名探偵プリキュア! 〜迷宮のアルカナと偽りの真実〜   作:暁 蒼空

21 / 23
名探偵プリキュア! 第12話 「キュアアルカナ・シャドウの秘密」を元にして作成した話となります。


第6話:切れない想いと、失われた記憶(前編)

キュアット探偵事務所。

 

「ぬぬぬ……っ!」

「ぐー!」

 

あんなが、窓の取手を掴んで何やら一生懸命に力を込めている。

 

「ポチ?」

 

そこへやってくるポチタン。

 

「あっ、ポチタン! ちょうどよかった!」

 

あんながポチタンに助けを求める。

窓が硬くて開かない。

 

「ぐぬぬ……!」

「ポチチ……!」

 

二人で力を合わせ、ぐぐぐっと窓を押し上げる。

ガチャン。

 

「開いた!」

「ふぅ……」

 

窓が開き、力尽きたあんな。

そこへ。

 

「おはよう」

 

部屋にみくるがやって来た。

 

「えっ!?」

 

朝から窓で力尽きているあんなを見て、みくるは目を丸くする。

 

ソファに座る二人。

 

「窓を開けようとしたら固くてさ。っていうかみくる、今日は早いね」

「うん。……アルカナ・シャドウのことが気になって」

「私も!」

「だよね!」

 

昨夜の事件。

 

『プリキュアでありながら、怪盗団ファントムに所属している』という、キュアアルカナ・シャドウの存在。

あの美しくも恐ろしい堕天使の姿が、二人の頭から離れずにいた。

 

「そいつのことなら、ロンドンのキュアット探偵事務所本部に問い合わせといた」

「あそこの連中なら、世界中のいろんな情報を持ってるからな」

 

みくるの隣で飲み物を飲んでいたジェット先輩が言う。

 

「それで!?」

「どうだった!?」

 

身を乗り出す二人。

 

「いや、詳しいことは『手紙』で届くんだよ」

「手紙? 電話して今聞こうよ!」

 

気になりすぎて、あんなが身を乗り出して詰め寄る。

 

「超重要な情報は、手紙でやりとりするんだ。ハッキングや盗聴のリスクを避けるために、探偵業界では一番確実な方法なんだぞ」

「そうなんだ……」

「ロンドンからなら、数日かかるね」

 

「待ってられないよー!」

 

あんなは頭を抱える。

 

「よし! それまで、私たちでアルカナ・シャドウの事を調査しよう!」

「そうこなくっちゃ!」

「ポチー!」

 

やる気満々の二人と一匹。

 

「怪盗団ファントムの事件を調べたら、なぜかいつも『この街(まことみらい市)』でばかり事件を起こしてるの」

 

外に出るあんな、みくる、ポチタン、ジェット先輩。

 

「ということは……」

「うん?」

「アルカナ・シャドウの似顔絵を見せて街で聞き込みをすれば、彼女について知っている人がきっといるはず!」

「なるほど!」

「ポチー!」

「じゃあ、早速聞き込みからだね!」

 

みくるがプリキットブックを取り出し、記憶を頼りにキュアアルカナ・シャドウの変身前の似顔絵と特徴を走り書きする。

 

「はあ……」

 

ジェット先輩は、アメを舐めながら少し呆れたようにため息をついた。

 

「あの、この人知りませんか?」

「さあ?」

 

街で見かけた夏川と秋田のラブラブカップルに似顔絵を見せるが、アルカナ・シャドウのことなど知る由もなかった。

 

「見たことないね」

 

別の女性に聞いても、答えは同じ。

 

「この人……」

「ハッハッハッハッ」

 

犬のワンちゃんに聞いても……分かるわけがなかった。

 

その後も、色んな人達に手当たり次第に聞き込みをする。

しかし。

 

「全然分からない……」

「手がかりがなさすぎる……」

 

すっかり落ち込むあんなとみくる。

全く目撃情報が手にはいらない。

 

「もうー!」

 

あんながイライラして声を荒げる。

その横で、みくるが「はっ!」と何かに気付いた。

 

「あんな……。もしかして、この『似顔絵』がダメなのかな?」

「ええ? 似てると思うんだけどなー」

 

