名探偵プリキュア! 〜迷宮のアルカナと偽りの真実〜   作:暁 蒼空

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第14話:予言の影と、歪む覚悟(後編)

学校の屋上にいるニジー、アゲセーヌ、ゴウエモン、るるか、マシュタン。

 

「ったく、マコトジュエルはいったいどこにあるんだ?」

 

屋上から、マコトジュエルの欠片が宿っているものを手分けして探す一同。

 

「学校にあるのは間違いないさ。『未來自由の書』がそう示したんだからね」

「でも、夜中に教室とか全部探したけど、どこにもなかったしー!」

 

「はっ!」

 

何かに気づくゴウエモン。

 

「もしや……学校の建物『そのもの』に宿っているとか!?」

 

学校自体が巨大なマコトジュエルだと予想するゴウエモン。

 

「デカすぎっしょ! 盗むの無理じゃねえ?」

 

アゲセーヌが突っ込む。

 

「冗談は辞めだ、ベイビー」

 

ニジーが真剣な顔で制する。

 

「もう、時間が無いんだよ……」

 

ウソノワールの焦りを感じ取っているのか、今回ばかりはニジーもふざけず真面目だった。

マシュタンも、屋上からあちこちを見渡している。

るるかは、アイスの棒を口にくわえながら、屋上から眼下を冷たい目で見下ろしていた。

 

るるかの脳裏には、数日前のあの出来事が過っていた。

ウソノワールの手の中に現れた、エクレールとシンシアの心のマコトジュエルの存在。

そして……ひび割れている『シンシア(こころ)』の心のマコトジュエルを、無慈悲に握り潰そうとするウソノワールの姿を。

 

(もう……時間が無い。今度こそ、絶対にマコトジュエルを手に入れないと……っ)

 

るるかの表情は、暗い絶望の影で曇っていた。

 

「くれあ……こころ……」

 

脳裏には、探偵時代の大切な親友と妹の笑顔が浮かんでいた。

そして、今も心が壊れてしまい、反応を示しはしないが、暗い部屋で苦しそうに人工呼吸器をつけているこころの痛ましい姿が過る。

 

「るるかは、どこにあると思う?」

 

マシュタンがるるかに話しかける。

るるかはハッとして、すぐに探偵としての思考に切り替える。

 

「……学校の教室の中になかったのは確かね」

 

そして、アイスを食べ終え、口から離した木の棒を、ある一箇所へとビシッと向けた。

 

「となると、考えられるのは……」

 

アイスの棒が指し示す先。

そこには、中庭を歩いている『理事長』の姿があった。

そして、るるかの鋭い視線は、理事長の手にある『鍵』を正確に見つめていた。

 

「……そういうこと」

 

るるかには、すでにマコトジュエルの在処が完璧に分かっていた。

 

「理事長ー!」

 

中庭で、理事長を呼びとめるみくる達の姿を、るるかは上空からバッチリと捉えていた。

 

「今度こそ手に入れる……絶対に」

 

るるかの瞳に、迷いはなかった。

 

***

 

「この鍵をファントムが探しているの?」

 

理事長からアンティークの『校門の鍵』を預かった一同は、中庭の校門前に立っていた。

 

「門を開き、誰でも迎え入れる。……この鍵は、この学校の象徴よ」

 

れいの言葉に、あんなが大きく頷く。

 

「うん。きっと、この鍵にマコトジュエルが宿っているんだね!」

 

「……思ったとおりね」

 

夕暮れの校門前に、氷のように冷たい声が響き渡った。

そちらを向くあんな達。

 

「るるかさん……!」

 

黒いケープを纏ったるるかが立っていた。

 

「鍵を渡して」

 

るるかの後ろには、ニジー、アゲセーヌ、ゴウエモンの三幹部も並んでいた。

 

「君たちに、勝ち目はないよ」

 

ニジーが余裕の笑みを浮かべる。

 

「どうしよう……!」

「このままじゃ奪われちゃう!」

 

あんなとみくるが構える。

 

すると、れいの手の中にあった鍵が突然ピンク色に光り出し、なんとポチタンの中へと吸い込まれた。

 

「ポチー!」

 

そのまま、ポチタンは鍵を抱えた状態で一目散に逃げ出した。

 

「あ……」

 

予想外の行動に、呆然とするあんな。

 

「ポチタン!」

 

れいは慌てて、ポチタンを追いかけて走り出した。

 

「待ちやがれ!」

「 逃すわけないっしょ!」

 

ゴウエモンとアゲセーヌが、後を追いかけようとする。

 

