名探偵プリキュア! 〜迷宮のアルカナと偽りの真実〜   作:暁 蒼空

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皆さん、お待たせして申し訳ありません。
いよいよキュアエクレール編へと突入していきます。
まだ全てではありませんが、途中まで纏めたので投稿いたします。

名探偵プリキュア! 第21話「続・探偵エリーの事件簿!?」を元に作成した話です。

今後もオリジナル要素を入れていくので、不快だと思う方もいるかも知れません。
申し訳ありません。
それでも良い方は、見ていってください。


第11話:青き蝶の予言と、面影残る部屋(前編)

怪盗団ファントムのアジト。

 

重苦しい空気の漂うホールには、幹部全員が集集していた。

舞台を正面から見下ろす最上段のVIP席には、絶対的な支配者ウソノワール。

ウソノワールの席から見て、右斜め前の手前側の席にはニジー、奥側の席にはゴウエモン。

左斜め前の手前側の席にはアゲセーヌ、そして奥側の席には、るるかとマシュタンが並んで座っていた。

るるかは相変わらずハイライトの消えた虚無の瞳のまま、アイスを口に運んでいた。

すると、ウソノワールの元にある『未來自由の書』が怪しく光り、新たな文字が浮かび上がる。

 

「……これは、新たな予言が出た」

 

ウソノワールが低く重い声で告げた。

 

「『青き蝶が舞い戻る。そして四つの花から、羽を止める一輪を探す』」

 

その言葉を聞いた瞬間、幹部たちに激震が走った。

 

「つまり……あの『青い蝶』が」

 

ニジーが思わず立ち上がる。

 

「奴が、戻ってくると!?」

「その前になんとかするっしょ! あんなヤツに暴れられたら、チョベリバだし!」

 

アゲセーヌが爪を噛みながら焦りを露わにする。

 

「だがあいつの正体は不明だ。打つ手がねえぞ」

 

ゴウエモンが腕を組み、唸った。

 

「『四つの花から羽を止める一輪を探す』……つまり、奴になる疑わしい候補が、四人いるということでは?」

 

ニジーが素早く察し、仮説を立てる。

幹部たちは、キュアエクレールの正体こそ知らないものの、かつてウソノワールすら一時的に吹き飛ばしたあの圧倒的な実力を知っているため、酷く焦っていた。

 

「アルカナ・シャドウ! アンタなら、アイツの正体知ってるっしょ!」

 

アゲセーヌが、突然るるかをビシッと指差した。

 

「そうだ! 僕たちの邪魔をされる前に何とかしなければ。知っていることを話すんだ!」

 

ニジーも詰め寄る。

矢面に立たされたるるかは、アイスを食べる手を止め、静かに首を横に振った。

 

「……知らないわ。私も……彼女の正体は……」

 

静かで、感情の入っていない声。

しかし、その内面でるるかの思考は激しく渦巻いていた。

 

(ありえない……現れるはずがないわ。……だって、キュアエクレールは……くれあは、マコトジュエルを奪われたのよ? 記憶を失った彼女が、もう一度プリキュアになることなんて……あり得ない……!)

 

るるかは、心の中で必死に予言を否定しようとした。

 

(どうして……? なんで今になって、そんな予言が出たりするの……? お願いだから、これ以上私を混乱させないで……。まだ、こころの事だって解決出来ていないのに……。くれあのことまで重なったら……私、どうしたら……っ)

 

るるかは右手を頭に当て、こめかみを強く押さえた。

隣に座るマシュタンは、るるかの異変と激しい動揺を誰よりも察し、胸を痛めていた。

 

(るるか……。お願いだから、もうこれ以上、この子を追い込むようなことだけは……)

 

手元で溶け始めていたアイスの雫が、ぽたりとるるかの手にこぼれ落ちた。

 

「構うな。まずはマコトジュエルを手に入れろ。約束の日が迫っている」

 

ウソノワールが制し、最優先の命令を下す。

 

「「「ライライサー」」」

 

ニジー、アゲセーヌ、ゴウエモンは返事をし、予言が示した別のマコトジュエルの捜索へと向かっていった。

 

誰もいなくなった静かなアジトの劇場。

るるかとマシュタンだけが、そのまま残されていた。

 

「どうして……一体、どうしてあんな予言が……分からない……」

 

