名探偵プリキュア! 〜迷宮のアルカナと偽りの真実〜 作:暁 蒼空
「オレは『デッチ・アゲイン』。……はじめまして、名探偵プリキュアの諸君」
ポールの姿から、奇抜でスタイリッシュな怪盗の姿へと変貌を遂げた男。
ファントムの新たな幹部、デッチ・アゲインがその正体を現した。
「デッチ・アゲイン……怪盗団ファントムの新しい仲間?」
あんなが身構える。
「じゃあ、あの予告状の暗号は……」
みくるがハッとして尋ねる。
「フン……」
デッチ・アゲインが鼻で笑う。
「あなたは、意味のない模様をたくさん書くことで、私たちに『これは暗号だ』と思いこませた。そして……犯人である自分自身から、探偵たちの目を完全にそらさせたんです」
くれあが、彼の鮮やかな手口を冷静に指摘する。
「そのとおりだよ、名探偵。……でも、ウソの中にも『真実』がある。オレがロンドンから来たこと。そして……『6時12分38秒に人形をいただく』ことだ!」
デッチ・アゲインがニヤリと笑うと、瞬時にその場から姿を消し、ガラスケースの前へと移動した。
そのまま、ケースの中のビスクドールを奪おうと手を伸ばす。
「させない! オープン、プリキットライト!」
くれあが咄嗟にプリキットライトを取り出し、強い光のバリアを展開して人形の入ったガラスケースを守る。
「フフッ」
しかし、デッチ・アゲインは余裕の笑みを浮かべ、パチンと指を鳴らした。
その瞬間。
ガラスケースの中にあったはずのビスクドールが、忽然と消え失せた。
「「「あっ!」」」
「人形が……!」
あんな達が驚愕する。
「ここだよ」
消えた人形は、バリアの外にいるデッチ・アゲインの手の中に、そっと握られていた。
「ほかのファントムの連中だったら、君たちの勝利だったよ。……でも、オレには『特別な力』があるからね」
空間を自在に操る、デッチ・アゲインの驚異的な力。
「……空間移動」
突然、部屋の隅から低い声が響いた。
声の主は、エアコンの修理に来ていた『電気屋の男性』だった。
電気屋の男性の体が紫色の光に包まれ、光が弾けると……そこには、黒いケープを纏った『森亜るるか』の姿があった。
ファントムの幹部である、るるかもまた、電気屋に変装してこの部屋に潜入していたのだ。
「ほんと、やっかいな力ね」
るるかが、冷ややかな目でデッチ・アゲインを睨む。
「るるか!」
くれあが、親友の姿を見て息を呑む。
るるかは、くれあには目もくれず、デッチ・アゲインの方を真っ直ぐに向いていた。
「やっぱり、あなたの仕業だったのね」
「ハハッ、やっぱり君の変装だったんだね、森亜るるか。いいよ、君も一緒に『舞台』に立たせてあげる。……オレは、優れた役者は好きなんだ」
デッチ・アゲインが、芝居がかった手つきで再び指を鳴らす。
パチン!という音と共に空間が歪み、あんな達、るるか、そしてデッチ・アゲインの姿がマンションの部屋から消え去り……一瞬にして、外の広い広場へと強制的に場所が移されていた。
「ウソよ、覆え!」
デッチ・アゲインが叫ぶと、彼の手の中に一輪の『百日草』が現れた。
「時代を作ろう、ハンニンダー」
デッチ・アゲインがその百日草を両手で無残に握り潰すと、散った花びらが奪ったビスクドールへと降り注ぎ、巨大な怪物へと姿を変えた。
「ハン、ニン、ダ!」
不気味なフランス人形の姿をしたハンニンダーが、奇声を上げる。
「みんな!」
くれあが、あんなとみくるに頷きかける。
「「うん!」」
「「オープン!! ジュエルキュアウォッチ!」」
あんなとみくるの手にあるペンダントがまばゆい光を放ち、カラフルな懐中時計『ジュエルキュアウォッチ』へと姿を変える。
二人はそれぞれのマコトジュエルを取り出し、ウォッチに装着した。
「「プリキュア、ウェイクアップタイム!」」
二人の声が重なった瞬間、光が溢れ出す。
「サン!見つける!」
ジュエルキュアウォッチの長針が、3の位置へと揃えられた。
あんなの髪が風にほどけるように一気に伸び、足首に届くほどの長さになる。
