月 日
記憶や記録を日記として残しておき、読み返して何があったか思い出しやすくなるように今日から日記を書くことにした。
私の名はジョン。
今よりも遥か古代である3000年前より、神が地上に与えた天の炎の恩恵を授かって、現在まで老いることなく生きている存在だ。
同じく天の炎の恩恵を授かったエピメテウスは同胞と言えるような存在であり、彼は神創武器であるエトンという剣を授かったが、私に授けられたのは鎚であった。
その鎚と天の炎で鉄を鍛え、武器と防具を拵えることも命じられた私は、数多の武器と防具を拵えて戦士達に渡していったが、私が用意したものにより助かった命もあったらしい。
天の炎と剣をエピメテウスに与えた神は、戦士として戦うことをエピメテウスに選ばせ、鎚を渡された私には戦士達を支えることを望んでいたのだろう。
しかし怪物を産む大穴から現れし3体の怪物には、エピメテウスの天の炎が通じず、敗走することになったエピメテウスと戦士達。
私が用意していた防具が無ければ戦士達は死んでいたかもしれないが、彼等は無事に生きて戻ってきてくれた。
仲間を失うことがなかったエピメテウスは、怪物に敗走したことを人々に責められたとしても、共に戦った戦士達に励まされて前を向き、戦いを続けていく。
怪物に敵わなくとも足止めして人々が逃げる時間を稼いだエピメテウスと戦士達に、感謝する人々が増えてきて、エピメテウスを愚者と罵る存在は、いつの間にか居なくなっていた。
人々の命を護り抜いたエピメテウスと戦士達を、助けられた人々は神炎の守護者達と呼んだ。
より多くの人々を助けたエピメテウスと戦士達は、紛れもなく英雄と呼ばれる存在であったのだろう。
エピメテウスと同じ天の炎の恩恵を授かっていようが、戦士として戦うことはなかった私は、英雄としては名を知られてはいないが、仰々しい肩書きは必要ない私は、ただのジョンで充分だ。
3000年の時を経て、より強く天の炎の恩恵を授かっていたエピメテウスと私以外には古代から生きている存在はおらず、今では天の炎が存在するオリンピアで、神託に従って天の炎を見守りながら、かつて共に戦った戦士達の墓守りをしているエピメテウスは、穏やかな余生を過ごしているようだ。
定期的に私もオリンピアに向かい、天の炎が穢れていれば神創鎚で炎を打ち直して穢れだけを吐き出させておくという作業を何度か行っているので、天の炎が穢れだけに染まることはない。
3000年も生きていると暇を持て余すこともあり、エピメテウスがオリンピアで隠居生活を始めてからは、鍛冶以外にも手を出してみた私は、今では研究者と言える存在となっていて、様々な研究を行っている。
現在行っている研究は、薬草などの品種改良であり、エルフの森に存在していた大聖樹から分かたれた苗木を育てている私は、大聖樹の枝に含まれた魔力や薬効成分を高める為の研究も進めていて、与える水や肥料により、大聖樹の魔力と薬効成分が多くなることも確認できていた。
いずれは不治の病の特効薬となりえるような薬が、この大聖樹の苗木から作れるようになるかもしれない。
今よりも更に薬効成分と、含む魔力を高めることができるように、大聖樹の苗木を育てながら、これからも研究を進めていくとしよう。
月 日
大聖樹の苗木を育てていく最中、うっかり研究中の薬液を苗木にかけてしまったが、それがいい影響を苗木に与えたようで、枝の一部の表皮を調べると含まれた魔力と薬効成分が格段に上昇しているのが確認できた。
苗木とは言っても巨大な大聖樹の苗木である為、現在は既に一般的な木の半分ほどの大きさに成長していて、これなら枝を1本落とした程度なら枯れたりはしない筈だと判断し、採取した枝を用いて不治の病の特効薬が作れるか試してみたが、実験は失敗。
これでは不治の病の症状を軽減できたとしても、完治までには至らない。
更に大聖樹の苗木の魔力と薬効成分を高めなければ、特効薬が完成することはなさそうだ。
研究中だった薬液の効果を更に高めて苗木に投与すれば、より魔力と薬効成分が高まる可能性は確かにあるだろう。
実験と苗木の育成は継続して行っておくが、不治の病の治療薬は早めに用意しておきたい。
長く生きたものとしての勘であるが、不治の病の特効薬が必要となりそうな誰かが居そうな気がするからだな。
月 日
数ヵ月ほどの時間を使用したが、ついに大聖樹の苗木から採取した枝を用いた不治の病の特効薬が完成。
まあ、完成したはいいが私はとても健康であるので、特に私が必要としていた訳ではないんだが、何となく薬が必要となりそうな誰かが居るのではないかと考えて完成を急いだ特効薬をどうするかと思いながら、こっそりと侵入した迷宮都市をさ迷い歩いていると、廃教会の近くで体調が悪そうな姉妹を発見することになった。
姉妹には薬剤などの研究者であることを明かして、軽く診察してみると、偶然出会った姉妹が不治の病であることが判明。
この出会いは運命なのかもしれないと思いながら、薬効成分と魔力が天元突破した大聖樹の苗木から採取した枝を用いて作成した特効薬を姉妹に飲んでもらい、不治の病を治療。
不治の病の特効薬で病が治療されて、身体が軽くなった様子を見せた姉妹が喜んでいたのは確かだ。
姉がアルフィア、妹がメーテリアという名前であった姉妹から名を聞かれた私は、ジョンという名だけを明かして立ち去っておいた。
無断で勝手に侵入した迷宮都市からも素早く立ち去っておき、拠点にしている場所に戻った私は、何となく必要となりそうだと勘で思って作成していた薬が役立って良かったと考えたが、勘というものは案外馬鹿にならないようだな。
ちなみに主人公はエピメテウスから大親友だと思われていたりします