ロックマンゼクス&はぴねす!2〜激闘!超次元戦争〜 作:騎士誠一郎
**【九州・阿蘇地熱発電基地・周辺上空】**
ドドドォォォン……ッ!!
阿蘇の雄大なカルデラを揺るがす地鳴りのような爆鳴とともに、夜空を赤く染め上げる熱気が大気を歪ませていた。
かつてはクリーンなエネルギーを供給する平和な施設であった『阿蘇第3地熱発電基地』。だが今、その広大なプラズマ抽出プラントは、外壁を破って増殖した黒い超合金と禍々しい「W」の刻印に侵食され、まるで大地に根を張る凶悪な機械の城へと姿を変えていた。
「ハぁ……ハぁ……! ここね……! 『W』の基地ってのは……!」
基地を見下ろすマグマ冷却塔の淵に、荒い息を吐きながら降り立った影があった。
朱と赤を基調とした炎の装甲——『モデルF』を纏い、両手に武骨なナックルバスターを装着した少女、杏里であった。
「……あたしを一人で九州に行かせるなんて、雄真の奴もいい度胸じゃない。……まあ、あいつらにはあいつらの戦いがあるんだから、文句は言えないけどさ!」
杏里は汗の浮かぶ額を甲冑の袖で乱暴に拭うと、右拳のナックルバスターを激しく打ち合わせた。ズドン! と響く爆炎の火花が、彼女の勝気な瞳を赤く照らし出す。
「瑞穂坂のエネルギーを盗んで、好き勝手やってるワイリーのじいさん……! それにこんなところで我が物顔で居座ってるナンバーズとやらも! あたしの炎で、跡形もなく焼き尽くしてやるわよ!!」
『杏里、油断するなよ』
胸元で、モデルFの重厚な声が警告を発する。
『この基地の内部熱線波形は異常だ。通常の地熱発電のレベルを超えている。ワイリーの奴、イザナミの残した高濃度サイバーエルフのエネルギーと阿蘇のマグマを直接融合させて、暴走炉を作り上げているぞ。しくじれば基地ごと吹き飛ぶ』
「分かってるわよ! 吹き飛ぶ前に、中継タワーをぶち壊せばいいんでしょ! トランスフォーム・モデルF……フル・スロットル!!」
バーンッ!!
背部のスラスターから爆発的な熱風を噴射し、杏里は弾丸のような速度で地熱発電所の強化ガラスドームへと直降下した!
**「ナックル・バスター・ブラストッ!!」**
ドガアァァァァン!!
両拳から解き放たれた極大の炎の波がドームの装甲を粉砕し、杏里は炎の旋風とともに基地内部へと躍り出た!
**【阿蘇地熱発電基地・中央溶岩抽出エリア】**
「侵入者感知! 侵入者感知! 排撃プロトコル実行!」
ドーム内部へ乱入した杏里を待っていたのは、赤く変色したワイリー印の自動防衛ドローン軍団と、阿蘇のマグマを直接吸い上げて巨大化されたセキュリティ・警備メカの群れであった。
「邪魔よっ!! どきなさい!!」
杏里の動きに迷いはない。
彼女は右拳を前に突き出し、空間に軌道を直接書き込む『エディット・バスター』を発動させた!
ズドドドドドッ!!
空中を複雑な曲線を描いて飛翔する三連の爆炎弾が、集集するドローンたちを次々と内部から爆破していく! 火柱が天井にまで達し、溶けた金属の雨が降り注ぐ中、杏里は一直線に最深部の中継タワーを目指して突き進む。
「……フン、瑞穂坂の適合者とかいうガキか。威勢だけは一人前だな」
重厚な旋盤が砕け散るような機械音が、地下溶岩湖のキャットウォーク全体に響き渡った。
熱気でドロドロに溶けた鉄鋼の影から、ゆっくりと姿を現したのは——全身を耐熱超耐性合金で覆い、巨大な爆弾の形をした両腕を持つ、凶悪なナンバーズであった。
胸には、くっきりと刻まれた「W」の刻印。
「おれはワイリー様の刺客……**ヒートマン**!! この阿蘇のマグマとサイバーエルフを融合させた、灼熱の絶対破壊兵器だ!!」
ヒートマンがその頭部のハッチを開くと、そこから超高熱のプラズマ火炎が激しく噴き出した! 周囲の耐熱壁が一瞬でガラス状にドロドロと溶け落ちていく。
「ヒートマン……! やっぱり、あんたがこの基地のボスね!」
杏里が両拳を構える。
「へっ! モデルFの炎か! だがな、お嬢ちゃん! ワシの体内に宿る炎は、イザナミの置き土産とワイリー様の天才的頭脳が生み出した『絶対熱量』なのだよ! お前の生ぬるい炎など、ワシの燃料にしかならんわ!!」
「やってみなきゃ分からないでしょ!!」
杏里が地面を蹴り、ヒートマンへ肉迫する!
