月 日
神々が地上に降りてきてから神時代と呼ばれる時代が始まり、地上にて神はファミリアという集まりを作って、神の神血により恩恵を授かった眷族が生まれ、人々は英雄でなくとも怪物に抗う力を得た。
それは多くの人々にとって素晴らしいことであるのだろうな。
一握りの限られた英雄だけしか戦えなかった怪物と、神の恩恵で戦えるようになった人々は、誰かを助けることもできるようになった筈だ。
様々なファミリアが存在している迷宮都市オラリオと呼ばれる場所は、かつて怪物を産む大穴があった場所を塞ぐように作られた都市であり、今では英雄の都とも呼ばれていた。
そんなオラリオには神時代でも別格と呼ばれるファミリアが2つ存在しており、1つは神ゼウスのゼウス・ファミリア、そしてもう1つが女神ヘラのヘラ・ファミリアであるが、そのヘラ・ファミリアが私のことを探しているらしい。
どうやら以前私が治療したアルフィアとメーテリアの姉妹は、ヘラ・ファミリアの眷族であったようで、不治の病だった2人を治療した私に用があるそうだが、私の方はヘラ・ファミリアにも女神ヘラにも用はないので、特に会おうとは思っていないな。
ヘラ・ファミリアに私の治療が必要な存在が居れば、会いに行くかもしれないが、特にそういったことはなさそうではあるし、礼の言葉は既にアルフィアとメーテリアから貰っているので、私としてはそれだけで充分だ。
月 日
かつてエピメテウスが倒せなかった3体の怪物の内1体、今では陸の王者とも呼ばれている巨獣ベヒーモスは、猛毒を司る獣だ。
全てを蝕み、全てを溶かし、全てを殺す怪物の猛毒は土地すらも汚染していく為、生きる場所を奪われたものも少なくはなかった。
長くベヒーモスが留まっているデダインには黒の砂漠と呼ばれる砂漠が存在するが、その黒く染まった砂すらも、ベヒーモスの猛毒による影響であるのは間違いないだろう。
しかし長年ベヒーモスの毒に晒されてきた地には、猛毒に負けず、枯れることがない薬草もまた存在しているようだ。
毒に負けない大地の力とも言えるその薬草を使えば、ベヒーモスの猛毒にも効果がある解毒剤が作れるのではないかと考えた私は、薬草を採取する為にデダインに向かうことに決めた。
もしも解毒剤が作れたとするなら、ベヒーモスの毒に汚染された土壌の改善も行えるかもしれんな。
猛毒により枯れ果てた土地に再び緑を芽生えさせることができたのなら、オリンピアで墓守りをしているエピメテウスと、墓の下で眠る戦士達に良い報告ができそうだ。
月 日
毒を防げる特製の防護服を着用してから向かったデダインの地で無事に薬草を採集することに成功したが、確かにこの薬草には猛毒に負けず育つ程の強い生命力があり、ベヒーモスの猛毒への抵抗力というものも存在していた。
猛毒に汚染された土壌でも枯れることなく成長できるように独特の進化を遂げたデダインの薬草を使えば、確実にベヒーモスの毒に対する解毒剤は作れるが、より深く汚染されているものには、この薬草単体だけでは解毒の力が足りない。
幸いと言っていいのか、これまでの研究で薬草の薬効成分を高める方法は既に発見していたので、それを応用すればデダインの薬草の薬効も高めることは可能だ。
デダインの薬草と、私が調合した薬液を配合することで、薬効成分を格段に高めた解毒剤が作成可能となる筈だが、ベヒーモスの猛毒に効果がある解毒剤となったかを実際に使用して確かめるには、汚染された土地に向かう必要があるだろう。
なんとなくの勘ではあるが大量に必要になりそうな解毒剤を沢山用意しておき、汚染された土地に散布した解毒剤で土壌を改善できるか試し、実験の結果がどうなるか検証してみるのも悪くはない。
月 日
デダインにある黒の砂漠でベヒーモスと戦っている集団を発見し、ある程度は優勢に戦えていたので手助けする必要はないかと考えていたが、よりにもよってベヒーモスの毒肉を食べた大馬鹿野郎が居たので、ベヒーモスが討伐された瞬間に、その大馬鹿野郎に私が用意していた特製の解毒剤を強引に飲ませておいた。
私が強制的に経口摂取させた解毒剤の効果によって、ベヒーモスの毒肉の毒に蝕まれることもなかった大馬鹿野郎の身体は、毒で変色したりはしていなかったが、私が強力な解毒剤を持っていなければ確実に毒で身体が内側から腐蝕していた筈だ。
人に飲ませる為に作っていた解毒剤ではなかったが、人体に悪影響があるような薬にはしていなかったので、ベヒーモスの毒肉を食べるよりかは身体には悪くはないだろう。
とりあえずベヒーモスの毒肉などを食べるような大馬鹿野郎には、明らかな毒物を口には入れないようにと言っておき、ベヒーモスと戦っていた他の面々にも解毒剤を渡した私は、黒の砂漠以外のデダインの土地に解毒剤を散布する実験を行うことに決めて立ち去った。
最初に解毒剤を使ったのが人体になったのは予想外ではあったが、確かに沢山の解毒剤が必要になったので、私の勘は正しかったのかもしれない。
ちなみにベヒーモスと戦っていた集団にはアルフィアも含まれていたが、私は防護服を着用して頭部も隠していたので、遠目では私であると気付かなかったようだ。
主人公に大馬鹿野郎扱いされたザルドはジョッキ3杯ほどの解毒剤を一気飲みさせられたようです