「ダメ!」

「行かせない!」

 

あんなとみくるが、身を挺して立ち塞がった。

 

すると、るるかが無言で二人の前に出た。

 

「これ以上……邪魔しないで!」

 

るるかの冷たい声には、尋常ではない覇気と、背筋が凍るような『殺気』が感じられた。

その気迫に、思わず一瞬怯んでしまうあんな達。

 

「……オープン……」

 

胸元のペンダントが強い光を放つ。

光は細く伸び、形を作り、るるかの手の中で長くしなやかな『杖』へと変貌した。

 

「ティアアルカナロッド」

 

指先を添えた瞬間、るるかの身体はふわりと舞い上がる。

衣装は紫の光を帯び、周囲へと輝きを弾けさせる。

 

マコトジュエルを静かにロッドへ装着する。

 

円を描くように一回転。

足元に広がる魔方陣が妖しく光った。

 

「シャッフル」

 

ロッド上部のカードがくるりと回転した瞬間、るるかの髪は漆黒へ。

もう一度、指先でカードを弾けば、闇は一転して金色へ。

かきあげた髪の先には、鮮やかなピンク色のグラデーション。

 

「リバース」

 

髪はさらに長く伸び、ふわりと広がる毛先。

 

ロッドから流れる光がるるかの体を次々と包み込む。

ノースリーブのワンピースが身体を包み、黒を基調とした衣装と明るく揺れる髪が、お互いを強調し合う。

スカートには紫色の雫が散りばめられ、静かに揺れる。

 

カンッ。

ロッドを地に打ち付けた瞬間、露わだった脚は濃い紫色のサイハイソックスと濃紺色のショートブーツに包まれる。

祈りを捧げるように両手でロッドを握ると、手首には繊細なリストカフスが装着される。

頭には、黒いダイヤ型が並ぶ髪飾りを装着、その中央下には雫型の石飾りが付けられている。

 

目元へ右手を当てて下に下ろすと、瞳は紫から赤へと変化、瞳の奥にハートの光が宿っている。

耳元には雫型のピアス。

頭の後ろには黒い蝶の飾りを添えた薄紫のヴェールが静かに寄り添う。

 

ロッドの先端を胸元へと当てると、紫色の光が体を包み込む。

黒いケープが肩を覆い、胸元にはネクタイ型のリボンが可憐に結ばれる。

 

「神秘と秘密で包み込む――『キュアアルカナ・シャドウ』」

 

ロッドのカードに映るのは、彼女の氷のように冷たい横顔。

一歩、また一歩と進むだけで、神秘が満ちていく。

ロッドをくるりと回し、持ち替える。

 

「さあ……迷宮へ誘いましょう」

 

「みくる、行くよ!」

「うん!」

 

「「オープン!! ジュエルキュアウォッチ!」」

 

あんなとみくるの手にあるペンダントがまばゆい光を放ち、カラフルな懐中時計『ジュエルキュアウォッチ』へと姿を変える。

二人はそれぞれのマコトジュエルを取り出し、ウォッチに装着した。

 

「「プリキュア、ウェイクアップタイム!」」

 

二人の声が重なった瞬間、光が溢れ出す。

 

「サン!見つける!」

 

ジュエルキュアウォッチの長針が、3の位置へと揃えられた。

あんなの髪が風にほどけるように一気に伸び、足首に届くほどの長さになる。

毛先はハート型に整い、頭頂部の左右は可愛らしいお団子のツインテール。髪色は鮮やかな紫へと変わり、毛先に向かって淡いピンクのグラデーションが広がった。

みくるの髪も同時に伸び、やわらかな三つ編みへと姿を変える。髪色は明るいピンクに。瞳の色も変化する。あんなは澄んだ青緑、みくるは神秘的な紫へ。

 

 

「ロク、向き合う!」

長針が6を指す。

みくるの身体を、淡いピンクのオフショルダーワンピースが包み込む。フリルの揺れるスカートが、彼女の可憐さを際立たせた。背中には、水色の大きなリボン。

あんなもまた、フリフリの紫色のワンピースを身に纏い、背中には鮮やかな黄色の大きなリボンが現れる。

 

「キュー!奇跡の二人!」

 

長針が9へ。二人の足元に光が集まった。

あんなは紫色、みくるはピンク色のブーツを履き、同時にニーハイソックスが脚を彩る。

あんなの手には薄い水色のフィンガーレスグローブ。その上から薄紫色のオープンフィンガーグローブが重なる。

みくるの手にも薄紫のフィンガーレスグローブと、薄ピンクのオープンフィンガーグローブ。指先には、それぞれの色のネイルがきらりと輝いた。

 