**「メガトンスマッシュ!!」**
炎を纏った右拳が、ヒートマンの胸部へと叩き込まれた!
しかし——!
ドガァァンッ!!
激しい衝撃音とともに、ヒートマンの身体は微動だにしなかった。それどころか、杏里の放った熱エネルギーが、ヒートマンのボディに吸い込まれるように赤く発光していく!
「な……なに……!? 炎が……吸い取られてる!?」
「ガハハハハ! 言ったはずだ! ワシに炎の攻撃は無駄だとな!!」
ヒートマンの両腕から、超高熱のフレイムブーメランが解き放たれた!
**「アトミック・ポム!!」**
ドカアァァァァァン!!
全方位に広がる極大の爆炎波!
直撃を受けた杏里は甲冑を大きく削られ、激しい火花を散らしながら、地下最深部の未開放エリアへと吹き飛ばされた!
「キャアアアアッ!?」
底が抜けた床を突き破り、杏里の身体は暗闇の奥へと落ちていく——。
「ハハハ! 終わりだ! 溶岩の底で灰になるがいい!!」
ヒートマンの高笑いが、遙か上方から小さくなって消えていった。
「う……く……っ……!」
暗闇の底で、杏里は激しい全身の痛みに耐えながら、ゆっくりと目を開けた。
モデルFの装甲は半ば強制解除されかかっており、激しい過負荷のノイズが視界を歪ませている。
「あいつ……なんて熱量なの……。あたしのモデルFの炎が……全く通用しないなんて……」
『杏里、無茶をするな……。奴はマグマの熱エネルギーを直接吸収して自己修復する特殊構造になっている。普通の火力では倒せん……』
モデルFの声も、弱々しくかすれていた。
周囲を見渡すと、そこは激しい爆音と熱気が嘘のように静まり返った、地下最深部——かつてイザナミがサイバーエルフの初期実験を行っていた、棄てられた『高次元データ封印保管庫』であった。
壁面には、古代の文字のような発光プログラミングコードが淡い青白色の光を放っている。
「ここ……は……? 基地の地下に……こんな場所があったの……?」
杏里が傷ついた身体を起こそうとした、その時であった。
保管庫の中央に設置された、水晶のような透過カプセルが……静かに音を立てて光り始めた。
「え……?」
カプセルの内部から溢れ出してきたのは、今まで杏里が見たこともない、あまりにも澄み切った、純白の粒子であった。
それはイザナミの残した禍々しいサイバーエルフとも、ワイリーの泥臭いプログラムノイズとも全く異なる……温かく、慈愛に満ちた、果てしない「母性」を感じさせる圧倒的なエネルギーの波動であった。
光の粒子が空中へと舞い上がり、一人の……可憐で美しく、そして神聖な光を纏った『少女の幻影』のような姿を形作っていく。
言葉を発することなく、ただ静かに杏里を見つめるその光の存在。
その存在が放つ気品と、全次元を包み込むかのような包容力に、杏里は息をのんだ。
(な……なに……この温かい光……? サイバーエルフ……? でも……こんな綺麗なエルフ……見たことない……!)
胸元のモデルFが、これまでにないほど激しく……いや、まるで『恐怖』と『絶対的な敬意』が混ざり合ったかのように戦慄していた。
『こ……この波形は……!? バカな……! なぜこんな地球の地下深くに……!? 全てのサイバーエルフの起源にして、最高峰の……!!』
「モデルF……? 知ってるの、この人を……!?」
光の存在は、言葉を発するかわりに、ゆっくりと……愛おしそうに杏里の頬へと、光でできた手を伸ばした。
その手が杏里の頬に触れた瞬間——。
ズキュゥゥゥゥン……ッ!!
