大学職員の僕たち   作:房吉

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~1敗目~ 辞令は突然に

「――で、温水さん。今年度の抱負とかあります?」

 

 四月一日、午前八時五十分。

 入試広報課の島で、俺は湯気の立つマグカップを両手で包んでいた。

 

「あるよ。今年こそ何事もなく過ごす」

 

「去年も同じこと言ってましたね」

 

「去年は未達だったからな。継続案件だ」

 

 向かいの席から身を乗りだしてきたのは大貫響。入職三年目、二十六歳。

 人の話に首を突っこむのが趣味で、しかも悪気がない。一番たちの悪い種類だ。

 

「温水さん、去年オープンキャンパスで三千人さばいて、理学部の入試も回して、それで『何事もなかった』って言い張るのは無理ないですか」

 

「事故がなければ何事もないんだよ。大学職員の平和ってのはそういうものだ」

 

「うわ、主任っぽい」

 

「主任だからな」

 

「いまの、切り抜いたら伸びますよ。『大学職員の平和とは』ってテロップつけて」

 

「何をどこに切り抜くんだ」

 

「ショート動画です」

 

「するな」

 

 こいつは何でも実況と配信に変換する。二十六歳の脳は、初期設定がそうなっているらしい。

 

 マグカップに口をつける。四月一日の朝のコーヒーは、一年でいちばん苦い。

 新年度は始まったばかりで、終わりは三百六十四日先にある。

 

 窓の外では、正門の桜が律儀に咲いている。

 入学式まであと五日。この時期のキャンパスは、掃除の行き届いた無人の劇場みたいだ。

 

「今日は入学式の準備の割り振りと、あとは新任の受け入れですよね」

 

 大貫がスケジューラを覗きこみながら言う。

 

「中途の人、来るんでしたっけ」

 

「らしいな。庶務からメール来てた」

 

「どんな人です?」

 

「知らん」

 

「調べないんですか。温水さん、そういうの好きでしょ」

 

「好きじゃない。二十年後に定年退職するまで、俺は静かに暮らしたいんだ」

 

「二十六年後ですよ。定年六十なんで」

 

 大貫が電卓を叩くみたいに即答してくる。

 こいつのこういうところが本当によくない。

 

「そういえば温水さん、うち来て何年目でしたっけ」

 

「十二年目」

 

「で、入試広報が五年目でしょ。その前は?」

 

「会計三年、大学病院の医事課一年、病院の用度管財課三年」

 

「医事課だけ一年なの、なんかありました?」

 

 あった。

 診療報酬の算定というのは、要するに一円単位で人の命の値段を数える仕事だ。適当な性格の人間がやると人が死ぬ。俺は半年でそれを理解して、残りの半年を反省に使った。

 

「向いてなかっただけだ」

 

「うわ、はぐらかした」

 

「用度は楽しかったぞ。業者さんと院内の板挟みで、毎日誰かに怒られてた」

 

「それのどこが楽しいんですか」

 

「怒られ方に癖があってな。そこを覚えると、だいたい丸く収まる」

 

 大貫が心の底から嫌そうな顔をした。

 

「温水さんのそれ、才能じゃなくて後遺症でしょ」

 

 ――否定はしない。

 人の顔色を読む技術というのは、たいてい、読まないと生きていけない時期を通ってきた人間が身につけるものだ。

 

「つーか温水さん、去年の後半おかしかったですよね」

 

「おかしいのは会計課だ。十二月末で一人辞めたんだぞ」

 

「それで年明けから会計課主任を併任でしょ。決算処理と来年度予算のど真ん中で」

 

「そう」

 

「そのあいだ、理学部の入試も丸ごと回してましたよね」

 

「回した」

 

「なのに温水さん、二月も三月も定時で帰ってたじゃないですか。俺、あれいまだに納得いってないんですよ」

 

 納得いかないと言われても困る。

 やることが二倍になったら、やらなくていいことを二倍見つければいい。それだけの話だ。

 

 決算の突合は、数字さえ合えばいい。合わせ方までは誰も見ない。

 入試は一人でも取りこぼしたら終わる。だからそこにだけ全部置いた。

 

 あとはほどほどにした。

 ほどほどにしたことは誰にもばれていない。ばれていないということは、ほどほどでよかったということだ。

 

「要するに、手の抜き方が上手いだけだ」

 

「柏木部長がなんて言ってたか知ってます?」

 

「知らん」

 

「『あいつはちゃらんぽらんだが、仕事はできる男だ』ですって」

 

「……前半、いる?」

 

「部長的には前半が本体らしいですよ」

 

 どういう人事評価だ。

 

 パソコンにログインして、まずグループウェアを開く。

 未読が四十七件。年度替わりの回覧、規程改正の通知、システム停止の予告。

 全部あとで読むことにして、俺は共有フォルダの「入試広報課_年間計画」を開いた。

 

