レベルMAXの百合サキュバスに転生した元・女子高生の異世界蹂躙録 〜冤罪の聖女様と『共犯者』になって、彼女を嵌めた悪党どもを物理的に分からせます〜 作:百合サキュバス好き
チュン、チュン……。
テントの分厚いキャンバス地越しに、小鳥のさえずりと白み始めた朝の光が差し込んでくる。私はゆっくりとまぶたを開け、ぼんやりとした頭で一つ息を吐いた。
「んんっ……。朝、ですね……」
冷え込む春先の森の朝。テントの中とはいえ、吐く息は少しだけ白い。私は身体を起こそうとして――自分の腹部から胸にかけて、ずっしりとした『心地よい重み』が乗っかっていることに気がついた。
「すぅ……すぅ……、あったかい、ですぅ……」
「…………」
視線を下げると、そこには私を『極上の湯たんぽ』か何かと勘違いしているのか、両腕と両足で私の身体にガッチリと抱きつき、胸元に顔を埋めて幸せそうに眠るセシリアの姿があった。
(か、可愛すぎます……っ! でも、これじゃあ重くて起き上がれません!)
彼女のすべすべとした頬が私の谷間に擦り付けられ、甘い石鹸と紅茶の香りが鼻腔をくすぐる。油断するとサキュバスの淫魔ソウルが『朝のごちそう』をいただこうと暴れ出しそうになるが、私は必死に元・女子高生の理性を総動員して自制した。
無理に引き剥がして起こしてしまうのも可哀想だ。私は身動きを諦め、大人しく抱き枕に徹しながら、テントの暗い天井をじっと見つめた。
――静かな朝。思考を邪魔するものが何もないこんな時間は、嫌でも考えてしまう。
(どうして私は、元の日本の女子高生の姿ではなく、ゲームで作ったアバターである『サキュバス』の姿でこの世界にやって来たのでしょうか……)
私と同じような境遇のプレイヤーは、他にもいるのだろうか。そもそも――どうして、『私』だったのか。
この世界の神様が、何かの目的で私を選んで喚び出した?それとも、神様すら知らない完全なイレギュラーなのだろうか。
(もし、この世界に私以外の転生者が誰もいないのだとしたら。サキュバスの姿をした元・人間の女子高生。そんな歪な『私』という存在は、この広い異世界において、本当の意味でひとりぼっちなのでしょうか……)
お父様とお母様は、突然いなくなった私のことをどう思っているのだろう。今もあちこちを探し回ってくれているのだろうか。
それとも……昔、趣味で読んだライトノベルにあったように、ここにいる私は魂を複製されただけの『コピー』で、元の世界の私は、何事もなかったかのように普通に生活しているのだろうか。
考えても、答えの出ないことばかりだ。
昨日、セシリアとの会話の中で知ったのだが、この世界には『女神様』という存在がいるらしい。それはただの神話や伝承ではなく、天恵(ギフト)という形で、人々に実際に恩恵を与えてくれる超常の存在だという。
(……会って、聞いてみたいですね。どうして私がここにいるのかを。そして、元の世界に帰る手段はあるのかを)
私がこうしてセシリアを助けているのは、もちろん彼女に命を救われた恩があるからだけど……それだけじゃない。動いていないと。誰かのために、何か目的を持って必死に生きていないと。こうしてふと一人で考える時間が出来てしまうと、得体の知れない不安や孤独に押しつぶされて、一歩も動けなくなってしまいそうだからだ。
もし、セシリアの冤罪を晴らして、彼女を助けるという『目的』が終わったら。
次は、女神様に会う手段を探すべきだろうか。それとも、この世界で最も神に近いと言われている『魔王様』の領地を目指し、直接会って話を聞くべきだろうか。
……でも、そうなったら。私は『魔族』で、彼女は『人族の聖女』だ。魔王のいる危険な魔族領に、人間の――それも次期教皇候補である彼女を連れて行くわけにはいかない。無実が証明されれば、彼女は本来の居場所である聖都に残るべきだし、それが彼女にとっても一番の幸せのはずだ。
(……分かっています。私と彼女では生きる世界が違いすぎる。いつかは離れ離れになるのが、お互いのためなんです)
頭ではそう痛いほど理解しているのに。
(それでも……それは、少し……いや。すごく、寂しいですね)
未練がましく言い訳ばかりを並べ立てる自分の心に、私はそっと自嘲するように微笑んだ。
それに、まだ引っかかっていることがある。あのゲームだ。今まで影も形もなかった、完全なフルダイブ型VRMMO。いくら『世紀の技術革新』と騒がれていたとはいえ、どうして医療や軍事ではなく、真っ先に『オンラインゲーム』として一般大衆に実装されたのか。あまりにも不自然すぎる。
