レベルMAXの百合サキュバスに転生した元・女子高生の異世界蹂躙録 〜冤罪の聖女様と『共犯者』になって、彼女を嵌めた悪党どもを物理的に分からせます〜 作:百合サキュバス好き
聖都エリュシオンの高位神官や大商人たちが居を構える富裕区。その一角に建つ、白亜と大理石で彩られた豪奢な建物。その一角に建つ、白亜と大理石で彩られた豪奢な建物。それが、この街で最も格式高いと言われる高級宿『白百合の寝所』だった。
エントランスに足を踏み入れると、磨き上げられた床にシャンデリアの光が反射し、ふかふかの絨毯が足音を吸い込む。受付に立つ身なりの良い支配人は、泥と埃にまみれた見習い剣士(私)と、顔を隠したローブ姿の魔法使い(セシリア)を見て、明らかに難色を示した。
「いらっしゃいませ。……あの、お客様? 恐れ入りますが、当館は少しばかり宿泊費が張りますが……」
遠回しに『お前らのような薄汚れた平民の冒険者が泊まれる場所じゃないぞ』と言外に告げてくる支配人。しかし、私はそんな嫌味を全く気にした風もなく、ドンッと受付のカウンターに分厚い革袋を置いた。
ジャラッ。
革袋の口を解くと、中から眩いばかりに輝く大量の『金貨』がこぼれ出た。
「一番良くて、一番防音とセキュリティのしっかりした部屋を。一週間分、これで足りますか?」
「っ!? は、はい! かしこまりました、すぐに最上階の特別室をご用意いたします!!」
金貨の山を見た瞬間、支配人の態度が百八十度ひっくり返り、揉み手をして最敬礼してきた。さすが高級宿、金払いの良い客の素性は一切詮索しないというスタンスが徹底している。
「あ、あわわ……リゼット様、あんなに大金を……」
私の後ろで、セシリアがローブの裾を握りしめながらオロオロと震えていた。私は彼女にウインクを一つ落とし、案内された最上階の特別室へと足を踏み入れた。
ガチャリ。
重厚な扉を閉めた瞬間、外の喧騒が嘘のように消え去った。
「わぁ……っ」
部屋の中央には、何人も寝転がれそうなふかふかの天蓋付きキングサイズのベッド。広々としたバルコニーからは聖都の街並みが一望でき、奥にはいつでも温かいお湯が出る備え付けの豪華な魔導バスルームまで完備されている。微かに漂う上品な香りも相まって、まさに選ばれた人間だけが許される至高の空間だ。
「すごいですね、セシリア! 防音結界も完璧ですし、ここなら誰に気兼ねすることなく証拠集めの作戦会議ができますよ!」
私は背負っていた巨大リュックをドスンと床に下ろし、大きく伸びをした。
「は、はい……。それにしても、いくらなんでも広すぎますし、豪華すぎます……っ。こんなに素晴らしいお部屋に、手配中のわたしが泊まるなんて……」
高級すぎる調度品に囲まれ、セシリアはどこか落ち着かない様子で部屋の隅にちょこんと縮こまっている。私はふかふかのソファに腰を下ろし、隣のスペースをポンポンと叩いた。
「そんなに縮こまらないで、こっちに座ってください。さっそくですが、これからの動きについて『作戦会議』をしましょう」
「……作戦会議、ですか」
セシリアがこくりと頷き、少し緊張した面持ちで私の隣に腰を下ろす。
「まず、セシリアの冤罪を晴らすためには、あの日あなたの部屋に忍び込んで毒を盛った『実行犯』と、それを裏で指示した『黒幕(他の聖女たち)』を繋ぐ証拠が必要です」
「はい……。でも、どうやってそんな証拠を? 今のわたしは手配中で、教会の内部を調べることなんて不可能ですし……」
「そのことなんですが」
私は居住まいを正し、少しだけ気まずそうに頬を掻いた。
「実は……聖都に来る前、辺境の街でセシリアのお洋服や資金を調達した時に、ちょっとだけ『情報収集』を済ませてあるんです」
「えっ? お洋服を買いに行った時の、あの数時間でですか?」
「はい。……あの、セシリア。これから話すことは、少し……いえ、かなり『人道にもとる(倫理観的にヤバい)』ことなんですが。どうか引かないで聞いてくださいね」
私が前置きをしてから、辺境の街での出来事――裏組織のアジトへ単身で乗り込んだことを話し始めると、セシリアは目を丸くして聞き入った。
「私が透明化の魔法で裏組織のアジトに潜入したところ……一番奥のボスの部屋で、この街(聖都)から出向いてきたと思しき『女性神官』が、ゴロツキのボスに金貨を渡して密談していたんです」
「! 聖都の神官が、裏組織と……?」
「はい。そして神官はこう言いました。『昨日の“聖女の処分”ご苦労様でした。今頃は魔の森で、毒で死体になっているでしょう。これで次期教皇の座はあのお方のものだ』……と。内容からそのまま考えると、その裏組織の人間があなたを麻袋に詰めて魔の森へ捨てた『実行犯』で、お金を渡していた神官が黒幕の部下……といった所でしょうか」
「っ……!!」
セシリアの肩がビクッと跳ね、アメジストの瞳が絶望に揺れた。
「……やっぱり、そうだったのですね……」
彼女はギュッと両手を握りしめ、ポツリと零した。
「実は……心のどこかで、ほんの少しだけ期待していたんです。教会の人たちは関係なくて、ただわたしが運悪く別の何かに巻き込まれただけじゃないかって……。でも、これで確定してしまったのですね」