るるかはパニックになりかけ、呼吸を乱していた。

 

「このままじゃ……このままじゃ、くれあまで戦いに巻き込まれて……っ」

「るるか、少し落ち着いて」

 

マシュタンが優しく包み込むように声をかける。

 

「どうすれば……一体、どうすればいいの……っ? こころの事も救わなきゃいけないのに……私の力じゃ……私なんかじゃ……二人同時に救うなんて……出来るわけない……っ」

 

こころを守れず崩壊させてしまった失敗。

あの日、ウソノワールに手も足も出ず敗北した事実。

それらが重く重くのしかかり、かつて「天才探偵」として持っていたはずの自信やプライドは、今のるるかから完全に失われていた。

 

「何とかしなきゃ……何とかしなきゃ……でも、どうやって……っ」

 

頭を強く抱え込むるるか。

 

「るるか! るるか! お願い、アタシの目を見て!」

 

マシュタンが小さな両手でるるかの頬を挟み込んだ。

ハッとして、るるかが涙目のままマシュタンを見る。

 

「大丈夫よ。落ち着いて。貴女なら、大丈夫だから」

 

マシュタンの真っ直ぐで温かい瞳を見つめ、るるかは深く息を吐き出し、少しだけ冷静さを取り戻した。

 

「まだ……予言が現実になると決まったわけじゃないわ」

「……」

「それに、焦っても良いことなんて一つもないわよ」

「でも……っ!」

「分かってる。だからこそ、一つ一つ冷静に行きましょう」

「……うん。……そうだね」

「先ずは、また予言が示した『マコトジュエル』の方に集中しましょう」

「……ええ」

 

るるかは小さく頷くと、マシュタンをそっと両腕で抱きしめ、外へと向かっていった。

 

***

 

まことみらい市のキュアット探偵事務所。

 

「こんにちは!」

 

ドアが開き、やってきたのはクラシックな探偵服をバッチリ着こなした来栖エリザだった。

 

「エリザさん!」

「その格好、どうしたんですか?」

「わたし、決めたの! 『探偵』になる!」

 

目をキラキラと輝かせて宣言するエリザ。

 

「「えぇー!?」」

 

あんなとみくるは、ひっくり返りそうになりながら驚いた。

 

「エリザさん……探偵って、どうして急に?」

 

理由を尋ねる二人。

 

「この前、迷子の猫ミーコちゃんを探し出したでしょ? 依頼者の虎太郎くんのあの素晴らしい笑顔が……私の探偵魂に火をつけたのよ!」

「「え?」」

 

若干、話の飛躍に戸惑うあんなとみくる。

 

「おねがい! 私をキュアット探偵事務所に入れて!」

「えっ」

 

『ドン!!』

激しい足音と共に、事務所の扉が勢いよく開け放たれた。

 

「先生! やっぱりここでしたか!」

 

息を切らせて飛び込んできたのは、一人のスーツ姿の女性だった。

 

「何度も電話したんですよ!」

「あ、全然気づかなかった。新しい目標で頭がいっぱいだったから」

 

のんきにスマホを確認するエリザ。

 

ポカンとしているあんなとみくるに気づき、女性は慌てて襟を正した。

 

「初めまして。私、エリザ先生を担当しています、出版社編集の辺見頼子(へんみ よりこ)と申します」

 

名刺を丁寧に差し出す辺見。

 

「キュアット探偵事務所の、明智あんなです!」

「小林みくるです!」

 

二人も探偵事務所の名刺を渡して挨拶する。

 

「天才発明家、ジェット博士だ」

 

ジェット先輩も、椅子に深々と座ったままドヤ顔で名乗り出る。

 

「お噂は聞いていますわ。ファントムの事件を次々と解決し、何より『探偵エリー』の続編のきっかけを作ってくださった、凄腕の探偵さんたちですね!」

 

辺見が目を輝かせて二人を褒めちぎる。

 

「そんな~」

「凄腕の探偵だなんて~」

 

鼻の下を伸ばして照れるあんなとみくる。

 

「で、ご挨拶早々なんですが、失礼しますね。……先生、原稿の締め切りです。帰りましょう」

 

辺見の目が一瞬で担当編集のプロの目へと変わった。

 