 四月、指定校推薦の依頼校リスト更新。

 五月から高校訪問。六月に進学相談会と入試説明会のピーク。

 八月中旬にオープンキャンパス。九月から総合型選抜。年明けに共通テスト、二月に一般入試、三月に繰上げ合格。

 

 ――一年が、もう全部そこに書いてある。

 書いてあるということは、それ以上のことは起きないということだ。俺はそれが好きだった。

 

「温水君、ちょっといい?」

 

 声のほうを見ると、鷲尾課長が席から手招きしている。

 四十代後半。剣道の有段者で、姿勢がいつも定規で引いたみたいにまっすぐな人だ。

 この人の下に来て五年になるが、いまだに一度も理不尽なことを言われたことがない。それはそれで少し怖い。

 

「今日から来る中途の方ね。OJT、あなたにお願いしたいの」

 

 俺はマグカップを置いた。

 

「大貫のほうが年齢近いですし、若手の指導も経験になるかと」

 

「なるほど。ちなみに大貫君、去年の指定校の依頼文、宛名間違えて何校に送った?」

 

「四校です」

 

「四校だそうよ」

 

「事実は認めますけど言い方!」

 

 大貫が叫ぶ。

 鷲尾課長は表情ひとつ変えずに書類の束を差しだしてきた。

 

「それに人事が気を利かせてくれたみたい。あなたと同い年で、同じ高校なんですって」

 

「……高校?」

 

 嫌な予感がした。

 根拠のない嫌な予感というものは、たいてい根拠がある。

 

「愛知の県立高校。ツワブキ高校って書いてあるわね。あなたのご出身よね」

 

「そうですけど」

 

 県立ツワブキ高校。一学年三百二十人。十六年前に俺が卒業した学校だ。

 同学年に三百二十人いれば、同じ職場に流れ着く確率だってゼロではない。統計的にはむしろありうる。

 

 そう自分に言い聞かせながら、俺は書類を受け取った。

 

 一枚目に、庶務課が作った受け入れ用の名簿。

 所属、入試広報課。職名、職員。氏名の欄に、こう印字されていた。

 

 馬剃天愛星。

 

 どくん、と心臓が跳ねた。

 三十四歳が、名簿の一行で固まっている。冷静に考えると、かなり気持ち悪い絵面だ。

 

 落ち着け。同姓同名という可能性もある。

 ……ない。「馬剃」で「天愛星」だぞ。この字面、全国に何人いるんだ。

 

 これが深夜アニメなら、十六年ぶりの再会は第一話のクライマックスに置く場面である。

 あいにく現実は四月一日の事務室で、BGMは複合機の紙詰まりアラートだった。

 

「なんですかその名前。えーと……うましゃく? あまあい……ぼし?」

 

 いつの間にか背後から覗きこんでいた大貫が、首をひねる。

 

「ばそりてぃあらさん」

 

 言ってから、しまったと思った。

 

 背中に、じわっと嫌な汗が浮かぶ。

 大貫が目を丸くする。

 

「え、読めるんですかそれ」

 

「……なんとなく」

 

「なんとなくで『てぃあら』は出てこないでしょ。俺、いま人生ではじめて『てぃあら』って読み方に出会いましたよ」

 

「難読でよくある字面だろ」

 

「ないですって」

 

 鷲尾課長がわずかに眉を上げた。

 この人は目ざとい。俺は書類をそろえるふりをして、視線を手元に落とす。

 

「じゃあ温水君、九時半に部長が連れてくるから。よろしくね」

 

「……はい」

 

 課長が席に戻る。

 大貫はまだ何か言いたそうにしていたが、電話が鳴ったのでそっちに引っ張られていった。

 

 俺は自分の席に座り直し、名簿をもう一度見た。

 

 馬剃天愛星。

 

 十六年ぶりに見る文字だった。

 最後に見たのは高校の卒業アルバムで、そのアルバムは実家の押し入れの、たぶん一番下の段にある。

 

 ――逃げるように東京に来た。

 誰にも言わずに、返事もせずに。

 

 その言い方はさすがに自分に酔っている気がするので、俺はいつも脳内で「まあ、いろいろあって」に変換することにしている。

 十六年やっていれば、変換はほとんど自動になる。

 

 俺はブラウザを閉じ、マグカップの底に残ったコーヒーを飲み干した。

 苦かった。

 

 

 

 

 九時二十五分。

 

 俺は画面に向かって、仕事をしている顔を作っていた。

 

「温水さん」

 

「なんだ」

 

「さっきから五分、同じセルを選択したままですけど」

 

「……確認してるんだよ」

 

「B2セルを? 空白ですよ」

 

「空白かどうかを確認してた」

 

「新手の瞑想ですか」

 

