レベルMAXの百合サキュバスに転生した元・女子高生の異世界蹂躙録 〜冤罪の聖女様と『共犯者』になって、彼女を嵌めた悪党どもを物理的に分からせます〜 作:百合サキュバス好き
馬車のおかげで距離を大きく稼ぐことができ、日が暮れる頃には、私たちは街道沿いの安全な野営地に到着していた。今日はここで、トーマスさん一行と合同で野営をすることになった。
思えば、トーマスさんとは話していたが、護衛である若い冒険者の少年二人の名前もまだ聞いていなかった。出会った時は馬車が壊れるトラブルの最中でそれどころではなく、移動中も私とセシリアは『お礼』として馬車の荷台で休ませてもらっていた。
護衛の少年たちは馬車の外を歩いて周囲を警戒していたため、こうして落ち着いて顔を合わせるのは、野営の準備が始まってからだったのだ。
荷解きを終え、初級冒険者の少年二人が火打ち石を使って悪戦苦闘しながら焚き火を熾そうとしていた。
「あの、よかったら私が魔法で火を熾しましょうか?」
私が横から声をかけ、「失礼しますね」と前かがみになって薪を覗き込んだ、その瞬間だった。
――だぷんっ。
冒険者の服では到底隠しきれない私の爆乳が、重力に従って質量を主張して大きく揺れた。至近距離で再びその圧倒的な揺れを見せつけられた少年たちは、まるで雷にでも打たれたかのように硬直し、顔を真っ赤にして完全にフリーズしてしまった。
「あれ? どうかしましたか?」
火打ち石を止めて固まってしまった彼らに、私は不思議に思って小首を傾げる。上目遣いで覗き込むような形になった私を見て、少年たちは「ひゅっ」と短い息を呑み、さらに視線を泳がせた。私が指先からパチンと小さな火の粉を出して薪に火を灯していると――。
「――っ、痛っ!?」
不意に、私の脇腹に鋭い痛みが走った。驚いて振り返ると、隣に立っていたセシリアが、私の服の隙間からほんの少しだけ覗く脇腹の肉を、親指と人差し指で容赦なく『むぎゅっ』と抓っていた。
「せ、セリアさん!? なんでいきなり脇腹を……っ」
「……リゼット様。殿方の前で無防備に胸を揺らしたり、上目遣いですり寄ったりするのは、少し『はしたない』のではないですか?」
セシリアが、見事な絶対零度のジト目を私に向けてくる。表向きは『聖職者としての風紀的なお小言』という顔をしているが……どう見てもそれだけではない。彼女の不満げに尖った唇と、微かに潤んだアメジストの瞳が、何かを訴えかけていた。
(もしかしてヤキモチ焼いてくれてるんでしょうか? 可愛い〜っ! 二人きりだったら襲ってしまいそうでした、危ない危ない……っ!)
「あ、あはは……ごめんなさい、気をつけます」
「分かればよろしいです。……ふんっ」
私が苦笑して謝ると、セシリアは抓っていた手を離し、ぷいっとそっぽを向いてしまった。しかし、その耳の先がほんのりと赤く染まっているのを、私は見逃さなかった。そんな私たちのやり取りを見てようやく我に返ったらしい少年たちが、慌てて居住まいを正した。
「あ、あの! 火起こし、ありがとうございます! 俺、剣士の駆け出しで、カイルって言います!」
「お、俺は魔法使い見習いのリックです! 姉ちゃんたち、すげえ美人でビビりました……っ!」
「ふふっ、カイル君にリック君ですね。私はリゼットで、こっちの彼女はセリアです。今日はよろしくね」
私たちが和やかに自己紹介を交わし、パチパチと燃え始めた焚き火の周りに腰を下ろした、その時だった。
「いやぁ、馬車を持ち上げてくれた上に火起こしまで、本当に助かったよ」