この異世界で、私のゲームのステータスや魔法の仕様が当然のように機能していることや、言語が通じること。それらすべてが、あのゲームと何か関係している気がしてならない。
元の世界への帰還。この世界の真実。そして、隣にいる可愛い聖女様との、いつか訪れるお別れの予感。
(……聞いてみたいこと、知らなきゃいけないことが、増えすぎちゃいましたね)
私は小さく息を吐き出すと、不安と寂しさを振り払うように、私の胸に顔を埋めるセシリアの背中へ回した腕に、少しだけ力を込めた。
今はまだ、この手を離さないでおこう。先のことを考えるのは、彼女の無実を証明し、あの美しい笑顔を取り戻してからでも遅くはないのだから。
「んぅ……? りぜっと、さま……?」
私がそっと抱きしめ返したことで、セシリアがゆっくりと目を覚ました。ぱちぱちと瞬きを繰り返し、寝ぼけ眼で私を見上げるアメジストの瞳。そして、彼女の視線が『自分が今、どんな体勢で私に密着しているのか』を認識した。
「お、おはよう、ございます……っ。わ、わたし、リゼット様に抱きついたまま……っ」
「ふふっ。おはようございます、セシリア。私の特製湯たんぽの寝心地は、いかがでしたか?」
「あうぅぅ……っ」
顔を真っ赤にして離れようとするものの、まだ身体が完全に起きていないのか、毛布にくるまったままモゾモゾと芋虫のように身悶えするセシリア。
そんな彼女の可愛らしい反応を見ていると、先ほどまで抱えていた仄暗い不安も、朝霧のようにすっきりと晴れていくような気がしたのだった。
「あはは、そんなに急いで離れなくても大丈夫ですよ。それよりセシリア、せっかくですから『朝のお風呂』にしませんか? 寝汗もかいたでしょうし、さっぱりしますよ」
「あ、朝風呂、ですか……?」
羞恥心で目が覚めたかと思いきや、やはりまだ頭は半分眠っているらしい。セシリアは目をこすりながら、ぽやんとした声で聞き返した。
「はい。昨日の夜と同じように、すぐに魔法で作れますから」
「んぅ……。あたたかいお湯、いいですね……お願いしますぅ……」
いつもなら「一緒に入る」と言った時点で警戒してジリッと後ずさるはずのセシリアだが。限界まで疲れていた翌朝の寝起きということもあり、完全に警戒心が解けきっているらしい。彼女はこくりと頷くと、無防備な生まれたままの姿で、てとてとと私の後をついてきた。
(かっ……可愛すぎます! なんですかこの無防備な聖女様は! これ絶対、誰かに誘拐されてもホイホイついて行っちゃうパターンじゃないですか!)
私は内心で悶えながらも、昨晩と同じように土と水、火、そして闇の結界魔法を組み合わせる。「外からはただの黒い岩にしか見えない結界ですから、朝早くに街道を通る人がいても安心ですよ」と説明しながら、あっという間に即席の露天風呂を完成させた。
まずは湯船の外で、お湯を使って二人でしっかりと寝汗を洗い流す。寝ぼけ眼のセシリアは、私が背中を流してあげてもされるがままに、うっとりと目を閉じている。そして、身体を綺麗にしたところで、いよいよ二人でお湯に浸かることになった。
ぽちゃん、と。
温かいお湯に浸かったセシリアが、ほうっと幸せそうに息を吐く。私もその隣に並んで浸かりながら、彼女の雪のような白肌が、お湯の熱でほんのりと桜色に染まっていくのを横目で見つめた。
……さらに。
この即席風呂のお湯は、魔法で出したばかりの『完全に透明な水』である。透き通ったお湯の中では、彼女の小柄な身体に不釣り合いなほど豊かな双丘が、たぷんっ、と無防備に揺れているのが丸見えだった。
(……いけません。昨日は『清楚で常識的な大人として生きる』って決めたばかりじゃないですか。ここで手を出したら、また好感度がストップ安に……っ!)
私は暴れ出そうとする淫魔ソウルを必死に宥めようとしたが――ぽやんとした顔で無防備に身を預けてくる極上の美少女(しかもお湯で桜色に染まっている)を前にして、我慢などできるはずがなかった。
私の手は、まるで磁石に吸い寄せられるかのように、お湯の中で揺れる彼女の柔らかな双丘へとスライドしていった。
ぽふっ、むにゅぅっ。
(ああっ! 理性が! 元・女子高生の理性がサキュバスのえっちな本能に勝てません! だってお湯でしっとり滑らかで、最高の手触りなんです……っ!)