杏里の頭の中に、言葉を超えた直接的な「意思」と「記憶」が流れ込んできた。
*『……悲しまないで、炎の少女よ……』*
頭の中に直接響く、透き通るような美しい声。
*『あなたの心の中にある炎は……ただ物を壊すためのものではありません。大切な仲間を……命を温め、護るための……尊い炎なのです……』*
「あたしの……炎……?」
*『この力を……あなたに託します。未来を……そして、世界を守るために……』*
光の少女の手から、眩いばかりの純白のエネルギーが、杏里の傷ついた身体と、モデルFの胸元へと流れ込んでいく!
激しい損傷を負っていたモデルFの装甲が、一瞬で完全修復されていくどころか、その朱色の装甲が、黄金色に輝く超高熱の『聖なる真紅』へと急速に変貌を遂げていく!
「力……が……湧いてくる……!? なんなの……これ……!? モデルFが……進化していく……!?」
光の少女は、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながら、ゆっくりと光の粒子となって消えていこうとしていた。
そして、最後に——。
杏里の魂の奥深くに、ポツリと、大切な伝言を残して。
*『……いつか……彼に会えたなら……伝えてください……』*
*『……「ゼロに……よろしく」と……』*
「え……? ゼロ……? ゼロって……誰……!?」
杏里が問いかける前に、光の少女の姿は完全に消え去り、あとには黄金のオーラを全身から放つ、新次元のモデルFを身に纏った杏里だけが残されていた。
**【阿蘇地熱発電基地・中央溶岩抽出エリア】**
「ガハハハハ! さて、地下のゴミ掃除も終わったことだし、ワイリー様へ向けてエネルギーの送電出力を最大にするか!」
ヒートマンが中央制御コンソールを操作し、中継タワーの出力を上げようとした、その時であった。
**ズドォォォォォォォンッ!!**
地下保管庫の床が、爆発的な『黄金の火柱』とともに打ち破られた!
「な……なにぃぃぃぃっ!?」
ヒートマンが驚愕して振り返る。
灼熱の火柱の中からゆっくりと舞い戻ってきたのは……全身から太陽のような眩い光を放ち、黄金に輝くナックルバスターを構えた杏里であった!
「お待たせ、ヒートマン。……第二ラウンドよ」
杏里の声には、先ほどまでの焦りは一切なかった。澄み渡るような絶対の自信と、誇りが宿っている。
「バカな……! 生きていただと!? しかも……なんだその姿は!?」
ヒートマンが怒狂し、両腕のハッチを全開にした!
「どんな姿になろうと無駄だ! ワシのマグマの炎で……跡形もなく溶けてなくなれぇぇぇっ! 『超・アトミック・ポム』!!」
阿蘇のマグマ全量を吸い上げた、極大のプラズマ熱線が杏里に向かって解き放たれる!
だが——杏里は避けない。
彼女は静かに右拳を突き出し、その聖なる炎を拳に集中させた。
*(ゼロ……それが誰なのかは分からない。でも……あの人があたしに託してくれたこの炎は……絶対に負けない!!)*
**「プロミネンス・ナックルぁぁぁぁぁっ!!」**
ドガアァァァァァァァン!!!!!
杏里の解き放った黄金の拳圧が、ヒートマンの超・アトミック・ポムを正面から真っ二つに切り裂いた!
そのままの勢いで、黄金の炎の波がヒートマンの巨体を呑み込んでいく!
「ア……アブソルートなオレの炎が……押し戻される……!? なぜだぁぁぁぁっ!? ワイリーさまぁぁぁぁぁっ!!」
バリバリバリッ! ドカァァァン!!
ヒートマンのコアが内側から黄金の爆炎によって粉砕され、阿蘇の基地を支えていた『中継タワー』とともに、激しい爆音を上げて全開で爆砕した!!