みくるが描いたプリキットブックの似顔絵。

それは、黒いケープを着た少女の絵ではあったが……正直、ポチタンの似顔絵を描いたみくるの『画伯っぷり』がいかんなく発揮されており、恐らく誰が見ても「似てる」とは言わないだろうという前衛的な仕上がりだった。

 

***

 

一方、その似顔絵の本人であるるるかは、街の噴水前に座って、のんびりと2段アイスを食べていた。

 

「なんだか……良くないことが起きてる気がする」

 

るるかが、アイスをかじりながら不吉な予感を口にする。

 

「占ってみましょうか」

 

マシュタンが帽子を被り、水晶玉を取り出した。

 

「マシュマシュマシュマシュマシュマシュ……マシュー!」

 

水晶玉が光る。

 

「見えたわ。るるか、あなたの前に『めんどくさいお願い事』が来るでしょうって」

「嫌な結果ね……」

 

結果を聞いて、心底嫌そうに眉をひそめるるるか。

すると。

 

「大変だー!」

「助けてくれ新人! いや、アルカナ・シャドウさん!」

 

遠くから、情けない声を上げてゴウエモンが走ってきた。

 

「来た」

 

マシュタンが冷静にツッコミを入れる。

 

***

 

るるかはゴウエモンに連れられ、近くのCDショップへとやってきた。

 

「いらっしゃいませ~」

 

店内に有線放送の音楽が流れている。

 

「ここ、CDショップだけど」

 

るるかが尋ねると、ゴウエモンは棚の影から、ヘッドホンで熱心に音楽を聴いている一人の女性客を指差した。

 

「『未來自由の書』によると、あの女の『ミサンガ』にマコトジュエルが宿っているらしいのだが……」

 

女性の左腕には、カラフルな糸で編まれたミサンガが付けられていた。

 

「ミサンガ。自然に切れたら願いが叶うっていうアクセサリーね」

「そこが問題なんだ!」

 

ゴウエモンが頭を抱える。

 

「ミサンガを盗むには、手首から外すために『切らなきゃならん』だろ? でも、途中で無理やり切ったら、ミサンガへの『想い』は消えちまう。逆に、自然に切れたとしても、願いが叶えばミサンガに用はなくなる!」

「つまり、どちらにしてもミサンガが切れた瞬間に、マコトジュエルもなくなるわけね」

 

マシュタンがゴウエモンの悩みを要約する。

 

『切らずに盗まなければいけない』という矛盾。

それがゴウエモンを悩ませていた。

 

「一体どうしたらいいんだ!」

「……切らなければいいのよ」

「だから! 切らないと奪えないだろ!」

「切らないのは、『想い』の方よ」

「想い?」

 

るるかの言葉の意味を理解できていないゴウエモン。

 

「見せてあげる。そのかわり……後でアイス奢って」

「なんでもいいから助けてくれー!」

 

るるかの要求に、ゴウエモンはすがりつくように頷いた。

 

「オープン。プリキットグロス」

 

るるかは口元にグロスを塗り、姿を変える。

光が収まると、そこにはCDショップの女性店員へと変装したるるかがいた。

 

「いらっしゃいませ」

 

店員になりきるるるか。

 

「ショップの店員さんか、やるわね」

 

マシュタンは、るるかの制服のポケットにスッと隠れた。

 

「『想いを切らない』ってどういうことだ?」

 

物陰から覗き見ながら、ゴウエモンが首を傾げる。

 

るるかは、自然な足取りで女性客『まさみ』に近づき、声をかけた。

 

「その歌、いいですよね」

「え?」

「私も好きなんです。特に……歌詞が」

「あっ、それ超分かる! なんか、片思いの女の子って感じの歌詞なんだよね!」

 

まさみが、嬉しそうにヘッドホンをずらして答える。

 

「もしかして……そのミサンガの叶いごと、『恋が叶いますように』とか?」

「ええ! 当たり。お姉さん、占い師とか?」

「ふふ、たまたまですよ」

 

自然な会話の中で、ミサンガに込められた願いをあっさりと聞き出す(言い当てる)るるか。

 

