レベルMAXの百合サキュバスに転生した元・女子高生の異世界蹂躙録 〜冤罪の聖女様と『共犯者』になって、彼女を嵌めた悪党どもを物理的に分からせます〜 作:百合サキュバス好き
「お待たせしましたセシリア! 服と……当面の資金、たっぷり調達してきましたよ!」
私がドンッと大きめの麻袋をベッドの横に置くと、シーツにくるまっていたセシリアがパァッと顔を輝かせた。
「おかえりなさい、リゼット様っ! ……あの、その袋、すごく重そうですが……?」
「気にしないでください。(悪党から巻き上げただけなので)法には触れていない真っ当なお金だと思います。……たぶん」
「た、たぶん!? えっ、リゼット様、まさか誰かから無理やり奪い取ってきたんじゃ……っ!? だ、ダメですよ、いくらわたしたちがお金に困っているからって、善良な方から奪うなんて……!」
目に見えてオロオロと慌てふためき、涙目になりながらお説教を始めようとするセシリア。そんな真面目な彼女に、私は苦笑しながら手を振った。
「違いますよ。善良な市民からではなく、街で私に絡んできた裏路地のゴロツキどもから巻き上げた……ゴホン、いただいた『慰謝料』です。ある意味、自警団的な社会貢献ですから安心してください」
「そ、そうだったのですね……? なら、よいのですが……」
少し疑わしげな視線を向けてくるが、とりあえず納得してくれたようだ。そんなセシリアを余所に、私はニコニコしながら買ってきた服をベッドの上に広げていった。
「まずは普段使いできる、動きやすくて可愛い街着のワンピース。それと……これが本命の変装セットです。顔が隠せるつば広の帽子に、魔法使い用のローブですね」
「わぁっ……! 魔法使いのローブなんて、初めて着ます!」
セシリアは目を輝かせながらローブの生地を撫でている。そんな彼女を見ながら、私は心の中で(あ゛っ……)と滝のような冷や汗を流していた。
(よ、よく考えたら、昨日この街に来る時にセシリアに『見習い神官服』に見えるように幻影魔法をかけていましたけど……聖都では、セシリアは『教会の資金を横領して逃亡した』ことになっているはず。もしその情報がこの辺境の街にまで回ってきていたら、同じような背格好や見た目の神官がウロウロしているなんて不審人物一直線だったのでは……)
よく考えずに『細部までは再現が面倒だし装飾とかを省いた似たような神官服でいいか』なんて安直な発想しかしていなかった昨日の自分を、全力で殴り飛ばしたい。
もしあの気怠げな門番が教会の手先と繋がっていたら、今頃この宿は完全包囲されていたかもしれないのだ。
(あ、危なかったです……っ。完全に私のポンコツ采配でした。やっぱりこれからは、顔も帽子で隠せて神官のイメージからも遠い魔法使いとかに変装させるのが一番ですね……)
私は表面上は余裕の笑みを崩さず、内心の冷や汗を悟られないようにコホンと咳払いをした。
「ええと、ここからは聖都に近づくことになりますし、神官の姿だと目立ちますからね。これからは新人魔法使いで通しましょう。ちょっとお高めの物を買ってきましたので入る時に使った方法も取れると思います。……あ、それとこれ。一番大事な下着類です。とりあえず何着か買っておきましたから、さっそく着替えてみてください」
「あ、ありがとうございます……っ。あ、あの、着替えますので……う、後ろを向いていていただけますか?」
受け取った服と下着を胸に抱きしめ、セシリアが上目遣いで懇願してくる。
「えっ? 別にいいじゃないですか、減るもんじゃありませんし。昨日も隅々まで見ました――」
「み、見ないでくださいっ!」
「はーい」
顔を真っ赤にしてシーツを握りしめるセシリアに急かされ、私は渋々後ろを向いた。
背後から、布が擦れる音と、時折「んっ……」という彼女の小さな吐息が聞こえてくる。……うーん、サキュバスの聴覚が良すぎるせいで、見えなくてもなんだかドキドキして――。
「……あの、リゼット様。もういいですよ」
「はい! わぁ、似合ってますよ、とっても可愛いです!」
振り返った私の目に飛び込んできたのは、淡い水色の清楚なワンピースに身を包んだセシリアの姿だった。小柄で華奢な身体つきでありながら、布地の上からでもはっきりと分かる豊かな胸の丸みと、そこからキュッと引き締まった細い腰のライン。……うん、私のサキュバスとしての目と手に狂いはなかったようだ。
「ありがとうございます。……でも、少し不思議なんです」
ワンピースに着替えたセシリアは、自分の胸元や腰回りを不思議そうにぺたぺたと触りながら小首を傾げた。