「嫌! 私は探偵として『真実のページ』を刻むって決めたの!」

「だめです! 締め切りを守ってください!」

「ねっ、みくるちゃん、いいでしょ!?」

 

エリザがみくるにすがりつく。

 

「で、でも……事務所に入るには、厳しい『入所テスト』があるよね?」

 

みくるが咄嗟に理由を捏造する。

 

「僕は発明家だからよくわからないけど、たしかあったよな?」

 

ジェット先輩も乗っかる。

 

「えっ、私、テスト受けてないよね?」

 

素で首を傾げるあんな。

 

「知りませんよ、私に言われても……ねえ?」

 

巻き込まれて困惑する辺見。

 

「ひとつ難事件を解決するのが、入所テストだって聞いたけど!」

 

みくるの言葉に、エリザは「ぬぬぬ……」と腕を組んで唸り出した。

 

「だったら私、そのテスト受けるわ!」

 

それから暫く。

依頼の電話が鳴るのを、一同は息を呑んでじっと待っていた。

 

「………………うーーーーーーん!」

「きゃっ!?」

 

沈黙に耐えかねたあんなが、頭を抱えて叫び出した。

 

「全然依頼が来ないー!」

「いつもは忙しくて大変なの! 今日はたまたま依頼がないだけで……」

 

必死に弁明してみせるみくる。

 

「いつもこんなもんだろ」

 

ジェット先輩が無慈悲に事実を突っこむ。

 

「テストはー? 事件はー?」

 

うずうずしているエリザ。

 

「そういえば、私もみくるもテスト受けてないよね?」

「お前たちはプリキュアになったから、なし崩しで入れたんだ」

「そっか~……」

「プリ……?」

 

エリザが首を傾げた。

 

「はっ!?」

 

正体がバレそうになり、滝のような汗を流すあんな。

 

「あ、あ、ああ! そうだ! この時間を利用して、事務所を案内するねー!」

 

あんなは強引に話題を逸らし、二人を案内し始めた。

 

「まずここが、ジェット先輩の研究室!」

「「わあ!」」

「そうだ、昨日完成した素晴らしい発明品を見せてやるぞ」

 

ジェット先輩が、ピンク色の液体が入った怪しげなフラスコを取り出した。

 

「この特殊薬品を、色あせた写真にかけるとだな……」

 

そう言いながら、何十年も前の古びた写真に薬品をひと滴垂らす。

すると写真が光を放ち、まるで今日撮ったかのように色鮮やかへと蘇った。

 

「ほらこのとおり! 20年前の写真もくっきり綺麗に再生される。天才だろ?」

「「20年前の写真……!?」」

 

驚くエリザと辺見。

 

「こっちが『はなれ』で……ここが共有スペース!」

 

みくるが隣の建物へ案内する。

 

「みんなでおしゃべりしたり、お茶を飲んだりするんです」

「へえー、楽しそう!」

「で、ここが私の部屋!」

 

あんなが自室のドアを開ける。綺麗に整理整頓された、陽当たりの良い部屋だ。

 

「素敵!」

「でしょ! 天井が高くて明るいんだ~」

 

その部屋の様子を。

外から窓越しに静かに覗き込んでいる影があった。

るるかとマシュタンだった。

 

「マコトジュエル、よりによってここにあるなんてね……」

 

マシュタンが溜息をつく。

 

「『探偵の地に声を届けるものといる探偵』……」

 

『未來自由の書』が出した予言の詩を、るるかが小さく呟いた。

 

「何のことを言っているのかしら?」

 

マシュタンは首を傾げる。

部屋の中では、辺見の携帯電話が鳴り、彼女が電話に出ようとしていた。

あんなが、辺見の携帯にぶら下がっているストラップに目を留める。

 

「それって、『探偵エリー』の……?」

「ええ! 念願の『探偵エリーのぬいぐるみストラップ』ですの。素敵でしょ?」

「かわいいー!」

 

窓越しにその光景を見ていたるるかの瞳が、わずかに細められた。

 

「……『声をとどけるものといる探偵』。マコトジュエルは、きっとあのストラップね」

「え? どれ?」

 

まだ気づかないマシュタンが目を細める。

 

「もー、カーテンが邪魔ね! 何よりちっともおしゃれじゃないし! ひと言言ってやりたいわ!」

 

あんなの部屋にかかっている薄紫色のシンプルなカーテンが気に入らない様子のマシュタン。

 