毛先はハート型に整い、頭頂部の左右は可愛らしいお団子のツインテール。
髪色は鮮やかな紫へと変わり、毛先に向かって淡いピンクのグラデーションが広がった。
みくるの髪も同時に伸び、やわらかな三つ編みへと姿を変える。髪色は明るいピンクに。
瞳の色も変化する。あんなは澄んだ青緑、みくるは神秘的な紫へ。
「ロク、向き合う!」
長針が6を指す。
みくるの身体を、淡いピンクのオフショルダーワンピースが包み込む。
フリルの揺れるスカートが、彼女の可憐さを際立たせた。
背中には、水色の大きなリボン。
あんなもまた、フリフリの紫色のワンピースを身に纏い、背中には鮮やかな黄色の大きなリボンが現れる。
「キュー!奇跡の二人!」
長針が9へ。二人の足元に光が集まった。
あんなは紫色、みくるはピンク色のブーツを履き、同時にニーハイソックスが脚を彩る。
あんなの手には薄い水色のフィンガーレスグローブ。
その上から薄紫色のオープンフィンガーグローブが重なる。
みくるの手にも薄紫のフィンガーレスグローブと、薄ピンクのオープンフィンガーグローブ。
指先には、それぞれの色のネイルがきらりと輝いた。
「くるっと回して、キュートに決めるよ!」
長針が11へと進む。
あんなの左右のお団子には華やかな髪飾りが添えられ、耳元にはピアスが揺れる。
みくるの髪には大きなリボンの髪飾り。そして同じく、両耳にピアス。
さらに二人の胸元にはネクタイ型のリボン。
肩には短めのケープが重なり、装いが完成へと近づいていく。
ジュエルキュアウォッチは光となって収束し、衣装の腰にあるキャリーへと収められた。
「どんな謎でも、はなまる解決!名探偵『キュアアンサー』!」
「重ねた推理で、笑顔にジャンプ!名探偵『キュアミスティック』!」
可愛らしい決めポーズを決める。
最後に二人は自然と歩み寄り、並び立つ。
「「名探偵プリキュア!」」
「オープン!」
くれあのその一言を合図に、眩い光の球体が彼女の手から解き放たれる。
光は瞬く間に広がり、絶望に染まった日常の景色を、鮮やかに塗り替えていった。
足元には波紋の広がる澄んだ水面。
周囲には神聖な古代の石柱がそびえ立ち、空には星屑が煌めく、幻想的な夜の領域が広がる。
無数の青い光の蝶が舞い踊る中、頭上から黄金と青に彩られた香水瓶が、ゆっくりと彼女の手元へと舞い降りてきた。
「トップオブリリーフレグランス」
香水瓶を手に取った彼女の顔に、希望が弾けるような満開の笑顔が咲く。
マコトジュエルをセットする。
「プリキュア、ウェイクアップタイム!」
彼女が香水瓶の蓋を外すと、きらきらと輝く光の粒子が溢れ出した。
「フローラルスピン!」
彼女は水面のような空間へと軽やかに駆け出す。
ふわりと宙を舞い、優雅に水面へと降り立つと、つま先から静かな波紋が幾重にも広がっていった。
彼女は香水瓶を持った手を滑らせるように動かし、香水を周囲に振り撒く。
「ブルーム!」
その声と共に、清らかな水流のような光の帯が彼女の身体を優しく包み込んだ。
光が弾けると同時に、彼女の深い青色の髪は鮮やかなミントグリーンへと染まり、ボリュームのある、途中で二つに分かれている華やかなポニーテールへと姿を変える。
幾重にも重なる純白のフリルスカートがふわりと広がり、腰の後ろには青い蝶の羽を模した大きなリボンが結ばれた。
彼女が胸の前で両腕を交差させると、清冽な光が腕を包み込み、両手には薄紫色のフィンガーレスグローブが現れる。
バレリーナのように高く脚を上げ、水面で美しくスピンを決めると、水飛沫の中から編み上げられたエメラルド色のヒールが現れ、足元を上品に飾った。
耳元には青い宝石のピアス、髪には白百合の髪飾り、そして胸元にはハートをあしらったリボンが次々と形作られていく。
変身の仕上げとして、彼女は手にした香水瓶の蓋を閉じる。
その瞬間、彼女の瞳の奥で、真実を見抜く強い意志を秘めた赤い光が鋭く瞬く。
「解き放て、内なる真実の香り!」
