名探偵プリキュア! 〜迷宮のアルカナと偽りの真実〜 作:暁 蒼空
キュアット探偵事務所のはなれ。
あんなとみくるは、窓を開け、雑巾やホウキを持って事務所の掃除をしていた。
『カランコロン』
事務所の呼び鈴が鳴り、あんなが振り返ると、扉を開けてくれあが入って来た。
「お疲れ様です」
「こんにちはでシュ!」
「くれあさん、シュシュタン!」
「あれ? 今日はパティスリーのお仕事は?」
みくるが、尋ねる。
「店長に、これからは本格的に『探偵』もやるって伝えて、シフトを調整してもらったの」
くれあは、パティスリーチュチュのパティシエとして働くことを辞めずに、探偵業と両立するつもりだった。
「あっ、それ『二刀流』だね!」
「ポチ?」
手をチョキにして『二刀流』とドヤ顔で言うあんなに、ポチタンが疑問符を浮かべる。
「二刀流っていうのはね、」
「特技や役割が2つあるってことでシュ!」
あんながジェスチャーで説明しようとするのを遮り、シュシュタンが簡潔に説明する。
「くれあさん、すごい!」
「えっへん! でシュ!」
みくるに褒められ、くれあではなくシュシュタンが誇らしげに胸を張る。
「この前もらった『プリキットブック』……真っ白なページを早くうめて、2人みたいな立派な名探偵になれるように努力するね!」
くれあは、ジェット先輩からもらったプリキットブックを広げ、やる気十分の笑顔を見せた。
「そんな、そんな~」
「私たちなんて、まだまだだよ~」
口では謙遜しているが、満更でもなさそうにニヤニヤしている二人。
『カランコロン』
すると、再び呼び鈴が鳴った。
「お客さま?」
扉を開けて入ってきたのは、一人の金髪の若い外国人男性だった。
「「ようこそ、キュアット探偵事務所へ!」」
「I need the help of a detective!! Please help me!!」
血相を変えて、慌てた様子で早口の英語をまくしたてる外国人男性。
「へ……へるぷ、みい?」
「どどど、どうしよう! 英語だ~!」
「えっと……グミ! グミ……っ!」
英語が全くの苦手なあんなとみくるは、完全にパニックになっていた。
みくるは慌ててプリキットグミを取り出そうとする。
「あっ……すみません、取りみだしてしまって、つい……。日本語も話せるので大丈夫ですよ」
すると、男性は流暢な日本語で話し始めた。
「よかった~……」
ホッと胸をなでおろすあんな。
落ち着きを取り戻した外国人男性の名前は『ポール』。
日本の文化を学ぶため、大学に通っている学生らしい。
「日本語、お上手ですね」
くれあが微笑む。
「ええ、日本の大学に通うために、最近ロンドンから引っ越してきたんですよ」
「ロンドン! 私もこの前までいたんですよ!」
みくるが親近感を覚えて身を乗り出す。
「Oh, really?」
「クッ……あぁ~、でも英語は、あまり得意じゃなくて……アハハ」
ロンドンに住んでいながらも英語が壊滅的に苦手なみくるは、冷や汗を流して目線をそらした。
話を聞く為に、ソファへと移動する一同。
「それで、どうされたんですか? どんなご依頼で?」
くれあがメモ帳(プリキットブック)を片手に尋ねる。
「はい。実は、これが届いたんです」
ポールが、ポケットから一枚のカードを取り出した。
それは、間違いなく『怪盗団ファントム』の予告状だった。
「この模様……」
「もしかして、暗号じゃない?」
カードの四隅と中央に、〇、△、□、♡、☆、♪のマークが無数に散りばめられ、複雑に描かれていた。
「うん、きっとそうだね!」
そして、予告状の本文にはこう記されていた。
『本日、6時12分38秒に人形をいただく。怪盗団ファントム』
「人形……というのは?」
くれあが尋ねる。
***
一方、まことみらい市の高層マンション。
ゴウエモンは、そのマンションを地上から見上げていた。
「ほほ~う、ここか」
ゴウエモンは腕を組む。
『未來自由の書』の予言によれば、このマンションの一室にマコトジュエルの欠片があると示されていたのだ。
「むむ!」
すると、ゴウエモンは何かを見つけ、慌ててマンションの壁と同じ色に偽装して隠れた。
「ここがボクのマンションです」
