レベルMAXの百合サキュバスに転生した元・女子高生の異世界蹂躙録 〜冤罪の聖女様と『共犯者』になって、彼女を嵌めた悪党どもを物理的に分からせます〜 作:百合サキュバス好き
バタン、と。
防音の効いた分厚い扉が閉まり、部屋に静寂が落ちる。一人取り残された私は、ふかふかのキングサイズのベッドの中で、すっぽりと頭までシーツを被って膝を抱えていた。
幻影魔法は解かれ、着替えの服もないため、今の私は文字通り『一糸纏わぬ』姿だ。シーツに直に触れる素肌が少しだけ心細くて、私は隣に残っている微かな彼女の温もりと甘い香りを求めて、そっと身体をすり寄せた。
「リゼット様……」
ぽつりと、自分を救ってくれた恩人の名前を呟く。
彼女が服を買いに出かけてから、まだほんの少しの時間しか経っていない。それなのに、急に世界に一人ぼっちで取り残されてしまったような、酷い不安と寂しさに襲われていた。
一人きりの静寂は、嫌でも私に『現実』を突きつけてくる。
(……なぜ、私は魔の森なんかに捨てられてしまったのでしょうか)
薄暗いシーツの中で、私はこれまでの自分の人生をゆっくりと手繰り寄せる。
親の顔を知らない私は、物心ついた頃からスラム街の薄汚れた孤児院で育った。毎日のパンの耳すら満足に食べられず、冬になれば凍えて命を落とす子供も珍しくないような過酷な環境。そこで偶然、私に規格外の魔力と治癒の力が眠っていることが見出され、教会に引き取られたのだ。
それから十年以上……私の十五年の人生の大部分は、ただひたすらに神へ祈り、教えを乞い、純粋な信仰心だけを育む日々だった。
スラムの泥水の中から私を救い上げ、実の娘のように愛し、親代わりとして守ってくださっていた現教皇様には、どれだけ感謝してもしきれない。だからこそ、私は教会の教えに従い、スラムの貧しい人々にも無償で祈りと治癒を捧げてきた。
(教皇の座なんて、わたし自身が就くとは微塵も思っていませんでした。他の聖女様たちの誰かが教皇になって、それで教会が、みんなが幸せになるのなら……それでいいと、本気で思っていたのに……)
同胞であり、神に仕える仲間だと思っていた他の聖女様たち。まさか彼女たちが、平民である私が『次期教皇候補の筆頭』に選ばれたことを理由に、あんな凶行に及ぶなんて。
身に覚えのない横領の罪を着せられ、自室で睡眠薬を盛られ、麻袋に詰められてポイ捨てされる。その事実が、たまらなく悲しくて、恐ろしかった。
(……神様にお祈りしても、仲間だと信じていた人たちに助けを求めても、誰も来てはくれませんでした)
猛毒に内臓を焼かれ、たった一人で暗く恐ろしい魔の森で死を待っていた時の絶望。あの時、私の命を救ってくれたのは、神官でも騎士でもなく――――それは、一人の美しい『魔族』だった。
教会では、魔族は絶対的な『悪』であり、見つけ次第浄化すべき人類の敵だと教えられてきた。しかし、リゼット様は違った。
彼女は、私の胸元にあった『聖印(ペンダント)』の浄化の光で火傷を負っても、一切気に留めずに私を優しく抱きしめてくれたのだ。
(それに……あの時も、昨日の夜も……)
シーツの中で、そっと自分の胸と下唇に触れる。
廃屋で朦朧としながら目覚めた時、私の視界を塞いでいたのは、私自身の胸など赤子のように思えるほど巨大で、柔らかな彼女の双丘だった。息が詰まるほどの圧倒的なそれに完全に飲み込まれ、密着した状態のまま……甘い唾液と回復魔法を口移しで注ぎ込まれた。
そして昨夜。お風呂から上がった直後の無防備な私を、彼女はベッドに押し倒した。
『本当は、私にまたメチャクチャにされたかったんでしょ?』
耳元で囁かれたあの意地悪で甘い言葉を思い出し、私はシーツの中でビクンッと身悶えした。胸の奥がキュンと締め付けられ、身体の奥底が熱くなる。
一晩中、彼女のしなやかな指先と熱い唇に蹂躙され、私は声が枯れるまで快楽の悲鳴を上げ続けてしまった。
彼女の舌が絡みつくたびに背筋を突き抜けるような甘い痺れが走り、何度も何度も意識を真っ白に塗り潰された。最後の方なんて、自分から彼女の首にしがみついて『もっと、もっとぉっ……♡』と、はしたない声でねだってしまった記憶まである。
聖女としての貞淑さなど微塵も残らないほど、私の心も身体も、文字通りドロドロに溶かされてしまったのだ。
(殿方と肌を重ねる行為についての知識自体は、一応勉学として知ってはいました。けれど……あんなにも凄まじく、頭が真っ白になるほど気持ちいいものだったなんて……っ)
シーツの中で身体を丸め、太ももをモジモジと擦り合わせる。
(それとも、あれだけ気持ちよかったのは……お相手が、リゼット様だったから……? ……っ、わたし、何を考えて……!?)