彼女が両手を広げると、背後には無数の白い百合の花が一斉に咲き誇り、光の蝶たちが祝福するように乱舞した。
顔を覆っていた手を払い、真実を見通す探偵の眼差しで、真っ直ぐに前を見据える。
「名探偵! キュアエクレール!」
星空と百合の花を背負い、彼女は凛とした佇まいでビシッと人差し指を突きつけた。
「私の答え、示しましょう」
三人のプリキュアが、広場に並び立つ。
「マコトジュエルは、わたさない!」
アンサーが力強く宣言する。
「へぇ~。話には聞いていたけど、ジュエルキュアウォッチが『2つ』もあるなんて、おどろきだね」
デッチ・アゲインは、アンサーとミスティックの腰にあるアイテムを見て、興味深そうに観察する。
「ハンニンダー!」
ハンニンダーの毛糸のような長い髪の毛が、生き物のように、ムチとなって三人を襲う。
エクレールは軽快にジャンプして躱すが、アンサーとミスティックは避けきれず、手首をロープで縛られるように髪の毛に絡め取られて捕まってしまった。
「わぁ! 髪の毛が!」
アンサーがもがくが、解けない。
「それなら!」
エクレールが、プリキットミラールーペを取り出す。
ミラールーペの鏡面に、自身の姿を映し出した。
「エクレール・イリュージョン!」
エクレールの姿がブレたかと思うと、全く同じ姿をした『4人の分身』が作り出された。
本体と合わせて、5人のエクレールが広場に並び立つ。
「いくわよ!」
5人のエクレールが、ハンニンダーの周りを円を描くように猛スピードで走り出した。
それを追いかけようと、ハンニンダーが長い髪の毛を振り回すが、エクレールたちのスピードが速すぎて全く追いつけない。
視界をぐるぐると回されたハンニンダーは、しまいには自分の髪の毛が自分自身に絡まり、巨大な『毛玉』のようになって身動きが取れなくなってしまった。
その隙に、髪の毛の拘束から抜け出すアンサーとミスティック。
「やった~!」
「キュアエクレール、すご~い!」
ハンニンダーの攻撃を、見事な頭脳プレイとスピードで無力化したエクレールに、アンサー達は感激して拍手する。
その鮮やかな戦いを、少し離れた場所から見ていたるるか。
「エクレール……」
るるかの瞳に、ドス黒い闇が渦巻く。
(今度こそ……今度こそ、貴女のマコトジュエルを、この手で完全に砕く……っ!)
世界を自分の理想通りに創り変えるため。
親友を、この残酷な運命から永遠に遠ざけるため。
るるかは、冷たい決意と共に胸のペンダントを強く握りしめた。
「……オープン……」
胸元のペンダントが強い光を放つ。
光は細く伸び、形を作り、るるかの手の中で長くしなやかな『杖』へと変貌した。
「ティアアルカナロッド」
指先を添えた瞬間、るるかの身体はふわりと舞い上がる。
衣装は紫の光を帯び、周囲へと輝きを弾けさせる。
マコトジュエルを静かにロッドへ装着する。
円を描くように一回転。足元に広がる魔方陣が妖しく光った。
「シャッフル」
ロッド上部のカードがくるりと回転した瞬間、るるかの髪は漆黒へ。
もう一度、指先でカードを弾けば、闇は一転して金色へ。
かきあげた髪の先には、鮮やかなピンク色のグラデーション。
「リバース」
ロッドから流れる光がるるかの体を次々と包み込む。
ノースリーブのワンピースが身体を包み、黒を基調とした衣装と明るく揺れる髪が、お互いを強調し合う。
スカートには紫色の雫が散りばめられ、静かに揺れる。
カンッ。
ロッドを地に打ち付けた瞬間、露わだった脚は濃い紫色のサイハイソックスと濃紺色のショートブーツに包まれる。
祈りを捧げるように両手でロッドを握ると、手首には繊細なリストカフスが装着される。
頭には、黒いダイヤ型が並ぶ髪飾りを装着、その中央下には雫型の石飾りが付けられている。
目元へ右手を当てて下に下ろすと、瞳は紫から赤へと変化、瞳の奥にハートの光が宿っている。
耳元には雫型のピアス。頭の後ろには黒い蝶の飾りを添えた薄紫のヴェールが静かに寄り添う。
