ロックマンゼクス&はぴねす!2〜激闘!超次元戦争〜   作:騎士誠一郎

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第6話 深海の死闘

**【太平洋上・南鳥島沖数百キロ・旧海洋資源採掘プラント】**

果てしない闇が広がる太平洋の真っ只中。

荒れ狂う暴風雨と漆黒の波濤の底に、かつて人類が夢見た海洋都市の残骸——『旧第7海洋資源採掘プラント』が静かに沈んでいた。

だが今、その水深五百メートルの暗黒世界は、禍々しい紫色の発光ラインと「W」の刻印によって塗り替えられていた。

瑞穂坂から放たれた時空歪曲波を受け、ワイリーの手によって極秘裏に再起動されたこのプラントは、太平洋の海流エネルギーを極限まで汲み上げ、上空の『Wフィールド』へ膨大な電力を送り続ける「第二の心臓」と化していたのである。

その絶対零度の水界を、音もなく切り裂く深緑の影があった。

水流を自在に操る氷と水の装甲——『モデルL』を纏う少女、小雪であった。

「……冷たい。でも、この冷気があたしの意識を研ぎ澄ませてくれる……」

モデルLの流線型バイザーの内部で、小雪の涼やかな瞳が光る。

彼女の背後に広がる二条の光の尾針が、水分子を励起させ、魚のように滑らかな無音推進を生み出していた。

『小雪、警戒を怠るな』

胸元から、モデルLの静謐ながらも鋭い声が届く。

『この深海プラントを取り巻く水圧は異常だ。通常の潜水艇なら一瞬で水圧で潰される。ワイリーの奴、海水エネルギーとイザナミの残したナノエルフを融合させ、海流そのものを殺戮兵器に変えているぞ』

「分かっているわ、モデルL。……杏里さんも、すももちゃんも、自分の任務を完璧に果たした。次はあたしの番……この海の楔を断ち切ってみせる」

小雪は右手に長大な双頭の槍『ハルバード』を生成すると、プラントの第4注排水バルブの暗闇へと静かに潜入した。

 

**【海底プラント内部・中央高圧冷却プール】**

バルブを抜け出た小雪を待っていたのは、無数の自動防衛魚型メカと、巨大な水圧で侵入者を押し潰そうとする狂暴な濁流のプールであった。

「邪魔……そこをどきなさい!」

小雪はハルバードを軽やかに旋回させ、周囲の水流を激しい「氷の刃」へと変換した!

**「アイス・ブレード・サーキュレーション!」**

シュババババッ!

鋭い氷の結晶が濁流を凍りつかせ、迫り来るメカ魚群を内部回路ごと一瞬で凍結・粉砕していく! 砕け散る氷晶が暗い水中で幻想的な青い光を放つ中、小雪は一直線にプラントの中核——海洋エネルギー増幅炉を目指す。

しかし、その時。

ゴォォォォォォォン……ッ!!

深海の重苦しい水圧を揺るがす、潜水艦のソナー音のような重低音がプール全体に響き渡った。

「カッカッカ! 綺麗なお魚さんが飛び込んできたと思えば……モデルLの適合者か!」

水深数十メートルの暗闇から、巨大な魚雷の形をした無骨な超重量級ボディが、圧倒的な推進力で浮上してきた。

胸部には刻まれた「W」の刻印。頭部のハッチからは、巨大なミサイルの先端が覗いている。

「ワイリー様が誇る深海の絶対王者……**ダイブマン**とはワシのことだ! この水深五百メートルの深海で、ワシに勝てる者など存在せんわ!」

ダイブマンの背部スクリューが激しく回転し、プール全体に巨大な渦潮(うずしお)が発生した!

「なっ……!? 水流が……乱される……!?」

小雪の身体が、巨大な海流の渦に巻き込まれ、体制を崩される!

「カッカッカ! 逃がさんぞ! 『ダイブ・ミサイル』発射ぁぁぁっ!」

ダイブマンの胸部と肩部から、水流を自動追尾する高威力魚雷が一斉に解き放たれた!

ズズズズズズトンッ!!

「くっ……! 『アイス・シールド』!」

小雪は間一髪で氷の盾を生成するが、深海の高水圧と魚雷の直撃を受け、盾ごと大きく吹き飛ばされた!

ドカァァァンッ!

