レベルMAXの百合サキュバスに転生した元・女子高生の異世界蹂躙録 〜冤罪の聖女様と『共犯者』になって、彼女を嵌めた悪党どもを物理的に分からせます〜 作:百合サキュバス好き
「ちょうどいいじゃないですか。悩みがあるなら、私が解決してあげますよ。……もちろん、相応の『対価』は払ってもらいますけどね」
私がシスター服のフードを外し、暗がりの中で紅い瞳を怪しく光らせると、二人の聖女はビクッと肩を跳ねさせた。だが、すぐに私が着ている『地味な清掃係のシスター服』を視界に収めると、先程までの焦りを表向きだけはスッと消し去り、冷ややかな権力者の仮面を被って詰問を始めた。
「あ、貴女! ここは立ち入り禁止ですわよ!」
「そうです! ただの清掃係が、こんな夜更けに地下書庫の奥深くで何をしているの!? 誰の許可を得て入ってきましたの!」
ルチアとシャルロッテは、あくまで『迷い込んだ下っ端を叱責する上司』という有能そうなポーズを取り、私を威圧しようとしてくる。
「いや、さっきまで教皇暗殺と魔族との繋がりについて、顔を真っ青にして密談していた人たちが急に上司の顔を作っても、説得力ゼロですよ。……足、震えてますし」
「「なっ……!?」」
私が鼻で笑いながら指摘すると、二人がギリッと奥歯を噛み鳴らした。彼女たちの目に、先程までのハッタリの余裕はなくなり……代わりに、明確な殺意が浮かび上がる。
「聞かれたからには仕方ありませんわね。ここで消えてもらうしかなくってよ。清掃係のシスターが何人か行方不明になっても、誰も気にしませんもの」
「ええ。やりなさい、『番人(ガーディアン)』!」
シャルロッテが指輪の宝石に魔力を流し込むと、隠し部屋の奥に置かれていた二つの巨大な石像が、ガコンッ! と重々しい音を立てて動き出した。
見上げるほどの巨体を持つ、ミスリル製のゴーレム。おそらく、横領した莫大な資金を注ぎ込んで、錬金術師に作らせた最高峰の防衛兵器なのだろう。大剣を構えた二体のゴーレムが、地響きを立てながら私とセシリアに迫り来る。
「ふふっ! 身の程を知りなさい、下賤な清掃係! そのミスリルゴーレムにミンチにされて――」
「セシリアはそこで見ていてください。教皇様の治療で、少し疲れたでしょう?」
私はセシリアを背後で庇うと、二人の高笑いを遮るように、迫り来る巨大な大剣に向かって無造作に右手を突き出した。
「ふふっ、バカな事を。ミスリルゴーレムの攻撃を素手で止めようなんて――」
次の瞬間には私がミンチになるのを想像したのか、ルチアが焦りを消して余裕の笑みを浮かべた――その直後。
私は、振り下ろされた数トンはあるであろうゴーレムの大剣を――『素手』でガシッと受け止めていた。
「「……は?」」
ルチアとシャルロッテの顔から、完全に表情が抜け落ちる。
「なるほど。純度百パーセントのミスリルですか。金かかってますねぇ」
私はつまらなそうに呟くと、受け止めた大剣を指先の力だけでバキリと粉砕。そのまま踏み込み、ガラ空きになったゴーレムの胴体へ、軽く右の拳を押し当てた。
「でも、硬いだけで動きが単調すぎます」
ドゴォォォォォォンッ!!!
爆発のような轟音と共に、数千万ゴールドは下らないであろうミスリルゴーレムの胴体が、紙屑のように弾け飛んだ。私はそのままの勢いで跳躍し、もう一体のゴーレムの頭部を踵落としでカチ割って沈黙させる。
「え、あ……?」
「う、嘘ですわ……防城兵器クラスのミスリルゴーレムが、素手で……? あ、あ、貴女、人間じゃ……ま、魔族……っ!?」
粉々になった金属片の雨が降り注ぐ中。攻撃をしたせいで『幻影魔法』が解除された私の姿を見て、二人の聖女は顔面を蒼白にしてへたり込んだ。
幻影で作っていたシスター服は消え失せ、あらわになったのは、立派な角とコウモリの羽、そして豊満な身体を包む扇情的なサキュバスの衣装。
私はパラパラと服の埃を払いながら、腰を抜かしている二人の前へと歩み寄った。
「さて。ウォーミングアップはこれくらいにして……交渉の続きと行きましょうか」
「ひ、ひぃぃっ! こ、来ないで……っ!」
「た、助けて……なんでもします、お金ならいくらでも出しますから……っ!」
圧倒的な暴力と上位魔族としてのプレッシャーの前に、恐怖で涙目になりながら後ずさる二人。私は獲物の顔を覗き込み、極上の笑みを浮かべた。
「命までは取りませんよ。教皇様から『殺さずに、二度と逆らえないように証拠を突きつけて、心をへし折ってこい』と、直々の命令を受けていますから」
「ルチア様、シャルロッテ様。……あなたたちの悪行は、ここで終わりです」
私の背後から、セシリアが自ら清掃係のフードを脱ぎ捨てて静かに告げた。
その顔を見た瞬間、二人の聖女は弾かれたように悲鳴を上げた。