ロッドの先端を胸元へと当てると、紫色の光が体を包み込む。
黒いケープが肩を覆い、胸元にはネクタイ型のリボンが可憐に結ばれる。
「神秘と秘密で包み込む――『キュアアルカナ・シャドウ』」
ロッドのカードに映るのは、彼女の氷のように冷たい横顔。
一歩、また一歩と進むだけで、神秘が満ちていく。
ロッドをくるりと回し、持ち替える。
「さあ……迷宮へ誘いましょう」
「ハァーッ!」
アルカナ・シャドウが、猛スピードでアンサー達三人へと突進していく。
ティアアルカナ・ロッドでの鋭い刺突と薙ぎ払いを、三人は息を合わせて軽快なジャンプで避ける。
「アルカナ!」
着地したエクレールが、かつての親友へと呼びかける。
「ハァーッ!」
しかし、アルカナ・シャドウは一切の躊躇いなく追撃を繰り出す。
その無慈悲な攻撃を、エクレールは最小限の動きで躱していく。
「どうして、貴女はファントムにいるの!」
エクレールは、まだ信じられなかった。
あんなに真っ直ぐで正義感の強かった『名探偵』のるるかが、世界を嘘で覆い尽くそうとする怪盗団にいる意味が。
何も答えないアルカナ・シャドウは、次々とエクレールの急所を狙って攻撃を繰り出すが、その全てを完全に見切られ、躱されてしまう。
「やぁぁッ!」
焦りからか、アルカナ・シャドウはティアアルカナロッドを大きく振りかぶり、力任せに振り下ろした。
「……っ!」
エクレールはそれを避けず、両手の平でロッドの柄をガシッと受け止めた。
「答えて!」
ロッド越しに、エクレールが強い視線で呼びかけ続ける。
「ッ……!」
受け止められたティアアルカナロッドを支点に、アルカナ・シャドウは身を翻し、エクレールの顔面へと鋭い蹴りを入れる。
それを間一髪で躱すエクレールだが、その反動で体勢を崩してしまう。
その隙を逃さず、アルカナ・シャドウは空中で体を捻り、渾身の両足蹴りを放った。
「アァーッ!」
重い一撃をくらい、吹き飛ばされるエクレール。
地面を転がり、膝をつく彼女へと、アルカナ・シャドウがゆっくりと近づいていく。
「……いいわ。教えてあげる」
アルカナ・シャドウが、氷のように冷たい声で見下ろす。
「あなたを、倒す為よ」
「えっ……」
予想だにしなかった残酷な答えに、エクレールが息を呑む。
「キュアエクレール!」
倒れているエクレールの元へと、アンサーとミスティックが慌てて駆け寄る。
「くっ……、どういう……こと?」
意味が分からなかった。
どうして、親友である自分を倒す為に、るるかがファントムにいるというのか。
「ハハハ……やるじゃないか。アルカナ……『シャドウ』。演出のしがいがあるね」
突然、拍手と共にデッチ・アゲインが姿を現した。
彼は、わざとらしく『アルカナ』と『シャドウ』の間に不気味な間を設けて呼んだ。
「ウソじゃ……ないのね」
アルカナ・シャドウの、微塵の迷いもない殺気立った表情を見て、エクレールは彼女が本気なんだと気付いた。
「貴女の目的は分かった。……でも、私はどんな時も、真実を見つけて『事件を解決』しなきゃいけない! それは、貴女達に……るるかと、こころちゃんに教わったことよ!」
エクレールは力強く立ち上がる。
ただの一般人だったくれあに、探偵としての基本や心構えを優しく教えてくれたのは、他でもないるるかとこころの二人だったのだから。
「……くっ……」
自分の事だけなら、どんなに憎まれても良かった。
しかし、こころの事まで持ちだされ、アルカナ・シャドウの瞳がわずかに動揺して揺れる。
「きらめきタイム!」
その一瞬の隙を突き、エクレールが凄まじいスピードで動き出した。
「ハァーッ!」
繰り出される、目にも止まらぬ無数のパンチ。
アルカナ・シャドウも必死にティアアルカナロッドで防ぐが、エクレールの怒涛のラッシュに押されていく。
「ハアァァッ!」
エクレールの鋭い手刀が、ティアアルカナロッドの柄を弾き払い、アルカナ・シャドウの体勢が大きく崩れる。
「あっ」
その致命的な隙を逃さず、エクレールは洗練された鋭い回し蹴りを放つ。