自らの内から湧き上がった背徳的な思考に、私はハッとしてシーツをギュッと握りしめた。ドクン、ドクンと、早鐘を打つ心臓の音がやけにうるさく感じる。
(教会の教えでは、魔族に……しかも同じ女性に欲情するなんて、絶対に許されない大罪のはずです。それなのに、わたしの身体は、今もあの甘い熱を求めて疼いてしまって……っ)
私はパンッと両手で自分の熱い頬を叩き、ぶんぶんと首を横に振った。いけない、このままでは本当に頭の中がおかしくなってしまう。
(べ、別のことを考えましょう! そうです、もっと真面目なことを……例えば、教会の教えについて、とか……!)
熱を帯びた邪念を必死に振り払うように、私は強引に思考の方向を切り替える。
(人間の世界にも、私を助けてくれる人と、私を殺そうとする同胞がいました。……なら、魔族も、同じなのでしょうか)
絶対に悪だと教えられてきた教会の言葉は、嘘だったのだろうか。
彼女は、女の子からしか精気を吸えない欠陥品だからと、同族から追放されたと言っていた。目立ったせいで同胞から排除されそうになった私と……異端として同族から追放された彼女。
私たちは、どこか似ている気がしたのだ。
(逃げたくないというわたしの決意を受け止めて、無実の証明を手伝うと言い切ってくれた、あの真っ直ぐな瞳。……リゼット様は、絶対に悪い人じゃありません)
そう、必死に自分に言い聞かせる。
脳裏に浮かんだ彼女の真剣な横顔を思い出し、私はふと、自分の両腕でぎゅっと身体を抱きしめ直した。すると、さっきまでそこに彼女がいたかのような名残が、じわりと胸を締め付ける。
(光に仕えるはずの同胞たちの心はあんなにも冷たかったのに。悪魔であるはずのリゼット様の肌は、どうしてあんなにも優しくて、温かいのでしょうか……)
そんな愛おしい矛盾を噛み締めていると、再び部屋を支配した静寂が、私の心に冷たい不安の影を落とした。
(……本当に、帰ってきてくれるのでしょうか)
リゼット様は強い。美しくて、優しくて、私なんかよりずっと大人だ。
もしかしたら、彼女から見れば、私はただ『魔力回復にちょうど良いところにいた都合の良い餌』だったのではないか。服を買いに行くと言って私を置いていき、そのまま別の、もっと美味しくてプロポーションの良い綺麗な女の人のところへ行ってしまうのではないか。
もし彼女が本気を出せば、この街の女の子なんて一瞬で虜にできてしまうだろう。私のような、発育途中で色気もない子供っぽい身体なんて、すぐに飽きられて見捨てられてしまうかもしれない。
「嫌……」
もしこのまま扉が開かなかったら。また、たった一人で取り残されてしまったら。私はギュッとシーツを握りしめ、ポロポロと溢れそうになる涙を必死に堪えた。
「リゼット様……早く、早く帰ってきて……」
純粋な信仰心は、いつの間にか一人の異端の魔族への、狂おしいほどの依存へとすり替わりつつあった。私はただひたすらに、あの温かい手が再びこの扉を開けてくれることだけを、神様ではなく彼女自身に祈り続けていた。
――――その時だった。
ガチャリ、と。
部屋の扉が開き、この世界で一番待ちわびていた足音が聞こえてきた。
「ただいま戻りました、セシリア。ごめんなさいね、ちょっと資金調達……いえ、お買いものに時間がかかっちゃって」
いつもの朗らかで、優しい声。
不安で暗闇に沈みかけていた私の心と視界に、パァッと眩い光が差し込んだような気がした。
「あ……っ、リゼット様っ!」
私はシーツを跳ね除け、全裸である羞恥心すら忘れて、荷物を抱えた彼女の胸へと一直線に飛び込んだ。驚きながらも優しく抱きしめ返してくれる彼女の腕の温もりと、甘い香り。それだけで、私の心は満たされていく。
(ああ、神様。どうかお許しください)
教会に裏切られ、絶望の淵にいた私を救い出してくれた、ただ一つの『光』。魔族である彼女に向けたこの激しく狂おしい感情を、私はもう、止めることができそうにありません――――。