そこへ、商人のトーマスさんが朗らかに笑いながら近づいてきた。聞けば彼には故郷に妻子がいるらしく、少年たちのようにデレデレと鼻の下を伸ばすような真似はしない。
「これ、俺たちの野営食なんだが……急に五人になったから少し量が少ないかもしれない。でも、よかったら食べてくれ」
トーマスさんが申し訳なそうに差し出してきたのは、干からびた少量の肉と、石のように硬いパン、そして薄い塩水のようなスープだった。初級冒険者の彼らにとってはこれが日常らしい。私はそれを受け取りつつ、自分の背負っていた巨大リュックの中から『ある物』を取り出した。
「あっ、私たちも食料はたくさん持っているので出しますよ! せっかくですから、今日は私が腕を振るいます。よかったら一緒にどうですか?」
私が取り出したのは、道具屋で店主に止められながらも大量に買い込んでいた食料や調味料の山だった。
私は先ほど熾したばかりの焚き火に大鍋をかけ、たっぷりの水を張る。そこに大量の干し肉を細かく刻んで投入し、硬パンも惜しげもなくちぎって放り込んだ。
ここまでは普通の野営食だが、ここからが私の腕の見せ所だ。私は小袋から取り出した『粗挽きの岩塩』と『獣肉の臭みを消す乾燥ハーブ』を、絶妙なタイミングで鍋の中にパラパラと振り入れた。途端に、ただの塩ゆでだった鍋から、食欲を刺激する芳醇でスパイシーな香りが弾けるように広がる。
「うおおっ!? な、なんだこのすげえ匂い!」
「腹減った……姉ちゃん、それまだ食えないのか!?」
香ばしい匂いに当てられたカイルとリックが、鍋の周りでソワソワと落ち着きなく身を乗り出してくる。グツグツと煮込むにつれて、お肉の塩気と濃厚な脂の旨味、そしてハーブの香りがスープ全体に溶け出していく。その極上の出汁をたっぷり吸い込んだ硬パンは、とろとろの柔らかさへと姿を変えていった。
「さぁ、できましたよ! たっぷりありますから、皆さんおかわりしてくださいね!」
「お、おおおっ……! こんな贅沢な煮込みスープ、野営じゃなかなか食えねえぞ!?」
「うめぇっ! 身体の芯まで温まる……っ!」
大量の具材が溶け込んだアツアツの野営スープを口にした商人や少年たちが、鍋を囲んで歓喜の声を上げる。その賑やかな様子を眺めながら、私はふと、自分の服の袖がツンツンと控えめに引っ張られていることに気がついた。
「ん? どうしました、セリア?」
「…………別に」
隣に座るセシリアは、なぜか少しだけ唇を尖らせて、楽しそうにスープをすする少年たちへとジト目を向けていた。
どうやら、私が先ほど無意識に小悪魔ムーブをかまして少年たちを魅了していたのが、少しだけ『モヤっ』としたらしい。加えて、彼女の視線は私の『だぷんっ』と揺れた胸元にも向けられており、そっと自分の胸元に手を当てている。どうやら同性としてのほんの少しの羨望(あるいは敗北感)も入り混じっているようだった。
(ふふっ。セリアも十分に大きくて魅力的なんですけどね。むしろ私みたいな爆乳よりも、手にぴったりと収まるセリアの胸の方が、揉み心地も最高で――)
つい先日、ベッドで肌を重ねたときの彼女の滑らかな裸体と感触を思い出し、私の顔は無意識のうちにだらしなく緩んでしまっていたらしい。
ぽかっ。
「――あだっ!?」
不意に、頭頂部に軽い衝撃が走った。見れば、セシリアがジト目をさらに細め、私の頭をポカッと叩いた手を下ろすところだった。
「……リゼット様。今、何かとても不純なことを考えていませんでしたか?」
「な、なにも考えてないですよ!? ほ、ほらセリア、スープ冷めちゃいますから!」
(ヤバいヤバい、心の声が完全に顔に出てましたか……っ!)