「くっ……!」
何とか防ごうとするアルカナ・シャドウ。
しかし、エクレールの桁違いのパワーとスピードを防ぎきれず、激しく吹き飛ばされて地面に倒れ込んでしまう。
「アァァ……、くっ……」
エクレールは、倒れたアルカナ・シャドウを一瞥した後、背後のハンニンダーの方へと向き直った。
「オープン! プリキットミラールーペ!」
「シュシュタン!」
「シュシュー!」
シュシュタンからマコトジュエルを受け取り、ミラールーペへと装着する。
「マコトジュエル!」
「キュアエクレールが……解決!」
すると、エクレールの背中から、光り輝く青い巨大な『蝶の羽根』が出現した。
「優雅に!」
中央の宝石を回転させる。
「はばたき!」
2回目の回転。
「ナゾを解く!」
3回目の回転。
「これが私の……アンサーよ!」
エクレールが、その青い羽根で空中へと美しく飛び立つ。
「プリキュア・フライング・インフィニティ!!」
名乗りと同時に、彼女自身が巨大な青い光の蝶となって、ハンニンダーめがけて特攻する。
そして、ハンニンダーの巨体を、一筋の閃光となって真っ直ぐに貫いていった。
「キュアット解決!!」
「ハン……ニン……ダァ……」
ハンニンダーが光に包まれて浄化される。
そして、解放されたマコトジュエルの欠片は、ポチタンに無事に吸収された。
空間を歪めていた異次元フィールドが、解けていく。
「すばらしい役者がそろったね。キャストは、名探偵プリキュア。演出は、オレ……デッチ・アゲイン。……歴史にのこる舞台になりそうだ」
デッチ・アゲインが、どこか楽しそうに拍手をする。
「それにしても、すっかり『怪盗』だね。アルカナ……シャドウ。……シャドウの力も、使いこなし始めているようだ」
倒れているアルカナ・シャドウの姿を見下ろしながら、デッチ・アゲインが意味深なことを呟く。
そして、彼はニヤリと笑い、光と共に姿を消した。
エクレールは、ハッとしてアルカナ・シャドウの方を向く。
「シャドウの力って……どういうこと……?」
デッチ・アゲインの不吉なつぶやきが、エクレールの耳にこびりついていた。
倒れているアルカナ・シャドウ。
「どうして……、どうして勝てないの……。まだ、力が足りないの……?」
地面を殴りつけ、拳を血が滲むほど握りしめ、悔しそうにしているアルカナ・シャドウ。
「あれだけ覚悟して……すべてを受け入れた筈なのに……まだ、足りないの……? どうして……私は、こんなにも弱いの……っ」
「アルカナ……」
マシュタンが、アルカナ・シャドウの元へと降り立つ。
「大丈夫?」
「……いきましょう」
アルカナ・シャドウは、エクレールと目を合わせることなく、マシュタンと共に撤退していった。
***
怪盗団ファントムのアジト。
誰もいない静かな席には、デッチ・アゲインと、その膝の上に座らされている小さな妖精姿のウソノワールの二人がいた。
「どうだった? オレの刺激的な演出は」
「それより、ロンドンはどうした?」
ウソノワールが不機嫌そうに尋ねる。
「あぁ~、ロンドンの探偵事務所ね。やっかいなご婦人がいるけど、まぁ、落ちるのは時間の問題かな。……それより、こっちが大変そうだったから、助けに来たんだよ。ロンドンと日本で『二刀流』ってね」
デッチ・アゲインがウインクをする。
「助けはいらない」
「遠慮はいらないよ。……大王になるのを、あきらめてないんだろ?」
ウソノワールが沈黙する。
「能力を使って盗むのは、華麗ではないからな」
ウソノワールは、美学を口にする。
「フッ……まだそんなことにこだわってるのかい? 正直、『キュアシンシア』に能力を使ってあそこまでしたんだから、今更な気もするけどね」
デッチ・アゲインが、残酷な真実を口にする。
ウソノワールはキュアシンシアに対して、己の能力で何回も『嘘の記憶』を上書きし、精神を破壊するまで覆い続けたのだ。
その影響で、シンシアは最終的に自我が崩壊し、精神が完全に壊れてしまったのである。