 うるさい。

 三十四歳にもなると、緊張は指先ではなく、マウスの静止に出るのだ。

 

 

 

 

「――こちら、入試広報課です」

 

 九時三十分。

 柏木部長が扉を開けて、その後ろから一人の女性が入ってきた。

 

 最初に見えたのは、靴の踵の位置だった。

 両足がきれいにそろっている。立っているだけなのに、そこだけ床の目地が一本増えたみたいに見える。

 

 次に、髪。後ろで低くまとめてある。

 高校の頃もきつく引っつめていたが、たまに、頭の横でちょこんと結んでくる日があった。それはもうない。

 

「本日付けで着任されました、馬剃天愛星さんです」

 

「馬剃と申します。本日よりお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします」

 

 声が、記憶より低かった。

 いや、低いんじゃない。抑えているのだ。息を使う量を、あらかじめ決めてから喋っている。

 

 課の全員が立ち上がって、拍手のような会釈のような、曖昧な音が起きる。

 俺も立った。立つのが半拍遅れた気がする。

 

 馬剃さんが顔を上げる。

 視線が課内を右から左へ流れて、俺のところで止まった。

 

 

 

 

 二秒。

 

 

 

 

 長くはない。会議で誰かが資料をめくるのと同じくらいの時間だ。

 でも俺には、その二秒のあいだに十六年が全部入っているように思えた。

 

 ――というか、この人。

 

 目が、はっきりと開いていた。

 驚いていた。演技ではない驚き方だった。

 

 ……聞いてなかったのか。

 

 俺は十分前に名簿を見た。この人は、いま、この瞬間に知ったのだ。

 

 その差が十分ぶんしかないことに、俺は少し申し訳ない気持ちになった。

 なぜ申し訳ないのかは、自分でもよく分からなかった。

 

 彼女は瞬きをして、それから何事もなかったように視線を進めた。

 完璧だった。

 

「馬剃さんはね、文部科学省にいらしたのよ」

 

 鷲尾課長が言うと、島の空気がふわりと動いた。

 

「文科省? 本物の?」

 

 大貫の声がひっくり返る。

 

「本物以外に何があるのよ」

 

「いや、なんか、こう……偽物といいますか」

 

「十年おられて、初等中等教育局と高等教育局のご経験があるそうよ」

 

 おおー、と誰かが漏らした。

 主査の桑原さんまでが老眼鏡を上げて「そりゃすごい」と言っている。

 

 六文字である。

 俺の観測では、桑原さんの一日の発話量は平均七文字だ。初日から予算を使いすぎではないだろうか。

 

「うちの大学、指定申請とか補助金の書類でいつも死んでるじゃないですか。えっ、それもう救世主では?」

 

「大貫君、初日から人を拝むのやめなさい」

 

 笑いが起きる。

 和やかだった。初日の受け入れとしては満点に近い空気だった。

 

 ――そのとき、俺は見てしまった。

 

 褒められた瞬間、馬剃さんの表情が動いた。

 崩れたんじゃない。

 むしろ逆で、いまついていた表情の上に、もう一枚、きれいな表情が貼られた。

 

 貼り替えは〇・五秒くらいだったと思う。

 貼り終えたあとの彼女は、完璧に微笑んでいた。

 

「恐れ入ります。ですが、現場のことは何も存じません。一から教えていただく立場ですので」

 

 声も完璧だった。

 誰も気づいていない。

 

 ……俺も、気づかなければよかった。

 

 

 

 

 名刺交換の段になって、俺は自分の名刺入れを取りだした。

 革の角が擦り切れている。用度管財課にいた頃に買ったやつだから、もう七年目だ。

 

「入試広報課の温水と申します。よろしくお願いします」

 

 差しだした名刺は、角が少し折れていた。

 昨日のうちに補充しておけばよかった。

 

「頂戴いたします」

 

 馬剃さんは両手で受け取り、目線の高さで文字を確認してから、丁寧にしまう。

 そして――手が動いた。

 

 右手が、上着の内側に入りかけて、途中で止まる。

 名刺入れを取りだす動作だ。あるはずのない名刺入れの。

 

「……申し訳ありません。名刺はまだ発注中でして」

 

「あ、そうですよね。初日ですもんね」

 

 俺はそう言った。

 言いながら、その手の動きから目が離せなかった。

 

 十年間、一日に何度も繰り返してきた動作なのだ。

 役所の人間の身体には、名刺を出す動きが染みついている。もう名刺を出す必要のない場所に来ても、身体だけが先に動く。

 

 馬剃さんは静かに手を下ろした。

 

「失礼いたしました」

 

「いえ」

 

 それだけのやり取りだった。

 それだけのやり取りなのに、俺は妙に喉が渇いていた。

 

「そうだ、温水さん」

 

 背後から大貫の声。

 

