向かってきてたのに。」
モモイの声に反応して私も工場の外を見てみると、入口付近に集まってきていたロボットの集団が、全員同時に興味を失ったかのように徘徊に戻っていく様子が見られた。
「...流石に違和感を覚えますね。どうして急に追わなくなったのか...この工場が彼らの警戒区域から外れているのでしょうか?それにしてはこの工場は廃墟の中心部にありますからね。」
そう口にしたところで、私はようやくここがアリスがいる場所であろうという可能性を思い出した。うん、この工場に何かあるのは明らかだし、きっとそうだな。
そこまで考えついたところでつい魔が差した私は、隣で不思議そうな表情を浮かべるモモイに言う。
「...もしかしたら彼らは追う必要がなくなったのかもすれませんね。彼らが私たちを排除しなくても、この工場自体が私たちを排除するための処刑場だったりして...」
「うわぁー!そんな怖いこと言わないでよ!?」
想像以上にいい反応を返してくれたモモイに、声を上げて笑いながら返した。
「あははっ!冗談ですよ。
...何にせよ、この工場に何かがあるのは間違いないんです。それが果たしてG.Bibleなのか、別の何かなのかまでは分かりませんけどね。とりあえず進んでみませんか?このまま工場を出てまた追われるよりはいいでしょう。」
「...確かにそうだね。それじゃあ...」
『接近を確認』
モモイが工場内に一歩踏み出そうとした瞬間、辺りに響いた機械音声に全員が動きを止める。
「えっ、なっ、何?」
「部屋全体に、音が響いてる?」
『対象の身元を確認します。才羽 モモイ、資格がありません。』
「え、え!?なんで私のことを知ってるの?」
身元の確認?資格なし?というか何でモモイのことを知っているの?
『対象の身元を確認します。才羽 ミドリ、資格がありません。』
「私のことも...一体どういう...?」
そう来れば次は...
『対象の身元を確認します。小比類巻 サトミ、資格がありません。』
「やっぱり次は私...」
なんでモモイ、ミドリ、私のことを知っているんだろうか?この3人の情報を同時に取れる場所って考えるとサンクトゥムタワーの統括システムだけど...もしかしてそこに不正アクセスした?だとすればこの建物は想像以上にやばい場所なのかもしれない。
それに資格ってのは一体...話の流れとストーリーのメタ推測からすると、この後に調べられるであろう先生は権利を持ってると思う。権利の条件が分からない以上はなんとも言えないけど、いちばんわかりやすいもので言うとシッテムの箱だろうか?
こんな訳の分からない場所の管理をしていた連邦生徒会長との共通点って言うとそれくらいだし、多分そうだろう。
あとは権限を持っているとどうなるのか...工場に接近した時にこのシステムが作動して、そこから資格の有無を確認したのを考えるにこの工場への入場資格って事だろう。メタ推測的にはこの後にアリスに出会うんだろうけど、アリスはなんでこんな工場にいるんだ?
うーん...考えても分からんな。まあこの後に情報が増えていくだろうし、なるようになれだ!
『対象の身元を確認します。先生.........』
「あれ?」
『資格を確認しました。入室権限を付与します。』
「えぇっ!?」
「どういうこと!?先生はいつの間にこの建物と仲良しになったの!?」
「"わ、分からないよ!なんで私だけ..."」
そう問われた先生だが、当の本人がいちばん困惑しているようで首と手をぶんぶん振りながら否定している。
困惑全力否定先生可愛い。私は脳内メモリに先生の様子を記録しておいた。
『才羽 モモイ、才羽 ミドリ、小比類巻サトミの3名を、先生の「生徒」として認定、同行者である「生徒」にも資格を与えます。承認しました。
...下部の扉を開放します。』
ふむ...権利持ちの先生の同行者であれば権利を貰えるのか...この建物のトンデモ具合を考えたら相当なガバセキュリティにしか思えないけど、それほどまでに先生を信頼しているって証なんだろうか?
まあ連邦生徒会長が先生に渡したシッテムの箱でサンクトゥムタワーの制御権を握れる辺り、信頼しているって言うのは間違いないんだろうけどね。そう考えるとやっぱり権利はシッテムの箱に結びついてるように思えるな。
...というか連邦生徒会長だけズルいぞ!先生をそんなに信頼できるくらい先生のことを知ってるなんて!私だって先生のあれこれをもっと知りたいんだからな!
.........ってあれ?
私がそこまで考えて床を見た瞬間、ガチャン!という音を立てて地面が綺麗さっぱり無くなってしまった。
「え...いやあああぁぁぁぁぁ!!!」
実際落ちてみると、どうやらそこまで高いわけではなかったようだ。周りを見回してみるとモモイとミドリもいる。あれ...先生は?
「モモイ、ミドリ!先生は!?」
「分からない!私たちも今探してて!」
「先生だけ他の場所に!?だとしたら...危ないよ!」
私たちが大慌てで辺りを見回しているとモモイとミドリの足元から声が聞こえてきた。
「"
「ひゃあっ!?な、なんで私たちの下にいるんですか!?」
「...いや、普通に私たちのクッションになってくれたってことでしょ...」
「あっ、ご、ごめんなさい...びっくりしちゃって、てっきり先生に「そういう趣味」があるのかと...」
「いや、今の言葉にももう一度謝った方がいいと思うけど...」
もし先生に「そういう趣味」があっても私は受け入れますよ!
私はそんなことを考えながら、未だに地面に横になっている先生に手を差し伸べる。
「先生、大丈夫ですか?」
「"損して得取れって言葉があってね..."」
「それ得ってなんのことを言ってます?」
私のツッコミに先生は分かりやすく狼狽え出した。
モモイとミドリだけズルいぞ!私も先生に庇われて「得」だって言われたい!
「と、とにかく、ありがとうございます、助けてくれて。」
「そこまで深い場所じゃないみたいだけど...あれ...」
途中で止まったモモイの言葉に、その視線の先を見てみると、そこには椅子のようなものと、そこに座って眠っている...
「先生、ちょっと後ろ向いてて下さい!」
「"うわぁ!?"」
私は大慌てで先生の体を回転させる。
ビックリした、あそこにアリスがいるのはいいとして、なんで裸なんだ...ブルアカって全年齢対象ゲームだよね?あれが審査通ったって言うのか???
...いや、よく考えるとメモロビも大概だったわ...
私はそんなことを考えながら、未だに動きを見せないアリスの元へ歩いていくモモイとミドリを見ているのだった。
ストーリー読み返してたら廃墟で眠るアリスが肌色成分マシマシでビックリしました。
まあでも今更か。混浴までしてるもんね。
どんどん厳しくなっていく規制に全力で抗っていけ!ブルーアーカイブ!