名探偵プリキュア! 〜迷宮のアルカナと偽りの真実〜 作:暁 蒼空
夜のまことみらい市。
高くそびえ立つビルの屋上に、ゴウエモンとデッチ・アゲインの姿があった。
「こう、やすやすと盗めるなんてなぁ。早くウソノワール様に持ち帰ろうぜ」
ゴウエモンは、見事に盗み出した『マコトジュエルが宿っている蝶型の髪飾り』を手に取り、ご機嫌な様子だった。
「いいや……ここからが本番さ」
デッチ・アゲインが不敵に笑う。
「うん?」
バタンッ!
すると、屋上の扉が勢いよく開き、息を切らせたあんな達が飛び出してきた。
「いた!」
「プリキュア」
ゴウエモンが身構える。
「帆羽くれあ……今回の『主演』は君だ」
デッチ・アゲインが、芝居がかった手つきでくれあを指差す。
くれあは、鋭い眼差しで彼を警戒した。
「ゴウエモン、『からくり迷路』を」
「はぁ?」
いきなりの指示に、ゴウエモンが首を傾げる。
「これもウソっちのためだよ」
「……ったく!」
呆れたような声を出しながらも、ゴウエモンはどこか楽しそうに扇子を構えた。
「いでよ、からくり迷路!」
ゴウエモンが扇子を屋上の床に力強く叩きつける。
「ゴウエモン、ウィズ……デッチ・アゲイン!」
デッチ・アゲインが、一輪の百日草をくれあに向かってフワリと投げつけた。
「「「きゃあっ!」」」
光の渦が巻き起こり、くれあ達三人と二匹の妖精の姿が、屋上から完全に消え去った。
「見せてもらうよ。君の『ナラティブ(物語)』をね」
不気味に笑うと、デッチ・アゲインも光と共に姿を消した。
「ウエ!?」
一人取り残され、ポツンと立つゴウエモン。
***
あんな達は、見知らぬ空間へと飛ばされていた。
「どうなってるの?」
周囲を見回すあんな。
「ここって……」
あんな達には全く見覚えのない場所だったが、くれあには見覚えしかなかった。
「ロンドンの探偵事務所でシュ!」
シュシュタンが声を上げる。
「「えぇ!?」」
あんなとみくるが目を丸くする。
そして、あんなが近くの物に触れようとすると、すり抜けてしまった。
「えぇ~! なんで!?」
『ここは君の【記憶の世界】。君たちは、何もふれることはできないよ』
突如、空間のどこからかデッチ・アゲインの声が響き渡った。
『からくり迷路の力をかりて、帆羽くれあの過去を再演しているのさ。君の力はとても興味深いからねぇ……観察させてもらうよ』
「記憶の世界……」
くれあが呟く。
『おっと、主演のお出ましだ』
「えっ! あの子、もしかして……」
あんなが指差す先。
「くれあさん……?」
みくるが息を呑む。
そこには、今よりもずっと幼く、少し緊張した面持ちの少女――『過去の帆羽くれあ』と、彼女に寄り添うシュシュタンの姿があった。
そして、その対面からゆっくりと歩いてくる人物もいた。
「るるかさんだ!」
マシュタンと歩いてくる、今よりもずっと幼く、髪を腰まで長く伸ばしている『過去の森亜るるか』の姿だった。
「3年前……」
くれあが、懐かしさと切なさの混じった声で呟く。
それは、彼女たちが初めて出会った日の記憶だった。
『この子をスカウトしてきたでシュ!』
過去のシュシュタンが誇らしげに言う。
『フフッ、アタシがスカウトしたのはこの子達よ!』
過去のマシュタンも負けじと胸を張る。
人見知りなのか、るるかは不安そうに下を向いていた。
しかし、彼女は少しだけ目線を上げ、くれあを見る。
(わぁ……)
くれあは、初めて会うその少女の、神秘的でどこか儚げな美しさに、思わず見惚れていた。
『くれあ! 自己紹介でシュ!』
シュシュタンの言葉にハッとするくれあ。
『帆羽くれあよ!』
『もっ……森亜……るるか……』
『……よろしく!』
くれあが、満面の笑みで手を差し出す。
『……うん……』
るるかも、少しだけ頬を赤らめながら、小さな手でしっかりと握手をした。
名探偵たちの、すべての始まりの瞬間だった。
***
その美しい記憶の映像は、怪盗団ファントムのアジトにも、モニターで映し出されていた。
「……」
VIP席でそれを見ているるるかとマシュタン。
「貴女達が、はじめて会った日だわ」
マシュタンが、隣のるるかの顔を窺うように言う。
「くっ……っ」
るるかの表情は、酷く苦しそうに歪んでいた。
自分の目的は『世界を創り変えること』だと、あんなに冷酷に決心したはずなのに。
かつての、あんなに純粋で幸せだった過去の自分とくれあの姿を見せられることで、自ら氷漬けにしたはずの心が激しく軋み、決心が揺らいでしまうようだった。
「るるか……」
マシュタンは、今にも泣き出しそうに唇を噛むるるかを見つめる。