「さっき馬剃さんの名前、一発で読んでましたよね。なんでですか」

 

 ――来た。

 こいつは本当に、悪気がない。

 

 課内の視線がゆるやかに集まってくるのが分かる。

 鷲尾課長が「あら」という顔をした。

 

「そういえばお二人、同じ高校なんですって」

 

 空気が変わった。

 変わり方に、俺は覚えがある。

 

 新しく来た女性職員と、既存の男性職員に接点があると分かったときの、あの空気。

 悪意はない。悪意がないぶん、誰も止めない。

 

 それは三か月で「あの二人、高校の同級生らしいよ」になり、半年で「けっこう仲いいらしいよ」になり、一年で本人たちの知らないところで完成する。

 俺は用度管財課で三年、そういうものを外から嫌というほど見た。噂の被害を先に食うのは、たいてい後から来たほうだ。

 

 考える時間は、なかった。

 

 喉が、ひやりと冷たくなる。

 

「知り合い程度ですよ」

 

 俺は言った。

 

「学年が同じだっただけです。三百二十人いましたから」

 

 自分の声が、思ったより平坦だった。

 

 半拍の間があった。

 

「……はい。そんな感じです」

 

 馬剃さんが言った。

 

 俺は彼女のほうを見なかった。

 見なかったので、彼女がどんな顔をしていたかは分からない。

 

 胸の奥のあたりが、ずんと重くなった。

 重くなったが、他にやりようがなかった。俺はそう思うことにした。

 

「なーんだ。じゃあ名前読めたのはただの偶然ですか」

 

「偶然だ」

 

「温水さん、偶然にしては胸張りすぎでしょ」

 

「胸は張ってない」

 

 笑いが起きて、空気が流れた。

 流れてくれてよかった。俺はそう思うことにした。

 

「じゃあ温水君、あとはお願いね。席の設定と、当面の予定の説明を」

 

「はい」

 

 課長の一声で、みんなが自分の仕事に戻っていく。

 

 俺は馬剃さんの席へ案内した。

 窓際から二列目。俺のすぐ隣だった。

 人事は本当に気を利かせたらしい。机の端と端が、三十センチも離れていない。

 

 ……近い。

 

 異性と隣の席になって動揺するイベントは、高校時代に済ませておくものである。

 三十四歳に二周目が配信されるとは聞いていない。しかも今回は、席替えの抽選すらなかった。

 

 この課の島は、二人ずつ向かい合わせで並んでいる。

 俺の隣が空いていたのは、去年まで座っていた人が異動したからだ。

 

 つまり、これは事故ではない。

 人事が「同じ高校の同い年」を並べただけの、ごく普通の配置である。

 

 普通の配置である。

 俺は自分にそう言い聞かせて、椅子を三センチだけ左にずらした。

 

 

 

 

「まずパソコンですね。初期パスワードがこれで、初回ログインで変更してください」

 

「はい」

 

「グループウェアはここから。スケジューラは全員公開なので、外出のときは必ず入れてください。入れないと、電話を取った人間が困ります」

 

「承知しました」

 

 馬剃さんは手帳を開いて、書きこみはじめた。

 

 その手帳を見て、俺は一瞬、手を止めそうになった。

 

 黒い革表紙の、細長い手帳。

 高校のとき、彼女がいつも生徒手帳と一緒に持ち歩いていたのと、同じブランドだった。

 

 同じブランドの、たぶん十六冊目。

 角が擦れて、革が白くなっている。

 

 ――何冊目ですか、とは聞けなかった。

 知り合い程度の人間は、そんなことを知らないからだ。

 

「共有フォルダはZドライブです。課の資料は全部ここに入ってます。過去五年分の高校訪問記録と、進学相談会の実施報告と、あと歴代のオープンキャンパスの反省会資料」

 

「反省会の資料まで残されているんですね」

 

「残さないと同じ失敗をしますから」

 

 馬剃さんの手が、少しだけ速くなった。

 

「素晴らしいと思います。文科省では、記録は残っていても、参照されないことが多かったので」

 

「うちは人が少ないんで。参照しないと死にます」

 

「……なるほど」

 

 彼女はうなずいて、また何か書きこんだ。

 

 メモの取り方が異常だった。

 俺が喋った言葉を、要約せずにそのまま書いている。しかも追いついている。

 

 十分ほど説明して、俺は一度、口を閉じた。

 

「あの、馬剃さん」

 

「はい」

 

「分からないところ、途中で止めてもらっていいですよ」

 

「ありがとうございます」

 

「……いま、分からないところあります?」

 

「いえ。大丈夫です」

 

 即答だった。

 

 嘘だ、と思った。

 初日にすべて分かる人間はいない。分かった気になっている人間ならいるが、この人はそういうタイプではない。

 