「きゃああああっ!?」

耐圧壁に背中を強く打ち付けられ、小雪の口から小さな気泡が漏れ出る。モデルLのバイザーにノイズが走り、深海の冷気が痛烈に肌を刺した。

「ハハハ! モデルLの氷の力など、この莫大な太平洋の水量とワシの耐圧装甲の前には無力! ここがお前の冷たい墓場だ!」

ダイブマンが全速力で突撃態勢に入る!

小雪は激痛に耐えながら、ハルバードを握り直した。

(ダメ……あたしがここで折れたら……みんなへ送るエネルギーの供給を止められない……! どんなに冷たい海の底でも……あたしの心は凍りつかない!!)

 

**【太平洋上・グレートフォックス・格納庫】**

阿蘇の地熱基地を爆撃し、杏里を無事に救出したスターフォックス隊の超大型母艦グレートフォックス。

その広大な格納庫の最下層で、機械アームの駆動音とスリッピーの甲高い声が響き渡っていた。

「ペッピー! 各部バラストタンクのチェック完了! 超高水圧耐性シールド、正常作動! これなら水深一千メートルの深海でも問題ないよ!」

「よし、上出来だスリッピー!」

エアロックのタラップを下りてきたペッピーが、不敵に笑う。

その中央カタパルトに鎮座していたのは、スターフォックス隊が誇る超時空潜水艇——白とブルーのカラーリングが眩い**ブルーマリン**であった!

コックピットのキャノピーが開き、ヘルメットを抱えたフォックス・マクラウドが姿を現す。

「フォックス」

ペッピーが真剣な眼差しでフォックスを見上げた。

「下の海で戦っている小雪という少女……モデルLの適合者だ。ダイブマンの巨大プラントと交戦中だが、敵の水中火力と水圧に苦戦している。ワシらのブルーマリンで援護に向かう!」

「了解です、ペッピー!」

フォックスは力強く頷き、ブルーマリンの操縦席へ深々と乗り込んだ。

「地上、上空、そして深海……ワイリーの好きにはさせない。瑞穂坂の仲間たちが繋いでくれたバトンを、俺たちが水中でも受け取る!」

『フォックス、気をつけてね!』

通信機から、アーウィンで上空の警戒にあたるファルコとクリスタルの声が届く。

『相手は海そのものを味方にしているメカだ。無茶はするなよ!』

「ああ、分かっている!……ブルーマリン、発進準備完了! ペッピー、発進シークエンスをお願いします!」

「よし! ブルーマリン、静かに出撃せよ! 地球の海の底で待つ……新しい仲間のために!!」

ガラガラガラ……バシューッ!!

グレートフォックスの底部ハッチが開放され、漆黒の太平洋へ向けて、蒼き潜水艇ブルーマリンが一直線に水中へと投下された!

 

**【水深五百メートル・太平洋上空からの水界】**

ドボォォォォンッ!!

夜の暴風雨が吹き荒れる太平洋の表面を破り、ブルーマリンは深緑の光跡を描きながら、驚異的な速度で水中へと没していった。

「こちらフォックス! 水中ソナー、感度良好! 水深三百……四百……! 前方に巨大な建造物の反応と、強力な戦闘波形をキャッチ!」

ブルーマリンのコックピット内で、フォックスの瞳が鋭く光る。

フロントモニターには、暗黒の水中に浮かび上がる巨大な旧第7プラントと、その内部でダイブマンの猛攻に晒されている小雪のエネルギー反応がはっきりと映し出されていた。

「待っていてくれ、若きヒーロー! 今、スターフォックスの力が届く……!!」

フォックスは操縦桿を握り直し、ブルーマリンの特殊兵器——『スマート魚雷』のチャージボタンを押し込んだ!

青白いプラズマエネルギーが、水中艇の先端に収束していく。

——深海の絶対的な孤独と絶望の中で戦う少女。

——宇宙を超えて、深海の底まで駆けつけたきつねのエースパイロット。

次元の壁を穿ち、空から海へと繋がれた未知なる絆が、今まさに太平洋の最深部で交錯しようとしていた——!