私は慌ててアツアツのスープが入った木の器をフーフーと冷まし、ご機嫌取りのように彼女へとそっと手渡した。
「ほら、セリア。あの時、重くてかさばるって言われた大量の食料も、こうして役に立ったでしょう? だからこれで許してください!」
「……っ。はい、リゼット様のおっしゃる通りでした。本当に、美味しいです」
モヤモヤとしていたセシリアだったが、極上の出汁を吸ったスープを一口飲むと、機嫌を直したように、ぱぁっと花が咲いたような美しい笑顔を向けてくれた。過剰すぎた私の買い物も、巡り巡って旅の時間を短縮し、彼女の笑顔を引き出すことに繋がったのだ。
◇ ◇ ◇
食事が終わり、皆がふぅと満足げな息を吐いてくつろぎ始めた頃。セシリアが、私の巨大リュックの中から仰々しいデザインの『木箱』を取り出した。パカッと蓋を開けると、中には緩衝材に包まれた、繊細で美しい意匠の『陶器のティーカップ』と茶葉のセットが収められている。
「さて、食後のお茶にいたしましょうか」
セシリアが慣れた手つきで優雅に茶葉の準備を始めると、それを見ていたカイルとリックが目玉が飛び出そうなほど驚いて叫んだ。
「い、いやいやいや!? なんで野営にそんな高級そうなティーカップ持ってるんだよ!」
「普通、旅してる途中で揺れて割れちまうだろ!? 姉ちゃんたち、なんでそんなモン持ち歩いてるんだよ!?」
冒険者としての真っ当すぎるツッコミに対し、セシリアはきょとんとした顔で小首を傾げた。
「え? 教会に治療に来ていた冒険者の方が言っていましたよ。野宿で心を休めるためには、お茶の時間は必須アイテムだと」
「いや、言った奴絶対そいつ頭おかしいから! 貴族のピクニックじゃねぇんだぞ!?」
カイルたちの言う通り、道中の揺れで割れなかったのは、ひとえに巨大リュックを背負う私の『剛力(ステータスの暴力によるブレない歩行)』のおかげである。しかしそんなことは露知らず、セシリアはお湯を注いでふわりと芳醇な紅茶の香りを漂わせた。
「まぁまぁ、お前たちも一杯もらいな。食後にこの香りはたまらねぇよ」
トーマスさんに促され、少年たちは恐る恐る高級そうなティーカップを受け取る。温かい紅茶を一口すすったリックが、ふぅと息を吐いてリラックスしたように口を開いた。
「はぁ……美味え。そういや、姉ちゃんたちはなんでわざわざ聖都に向かってるんだ? なにかギルドの大きな依頼でも受けたのか?」
「えっ……?」
無邪気な質問に、私とセシリアの肩がビクッと跳ねる。
セシリアは次期教皇の座を巡る派閥争いによって『教会の寄付金を横領した』という濡れ衣を着せられ、逃亡者として手配されているかもしれない身なのだ。「実は自分を嵌めた他のクソ女(聖女)たちから証拠を奪って、冤罪を晴らすために」などと馬鹿正直に言えるはずもない。
私たちが答えに窮して顔を見合わせていると、トーマスさんがカイルとリックの頭を軽く小突いた。
「痛っ! なんだよおっちゃん!」
「こら。街道を旅する上での鉄則その一。『他人の事情にズカズカ踏み込むべからず』だ。ワケアリの事情なんて、この街道じゃ石ころより転がってるんだ。野暮な詮索をするやつは、長生きできねぇぞ」
「す、すんません……」
トーマスさんの大人なフォローに、私は内心で(トーマスさんイケオジすぎます……!)と拝み倒した。カイルは申し訳なさそうに頭を掻きながら、照れ隠しのように笑った。
「悪かったよ、姉ちゃんたち。俺たち、聖都のギルドで成り上がって、いつか高ランク冒険者になるのが夢でさ……聖都が近づいてきて、つい浮かれちまってて」
「俺たち、絶対ビッグになってやるからな!」
目をキラキラさせて夢を語る少年たちの姿は、まさに『王道ファンタジーの駆け出し冒険者』そのものだ。
「ふふっ。二人とも、立派な冒険者になれるといいですね」
パチパチと燃える焚き火の暖かさと、若き冒険者たちの夢語り。大人なトーマスさんの気遣いもあり、夜の静寂と孤独を感じる暇などないほど、賑やかで温かい夜が、こうしてゆっくりと更けていった。