 この人は、分からないと言うことを、どこかで禁じられてきたのだ。

 

 俺はそれを言葉にしなかった。

 言葉にすると、知り合い程度の距離ではなくなる。

 

「じゃあ次、電話の取り次ぎですね」

 

「はい、温水主任」

 

 温水主任。

 

 その呼び方は、正しかった。

 職場において、何ひとつ間違っていない呼び方だった。

 

 

 

 

 昼休みは十二時十五分から。

 

 俺は馬剃さんを学食に案内した。

 新任を初日の昼に一人にしてはいけない。これは用度管財課の先輩から教わった、数少ない後輩指導のノウハウだ。

 

「うちの学食、二階が定食で一階が麺類です。二階のほうが空いてます」

 

「休憩時間は一時間ですね」

 

「そうですね」

 

「労働基準法第三十四条ですと、六時間を超え八時間以内の場合は少なくとも四十五分、八時間を超える場合は少なくとも一時間の休憩を与えなければならないとされています。就業規則を拝見しましたが、御校は――失礼、本学は一律六十分ですね」

 

「……よくご存じですね」

 

「昨日、就業規則と服務規程を通読しました」

 

 通読。

 昨日は着任の前日だ。つまり、まだどこの職員でもない日である。

 

「全部ですか」

 

「はい。附則まで」

 

 俺は思わず足を止めそうになった。

 

 ――この人、変わってない。

 

 いや、変わってないというのは正確じゃない。

 高校のときは校則の条文を暗記していて、いまは就業規則の附則を暗記している。中身が入れ替わっただけで、器は同じ形をしている。

 

 なんだか妙に安心して、そのあとすぐ、安心した自分に少し腹が立った。

 

「あの、温水主任」

 

「はい」

 

「なにか、おかしかったでしょうか」

 

「いえ。助かるなと思って」

 

「そうですか」

 

 馬剃さんは前を向いたまま歩いている。

 背筋がまっすぐだった。廊下の窓ガラスに映る二人の影は、片方だけが姿勢よく、もう片方は少し猫背だった。

 

 どっちが猫背なのかは、書かなくても分かると思う。

 

 

 

 

 学食の券売機の前で、俺は定期入れを取りだした。

 職員はここに職員証をかざすと五十円引きになる。

 

 ポケットから引き抜いた拍子に、定期入れの合わせ目から、白いものが滑り出た。

 

 小さく折り畳まれた紙だった。

 折り目が四つに割れかけていて、端が擦れて丸くなっている。

 

 俺は、ばっ、と手を出した。

 

 自分でもびっくりするくらいの速さだった。

 条件反射というのは、本人の意思とは関係のないところで動く。床に落ちる前に掴んで、そのまま定期入れの奥に押しこむ。

 

「……なにか落ちましたか?」

 

 馬剃さんが後ろから覗きこんでくる。

 

「なんでもないです」

 

「レシートでしたら、経費精算の期限が」

 

「なんでもないんで」

 

 言ってから、少し声が硬すぎたと気づいた。

 

 馬剃さんは「失礼しました」と言って、券売機のほうへ視線を戻した。

 それ以上は何も聞かなかった。

 

 ――昔はもっと食い下がってきたはずだ。

 「怪しいですね」とか「見せてください」とか言って、俺の腕を掴んで階段の下に連れこんだりしていた。

 

 いまの彼女は、引く。

 一歩でも踏みこむ前に、自分から引く。

 

 俺は定期入れをポケットに戻した。

 布越しに、四つ折りの紙の厚みが指に当たった。

 

 

 

 

 昼食は、日替わりの焼き魚定食にした。

 馬剃さんは同じものを選んで、それから飲み物のケースの前で少しだけ迷って、缶コーヒーを取った。

 

 黒いラベルの、砂糖もミルクも入っていないやつだった。

 

「あれ、コーヒー――」

 

 言いかけて、俺は口を閉じた。

 

 ぐ、と喉の途中で止めた。

 止めた言葉が、そのまま胃のあたりに落ちていく感じがした。

 

 コーヒー、苦手じゃなかったっけ。

 その一言は、知り合い程度の人間が言える言葉じゃない。

 

「……コーヒー、この自販機のやつ、二階のより安いんですよ」

 

 我ながら苦しい着地だった。

 

「そうなんですか。ありがとうございます」

 

 馬剃さんはうなずいて、缶をトレイに乗せた。

 

 窓際の席についてからも、彼女は缶を開けなかった。

 定食を食べ終えて、箸を置いて、それからようやくプルタブを引いた。

 

 ひと口飲む。

 

 その瞬間、ほんのわずかに、眉のあたりが動いた気がした。

 気のせいかもしれない。

 

「午後は年間スケジュールの説明ですね」

 

「あ、はい。ざっくり全体を見てもらってから、四月にやることの詳細を」

 