 

**【海底プラント内部・中央高圧冷却プール】**

「カッカッカ! 終わりだ、モデルL! この深海の莫大な水圧とダイブ・ミサイルで、屑鉄にしてくれるわぁぁぁっ!」

ダイブマンの胸部ハッチが限界まで全開し、高濃度ナノエルフで強化された三連装の超大型魚雷が、重苦しい水音とともに解き放たれる! 渦巻く水流と高水圧が小雪の四方を塞ぎ、ハルバードを構える彼女の装甲は激しいキシミ音を上げていた。

「くっ……! 水圧が……! 身体が……動かない……っ!?」

モデルLの氷のシールドが、水圧に耐えかねてメリメリと亀裂を深めていく。小雪の澄んだ瞳に、迫り来る三つの死の影が映り込んだ。

(ダメ……なのかな……。わたし……ここで……)

死線が小雪の首筋を凍りつかせかけた、まさにその瞬間——。

**ズバアァァァァァンッ!!**

耐圧ガラスで覆われたプラントの外壁を、一筋の青白いプラズマ光線が力任せに打ち破った!

「な……なにぃぃぃぃっ!?」

ダイブマンが驚愕して旋回する。

濁流となってみなぎる水界を裂いて躍り出たのは——白と青の洗練されたシルエットに、輝く黄色い翼を備えた超時空潜水艇、**ブルーマリン**であった!

「こちらフォックス! 諦めるな! サポートに入るぞ!!」

ブルーマリンのスピーカーから響き渡る、凛として温かいフォックス・マクラウドの声!

「スマート魚雷、マルチロックオン……発射ぁぁぁっ!!」

ドドドドドォォォン!!

ブルーマリンの砲口から放たれた数発の誘導魚雷が、ダイブマンの放ったダイブ・ミサイルを水中で完璧に迎撃・全弾爆砕! 水中で激しいプラズマの爆炎が咲き乱れ、小雪を抑え込んでいた異常水圧の渦を一瞬で打ち消した!

「あ……あなた……は……!?」

小雪が息をのんで見上げる前で、ブルーマリンは驚異的な機動性で水流を滑り、ダイブマンの巨体を取り囲むように急旋回してみせる。

「異世界の船……!? どこからこんな性能の潜水艇が乱入してきやがったぁぁっ! 邪魔をするなァ!」

怒狂したダイブマンが背部スクリューを全開にし、ブルーマリンへ向けて全速力で突撃(ダイブ)を打つ!

「小雪! 敵の巨体で機動力が落ちている! 側面から核心(コア)を狙え!」

フォックスの叫びが小雪の胸に届く!

「……はいっ! ありがとうございます、フォックスさん!!」

小雪の瞳から迷いが消え去った。

ブルーマリンが放ったスマート魚雷がダイブマンの足足を乱し、その巨大な耐圧装甲の継ぎ目を剥き出しにする。

「モデルL……あたしたちの、本当の冷気を見せてあげる!!」

小雪はハルバードを頭上で高速回転させ、周りの海水を一瞬で巨大な「氷結の槍」へと凝縮させた!

**「ギガ・フリーズ・ハルバードォォォォッ!!」**

シュババババァァァンッ!!

小雪の解き放った氷結の一撃が、ブルーマリンの誘導射撃に誘導されるようにして、ダイブマンの露出したメインコアへ完璧に突き刺さった!

「ガハッ……!? な……なにぃ……!? 私の……私の耐圧装甲が……凍りついて……爆裂するぅぅぅぅっ!?」

バリバリバリバリッ! ドカァァァァァン!!

氷結とプラズマの二重の衝撃波がダイブマンの内部回路を激しく破壊!

ダイブマンは断末魔の悲鳴とともに粉々に爆破され、太平洋の深海プラントを支えていた海洋エネルギー増幅炉もろとも、真っ青な爆炎の中に消滅した!

 

「警告。プラント基幹構造の崩壊を確認。全ブロック水没まであと三十秒」

ダイブマンの爆滅に伴い、深海プラントの外壁が次々と水圧に耐えかねて崩砕を始めた。膨大な海水が怒涛の勢いで押し寄せ、崩れ落ちる鉄骨が小雪の頭上を襲う!

「キャノピーに乗れ!脱出するぞ!」

ブルーマリンが小雪の目の前へピタリと滑り込み、アームを展開して彼女の身体をしっかりと保持した。

「乗りました! フォックスさん、お願い!」

「了解! 全速前進、面舵一杯! 海上へ緊急浮上だ!!」

ズバババババッ!!

ブルーマリンはスクリューを限界突破で回転させ、崩落する深海プラントを置き去りにして、漆黒の水中を垂直に急上昇した!

——ドバァァァァァンッ!!