身を縮め、悲痛な顔で俯くセシリア。私はそんな彼女から少しだけ視線を逸らし、コホンと咳払いをした。
「……ええ。それで、その……証拠を隠滅されたり逃げられたりしないように、私の方で少し『手荒な対処』をしておきました」
「手荒な、対処……?」
「はい。まず、ゴロツキのボスは魔法でボコボコにして気絶させてから、隠し金庫の場所を吐かせて、アジトの金品と裏金をすべて私が没収しました。今私たちが使っている資金は、その時に巻き上げ……じゃなくて、事後承諾でいただいたものです!」
「…………えっ?」
「そして女性神官の方ですが……証拠隠滅されては困るので、私のサキュバスの能力(魅了の魔眼)を使って、文字通り『私への絶対服従』を誓う操り人形に精神を書き換えておきました! 見た目は普通の神官ですが、中身は完全に私に従うだけの忠実なスパイです!」
私が「ふふんっ」とドヤ顔で言い放つと。悲しみに沈んでいたはずのセシリアは数秒間、ポカンと口を開けたまま完全にフリーズしてしまった。
「…………」
「…………セシリア?」
「……あの、リゼット様? つまり、ゴロツキのボスを脅迫してアジトの金品を強奪し、聖都の神官の精神を魔眼で洗脳して操り人形にした、と?」
「はい! もちろん神官には、『セシリアは死んでいた』と偽の報告をさせて組織の目を誤魔化しつつ、聖都に戻ってこちらの有利になるように内部情報を探らせています! 我ながら完璧な情報操作とスパイ作戦かと!」
私が胸を張って答えると、セシリアは頭を抱えて深々とため息を吐いた。
「……リゼット様。それ、やってること完全に『ただの強盗と悪の洗脳』じゃないですか……っ!」
「うぐっ……」
「教会の教えに従えば、人間の精神を破壊して操るような魔族は、問答無用で討伐の対象です。……普通なら、絶対に許されない大罪ですよ」
真っ当すぎる聖女様の言葉に、私はグウの音も出なかった。確かに、客観的に見れば完全に『極悪非道な魔族の所業』そのものである。
「そ、そうですが! でも、相手はあなたに冤罪を着せて、魔の森に捨てて殺そうとしたクズどもですよ!? これくらいされて当然の因果応報です!」
「それは……確かに、そうかもしれませんが……」
セシリアは少しだけ目を伏せ、ギュッと自分のスカートの裾を握りしめた。
「……本来なら、聖女であるわたしが貴女を止めなければならないはずなのに。……わたしの為に、貴女にそこまで手を汚させてしまったのですね」
セシリアはソファの上で体育座りになり、顔を膝に埋めてブツブツと倫理観との葛藤を再開してしまった。しかし、そんな風に真っ当な倫理観で悩んでいる彼女の姿を見ると、逆に私は少しだけホッとしていた。
(……ええ。私の行動は、完全に『悪の魔族』寄りです)
人を洗脳することにも、死体から物を奪うことにも、私はもうほとんど抵抗を感じていない。サキュバスという肉体に引っ張られ、私の精神が徐々に『人間』から離れていっている自覚はある。
(だからこそ、彼女のような『真っ当な倫理観を持った人間(光)』が隣にいて、こうして怒ってくれないと……私は本当に、ただの恐ろしいバケモノになってしまう気がするんです)
「ごめんなさい、セシリア。やりすぎたとは思っています。でも、あなたを傷つけた奴らを、私は絶対に許せなかったんです」
私が素直に謝ると、セシリアは顔を上げ、少しだけ困ったように微笑んだ。
「……ズルいです、リゼット様。そんな風に言われたら、討伐なんて、できなくなってしまうじゃないですか」
彼女はそっと私の手を取り、その温かい手のひらでギュッと握りしめてくれた。
「……リゼット様が、わたしの見えないところで、わたしのためにそこまで手を汚してくださっていたこと……感謝しています。でも、これからは無茶をしないでくださいね。わたしたちはもう、一蓮托生の『共犯者』なのですから」
「ふふっ。はい、共犯者ですね」
神様にお祈りする立派な聖女様が、討伐対象であるはずの魔族の私に向かって『共犯者』と笑いかけてくれる。その言葉が、私の心の一番柔らかい部分を温かく満たしてくれた。
「さて! 相手の懐にスパイ(洗脳済み)を送り込めているわけですし、ここは焦らず、彼女からの報告を待ちながら安全に証拠を固めましょう!」
「はい。……でも、どうやってその神官の方と連絡を取るのですか?」
「それについては、ちょっとした手を使います。……まあ、難しい話はこれくらいにしておきましょう! というわけでセシリア!」
私はパンッと手を叩き、満面の笑みで宣言した。
「長旅で疲れたでしょう? スパイからの報告があるまでまだ数日はかかりますから、まずはお風呂に入って、このフカフカのベッドでゆっくり休みましょう!」
私は勢いよく立ち上がり、最高級のふかふかベッドへダイブする準備を整え……振り返って、とびきりの笑顔で提案した。
「さぁ、さっそく二人で広いお風呂に入りましょうか!」
「……やっぱり、下心が透けて見えます、この変態悪魔」
聖女様の絶対零度のジト目が、再び私の顔に突き刺さったのだった。