「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

 

 馬剃さんは缶をテーブルに置いて、また手帳を開いた。

 昼休みの残り二十分を、彼女はメモの整理に使った。

 

 俺は窓の外の桜を見ていた。

 見ながら、ポケットの中の紙の厚みのことを考えていた。

 

 

 

 

 午後は年間計画の全体像を説明した。

 

「入試広報課の一年は、正直に言うと『ずっと何かある』なんですけど、山は四つです」

 

 俺はホワイトボードに横棒を一本引いた。

 

「で、その手前に四月と五月があります。ここは山じゃないんですけど、ここを外すと一年が全部ずれます」

 

「といいますと」

 

「二つあって、一つが指定校推薦のリスト作りです。どの高校に何枠出すか、今年の分を決めます」

 

「配分の基準は」

 

「過去五年の入学実績、入学後の成績、退学率。あとは訪問したときの感触ですね」

 

「感触」

 

「数字にならないやつです。それも一応、根拠は残します」

 

 俺は横棒の左端に、短い線をもう一本足した。

 

「もう一つが、今年度の広報戦略の立案です。要するに、どこに人と金を置くかの計画書。六月以降にやることは全部これで決まるので――」

 

 俺はマーカーのキャップを閉めた。

 

「四月と五月がいちばん静かで、いちばん取り返しがつきません」

 

 馬剃さんの手が、一拍だけ止まった。

 

「……静かな時期に、一年分が決まる」

 

「そうです。だから六月に地獄を見る課は、だいたい四月にサボってます」

 

「温水主任はサボらないんですね」

 

「サボりますよ。サボる場所を間違えないだけです」

 

 言ってから、我ながら胸を張るところではないなと思った。

 

「まず六月。高校生向けの進学相談会と入試説明会がピークです。会場に出向いてブースに座って、来た高校生と保護者に本学を説明する。土日が消えます」

 

「回数はどのくらいですか」

 

「六月だけで十七件」

 

「十七」

 

「一人で全部は無理なので、課で分担します。だから馬剃さんには、六月上旬までに一人で説明できるようになってもらいます」

 

 馬剃さんの手が止まった。

 

「……二か月ですね」

 

「二か月です。無理なら調整しますけど」

 

「いえ」

 

 即答だった。

 

「やります」

 

 その声だけ、少し高かった。

 抑えるのを忘れた、という感じの高さだった。

 

 俺はホワイトボードに二本目の縦線を入れる。

 

「二つ目が八月中旬のオープンキャンパス。一日で三千人来ます。本学最大のイベントです」

 

「三千」

 

「三つ目が九月から十二月の総合型選抜と入試説明会。四つ目が一月の共通テストから三月の繰上げ合格まで。ここは全部つながってて、一番人が死にます」

 

「くり……あげ?」

 

「繰上げ合格です。合格者が入学を辞退すると、補欠の人が繰り上がるんですよ。三月末までずっと電話をかけ続けます」

 

「三月末まで」

 

「三月三十一日の夕方まで。最後の一人が決まるまで、誰も年度を終われません」

 

 馬剃さんはそれを書き取ってから、顔を上げた。

 

「補欠の方は、それまでずっと待っているんですか」

 

「待ってますね。連絡が来ないまま四月一日になる人もいます」

 

「……そうですか」

 

 彼女はもう一度うなずいて、手帳に戻った。

 

 何を書いたのかは見えなかった。

 

 

 

 

 説明の途中で、俺の卓上電話が鳴った。

 表示は内線。理学部の物理学科だ。

 

「はい、入試広報課の温水です。……あ、先生。お世話になってます」

 

 受話器の向こうで、権田先生がまくしたてている。

 五十八歳、理学部物理学科の教授。学科会議で三十分怒鳴った伝説がいくつもあって、事務局では長らく「触るな」扱いされてきた人だ。

 

「いや先生、それ去年も言ってましたよ。俺の手元に記録が残ってるんで。去年は『若く写りすぎだ、詐欺だ』でしたよね」

 

 受話器の向こうで、笑い声が弾けた。

 

「今年は逆に老けてる? じゃあ二年かけて実物に寄せたということで、これが完成形ということにしませんか。……やだなあ先生、人が悪いですよ。褒めてるに決まってるじゃないですか」

 

 もうひと笑いあってから、俺は受話器を置いた。

 

「差し替え、いけそうです」

 

 振り向くと、馬剃さんが手を止めてこちらを見ていた。

 目が、はっきり丸くなっていた。

 

「……いまの、教授の方ですよね」

 

「物理の権田先生です。うるさいですけど、いい人ですよ」

 

「教授に、『やだなあ』と」

 

「言いましたね」

 

「大丈夫なんでしょうか」

 

「先生によります」

 

 俺はメモ用紙に「権田先生・写真差替え」と書いて、ふせんを貼った。

 