「………」
何も言わないウソノワールだが、当時は焦っていたとはいえ、あんな無惨な事をしてしまった事に少なからず思うことはあるようだった。
「まぁ、君らしいけどね」
デッチ・アゲインが肩をすくめる。
「これからは、ぬすむ時に能力は使わない。……約束するよ、ウソっち」
デッチ・アゲインが、ウソノワールのほっぺを指でツンツンとつつく。
「……その呼び方は、やめろ」
「う~ん、デッチ、ウソっちの仲じゃないか」
「や~め~ろ!!」
***
キュアット探偵事務所。
「それで……大丈夫だったのか?」
「うん! フランス人形は、元の持ち主のポールさんに無事に返したし!」
「一件落着だね!」
あんなとみくるが、笑顔でハイタッチする。
「らくちゃく!」
ポチタンも真似をする。
「デッチ・アゲイン……新しいファントムか。またやっかいなヤツが出てきやがったなぁ」
ジェット先輩が、腕を組んで唸る。
くれあは一人、窓の外の空を静かに見つめていた。
「くれあ」
「はっ!……なに?」
シュシュタンに声をかけられ、振り返るくれあ。
シュシュタンは、とても心配そうな顔をしていた。
「るるかの事、考えてるでシュね」
「ええ……。るるかは言っていた。『私を倒すためだ』って。……私を倒す。それは、ウソじゃないと思う」
るるか達と共に長い時間を過ごしてきたくれあには、ハッキリと分かった。
るるかのあの冷たい表情と瞳は、本気なんだと。
心配そうに、その話を聞いているあんな達。
「だけど……私の中の『きらめき』が言ってるの。その先に、必ず『真実』があるって」
くれあが、胸に手を当てる。
「その真実は、私が見つけてみせる。……必ず!」
くれあの目に、名探偵としての揺るぎない覚悟が宿っていた。
(私が見つけなくちゃいけない。そして、るるかの真意だけじゃない。行方不明のこころちゃんの事も、私が必ず見つけ出さなきゃ!)
***
ファントムのアジト。
るるかとマシュタンは、冷たい自室へと戻っていた。
「るるか、これを飲んで少し休んで」
マシュタンは、温かいハーブティーをいれて出す。
「……ありがとう」
それを受け取り、一口飲んで少しだけ落ち着くるるか。
「どうすれば勝てるの……。私の力じゃ……エクレールには勝てないの……っ」
ティーカップを持つ手が震え、悔しそうに顔を歪めるるるか。
「るるか……」
「こんな事じゃ、いつまで経っても何も変わらないわ」
ベッドで静かに眠り続けるこころの痛々しい姿を見るるるか。
「それに、デッチ・アゲイン。どうして今になって……」
るるかの表情には、明らかな焦りがあった。
自分の計画の邪魔になる存在が増えたからだ。
「何とかしないといけない。……私は、エクレールのマコトジュエルを砕いて、そして『ビッグマコトジュエル』を手に入れるの。……こころの為にも、必ず!」
るるかは、カップを置き、決意を込めて拳を強く握りしめた。
「るるか……」
マシュタンは、どんどん後戻りできない闇へと進んでいくるるかの背中を、ただ見守ることしかできなかった。
アニメ31話にて、るるかは名探偵に復帰。この小説のるるかは、どの方向に進んでもらいたい?(アンケートは取るけど、自分の文章力でアンケートの結果に結びつけれるかは自信がないので必ずしも、アンケート通りに出来るかは分かりませんが…)
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名探偵として復帰
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ファントム等の敵として行動
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一時的に復帰するが再び絶望し離反する。
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その他(意見、要望は感想等のコメントに)