「予告状の『四角模様』は、この四角い高層マンションのことかな?」
「あっ、そうかも!」
ポールの案内で、あんな達プリキュアがマンションの入り口へとやって来たのだ。
「なんでプリキュアが? ……ふうむ、匂うぜ」
ゴウエモンは怪訝な顔をした。
***
怪盗団ファントムのアジト。
ゴウエモンは一度アジトに戻って、プリキュアがいた事情を説明した。
「予告状……だと?」
現在、ウソノワールはアゲセーヌの膝の上に乗せられ、ちょこんと座っていた。
「そんなもん、あんたしか送らないっしょ!」
アゲセーヌが、奥の席を睨む。
「……いいえ、私じゃないわ」
「…ってか、あんた、なんで『そこ』座ってんの?」
るるかは、いつもウソノワールが座っているVIP席に、足を組んで座っていたのだ。
「まぁ、まぁ、いいじゃねぇか。堅いこと言うなよ」
ゴウエモンは、なぜか全く気にする様子がなかった。
「よくないっしょ!」
「よくはないだろう!」
アゲセーヌとニジーが反論する。
しかし、るるかは完全に無視していた。
「……つまり、何者かが『怪盗団ファントムの名をかたっている』と?」
ウソノワールが目を細める。
「一体、何のために……?」
マシュタンが首を傾げる。
深く考えていたるるかだったが。
「まさか……」
るるかは、何かの可能性に気付き、弾かれたように立ち上がった。
「おっ? オレも行くぞ! 1人じゃ不安だろ?」
ゴウエモンが、るるかについていくと言う。
「……」
しかし、るるかはそれを完全に無視して、無言で背を向け歩き出した。
「おい、おい、恥ずかしがるなよ! たまには先輩を頼ってくれてもいいんだぞ! ほら! ドーンと胸に飛び込んでこい!」
なぜか後輩に頼られたくて必死にアピールするゴウエモン。
「…って、もういないし」
「もういないかな」
呆れ顔のアゲセーヌとニジー。
「な~にぃ!?」
るるかとマシュタンは、ゴウエモンの茶番を置いてすでにアジトを出ていってしまった後だった。
***
再び、高層マンション。
ポールの部屋に入る一同。
「これが、予告状の人形です」
「はなまる可愛い!」
「フランス人形?」
厳重なガラスケースの中に、美しいアンティークの人形が飾られていた。
「頭が陶器のものを『ビスクドール』っていうんでシュ」
シュシュタンが、あんなの耳元で小声で知識を披露する。
「先祖代々伝わる、大切なものなんです。もし、盗まれてしまったら……」
ポールが悲痛な顔をする。
「ポイントは、やっぱりこの『予告状の謎』だよね」
くれあ達は、もう一度予告状を穴の開くほど見つめる。
「この記号の羅列……模様が何かの暗号になっている……」
「すかして見たら、どこかの場所を示す…とか?」
あんなの言葉を聞いて、上に持ち上げて蛍光灯の光にすかして予告状を見るみくる。
しかし、何も浮かび上がらない。
「模様も謎だけど……『予告時間』も不思議ね。6時12分38秒……普通は6時とか7時とか、ぴったりの時刻を予告すると思わない?」
当然の疑問をもつ、くれあ。
「そういえば……今日は6時に『業者の方々』が来るんです。エアコンの修理と、家具・パソコンの配送の方々です」
ポールが思い出したように言う。
「ということは……予告時間に、部屋で作業をしている人がいる!」
「その3人が、あやしい!!」
あんなとみくるが、ビシッと指を差す。
そして、6時になると次々と業者の人がやって来た。
「どうも~、エアコンの修理に来ました」
エアコンの修理に来た、作業着の電気屋の男性。
「ご注文の椅子をお持ちしました」
椅子の配送に来た、家具屋の女性。
「パソコン、どこにセッティングしましょうか」
パソコンのセットアップに来た、パソコンショップ店員の男性。
3人は、それぞれポールの指示に従って、自分の仕事に黙々と取り掛かる。
その様子を、物陰からこっそり眺めているあんなとみくる。
「うーん……3人とも、怪しいところはないね。真面目に働いてる」
「もうすぐ、予告の時刻……」
時計の針は、6時10分を回っていた。
「結局、暗号が解けてないよぉ……」
「中途半端な時間の謎も解けないままだよ……」
さっぱり予告状の謎が解けず、焦るあんなとみくる。
(このままでいいの? 本当に、大切なものを守れるの?)