「くるっと回して、キュートに決めるよ!」

 

長針が11へと進む。

あんなの左右のお団子には華やかな髪飾りが添えられ、耳元にはピアスが揺れる。

みくるの髪には大きなリボンの髪飾り。そして同じく、両耳にピアス。

さらに二人の胸元にはネクタイ型のリボン。肩には短めのケープが重なり、装いが完成へと近づいていく。

ジュエルキュアウォッチは光となって収束し、衣装の腰にあるキャリーへと収められた。

 

「どんな謎でも、はなまる解決!名探偵『キュアアンサー』!」

「重ねた推理で、笑顔にジャンプ!名探偵『キュアミスティック』!」

 

可愛らしい決めポーズを決める。

最後に二人は自然と歩み寄り、並び立つ。

 

「「名探偵プリキュア!」」

 

ミスティックが、ビシッと指を差し出す。

 

「私の答え、見せてあげます!」

 

アルカナ・シャドウが、無言で空高く飛び上がる。

ティアアルカナロッドのカードをくるりと回し、ロッドを反時計回りに円を描くように振るう。

彼女の背後に、巨大な紫色の光の陣が出現した。

内周に7個、外周にさらに12個。合計19個の星が、巨大な時計の文字盤のように展開される。

 

「アルカナスターレイン」

 

言葉と共に、19個の星全てから、一斉に極太のレーザーが放たれた。

 

「「きゃぁっ!!」」

 

ジャンプして避ける二人。

しかし、凄まじい威力の爆発により、周囲に濃い砂煙が発生し、視界が完全に奪われる。

 

その一瞬の隙を突き、アルカナ・シャドウは近くの木を蹴って、砂煙の中へと弾丸のように突撃した。

何も見えていないアンサーの気配を正確に読み取り、容赦のない蹴りを放つ。

 

「うわぁ!」

 

鳩尾に重い一撃をくらい、吹き飛ばされるアンサー。

 

「アンサー!」

 

「今の内っしょ!」

 

アルカナ・シャドウが二人を完全に抑え込んでいる間に、アゲセーヌとゴウエモン、ニジーは、ポチタンを追ってマコトジュエルの捜索(強奪)に向かった。

 

「ミスティック! ポチタンとれいを追って!」

 

倒れたアンサーが叫ぶ。

 

「うん!」

 

ミスティックが頷き、アゲセーヌ達の後を追いかけて走る。

 

土煙が晴れ、アンサーはアルカナ・シャドウと一対一で対峙した。

 

「……1人で、私を止めるつもり?」

 

アルカナ・シャドウが冷たく見下ろす。

 

「アルカナ・シャドウ……行くよ!」

 

「私を……あまり舐めないで!」

 

アルカナ・シャドウは、怒りを滲ませた声と共にアンサーへと突進した。

ロッドを鋭く振り下ろす。アンサーは後ろにバックステップしてそれをギリギリで避ける。

 

しかし。

 

「ハァッ!」

 

その回避行動の隙を一切逃さず、アルカナ・シャドウは踏み込んで強烈な回し蹴りを放つ。

 

「くっ!」

 

アンサーは両腕をクロスして防御をするが、重すぎる一撃に耐えきれず、後方へと大きく飛ばされてしまう。

 

「あまり時間をかけられないの。手加減はしないから」

 

容赦なく追撃しようとするアルカナ・シャドウ。

 

「ハァッ!!」

 

すると、吹き飛ばされた勢いを利用して、アンサーが逆に突っ込んできた。

アンサーの鋭い拳がアルカナ・シャドウの顔面へと迫る。

それを首をわずかに傾けて避けるアルカナ・シャドウ。

 

「まだだよ!」

 

休む暇を与えず、アンサーは連続でパンチと蹴りを放ち続ける。

しかし、アルカナ・シャドウはそのすべての攻撃を、表情一つ変えずに最小限の動きで躱していく。

 

「やぁッ!」

 

アンサーが飛び上がり、大上段から踵落としを放つ。

アルカナ・シャドウはそれをジャンプして躱し、アンサーに完全に背を向けた状態になった。

 

「今だ!」

 

背中を見せた隙だらけの状態だと思い、アンサーは一気に追撃しようと踏み込む。

 

しかし、アルカナ・シャドウは背を向けたまま、後ろ手でロッドを少し動かした。

瞬間、ロッドの先端から紫色のレーザーが複数、至近距離のアンサーへと放たれた。

 

「なっ!」

 