「セ、セシリア……!? な、なんで生きているのよ!? 猛毒を飲ませて廃屋に捨てたはずじゃ……っ!」
「あ、ありえませんわ! 教皇様も、あんな呪毒から助かるはずが……っ!」
「ええ。あなたたちが盛った呪毒は、私がさっき全部消し飛ばしましたからね。……もうお分かりですね? あなたたちの企みは、二人の生存証明を含めて全て教皇様に筒抜けです。この裏帳簿も、魔族との繋がりを知っていたことも、立派な国家反逆罪になりますねぇ」
私は山積みの裏帳簿をパラパラと捲りながら、冷酷に告げる。確実な死を与えたはずの標的が二人とも生きていたという事実は、彼女たちの最後の希望の糸を完全に断ち切った。
「お前たちが生き残る道は一つだけ。教皇様とセシリアに絶対服従を誓い、一生を懸けてこき使われる『奴隷の契約』を結ぶこと。……死んで楽になるか、生きて罪を償うか。どっちがいいですか?」
逆らえば殺されるという絶対的な本能の恐怖に、二人はガチガチと歯の根を鳴らしながら、床に額を擦り付けた。
「し、従いますぅ……っ! なんでも、なんでも言うこと聞きますからぁっ!」
「今までの罪を償いますわ! だから殺さないでくださいませ……っ!」
「よろしい。交渉成立ですね」
私が満足げに頷くと、二人を拘束するための道具を探して隠し部屋の隅を物色した。
すると、金貨の山の奥にある木箱の中に……裏帳簿だけでなく、なぜか『奴隷用の魔封じの縄』や『鞭』、さらには『媚薬』に『録画用の魔道具』といった、どう見てもいかがわしい用途にしか使えなさそうな道具が大量に隠されているのを発見した。
私は気まぐれに、その魔道具の再生スイッチを入れてみた。すると、空中にポンッと立体映像が浮かび上がる。
『ああ……良い声ね! ふふっ、次は絶対にあの生意気なセシリアをこうして泣かせてあげるわ……っ!』
映像の中では、全裸にさせ縄で縛り上げた下級シスターを前に、頬を紅潮させて下劣に嗤うルチアの姿が、バッチリ高画質で記録されていた。
「…………」
私はスッと、真顔で再生スイッチを切った。
「……なるほど? ただの隠し金庫かと思えば。こんな防音の密室にこんな道具を隠して……ここで逆らえない下級シスターを連れ込んで、随分と下劣な趣味を楽しんでいたみたいですね、第二の聖女様?」
「ひっ……!? そ、それは……っ!」
痛いところを突かれた(というか決定的な証拠を再生された)のか。第二の聖女ルチアが、恐怖とは違う羞恥で顔を真っ赤にしてブルブルと痙攣した。
「……しかも、うちの可愛いセシリアまでこんな目に遭わせようとしていた、と」
私の静かな、だが絶対零度の声が密室に響く。
無意識に殺気が漏れ出ていたのだろうか。チリチリと空気が凍りつくような威圧感に耐えきれず、ルチアは怯えたように私からスッと視線を逸らした。
だが、その逸らした視線の先には――セシリアが立っていた。
先ほどの映像を見せられ、自分もその標的だったと悟った彼女は、今までに見たこともないような『汚物でも見るような嫌悪と怒り』に満ちた冷たい眼差しで、ルチアを見下ろしている。
「ひっ……!」
狙っていた獲物からの心底蔑むような視線に、ルチアは致命傷を負ったような顔になり、慌てて床へと完全に目を逸らした。
(……よし。後でもう少しキツめにわからせて(調教して)あげましょう)
私は内心でひっそりとルチアへの評価を『クズ』から『ドグズ(変態)』へと格下げしつつ。
そのルチアの私物であるおあつらえ向きの縄を引っ張り出すと、これ以上何も出来ないように二人を容赦なく簀巻きにして拘束した。
「さて、拘束も済んだところで……アウレリアについて一つ聞きたいことがあります」
「ひっ……な、なんでしょうか……っ」
「アウレリアが魔族と取引していたのは、教皇様を殺すための『呪毒』だけですか? 他にも何か、ヤバいものを仕入れていたんじゃありませんか?」
私が尋ねると、自分の縄で簀巻きにされたルチアとシャルロッテが震えながら答えた。
「そ、それは……わ、わかりません。でも、アウレリア様は最近、いつも肌身離さず『紅い液体の入った小瓶』を持ち歩いておいででした。……『いざという時は、これで……ふふふっ』と、恐ろしい笑みを浮かべながら……っ」
(魔族から仕入れた、紅い液体の入った小瓶……)
聞いただけでイヤな予感しかしない言葉だ。ただ、この二人はこれ以上の詳細を知らないようなので、そういう切り札を持っていると警戒するしかなさそうだ。
「有益な情報、ありがとうございます。……さてセシリア。とりあえずは、この証拠の山と縛った二人を連れて、教皇様のところへ戻りましょうか」
「はいっ。一番の黒幕……第一の聖女アウレリア様を止めるのは、その後ですね」