「るるかとこころちゃんが住んでた時は、もっとオシャレだったのに……」

 

マシュタンの言葉に、るるかは窓の向こうの部屋をじっと見つめた。

かつて、自分がこころと一緒に笑いながら過ごしていた、思い出の部屋。

 

「私は……捨てちゃったから……」

 

ぽつりと、るるかの口から言葉が漏れた。

 

「こころとの思い出を……くれあとの思い出を……思い出の場所である此処を……全部、捨ててしまったから……」

 

漆黒のケープをぎゅっと握りしめ、るるかは自分でも気づかないうちに、本音を呟いていた。

 

「……羨ましい……」

「えっ……!」

 

マシュタンは、るるかの口から溢れ出たその言葉に驚き、目を見開いた。

るるかはハッとして、慌てて自分の口を右手で覆った。

 

「ち、違うわ。今のは別に……」

「……否定しなくてもいいのよ、るるか」

 

マシュタンが、優しく、包み込むような声で語りかけた。

 

「貴女が何よりもこの場所を……皆と過ごした時間を大切にしていた事は、アタシが一番よく知ってるわ」

「マシュタン……」

「捨てきれる理由なんてない。貴女は……そんなに冷酷になりきれる子じゃないもの」

「駄目……駄目なの……っ」

 

るるかの虚無の瞳から、一筋の涙が頬を伝い落っこちた。

 

「大切だけど……捨てなきゃ……思い出したら……辛くなるだけだから……っ」

「駄目よ。それは、貴女の中にちゃんとしまっておかなきゃいけない、大切な想いよ」

 

マシュタンがるるかの頬に寄り添い、小さな手で涙を拭う。

 

「それまで捨てたら……貴女の『心の支え』が完全になくなっちゃうわ。ねっ……思い出は、大事にして。るるか」

「……うん。……ごめんなさい……っ」

 

るるかは袖でゴシゴシと目を擦り、溢れる涙を必死に拭い去った。

かつて自分が愛した部屋を見つめながら、るるかは大切な思い出をもう一度、自分の胸の奥底にそっと抱きしめ直す。

 

「あんなの部屋の向かいが、私の部屋だよ」

 

今度は、みくるが自分の部屋へと案内する。

 

「なんか……すごく落ち着くなあ」

 

エリザが部屋を見渡して微笑む。

 

「ふふっ、趣味が合うのかも!」

「同じ間取りの部屋でも、住む人によって全然個性が変わるんだね」

 

みくるの部屋には、うさぎやペンギンの可愛らしいぬいぐるみがたくさん置かれていた。

 

「同じ部屋?」

「ほら、あんなちゃんの部屋と間取りは全く一緒なのに、受ける印象が全然違うなぁって」

 

一方、一階の事務所。

キャンディーを舐めながら、一人で気長に依頼を待っているジェット先輩。

そこへ、案内を終えた辺見とエリザが戻ってきた。

 

「ジェットさん」

「うん?」

「依頼、来ました?」

「全然。まあ、一日何も依頼がない時だって珍しくないからな」

「そうなんですか……」

 

そう言って、ソファにバッグを置く辺見。

 

「次はこっちですよー!」

 

あんなが廊下から辺見を呼びに来た。

 

「あ、はい!」

「ここがキュアット探偵事務所自慢の、ガーデンです!」

 

あんなが胸を張って紹介したガーデンには、色鮮やかな花がたくさん咲き誇り、豊かな緑に包まれていた。

 

「わあ……すごく綺麗ですね」

「あれ? エリザさんは?」

「あ、事務所に戻られましたよ。ジェットさんとお話しされています」

 

事務所の中では。

 

「ねえねえ! 研究室すっごく広いし、半分私の部屋にしていいんでしょ!?ね!」

「なんでそうなるんだよ!」

 

すっかり探偵事務所の一員になる気満々のエリザに、ジェット先輩が突っ込んでいた。

 

 

「本当、先生は気が早いというか……」

 

ガーデンで辺見が苦笑する。

 

「エリザさん、すっごく張り切ってるね!」

「気持ち、わかるなあ。私も昔から、名探偵に憧れてたから」

 

みくるが共感するように頷く。

 

「やっぱり……応援するべきですよね」

「え?」

 