「権田先生は、丁寧にやると『事務が逃げてる』って怒る人なんですよ。逆に桑野先生は、少しでも砕けると次の会議で三十分潰されます。前提を間違えると、その先が全部ずれます」

 

「……その使い分けを、全教員分?」

 

「入試に関わる先生だけです。四十人くらいですかね」

 

 馬剃さんが、手帳に何かを書き足した。

 書きながら、小さく息を吐いた気がした。

 

「役所では、そういう情報は誰も残してくれませんでした」

 

「そりゃ残せないでしょう。書いたら大事故です」

 

「……たしかに」

 

 馬剃さんが少しだけ笑った。

 今日はじめて、抑えていない笑い方だった。

 

 俺は視線をホワイトボードに戻した。

 戻さないと、たぶん見すぎるところだった。

 

 

 

 

 権田先生のメモを貼りおえたところで、隣から声がした。

 

「温水主任。昼の件で、一点だけ訂正があります」

 

「はい」

 

「一階の自動販売機の缶コーヒーですが、二階の自動販売機と同額でした。どちらも百三十円です」

 

 ……調べたのか。

 昼休みの、あの残り二十分で。

 

「最近、値上げしたのかもしれないですね」

 

「四月一日付の価格改定は両機同時でした。側面に告知が貼ってあります」

 

「……そうでしたか」

 

「はい。ですので、価格面の優位性はありません」

 

 馬剃さんは真顔だった。

 俺を追いつめているのではない。この人はただ、正確でありたいだけなのだ。それが余計に追いつめてくる。

 

「馬剃さん」

 

「はい」

 

「その調査力、明日から仕事で使いましょう」

 

 馬剃さんは、少し不思議そうな顔をした。

 

「仕事で使っております」

 

「もっと使いましょう」

 

 彼女は生真面目にうなずいて、画面に戻った。

 

 俺は手元の資料に視線を落とす。

 

 嘘というのは、具体的な言い訳を足すと長生きする。

 三十四年かけてそう学んできたが、この人の前では即死するらしい。学び直しである。

 

 

 

 

 午後五時。

 

 入試広報課の終業は十七時十五分だ。

 俺は五年間、この時刻に帰ることを人生の中心に据えて生きてきた。

 

 定時退社は権利であり、権利は行使しないと錆びる。

 今日だって、帰って録画したアニメを消化して、それから夏コミの申しこみ要項を確認するつもりだった。予定は完璧だった。

 

 十七時十五分。

 俺は席を立たなかった。

 

 すぐ隣で、馬剃さんが画面を睨んでいたからだ。

 

 開いているのは、Zドライブの「過去五年分の高校訪問記録」。

 五年分。ファイル数にして、たぶん四百を超える。

 

「馬剃さん」

 

「はい」

 

「今日は初日なんで、帰っていいですよ」

 

「はい」

 

 返事はした。

 手は止まらなかった。

 

「馬剃さん」

 

「はい」

 

「帰れます?」

 

 彼女の指が止まった。

 

 しばらく画面を見つめてから、小さく息を吐く。

 

「……帰ったところで、何をすればいいのか分からなくて」

 

 その言い方は、少しだけ素だった。

 今日はじめて、抑えるのを忘れた声だった。

 

 俺は口を開いて、閉じた。

 言いたいことは五つくらいあって、そのうち四つは知り合い程度の人間が言っていい範囲を超えていた。

 

「じゃあ、これだけ見て帰ってください」

 

 俺は共有フォルダのパスを、彼女の画面に送った。

 

「……『99_温水メモ』、ですか」

 

「気づいたことをその都度、放りこんでるだけのテキストです。整理してないんで読みにくいですけど」

 

 馬剃さんがファイルを開く。

 開いて、少しだけ目を見開いた。

 

「……日付順に、断片が」

 

「そうです。『◯◯高校の三年、理系志望が多い』とか、『会場の三列目以降は声が届かない』とか。あとで使うかどうかは分からないんで、とりあえず全部書いてます」

 

「体系化は、されないんですか」

 

「しないです。したら書かなくなるんで」

 

 馬剃さんはスクロールの手を止めて、しばらく画面を見ていた。

 

「……三年前の四月の行に、『雨の日の相談会は保護者率が上がる』とあります」

 

「ありますね」

 

「これ、去年の広報戦略の前提資料に載っていた数字と、同じことを言っていませんか」

 

 ――拾うのが早い。

 俺は少しだけ椅子を引いた。

 

「載せたのは俺です。三年寝かせて、根拠がそろったんで書きました」

 

「三年」

 

「急がないんですよ、こういうのは」

 

 馬剃さんは何も言わずに、手帳を開いてペンを走らせた。

 

「あと一つだけ、先に言っておきます」

 