間一髪、体を捻ってギリギリで避けるアンサー。頬をレーザーが掠める。

完全に誘われていたのだ。

 

一度、大きく距離を取るアンサー。

 

(……やっぱり、強い。動きに無駄が一切ないし、何より迷いがない)

 

アルカナ・シャドウは、ゆっくりとこちらを向き、ロッドを構え直した。

 

「いい加減、諦めて。ただマコトジュエルをこちらに渡せば、それでいいわ」

「……」

「それに……貴女一人じゃ、私には絶対に勝てない」

 

自分には勝てない。

残酷な事実を、アルカナ・シャドウは冷たく告げる。

 

「……違うよ」

 

しかし、アンサーはハッキリと否定した。

 

「えっ……」

「私は、一人なんかじゃない。今だって、ミスティックも一生懸命戦ってる。ポチタンだって、れいだって……みんな、マコトジュエルを守るために動いている!」

 

「何を……」

 

アルカナ・シャドウは、彼女の言葉の意図が理解できなかった。

 

「皆で戦ってるの! 仲間達と一緒に! だから……私は絶対に負けない!」

 

この場には一人かもしれない。

でも、決して一人で戦っているわけではない。

心が繋がっているから、強くなれる。

そう言い切るアンサー。

 

「仲間……」

「るるかさん! 貴女だって、昔はそうだったはずでしょ! こころさんやキュアエクレールと、『仲間』だったはずでしょ!」

 

「……ッ!!」

 

『仲間』という言葉に、アルカナ・シャドウの無表情が崩れ、激しく動揺した。

くれあとこころの笑顔が、脳裏にフラッシュバックする。

『キュアシンシア』として、隣で一緒に戦ってくれていた最愛の妹。

探偵助手として、自分の背中を守り支えてくれた親友のくれあ。

そしてあの日……絶体絶命の自分を助ける為に、初めて『キュアエクレール』に変身してくれたくれあ。

 

(二人は……私にとって……)

 

かけがえのない、大切な仲間だった。

 

だが。

キュアアルカナとして、一人でウソノワールに挑み、手も足も出ずにボロ負けしたるるか。

自分の身勝手な行動のせいで、そんな自分を助ける為に、大切な親友はマコトジュエルを奪われ記憶を失った。

大切な妹は致命傷を負い、心を壊されてしまった。

 

アルカナ・シャドウは、ティアアルカナロッドを血が滲むほど強く握りしめた。

 

「仲間がいたって……今の現状は、ここで戦っているのは貴女1人だけ。それは変わらない! いくら遠くに仲間がいようと、貴女個人の実力が上がるわけじゃない!」

 

アルカナ・シャドウは、アンサーの希望の言葉を必死に否定しようとする。

そうしなければ、自分を保てなかった。

 

「だって、そうじゃなきゃ……!」

 

かつて、キュアアルカナとして敗北したあの日。

 

「貴女がそんな事で強くなれるなら……あの時の私は……一体、何だったの……!」

「え……」

「私は、二人を仲間だと思っていなかったの……っ!?」

 

過去の後悔と矛盾に押し潰され、アルカナ・シャドウの思考は混乱し始めていた。

 

「アンサーアタック!!」

 

思考が乱れ、アルカナ・シャドウの動きに明確な隙が生まれた。

アンサーはその隙を逃さなかった。

強烈なエネルギーを込めた拳が、アルカナ・シャドウを捉える。

 

「くっ!」

 

アルカナ・シャドウは咄嗟にロッドで防御するが、体勢が不十分だった。

 

「うわぁぁ!」

 

防御ごと吹き飛ばされ、地面を転がるアルカナ・シャドウ。

 

彼女は、泥だらけになりながら何とか起き上がった。

 

「……認めない。貴女の考えを、認めるわけにはいかない」

「るるかさん……!」

「仲間は……大切よ。でも、それで一人の力が急に強くなるわけじゃない!」

 

「そんな事ない! 仲間がいれば、どんな困難だって……!」

 

「だったら!!」

 

アンサーの言葉を、アルカナ・シャドウの悲痛な叫びが遮った。

 

「だったら、どうして……どうして私は負けたのよ……っ」

「るるかさん……」

 

「何で、一番大切な存在がいた筈の私は……ウソノワールに勝てなかったの……。どうして、何一つ守れなかったの……っ」

 

アルカナ・シャドウの赤い瞳から、ポロポロと絶望の涙が流れ落ちていた。

 

「アルカナ……」

 

木の陰で戦いを見守っていたマシュタンは、その痛ましいやり取りを聞いて、胸を締め付けられていた。

 