「わたしはお店に行っていないのに……どうして、服も、その……し、下着も、こんなにサイズがピッタリなんですか? いくら目分量とはいえ、正確すぎる気が……」
純粋な疑問をぶつけてくるセシリア。その問いに対し、私はフッと自信満々なドヤ顔を浮かべ、腰に手を当てて胸を張った。
「ふふん! 簡単なことですよ、セシリア!」
「えっ?」
「廃屋でも昨日の夜も、あなたのそのマシュマロみたいなお胸とお尻を、私の手で隅々までたーっぷりと揉みしだいたじゃないですか! サキュバスである私のこの手のひらは、一度抱いた相手のスリーサイズをミリ単位で完璧に計測できるんですよ!」
「――――」
「ちなみにセシリアのスリーサイズは、上から88、56、86! 身長155cmの小柄な身体に不釣り合いな立派なEカップで――」
私が意気揚々と変態極まりない特技(セクハラ)を自慢していると、ふと、部屋の空気が急激に冷たくなったのを感じた。
「…………最低です。ただの変態じゃないですか」
「えっ」
セシリアを見ると、先ほどまで私に向けていた「助けてくれた神様」を見るようなキラキラした尊敬の眼差しは完全に消え失せ、まるで生ゴミを見るような絶対零度のジト目がそこにあった。彼女は両腕で胸を隠すように抱き込み、私からササッと距離を取る。
「あ、あれっ!? セシリアさん!? なんでそんな汚いものを見るような目で私を……っ!」
「当たり前です。乙女の恥じらいというものを、少しは理解してください」
「そ、そんなこと言ったって、お互いもう生まれたままの姿で、あんなことやこんなことまでした仲じゃないですか! 今さらスリーサイズを当てられたくらいで――」
私がデリカシー皆無な正論(?)を口にすると、セシリアのジト目がさらにスッと細められた。
「……サキュバスの方というのは、人間とは根本的に感性が違うのでしょうか」
「えっ」
「いくら毒の治療や魔力回復のためだったとはいえ、ご自分の破廉恥な行いをそんなドヤ顔で言い放つなんて……本当にデリカシーがありませんね」
「うぐっ……」
軽蔑の眼差しと共にバッサリと切り捨てられ、私は言葉に詰まる。セシリアはふいっと私から顔を逸らすと、手元に残っていた着替えの束を抱えて、足早に洗面所の方へと向かっていった。
「……わたし、少し頭を冷やしてきます」
「あ、あの! セシリアさん?」
「覗いたら絶対に許しませんからね。…………はぁ。わたし、本当にこの人についていっていいんでしょうか」
わざと私に聞こえるような声で深々とため息を吐き捨てると。
バタンッ!
無慈悲な音と共に、洗面所の扉がピシャリと閉められた。後に残されたのは、良かれと思って(?)有能さをアピールした結果、大切な聖女様からの好感度と信頼を自らストップ安まで大暴落させてしまった、一人の残念な悪魔だけだった。
(……おかしいですね。サキュバスとしては完璧な振る舞いだったはずなのに、どうしてこうなったんでしょうか……)
静まり返った部屋に、洗面所の奥からピチャ、ピチャと冷たい水で顔を洗う音が聞こえてくる。きっと、真っ赤になった顔の熱を必死に冷ましているのだろう。
その音がチクチクと私の罪悪感を刺激してくる中、私は一人ベッドの上で呆然と立ち尽くし――――ふと、自分の放った言葉を反芻してサァッと血の気が引いた。
(……いや、待ってください。いまの私、息を吐くようにセクハラおやじみたいな発言してませんでした……!?)
冷静になってみれば、異常だ。私の中身は、日本の常識ある『元・人間の女子高生』のはず。男の人と手すら繋いだことのない、彼氏いない歴=年齢の箱入り娘だ。
趣味で百合小説を嗜んでいたとはいえ、元々は普通に男の子が好きだったし、何より女の子相手にスリーサイズを当ててドヤ顔するような図太い性格では断じてなかった。
(だ、だめだめだめ! いくらセシリアが可愛くて、百合的においしいシチュエーションだからって、躊躇なくあんな破廉恥な真似ができるなんて絶対におかしいです! 完全にサキュバスの本能に引っ張られてますよ私……っ!?)
理由は不明だが、日本人の女子高生からサキュバスになってしまった私。よく『魂は肉体に引っ張られる』と言うけれど、このサキュバスの肉体が、精神面――『思考』や『欲望』にまで侵食してきているのではないか。
(い、いけません……! このままだと、人間の心を完全に失って、ただの『変態悪魔』になってしまいます……!)
ドン引きされたことへの言い訳半分、そして自身のアイデンティティ消失に対する焦り半分。私は閉ざされた洗面所の扉を見つめながら、これからは絶対にセクハラを控えて『清楚で常識的な元・女子高生(?)』として生きることを、一人密かに(今さら)決意するのだった。