上空の瑞穂坂を覆う『Wフィールド』の、第一のエネルギーラインが、今確実に断ち切られた瞬間であった!
**【阿蘇地熱発電基地・崩壊する中央ドック】**
「ハぁ……ハぁ……! やった……あたし……勝ったんだ……!」
黒煙が舞い散る中、変身を解除した杏里が、崩れ落ちるコンクリートの上に膝をついた。
胸元のモデルFは、通常の朱色に戻っていたが、その輝きは以前よりも遥かに深く、温かい光を宿している。
『……杏里、見事だったぜ』
モデルFの声には、深い感銘が込められていた。
『あのお方の……あの伝説の存在の力があったとはいえ、それを乗りこなしたのはお前自身の強い心だ』
「モデルF……教えてよ。あの綺麗な人……そして最後に言っていた『ゼロ』って……一体何者なの?」
杏里が胸元に手を当てて尋ねる。
モデルFは一瞬沈黙した後、静かに語りかけた。
『……今はまだ、全てを語る時ではない。だが……これだけは言える。彼女……かつて世界を破滅仕掛けたダークエルフの呪いからから救われた、全てのサイバーエルフの創世主(母)。そして「ゼロ」とは……あいつの、モデルZの素となった、伝説の赤き英雄だ』
「モデルZの……素……! じゃあ、雄真の……!?」
杏里が息をのむ。
その時、杏里の通信端末がリコの焦った声を拾い上げた。
『杏里さん! 杏里さん! 聞こえますか〜っ!? 九州のエネルギーラインが消滅しました! 中継タワーの撃破、確認です〜っ!』
「リコちゃん! ええ、こっちはバッチリよ!」
杏里がニッと不敵に笑う。
『すごいです! でも……喜んでいる時間はありません! 杏里さんがヒートマンを倒したことで、全国の他の基地にいるナンバーズたちが警戒を最大レベルに引き上げました! 小雪さんたちや雄真さんたちの向かった基地でも、激しい戦闘が始まっています!』
「分かってるわ! すぐに次の目的地へ向かうわよ!」
杏里は空を見上げた。
阿蘇の夜空の向こう……雲の遙か上空に浮かぶ『ワイリー・キャッスル』。
そして、その周囲を飛行するスターフォックスのアーウィンたちの光跡。
「待っててね、雄真……小雪……みんな! あたしも……新しい力を手に入れて、すぐに行くから!!」
杏里は力強く地面を蹴り、仲間たちが戦う次なる戦場へと向かって走り出した。
次元を超えた絆。
受け継がれる伝説の意志。
そして、上空で待つ最終決戦へ向けて、若きヒーローたちの戦いはさらに激しさを増していくのだった——!
**【阿蘇地熱発電基地・上空】**
ドドドォォォン……ッ!!
ヒートマンを爆破し、中継タワーの核となるジェネレーターを粉砕したものの、阿蘇の巨大プラントは未だ終わりを見せていなかった。イザナミの残した暴走ナノマシンと、ワイリーの仕掛けた自爆用サブプログラムが連鎖反応を起こし、基地の地下深くに眠るマグマだまりを強引に励起させていたのだ。
「キャッ……!? なになに……何が起きているのよ!?」
基地の外壁を脱出しようとしていた杏里の足元が、激しい地鳴りとともに大きく陥没した。
黒煙と紅蓮の火柱が基地のあちこちから噴き出し、赤熱した溶岩の川が地表へと溢れ出してくる。足場は次々と溶けて崩れ落ち、熱波が杏里の全身を焼き焦がさんばかりに襲いかかる。
「くっ……! ヒートマンは倒したのに……地熱プラントの暴走が止まらないわ! このままじゃ、基地の地下に残った『中継タワーの第二増幅炉』が爆発して、阿蘇のカルデラごと吹き飛んじゃう……!?」
『杏里、危険だ!』
胸元でモデルFが叫ぶ。
『第二増幅炉の装甲は超高耐圧合金で守られている! お前の残弾火力では、この崩落の中で増幅炉を完全に破壊し切る前にマグマに呑まれるぞ! 一旦撤退するんだ!』
「撤退なんてできるわけないでしょ!!」
杏里は崩れゆくキャットウォークの上で立ち止まり、歯を食いしばった。
「この第二増幅炉をぶち壊さなきゃ、上空のバリアのエネルギー供給は完全に止まらないのよ! 雄真たちが……みんなが上空へ上がれなくなっちゃうじゃないの!!」
「ナックル・バスター・ブラストッ!!」
杏里は渾身の力で黄金の炎を第二増幅炉の隔壁へ叩き込むが、分厚い耐圧装甲は赤く灼熱するだけで、爆砕には至らない。
「くそっ……! 届かない……! あたしの力じゃ……完全破壊には一歩足りないっていうの……!?」
その時であった。
ズバァァァァァンッ!!