「強くなんてなれない……。仲間がいれば強くなるなんて、ただの嘘よ……っ」

 

泣き崩れるように俯くかつての名探偵に、アンサーもどう声をかければいいか分からず、ただ悲しげに見つめることしかできなかった。

 

その時。

空を覆っていた異次元フィールドが解けていった。

 

「やった! ミスティックだ!」

 

フィールドが消えたということは、別行動していたミスティックがハンニンダーを撃退し、マコトジュエルを無事に守り切ったという証拠だった。

 

しかし、この事実が、アルカナ・シャドウを更に深い絶望へと突き落とした。

 

「そんな……マコトジュエルが……っ」

 

アルカナ・シャドウは、完全に糸が切れたように膝から崩れ落ちた。

 

「アルカナ……」

 

マシュタンが、アルカナ・シャドウの側へと飛んでくる。

 

「そっか……失敗したんだ。もう……時間切れ……。間に合わなかったんだ……」

 

アルカナ・シャドウの瞳から、とめどなく涙が溢れる。

 

「ごめん……ごめんね、こころ。お姉ちゃんは……また失敗して……っ。もう、時間が……っ」

 

「アルカナ、帰りましょう。……後は、あのジュエルが使われない事を祈るしかないわ」

 

マシュタンが、アルカナの肩に寄り添って静かに言う。

 

アルカナ・シャドウが、よろめきながら立ち上がる。

 

「……マコトジュエルはなくなった。ここで戦う意味は、もうないわ」

 

完全に戦う気力と意味を無くしたアルカナ・シャドウ。

 

「帰りましょ。アルカナ・シャドウ」

 

マシュタンと共に、アルカナ・シャドウは振り返ることなく、夕暮れの空へと飛び去っていった。

 

それを見つめるアンサー。

 

「るるかさん……。教えてよ、一体何を一人で抱えているの……」

 

それに答えるものは、もう誰もいなかった。

 

***

 

そして、中庭のツバメの像の前。

 

「ポチ!」

「れい!」

 

あんな達が、れいの元へと駆け寄る。

 

「ポチタン、無事でよかった!」

 

れいがポチタンを抱きしめる。

 

「かぎどうぞ!」

 

ポチタンが、鍵を渡す。

 

「取り返してくれたんだね!」

「れい、ポチタンを守ってくれてありがとう」

 

みくるがれいに感謝する。

 

「あんな達こそ、ファントムから学校を守ってくれてありがとう」

「ありがとう、れい!」

「うん!」

 

れいは、いつもの凛とした顔を崩し、柔らかい笑顔を見せた。

 

***

 

夜。キュアット探偵事務所にて。

 

「ああ……すごくいい香り」

「優雅で品のある百合の香りだね」

「ああ、もうすぐだ」

 

実験台の前で、ジェット先輩が汗を拭う。

蒸留器からポタポタと落ちていたエキスが溜まり、もう間もなく『記憶を呼び覚ます香水』が完成しようとしていた。

 

「この香水で……もう1人のプリキュア、『キュアエクレール』が誰なのか、分かるんだね」

 

あんなが、期待を込めてフラスコを見つめる。

 

***

 

一方、怪盗団ファントムの劇場アジト。

 

「また失敗、か」

 

薄暗アジトのVIP席で、ウソノワールは1人、モニター越しに今回の任務の失敗を見下ろしていた。

 

「……ならば、仕方あるまいな」

 

ウソノワールの掌が、不気味に光る。

 

「このマコトジュエルを自ら使うべきではないのだが……」

 

ウソノワールの手の中には、奪い取った『エクレールとシンシアの心のマコトジュエル』が浮かび上がっていた。

 

「『未來自由の書』の予言通りに、事を運ばなければならない」

 

二つの心のマコトジュエルを、ウソノワールは握りしめた。

 

「私は大王となる」

 

ウソノワールの赤い瞳が、狂気でギラリと光る。

 

「そして……世界を、永遠の嘘で覆うのだ」

 

運命の日(世界が嘘で覆われる日)まで、後七日。

るるかにとって、最も最悪な方向へと物語が加速し始めていた。

アニメ31話にて、るるかは名探偵に復帰。この小説のるるかは、どの方向に進んでもらいたい?(アンケートは取るけど、自分の文章力でアンケートの結果に結びつけれるかは自信がないので必ずしも、アンケート通りに出来るかは分かりませんが…)

  • 名探偵として復帰
  • ファントム等の敵として行動
  • 一時的に復帰するが再び絶望し離反する。
  • その他(意見、要望は感想等のコメントに)
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