記憶を取り戻してから初の事件調査。
上手く行かず、不安に駆られるくれあ。
「くれあ。大丈夫、シュシュタンがついてるでシュ」
「……ありがとう、シュシュタン」
励ましてくれるシュシュタンを、くれあは優しく撫でる。
「くれあ、一番大事なこと忘れてるでシュ」
「えっ」
「『きらめき』でシュ」
シュシュタンの言葉に、くれあはハッとした。
「……はっ!」
シュシュタンの一言を聞いて、くれあの右目の奥に、かつての真実を見通す星の『きらめき』が青く宿った。
「もう、大丈夫」
(私の中の『きらめき』に従うの。……探偵にとって、大切なことは何? 調査に行きづまった時はどうする?)
くれあが目を閉じ、深く精神を集中する。
そして、かつて親友に言われた言葉を思い出す。
『事件に行き詰まったら……常に【基本】に立ち返るのよ、くれあ』
(そうだ。そうだったよね……るるか)
るるかに言われた『基本(原点)』を思い出すくれあ。
「はっ!」
何かに気付き、くれあはプリキットブックをバッと開いた。
「……何も!」
そこには、事件の概要や関係者の証言が、全くメモられていない『真っ白なページ』があった。
「ポールさん! あらためて『予告状が届いた時のこと』を詳しく聞かせてください!」
くれあが、ポールの元へ足早に歩み寄る。
「いまさらですか?」
「はい。本当なら、一番はじめに聞くべき『基本』のことです。でも、かわった予告状の暗号にばかり気を取られて、一番重要な【状況の確認】をお聞きするのを忘れてしまいました」
「そういえば!」
「なにも聞いてない!」
あんな達も、自分たちが現場の状況確認という基本を完全にすっ飛ばしていたことに気付く。
「予告状を見つけたのはいつですか?」
「今朝ですけど……」
「どちらで?」
「えっ……あぁ、あそこの『窓』からとびこんできたんです」
くれあの鋭い勢いにたじろいで、ポールは部屋の奥の大きな窓を指差した。
「窓から……」
くれあは、ポールの背後にある窓を確認する。
「あっ……。【きらめいた!】」
くれあの右目の星が、鋭く光を放った。
彼女は、この事件の『決定的な矛盾(真相)』に気付いた。
「ロンドンに比べると、日本の夏は暑いですもんね」
くれあが、カマをかけるように微笑む。
「そうなんです。エアコンも壊れてるので、あの窓を開けて風を浴びて涼んでたんですよ」
ポールにとっては何気ないその一言が、くれあにとってはこの事件を解決する『決定的な一撃』だった。
「なるほど。……でも、おかしいですね。あの窓……『開きませんよ?』」
「「「えっ!!」」」
あんな、みくる、そしてポールの声が重なる。
「どういうこと!?」
あんなが尋ねる。
「マンションの高層階だと、安全のために窓が開かない『はめ殺し』の造りになっていることがあるの。ほら見て。この窓、1枚の巨大なガラスで、サッシに鍵も取っ手もないでしょ?」
くれあが窓を指差す。
「えっ」
「ほんとだ!」
二人は窓を確認する。
取っ手もレールもなく、絶対に開かない構造の窓だった。
「……窓が開かないのに。そこから予告状がとびこんでくるなんて、絶対に『ありえない』わ」
くれあが、冷たくポールを見据える。
「つまり……ポールさんがウソをついている!?」
「ええ……。では、なぜわざわざ窓から飛び込んできたなんて、すぐにバレるウソをつくのか」
くれあが、ビシッとポールを指差した。
「それは、ポールさん……あなたが『予告状を書いた犯人』だからです!」
「……」
沈黙するポール。
やがて、彼は肩を揺らし、クックックと不気味に笑い出した。
「アメージング! なれない一般人の変装なんて、するもんじゃないね。……さすがだよ、帆羽くれあ」
ポールが顔に手を当てると、ポールの姿が解け、全く違う姿が現れた。
「オレは『デッチ・アゲイン』!」
怪盗の男が、芝居がかったようにお辞儀をする。
「はじめまして、名探偵プリキュアの諸君」
新たな怪盗の出現に、探偵たちの間に緊張が走る。
アニメ31話にて、るるかは名探偵に復帰。この小説のるるかは、どの方向に進んでもらいたい?(アンケートは取るけど、自分の文章力でアンケートの結果に結びつけれるかは自信がないので必ずしも、アンケート通りに出来るかは分かりませんが…)
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名探偵として復帰
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ファントム等の敵として行動
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一時的に復帰するが再び絶望し離反する。
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その他(意見、要望は感想等のコメントに)