 俺は椅子を回して、彼女のほうを向いた。

 

「進学相談会で喋るとき、俺は原稿を作りません。一枚も」

 

「……一枚も、ですか」

 

「手に持つのは大学案内だけです」

 

 馬剃さんの手が止まった。

 

「あれ、二百ページ近くありますよね。二十分では、とても」

 

「全部は話さないです。話すのは三つだけ」

 

 俺は机の端に立ててあった大学案内を抜き取って、ぱらぱらとめくった。

 

「で、残りは『そこは十四ページに書いてあるんで、帰ってから読んでください』って言う」

 

「……誘導、ですか」

 

「誘導です。二十分で理解してもらうのは無理なんですよ。俺にできるのは、家に帰ってからこれを開く理由を、三つ作ることだけです」

 

 馬剃さんが、大学案内をじっと見ている。

 

「話す中身も、現場で決めます」

 

「決める、といいますと」

 

「同じ二十分でも、一年生と三年生じゃ別物です。保護者が座ってるかどうかでも変わるし、先生向けの説明会ならまた全然違う」

 

 俺は大学案内を閉じた。

 

「三列目の子が時計を見はじめたら、そこで話を切って別の話に飛びます。時事ネタでも、去年の学生のしょうもない失敗談でもいい。とにかく一回、顔を上げさせる」

 

「事前には、決めないんですか」

 

「決めると、決めたとおりに喋っちゃうんで」

 

 馬剃さんが、こちらを見た。

 

「……紙があると、駄目なんですよ、俺」

 

 言ってから、あ、と思った。

 

 馬剃さんが、こちらを見ていた。

 まっすぐ、動かずに、見ていた。

 

 ――俺は人前で話すのが苦手なんだ。

 

 十六年前、駅前の喫茶店で、俺は彼女にそう言ったことがある。

 

 彼女は覚えている。

 俺の顔を見れば分かる。この人はいま、それを思い出している。

 

 だから俺は、笑って言った。

 

「大貫にも同じこと言ってるんで、気にしないでください」

 

 嘘だった。

 大貫にこんな話をしたことは、一度もない。

 

「……そうですか」

 

 馬剃さんは視線を画面に戻した。

 

 それきり、しばらく二人とも黙って作業をした。

 十七時四十分に、鷲尾課長が「あなたたち、初日から何やってるの」と呆れて、ようやく俺たちは荷物をまとめた。

 

 

 

 

 退勤の前に、馬剃さんは課内の全員に向かって立った。

 

「本日よりお世話になります、馬剃天愛星と申します。至らぬ点も多いかと存じますが、精一杯務めさせていただきます」

 

 背筋が伸びる。

 顎の角度が決まる。

 

「一日、ありがとうございました」

 

 三十度。

 定規で測ったような三十度だった。

 

「こちらこそ、よろしくお願いしますね」

 

 鷲尾課長が答え、大貫が「歓迎会いつやります?」と余計なことを言い、桑原さんが「金曜がいい」と言った。

 

 五文字。

 本日二度目の発話である。桑原さんの中で、今日はよほどの祭りらしい。

 

 馬剃さんが顔を上げる。

 それから、俺のほうを向いた。

 

「温水主任。明日から、ご指導のほど、よろしくお願いいたします」

 

 もう一度、三十度。

 

「こちらこそ、よろしく」

 

 俺も頭を下げた。

 

 下げながら、彼女の右手を見ていた。

 

 

 

 

 挨拶のあいだ、その手はずっとスカートの脇で握りしめられていた。

 握りしめたまま、細かく震えていた。

 

 

 

 

 誰も気づいていない。

 

 ……俺も、気づかなければよかった。

 

 なにか言おうとして、口を開いて、何も出てこなかった。

 喉の奥が、からからに乾いていた。

 

 

 

 

 最寄り駅の改札で、俺は定期入れを取りだした。

 

 合わせ目の奥に、四つ折りの紙が入っている。

 折り目が擦り切れて、割れかけているやつだ。

 

 十六年、俺はこれを捨てていない。

 

 捨てられなかったわけじゃない。

 捨てると、返事をしなかったことが確定してしまう気がしただけだ。

 

 改札を抜けて、ホームに立つ。

 電車が入ってきて、ドアが開いて、俺は乗った。

 

 スマホを見ると、佳樹からメッセージが来ていた。

 『お兄様、新年度おめでとうございます。今年こそ何かありますように』

 

 あるかよ、と打ちかけて、俺は指を止めた。

 

 窓の外を、東京の夜が流れていく。

 

 ――明日も、あの人は定規みたいな角度で頭を下げるんだろう。

 ――俺は明日も、知り合い程度の顔をするんだろう。

 

 俺はスマホをしまって、目を閉じた。

 

 定期入れの厚みが、胸ポケットの上から指に当たった。

 

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