夜の嵐が吹き荒れる太平洋の海面を破り、ブルーマリンと小雪は月光の射し込む大空へと舞い戻った!

背後の海面が大きく盛り上がり、激しい渦潮とともにワイリーの海底プラントが完全に太平洋の底へと呑み込まれていく。

瑞穂坂、そして地球全体を覆っていた悪魔のバリア『Wフィールド』の、第三の巨大なエネルギーラインが今、完全に断たれた瞬間であった!

「ふう……間一髪だったな」

キャノピーが開き、ヘルメットを外したフォックスが温かい笑顔を向けた。

「……助けていただいて、本当にありがとうございました。フォックスさん……スターフォックスの皆さん」

小雪は装甲を解除し、深く礼をした。その頬には、死闘を潜り抜けた安堵の笑みが浮かんでいた。

**【太平洋上空・グレートフォックス・メインブリッジ】**

「やあやあ! 無事でよかったよ!」

グレートフォックスのブリッジへ迎え入れられた小雪を、スリッピーとペッピーが温かく迎えた。

そこには、阿蘇の戦いを終えて一足先に回収されていた蒼井杏里の姿もあった。

「小雪っ! 無事だったのね! よかったぁぁぁっ!」

「杏里さん! はい、フォックスさんたちのおかげで、なんとかタワーを撃破できました!」

二人は強く抱き合い、お互いの無事を喜び合った。

「これで九州、中部、そして太平洋……三つの主要な『Wフィールド』の中継タワーが沈黙した。上空のワイリー城を覆うバリアは、確実に半減しているぞ」

ペッピーがホログラムマップを見ながら力強く頷く。

「……ねえ、小雪」

ふと、杏里が真剣な表情を浮かべ、胸元のモデルFに手を当てた。

「阿蘇の基地で……あたし、信じられないものを見たの」

「信じられないもの……?」

小雪が首を傾げる。

杏里は、地下の静寂の中で出会った『純白の光を纏った少女のエルフ』のこと、そして彼女から与えられた黄金の炎の力について、静かに語り始めた。

「あの人は……今まであたしたちが見てきたどんなサイバーエルフとも違っていた。すごく温かくて、優しくて……まるで全ての命の『お母さん』みたいな光だったの。モデルFも言ってた……『全てのサイバーエルフの創世主』だって」

「サイバーエルフの……母……!?」

小雪が息をのむ。

「うん。そしてね……その人が消える直前、あたしにこう言ったの」

杏里は小雪の目をまっすぐに見つめ、一字一字を噛みしめるように紡いだ。

「……『いつか……彼に会えたなら……伝えてください……「ゼロによろしく」と』……って」

「ゼロ……!?」

ブリッジにいた全員に、衝撃が走った。

「ゼロって……誰のこと……!?」

小雪の問いに、杏里は深く頷いた。

「ええ。きっとそう……。雄真が持っているモデルZ……その元となった伝説の戦士『ゼロ』。あの謎のエルフは、ゼロのことを知っていた……ううん、彼と深くて強い『絆』で結ばれていたんだわ」

「ゼロか……」

操縦席のフォックスが、遠い瑞穂坂の空を見つめながら低く呟いた。

「時空の歪みが引き寄せたのは、俺たちライラット系の人間だけじゃない。過去から……あるいは別の次元から、世界を救おうとする数々の英雄たちの想いが、瑞穂坂に集まりつつあるんだ」

「……雄真くん」

小雪が胸の前で手を組み、祈るように呟いた。

「雄真くん……私たちには、まだあたしたちの知らない……果てしない運命と期待が託されているのね……」

「よしっ!」

杏里がポンと自分の頬を叩き、勝気な笑顔を復活させた!

「しんみりしてる暇はないわよ! すももちゃんも無事にタワーをぶち壊したってリコちゃんから連絡があったわ! 残るは瑞穂坂の本隊……雄真とロックマンたちの戦いよ!」

「はい……! あたしたちも、すぐに雄真くんたちの元へ向かいましょう!」

グレートフォックスの巨体が翼を翻し、太平洋上空の雲海を突き抜けて、決戦の地・瑞穂坂の空へと一直線に舵を切る。

引き寄せられる絆。受け継がれる伝説の意志。

そして、謎のサイバーエルフが遺した「ゼロ」への言葉を胸に——若きヒーローたちとスターフォックスの戦いは、ついに物語の核心、最終決戦へと向かって加速していくのであった!

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