阿蘇の分厚い火山灰と暗雲を力任せに突き破り、上空から一筋の巨大な「銀色の影」が超低空飛行で滑り込んできた!
「な……なに……あの巨大な宇宙船……!?」
杏里が目を見開いて見上げたその影——それこそが、ライラット系から次元の壁を越えて飛来したスターフォックス隊の超大型多目的母艦、**グレートフォックス**であった!
**【グレートフォックス・メインブリッジ】**
「フォックス! こちらグレートフォックスのペッピーだ!」
操縦席に深々と座り、ヘッドセットのノイズを振り払いながら通信を入れたのは、スターフォックス隊の生ける伝説——老練なるウサギの操縦士、**ペッピー・ヘア**であった!
『ペッピー! こちらフォックス! 状況はどうなっている!?』
コックピットのメインホログラムに、アーウィンで空中戦を展開しているフォックスの顔が映し出される。
『阿蘇の地熱基地から強力な重力波と熱反応が出続けている! ワイリーの中継タワーはまだ完全に停止していないようだ!』
「ああ、分かっている! 下で戦っているお嬢ちゃん……杏里と言ったな! 彼女が敵のボスを叩き伏せたが、敵の残した増幅炉が暴走して手が出せん状態だ! このままではお嬢ちゃんもろとも基地が溶岩の底だ!」
ペッピーは鋭い眼光で、モニターに映る傷だらけの杏里の姿を捉えた。
「スリッピー! 牽引ビーム(トラクタービーム)の出力を最大にしろ! 下のお嬢ちゃんを今すぐ回収する!」
『了解だよ、ペッピー! 牽引ビーム、最大出力! ターゲット、適合者にロックオン!』
スリッピーがコンソールを叩き込むと、グレートフォックスの船体下部から眩いエメラルドグリーンの光線が照射された!
**【阿蘇地熱発電基地・崩落エリア】**
「え……? えええぇぇぇっ!?」
足場が崩れ落ち、溶岩の海へ落下しかけていた杏里の身体が、突如として温かい光の柱に包まれ、重力を無視してふわふわと上空へ引き上げられ始めた!
「なにこれ……!? 身体が浮いて……!?」
『杏里、案ずるな!』
モデルFの声が響く。
『あの船は……先ほど時空の歪みを越えて現れた、異世界の支援船だ! 我々を救出するつもりだぞ!』
「異世界の……支援船……!?」
光の帯に引っ張られ、杏里の身体はグレートフォックスの下部ハッチへと吸い込まれるように回収された。
ハッチが閉まり、エアロックの減圧音が鳴り響く。
装甲を解除し、肩で息を吐く杏里の前に、ブリッジからのホログラム映像が映し出された。そこに現れたのは、親しみやすくも威厳に満ちたうさぎの老兵——ペッピー・ヘアの顔であった。
『やあ、大丈夫かね、お嬢さん! 無茶な戦いぶりだったが……見事な勇気だったぞ!』
「あ……あなたたちは……!?」
『自己紹介は後だ!』
ペッピーは表情を引き締め、操縦桿を強く握りしめた。
『お嬢さん、君が命がけで削ってくれたおかげで、あの中継タワーの内部エネルギー炉が完全に露出した! ここからは我々スターフォックスの仕事だ!……スリッピー! プラズマ主砲のチャージを開始しろ!!』
『了解! グレートフォックス、超高出力プラズマ主砲・チャージ率80……90……100%! いつでも撃てるよ、ペッピー!』
**【阿蘇地熱発電基地・上空】**
グレートフォックスの巨大な船体下部から、二本の超大型主砲身が重々しい機械音とともに展開された。
砲口に集束していくのは、ライラット系の最新鋭テクノロジーが誇る、眩いばかりの純白のプラズマエネルギー!