辺見がどこか切なげな表情で呟いた。

 

「私、『探偵エリー』が初めての担当だったんです。だから、先生と一緒に本を出せることが本当に嬉しくて、楽しくて……。でもそれって、私の勝手ですよね。探偵は、先生の昔からの『夢』だったんだし……」

「昔から……?」

 

あんなが聞き返す。

 

「ええ。小説家じゃなくて、小さい頃からずっと探偵になりたかったって。夢だったけど……『なりきれなかった』って」

「なりきれなかった……」

「はい、そうおっしゃっていました」

 

その頃、事務所の中では。

壁に貼ってある事件資料を、エリザが熱心に見つめていた。

 

「ああ、それ? 色あせていた写真を綺麗にしたんだよ。さっきの発明品でね」 

 

ジェット先輩が説明する。

それは、あの取水塔の泥の中から見つけた、例の写真だった。

るるかの秘密へと繋がるかもしれない、謎の写真。

エリザの目が、写真に写る『青い蝶』の姿で止まった。

 

「よくわからないんだ。事件の証拠品なのか、何なのかも……」

「どうかしました?」

 

部屋に戻ってきた辺見が声をかける。

 

「あ、」

「それ……」

「え?」

 

写真を見た瞬間、辺見が反応を見せた。

 

「い、いえ! 何でもありません! そうだ、携帯……電話が来ているかも」

 

動揺を隠すように、辺見はソファのバッグから自分の携帯を取り出した。

 

「ポチ!」

 

外にいたポチタンが、急に耳をピンと立てて反応した。

 

「マコトジュエル!?」

 

気配を察知し、あんな、みくる、辺見が急いで事務所の中へと走る。

すると、事務所の出口から、走り去る『もう一人の辺見』の姿が目に入った。

 

「えっ……私!?」

「きっと、怪盗団ファントムよ!」

「私の携帯電話が……!」

 

探偵エリーのぬいぐるみストラップが付いた、辺見の携帯電話が奪われてしまったのだ。

 

「どうした!?」

 

騒ぎを聞きつけて出てきたジェット先輩に、辺見が叫ぶ。

 

「携帯を取られたんです!」

「「えぇ!?」」

 

その騒動を、建物の陰から冷たい瞳で見つめる二つの影があった。

 

「また強引に盗んで……アゲセーヌったら」

 

マシュタンが呆れたように吐き捨てる。

 

「どうして……いつもいつも、強引な手ばかり……」

 

るるかは、自然と自分の両手を強く握りしめていた。爪が掌に食い込む。

 

「こころの為に……一刻も早くマコトジュエルが必要なのに……っ」

「るるか……」

 

再び焦りと抑圧された感情で冷静さを失いかけているるるかを、マシュタンは痛々しそうに見つめた。

 

***

 

「携帯ゲットっしょ! チョベリグー!」

 

辺見に変装したアゲセーヌが、街の路地を駆け抜けていく。

それを必死に追いかけるあんな、みくる、ジェット先輩、エリザ。

やがて、大勢の人々が行き交う街の広場へとたどり着いた。

 

「ファントムはどこへ行ったの!?」

「また、誰かに変装したのかも……」

 

変装していたアゲセーヌの姿を見失ってしまう。

 

「エリザさんのペンが盗まれた時と一緒だ……」

「あの時は、電波がつながらないのを知らずに携帯で話している人がいて、犯人だって分かったけど……。今回は通信障害じゃないし、電話している人が犯人とは限らないよ」

「携帯で話している人……そうだ!」

 

エリザがパッと顔を輝かせた。

 

「犯人がわかるかも!」

「「「えっ!?」」」

「私に任せて!」

 

自信満々に胸を張るエリザ。

 

「ファントムがわかるって……どうやって?」

「私のペンが盗られた時と『逆』だよ!」

「逆……?」

「あの時は、電波障害で携帯がつながらなかった。でも、今はつながる!」

 

エリザは自分の携帯を取り出した。

 

「だから、ファントムが持って行った辺見さんの携帯に……電話をかければいいの!」

 

エリザが辺見の番号へ電話をかける。

すると――広場の一角から、かわいらしい着信音が鳴り響いた。

あんなとみくるが、音のする方へと一斉に視線を向ける。

 

「携帯を盗んだ犯人は……いいえ、ファントムは!」

 