(そっか。……るるかは、まだ探偵としての自分を完全に捨てきれている訳じゃない。本当は、くれあと戦うことだって、心の底から嫌なはずなのよ……っ)
***
再び、記憶の世界。
「オープン! プリキットミラールーペ! 脱出の手がかりをさがそう!」
あんなが元気よくルーペを取り出し、みくると一緒に脱出方法を探し始める。
「うん!」
すると、過去の世界でマシュタンが声を上げた。
『そう言えばマシュタン。さっきスカウトしてきたのは【この子達】って……』
『えっ……、あれ!? あの子は!?』
るるかの他に連れてきたはずの、もう一人の少女の姿がどこにも見当たらなかった。
すると。
『ねぇ~! マシュターン。お姉ちゃーん。何処なのぉ!』
奥から、泣きべそをかいた幼い声が聞こえてきた。
『グスッ、グスッ。2人とも、何処にいっちゃったの……。ここ、広くてわからないよぉ……っ』
迷子になって泣き始めている女の子の姿。
『うぇぇぇぇん。勝手に離れてごめんなさい……。もう勝手な事しないから許してぇ……。お姉ちゃん、マシュタン……!』
「みくる、あの人……!」
あんなが、さっきまで居なかった別の少女が現れた事をみくるへ教える。
「あの人……どこかで……」
「るるかさんに、すごく似ている気も……」
「あれが……『こころ』ちゃんよ」
くれあが、優しく、そしてどこか悲しげに微笑んで言った。
「あの人が……」
写真と、るるかの絶望の言葉からしか知らなかった『森亜こころ(キュアシンシア)』を、この目で初めて見たあんな達。
るるかが、慌ててこころの元へと駆け寄る。
『こころ!』
『もう、何処に行ってたの!』
こころが、二人の姿を見てパッと顔を明るくする。
『お姉ちゃん! マシュタン!』
るるかへと、勢いよく泣きつきながら抱きつくこころ。
『こころ、泣き止んで。みっともないよ』
るるかが、少しだけお姉ちゃんぶって言う。
『どうして、勝手に離れたの』
『だってぇ、すっごく広くて、綺麗だから色々見てみたくて、フラフラしてたら、気づいたら2人とも居なくてぇ……』
『全くもう! ほら、貴女も早くご挨拶するのよ!』
『えっ……』
知らない人(くれあ)がいることに気づき、こころがビクッとする。
『ほら、行こう、こころ』
こころの小さな手をしっかりと握って、くれあの元へと歩き出するるか。
るるかは引っ込み思案で人見知りだが、妹のこととなると、自然と『姉としての自覚』が前に出るのだ。
こころも、大好きな姉に手を握られていることで自然と安心し、すぐに泣き止んでニコニコと満面の笑顔を見せていた。
『この子がアタシがスカウトしてきた、もう一人の子よ』
『はじめまして! 森亜こころです!』
『こちらこそ、帆羽くれあよ! あれ……森亜?』
『私の……妹』
『本当に二人はそっくりね!』
くれあが目を輝かせる。
るるかとこころは、双子のようにそっくりだった。
こころの方が少しだけ幼くて、るるかよりもずっと天真爛漫で元気な印象だが、本当に瓜二つだった。
すると、心地よい風がふく。
『あっ……』
『すごい……』
広大な探偵事務所の中庭の景色が広がる。
『素敵でしょ。ここに来た人は、みんな目をうばわれて……』
解説するマシュタン。
しかし、過去のくれあだけは違った。
過去のくれあだけは、美しい景色にではなく、どこからともなく漂ってくる『百合の花の香り』に強く惹きつけられていたのだ。
『アメージング! 「香り」に気づくか……いいねぇ!』
『えっ?』
突然、くれあに気さくに肩を組んでくる一人の長身の女性。
『まふる所長!』
シュシュタンが挨拶する。
『まふるって……もしかして、あの「暁の証明」、まふる探偵!?』
驚くくれあ。
『フフッ』
『イギリス中をゆるがした、あの歴史的な王冠紛失事件を見事解決した、あの!?』
『世間的に超有名なあなたが、まさかキュアット探偵事務所の所長だったなんて……』
るるかも驚愕する。
すると、まふるが「シーッ」と人差し指をるるかの口元に当てた。
『皆には秘密だよ?』
それを見ていたあんな達。
「へぇ~! 凄い探偵さんなんだね!」
『ねぇねぇ、マシュタン』
こころが、マシュタンの耳元でヒソヒソと声をかける。
『どうしたの?』
『あの人、そんなに有名な人なの?』
「「「えっ」」」
一同がズッコケそうになるほど驚く。
『ちょっと! 貴女ねぇ、仮にも探偵の素質があるってスカウトされたのに、どうしてまふる所長の事を知らないのよ!』
『しょうがないじゃん! 探偵の事なんてよく分かんないし! それに私をスカウトしたのはマシュタンでしょ!』
こころが堂々と開き直る。
『ちょっと、こころ。失礼よ……っ』
るるかが慌ててこころの口を塞ごうとする。
『ハッハッハッ!』
しかし、まふるは豪快に笑った。