「おしゃべりしてるだけじゃねえか……?」

 

覗いているゴウエモンが不満げに呟く。

 

『ウィーン』

「いらっしゃいませ」

 

自動ドアが開き、店内に新たな客がやってきた。

 

「ん?」

 

ゴウエモンが入り口を見ると、そこにはあんなとみくるが立っていた。

 

「プ、プ、プ、プリキュア!?」

ゴウエモンは慌てて棚の影に隠れた。

 

「あの、この人知りませんか?」

 

なんと、あんなとみくるは、るるか(変装中)の目の前で、るるかの似顔絵を見せてきた。

 

(似顔絵、全然似てないし!)

ポケットの中で、マシュタンが密かに怒りのツッコミを入れる。

 

「うーん。ごめん、知らないや」

 

まさみが首を振る。

 

「私も、存じ上げません」

 

るるかも、しれっと嘘をつく。

 

「そっかー」

「ありがとうございます」

 

二人が立ち去ろうとした、その時。

「ん? わー! ミサンガだ。かわいい!」

 

あんなが、まさみの腕のミサンガに気がついた。

 

「ほんとだ! 素敵」

「この時代にも、ミサンガってあったんだねー」

 

あんなが無邪気に言った一言。

 

「ゔっ!?」

 

みくるの目が、驚愕に見開かれる。

あんなが『未来人』だと言うことがバレてしまう可能性がある、超絶危険な発言だった。

 

「なに? 時代?」

 

まさみが不思議そうに聞き返す。

 

「あっ、いや! なんでもないんです!」

 

みくるが必死にごまかす。

 

「あたし、まさみって言うんだ。さっきもこのお姉さん(るるか)とミサンガの話で盛り上がったんだけどさ。見てこれ、もうちょいで切れそうなんだ」

 

まさみが見せてくれたミサンガは、確かに糸が擦り切れて、今にも切れそうになっていた。

 

「ほんとだ!」

「願い事はなんなんですか?」

「それなんだけど、実は……」

 

『すみません、トイレ借りてもいいですか?』

 

一人の男性客が、るるかに声をかけてきた。

 

「どうぞ。あちらです」

 

男性がトイレを借りに店の奥へ向かう。

それを見た瞬間。

 

「はうっ」

 

まさみの顔が、ゆでダコのように真っ赤に染まった。

 

「まさみさん? どうしたんですか?」

「あんな、答えは簡単だよ」

 

みくるが、名探偵の顔でニヤリと笑う。

 

「ずばり! まさみさんは、『彼』のことが好きなんですね?」

「声がでかいってー!」

 

まさみが慌てて二人を静める。

 

「じゃあ、ミサンガの願いって……」

「か、か、か、彼と結ばれますように……って」

「「きゃー!」」

 

恋バナの展開に、あんなとみくるがキャッキャと盛り上がる。

 

「実は、ここのCDショップに通ってるのも彼に会えるからでさ。しゃべったこととかはないんだけど、音楽を聴いてる時の真剣な目がかっこよくて……。このミサンガも、その時初めて作ったんだよね。てか、あたし語りすぎちゃったかも」

 

照れるまさみに、あんなは力強く拳を握った。

 

「まさみさん! すっごく応援してます!」

「あ、ありがとう」

 

「あら?」

 

るるかが、トイレから戻ってきた男性の動きに気付いた。

 

「彼、何か探してる?」

「まさみさん! これって話しかけてみるチャンスでは?」

「え、でも、そんな勇気……」

 

まさみが一歩踏み出そうとした、その時だった。

 

『プチッ』

 

「あっ……」

 

まさみの腕で、ミサンガが自然に切れた。

 

「ああー! ミサンガが!」

「ああー! ミサンガがぁぁぁ!!」

 

まさみと、隠れているゴウエモンが同時に落ち込む。

それを横目で見ているるるか。

 

すると。

男性の元へ、店の外から一人の女性が親しげに駆け寄ってきた。

男性には、既に彼女が存在していたのだ。

二人は仲良く腕を組んで、店を出ていってしまった。

 

「ああ……マコトジュエルが、いなくなっちまう!!」

 

ゴウエモンが焦って頭を抱えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。