エリザがビシッと指を差した。

 

「あなたです!」

 

指指されたのは、ベンチに座って携帯を眺めていた一人の男性だった。

男性(?)が、鬱陶しそうに顔を上げる。

 

「はあ~……マジチョベリバー」

「ほら! 犯人見つけたよ! これでテスト合格でしょ!」

 

喜ぶエリザ。

 

「あたしを無視してアがってんじゃないし!」

 

男性の姿が歪み、アゲセーヌが姿を現した。無視されたことに激怒している。

 

「ウソよ覆え! チョベリグにしちゃって! ハンニンダー!」

 

アゲセーヌがハイビスカスを添えると、探偵のような帽子と虫眼鏡を持ったハンニンダーが出現した。

 

「えっ……消えた!?」

 

異次元フィールドが展開されたことで、一般人であるエリザの視界からあんな達の姿が消え、エリザは驚く。

 

「探偵には、探偵っしょ!」

「みくる!」

「うん!」

 

「「オープン!! ジュエルキュアウォッチ!」」

 

あんなとみくるの手にあるペンダントがまばゆい光を放ち、カラフルな懐中時計『ジュエルキュアウォッチ』へと姿を変える。

二人はそれぞれのマコトジュエルを取り出し、ウォッチに装着した。

 

「「プリキュア、ウェイクアップタイム!」」

 

二人の声が重なった瞬間、光が溢れ出す。

 

「サン!見つける!」

 

ジュエルキュアウォッチの長針が、3の位置へと揃えられた。

あんなの髪が風にほどけるように一気に伸び、足首に届くほどの長さになる。

毛先はハート型に整い、頭頂部の左右は可愛らしいお団子のツインテール。

髪色は鮮やかな紫へと変わり、毛先に向かって淡いピンクのグラデーションが広がった。

みくるの髪も同時に伸び、やわらかな三つ編みへと姿を変える。

髪色は、明るいピンクに。

瞳の色も変化する。

あんなは澄んだ青緑、みくるは神秘的な紫へ。

 

「ロク、向き合う!」

 

長針が6を指す。

みくるの身体を、淡いピンクのオフショルダーワンピースが包み込む。

フリルの揺れるスカートが、彼女の可憐さを際立たせた。

背中には、水色の大きなリボン。

あんなもまた、フリフリの紫色のワンピースを身に纏い、背中には鮮やかな黄色の大きなリボンが現れる。

 

「キュー!奇跡の二人!」

 

長針が9へ。

二人の足元に光が集まった。

あんなは紫色、みくるはピンク色のブーツを履き、同時にニーハイソックスが脚を彩る。

あんなの手には薄い水色のフィンガーレスグローブ。

その上から薄紫色のオープンフィンガーグローブが重なる。

みくるの手にも薄紫のフィンガーレスグローブと、薄ピンクのオープンフィンガーグローブ。

指先には、それぞれの色のネイルがきらりと輝いた。

 

「くるっと回して、キュートに決めるよ!」

 

長針が11へと進む。

あんなの左右のお団子には華やかな髪飾りが添えられ、耳元にはピアスが揺れる。

みくるの髪には大きなリボンの髪飾り。

そして同じく、両耳にピアス。

さらに二人の胸元にはネクタイ型のリボン。

肩には短めのケープが重なり、装いが完成へと近づいていく。

ジュエルキュアウォッチは光となって収束し、衣装の腰にあるキャリーへと収められた。

 

「どんな謎でも、はなまる解決!名探偵『キュアアンサー』!」

「重ねた推理で、笑顔にジャンプ!名探偵『キュアミスティック』!」

 

可愛らしい決めポーズを決める。

最後に二人は自然と歩み寄り、並び立つ。

 

「「名探偵プリキュア!」」

 

ミスティックが、ビシッと指を差す。

 

「私の答え、見せてあげます!」

アニメ31話にて、るるかは名探偵に復帰。この小説のるるかは、どの方向に進んでもらいたい?(アンケートは取るけど、自分の文章力でアンケートの結果に結びつけれるかは自信がないので必ずしも、アンケート通りに出来るかは分かりませんが…)

  • 名探偵として復帰
  • ファントム等の敵として行動
  • 一時的に復帰するが再び絶望し離反する。
  • その他(意見、要望は感想等のコメントに)
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