『いや、それくらい裏表がない方が、話しやすくていいよ』
すると、いきなり場面が波打つように切り替わる。
「時間が進んだ?」
『第2幕のようだねぇ』
デッチ・アゲインの声が響く。
美しい庭園のテラス席に座って、紅茶を飲みながら会話をしている一同。
『ここのスタッフは、私と妖精たちだけでね。協力しながら、うまくやってるのさ』
そうすると、まふるの横にいた三匹の美しい妖精が、フワリと飛んでくれあの元へと集まってきた。
『おや……普段、私以外にはなかなか心を開かない子たちなのに、めずらしいねぇ』
『いいなぁ……私にも懐いてくれないかなぁ?』
くれあを羨ましそうに見ているこころ。
『あら? アタシだけじゃ不満なの?』
『そんな事ないよ! でも、色んな妖精さんに好かれた方が楽しそうだなぁって!』
こころが、マシュタンを撫でながら無邪気に笑う。
『すてきなユリ……』
くれあが、庭園の辺り一面に咲き誇る、真っ白なユリの花を見つめる。
『【トップオブリリー】さ。妖精と人間の絆によって生まれた百合。……百合の王さま、いや、女王さまってところかな』
まふるが愛おしそうに花に触れる。
『これは運命の導きかねぇ』
まふるが立ち上がり、三人についてくるよう促す。
そして、開けた場所で空を見上げると……そこには、まばゆく光り輝く巨大な石が浮かび上がっていた。
『何……これ?』
るるかが息を呑む。
『大っきな石? いや、星?』
こころが目を輝かせる。
『あれが【マコトジュエル】。……妖精を信じていた、人の心の結晶だよ』
『人の心?』
『信じていた? ……なぜ、過去形なの?』
るるかが、持ち前の鋭い直感で疑問に思ったことを口にする。
『するどいねぇ』
まふるがニヤリと笑う。
すると、まふるがどこからともなく『紙芝居』を取り出した。
『また始まった……』
マシュタンが呆れる。
『昔々、人間と妖精はとっても仲良しでね。まさに最高のパートナーどうしだったのさ! ……ところがどっこい!』
まふるが紙芝居をめくる。
『時が進むにつれて、人間はいつしか、目に見えない妖精たちを信じなくなっちまった』
『妖精たちを信じていたマコト(真実)の心は、人間から離れて……より集まってできたのが、マコトジュエル!』
『信じる力ってのは、相当なものでね。ウソを真実にすることだってできる。そいつをねらうのが…怪盗団ファントムだ。』
まふるの顔が真剣になる。
『だから、あらゆる時間と空間をワープさせて守っているのさ。怪盗団ファントムは世界をウソでおおおうとしているんだよ。大王になってね』
――誰も知らない。
三年前のこの話が決定的なきっかけとなり、今のるるかが「ビッグマコトジュエルを利用して、自分に都合の良い世界を創り直す」という狂気の決断に至ってしまったことを。
『私達は、それを止めないといけない』
『どうやって?』
『【名探偵プリキュア】さ!』
『名探偵……』
『プリキュア?』
るるかとこころが顔を見合わせる。
『人々を助ける! みんなの憧れ! 希望! 誰も頼る者がいない子たち、困っている人、助けを必要とする人……みんなの笑顔を取りもどすのさ!』
まふるが、三人に真っ直ぐに手を差し伸べた。
『……なってみないかい?』
『なります!』
くれあが、間髪入れずに即答した。
『名探偵プリキュアに! 私、みんなを笑顔にします!』
『……私も……やってみたい』
るるかが、くれあの笑顔に引っ張られるように、小さく、だがしっかりと頷く。
『私も! お姉ちゃんがやるなら、私も絶対になる!』
こころも元気よく手を挙げる。
『アメージング! そうと決まれば……探偵テストの始まりだ!』
まふるが指を鳴らし、三人の少女の運命の扉が、音を立てて開いたのだった。
アニメ31話にて、るるかは名探偵に復帰。この小説のるるかは、どの方向に進んでもらいたい?(アンケートは取るけど、自分の文章力でアンケートの結果に結びつけれるかは自信がないので必ずしも、アンケート通りに出来るかは分かりませんが…)
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名探偵として復帰
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ファントム等の敵として行動
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一時的に復帰するが再び絶望し離反する。
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その他(意見、要望は感想等のコメントに)