「んっ……ぁ……?」
お湯の中で胸を揉まれるくすぐったい快感に、セシリアがビクッと肩を震わせる。そして、うとうとしていたアメジストの瞳が、ぱちりと開いた。
視線を下げた彼女の目に映ったのは、お湯の中で自分の豊かな胸を後ろから両手でしっかりとホールドし、熱心に揉みほぐしている私の手。
「……………………」
「……………………」
朝の森に、数秒の静寂が落ちる。
「り、りぜっと、様……?」
「あ、いや、これは違うんです! これは、その、お湯の浮力の確認をですね……っ!」
「いやぁぁぁっ! なにしてるんですか朝っぱらからこの変態悪魔ぁーっ!! ――『ホーリーレイ』っ!!」
カッ!!
朝の森に、浄化の眩い閃光が炸裂した。
「ひゃああああっ!? あ、熱っ、熱いですぅぅぅっ!?」
私は全身を焼かれるような強烈な痛みに、女の子らしからぬ……いや、精一杯の女の子らしい悲鳴を上げて、露天風呂から勢いよく飛び出した。
(痛い痛い痛い! 火傷します! 直撃した周囲の地面からジュウウッと白い湯気が上がっていますよ!? アジトにいた腐敗神官のホーリーレイはただの温風だったのに、本物の聖女様が放つガチの聖魔法は威力が桁違いじゃないですかぁぁっ!?)
私が涙目で地面を転げ回っていると、お湯の中で胸を隠したセシリアが、真っ赤な顔をして絶対零度のジト目で私を睨みつけていた。
「……っ、もう! 昨日の夜は『野暮な真似はしない』って言ってたのに、やっぱり嘘だったんじゃないですか!」
「ご、ごめんなさい……っ! でも、その、お湯の温度と浮力が絶妙で、手が滑って……!」
「言い訳しないでください、この変態悪魔!」
プイッ、と顔を逸らしながらも、セシリアは慌ててお湯から上がると、身体を拭くための大きめの布をバサッと手に取り、火照った素肌を隠すように前を覆った。
水滴が滴る雪のような白肌。そして、布をギュッと抱きしめたことで逆に強調され、隙間からどうしてもはみ出してしまう豊満な胸の谷間と、引き締まった太もものラインが、なんとも言えない艶かしい色気を放っている。
私はヒリヒリと痛む火傷に『回復魔法』をかけながら、そんな彼女の無防備で色っぽい姿を見つめ……内心で、こっそりと微笑んだ。
(……ええ。もちろん、サキュバスのえっちな本能が疼いたのは事実ですが。やろうと思えば、元・女子高生の理性でギリギリ我慢することはできたんです)
では、なぜあえて『変態悪魔』の汚名を被ってまで、あんなお約束のようなセクハラに走ったのか。
(だって……私が何もしなかったら、セシリアはきっとまた昨日みたいに『私は聖女だから』って、一人で無理をして限界まで全部背負い込もうとしてしまうから)
教皇候補としての重圧、同胞からの裏切り、そして命を狙われたトラウマ。彼女の背負っているものは、十五歳の少女にはあまりにも重すぎる。だからこそ、私と一緒にいる間くらいは、気を張った『立派な聖女様』でいてほしくなかったのだ。
顔を真っ赤にして怒ったり、恥ずかしがったり、呆れたり。そんな『普通の年頃の女の子』らしい、生き生きとした感情を見せてほしかった。
(……私と彼女が一緒にいられる時間は、きっと、彼女の無実が証明されて、彼女を嵌めた者たちをきっちりと解決するまでの間だけですから)
いずれ訪れる、別れの日まで。ただ思い詰めて証拠集めをするだけの旅じゃなくて、笑顔と、呆れ顔と、ちょっとしたポンコツ(セクハラ)コメディに彩られた、楽しい『思い出』をたくさん作っていきたい。
(そのためなら、ただの変態悪魔(笑)扱いされるくらい、安いものです。……まぁ、極上のお胸を揉めるという圧倒的な役得があったのは否定しませんが!)
私は少しだけズレた自己完結(と見事な言い訳)をキメて、パンッと両手を叩いた。
「さあセシリア! 朝のお風呂でスッキリしたところで、朝食にしましょう!」
「……まだ少し怒ってますからね」
「あはは、ごめんなさいってば! 今朝は、昨日残しておいたスープを温め直して、買っておいたチーズとドライフルーツも添えちゃいますから!」
私が魔法で火を起こして鍋を温め始めると、お肉の出汁が溶け込んだスープの香ばしい匂いが、朝の冷たい森の空気にふわりと広がっていった。
「……っ。それは、すこし……美味しそう、ですね」
ジト目を向けながらも、セシリアのお腹が『きゅるるっ』と小さく鳴る。彼女は顔を真っ赤にしてお腹を押さえ、私は思わず吹き出しそうになるのを必死に堪えた。
私たちの旅は、まだ始まったばかりだ。
この先、どれだけ危険な魔物や腐敗した神官たちが立ち塞がろうとも。
隣で頬を膨らませているこの可愛い聖女様を、私が絶対に守り抜いてみせる。朝日に照らされた街道を見据えながら、私は心の中で、改めてそう強く誓ったのだった。