「ワイリーとかいう悪の科学者め……我がライラット系の平和を脅かし、若者たちにこんな無茶をさせるなど……容赦はせんぞ!!」
ペッピーが叫び、発射ボタンを力任せに押し込んだ!
**「主砲……発射ァァァァァッッ!!!!!」**
ドガァァァァァァァァァン!!!!!
天空から解き放たれたのは、夜空を昼間のように照らし出す巨大なプラズマの極太光線!
光線は阿蘇のマグマと爆炎を力任せに押し裂き、崩落する地熱基地の最深部……ヒートマンの遺した『中継タワー第二増幅炉』を寸分の狂いもなく正確に打ち貫いた!
バリバリバリバリッ! ドカアァァァァン!!
超高耐圧合金の隔壁など紙屑のように蒸発し、内部のサイバーエルフ増幅炉が完膚なきまでに内部崩壊を起こす!
阿蘇の地熱基地を覆っていた禍々しい「W」のホログラムと赤紫の悪魔的エネルギーが、主砲の圧倒的な威力の前にもくもくと消失していった。
瑞穂坂、そして日本上空を覆う『Wフィールド』の第一の巨大な楔(くさび)が、ここに完全に打ち砕かれたのだ!
**【グレートフォックス・ブリッジ】**
「ターゲットの完全消滅を確認! 阿蘇基地の中継タワー、第二増幅炉ともに沈黙したよ、ペッピー!」
スリッピーが歓声を上げる。
「ふう……やれやれ、何とか間に合ったか」
ペッピーは深く息を吐き、帽子を直しながらブリッジのシートから立ち上がった。
ハッチが開き、少し照れくさそうにブリッジへと足を踏み入れてきたのは、無事に救出された蒼井杏里であった。
「あの……助けてくれて、ありがとうございました! あなたたち……異世界から来てくれたんですか?」
「ああ」
ペッピーは温かい眼差しで杏里を見つめ、優しく頷いた。
「ワシはスターフォックス隊のペッピー・ヘアだ。君たちの世界で起きている時空の歪みが、私たちのライラット系にも影響を与えていてね。ペパー将軍の要請で、君たち『適合者』とロックマンを支援しに来たのさ」
「スターフォックス……」
杏里は胸に手を当て、力強く頷いた。
「ありがとうございます、ペッピーさん! あなたたちのおかげで、九州のタワーを完全にぶち壊せました! これで……上空のワイリー城へのルートがひとつ開いたわ!」
『フォックスよりグレートフォックスへ!』
通信画面に、アーウィンを操縦するフォックスの顔が戻ってきた。
『ペッピー、見事な援護射撃だった! 地上の「W」のエネルギー波形が、九州エリアから完全に消失したのを確認したぞ!』
「フォックス! お嬢さんも無事回収したぞ! だが、休んでいる暇はない。各地の適合者たちも、ワイリーのナンバーズと激闘を繰り広げている最中だ!」
「了解だ!」
フォックスの目が鋭く輝く。
『君の活躍は、上空から見せてもらった! 君の渡したバトンは、必ず他の仲間たちにも届く! 俺たちも全力で君たちをサポートするぞ!』
「ええっ! 任せて!」
杏里は拳を握りしめ、窓の外に広がる星空を見上げた。
阿蘇の基地は静まり返り、瑞穂坂の上空を覆っていた不気味なバリアは、確かにその強度を減らし始めている。
自分が手に入れた、あの神聖で温かい炎の力。
そして、異次元から駆けつけてくれたスターフォックスという心強い味方。
(雄真……小雪……みんな! あたしは一足お先にひとつ片付けたわよ! 絶対に負けないで……! 今度はあたしが、みんなを助けに行くんだから!!)
漆黒の宇宙を突き抜け、果てしない決戦の地へ向かって。
グレートフォックスは翼を輝かせ、次なる仲間が待つ戦場へと向かって超音速で発進していった——!