転生したのに念能力が使えない男 作:ゴリラ廻戦
第一話 一次試験
第一話 一次試験
俺は転生者である。名前はゴリラ。違う間違えたガイ=アウスナーメだ。
身長180cm以上の高身長、艶のある癖のない黒髪、整った顔立ちのイケメン、なのに周囲からはよくゴリラと言われている。他人より少し()力持ちなだけで、霊長目ヒト科ゴリラ属学名ゴリラ・ゴリラ・ゴリラではない。
俺は正真正銘の人間だ。多分。
なぜ多分なのかって?それは生物が体から発している生命エネルギー、通称「オーラ」が俺には無いからだ。
この世界では、「オーラ」をコントロールして「念能力」という魔法のような力を習得することができる。さらに「四大行」「系統」「発」など説明すると長いのでしないが、ここまで聞いたらこの世界がなんなのか諸君は理解できたと思う。
「HUNTER×HUNTER」
この作品のファンが転生すれば、幼い頃から修行を始めて念能力で俺TUEEEするのだろう……
ちくしょう羨ましい!!!
俺だってコップを使って「系統」を知りたかったし、自分だけの強くて便利な「発」を作りたかった。しかし、俺には「オーラ」が全く無い。つまり――
HUNTER×HUNTERの世界に転生したくせに、念能力が使えない猿!!!
ということだ。悲しい。
――――――
「ステーキ定食」
「焼き方はどうしますか?」
「弱火でじっくり」
「承知しました。奥の部屋へご案内します」
やっとここまで来れた…!戸籍がないから、ドーレ港まで泳ぐことなった。しかも泳いでいる途中で、タコやらサメに襲われたり、嵐に巻き込まれたり本当に大変だったぜ。
奥の部屋に入り、エレベーターが下に着くのを待ちながらステーキ定食を食べる。うまい!肉のうまみが疲れた体に染み渡っていく… 。やっぱり肉は最高やな!
―チン
おっ、エレベーターが到着したようだ。ここから始まるのか物語が。ゴン、キルア、クラピカ、レオリオに会えると思うとオラわくわくすっぞ!
ドアが開くと、先に待機していた受験者達が俺を睨みつけてくる。なんだこの野郎。お前らには興味ねぇよ。主人公はどこ?どこなの?
「ハンター試験にご参加ありがとうございます。これがあなたの番号札です」
「どうも…」
豆だ。本当に豆みたいな顔なんだなビーンズ。しかも纏もしているし、念能力者だったのか。そりゃそうか。どんな能力だろう?やっぱり豆に関係するのか――
「あの、私の顔に何かついてますか?」
「なんでもない。失礼した」
やべっ、顔をガン見しすぎた。俺としたことが原作キャラに会って少し興奮してしまった。落ち着くんだ俺。……受験番号は401番ね。おけおけ。
転生して約20年経つが、俺のIQ53万の脳みそはしっかりと物語を覚えている。しかし、ここに俺がいるように他にも転生者がいるかもしれない。仮にいるとすれば十中八九、念能力者だろう。ちくしょう!俺は違うけどね!
というわけで周りにいる受験者達のオーラを観察する……うん?纏をしているやつがいるじゃないか。あいつは――
ヒソカじゃないか!うわ……ねっとりネバネバのオーラしてんなぁ……。甘ったるい匂いもするし。やばっ目合った!あぁこっちに来るよー!逃げたいけど背中を見せたら襲って来そう!誰か助けてくれぇ!!
「熱い視線をありがとう♣︎」
「……不快にさせていたら申し訳ない」
「大丈夫さ。もっと見てもいいんだよ?その代わりボクも見るね♦︎」
きっっしょ!!!ヒソカが俺を舐め回すように見てくるんだが!俺の体は視線に敏感だからやめてェ!
「ふふ。君も使えるんだね♠︎」
「なんのことだろうか?」
「とぼけても無駄だよ。だって君、オーラが体から出てないじゃないか。絶かオーラを隠す能力かな♣︎」
嫌味か貴様!!!どっちでもねぇよ。正解はオーラが無いだ!
「そんなことより君は……
とっっってもいい体してるねぇ♥」
「ひぇ……」
怖いよぉ。きもいよぉ。助けてよぉ。ヒソカが目が完全にキマってる。なんかよだれが口から溢れない!?
「お、落ち着い――」
「シャトーブリアン♥…サーロイン♥…リブロース♥…弱火じっくり♥…」
誰が高級部位のステーキだ!!?やべぇ喰われる……!まじでどうする?もうヤッちまうか。でもこんな所でやり合ったら原作が壊れるかも……!ヒソカのオーラと殺気が膨れ上がっていくよぉ〜!!!どうすればいいんだ……はっ!!
俺のIQ53万の脳内CPUが弾き出した答えは――
ぶん殴る ※この間0.01秒
「ふんっ!!!」
「!?♥」
――バキッ ドゴォン…!
ヒソカの顎に俺の右フックが炸裂し、その勢いで回転しながら壁に激突してそのまま気絶した。
ふぅ……流石はヒソカだな。本気じゃないとはいえ俺の攻撃に反応して顎にオーラを集めて防御したか。だけどあの様子じゃしばらくは起きられないな。あーよかった!これで安心して試験をうけることができる。
さてと変態肉食ピエロが沈んだところで、主人公達を探そうと周りに目を向けると……俺から何メートルも距離をとってドン引きしている受験者達の様子がそこにはあった。怯えと困惑した目だ。
え、え……。ちょっと待て俺なの!?やばかったのはヒソカだろ!そんな目で見てくるのはやめてくれ!
その受験者の中には、
あっ……。
――ジリリリリリリリリッ!!
主人公組の姿を確認して一瞬頭が真っ白になった時、試験会場にベルが鳴り響く。
「……受付時間は終了します。これから、ハンター試験を開始します」
終わった……。いや試験はこれから始まるけど。ゴンとレオリオとクラピカにドン引かれた…。第一印象が悪くなっちゃった……!プラン通りなら、一次試験で走っている最中に声をかけたり、へばっているレオリオのバッグを持って助けたりして仲良くなろうと思っていたのに……。何か挽回する方法を考えないと!
「――説明は以上です。それでは私の後について来てください」
うーん。うーん。と考えてたらサトツさんの説明を聞き逃したよ。まぁいいか、走るだけの試験だしイージーイージー。とりあえずゴン達には無理に話しかけないことにしよう。試験を進めていけば自然と関われる機会も増えていくだろうし、悪目立ちしないように大人しくしておこう。
――――――
地下通路を走り始めて数時間がたった。その間に何名か脱落していったが、足音の反響音を聞く限りまだまだ先は長いようだ。
あー長い。俺が本気で走れば数分で着くのに。でもサトツさんを追い抜いたら不合格になるかも知れないから大人しく走ろう。
そう考えながらも、念能力者がいないか観察を続ける。ヒソカ以外だと顔にいくつもの針を刺している男ギタラクル――イルミ――を確認できた。カタカタと頭が動いてうるさいし不気味。めちゃくちゃ目立ってるしそれでいいのか暗殺者。周りからも距離を取られてるじゃないか。それは俺もか。
ちなみにヒソカはいない。おそらくまだスタート地点で寝てる。
ぼーっとしながら走っていると、老け顔の青年――レオリオ――が隣を走っていた。呼吸は荒く、大量の汗が流れている。最初は俺から離れるように前を走っていたが、後ろまで来てしまったようだ。これは話しかけるチャンスだ。
「おーい。大丈夫か?」
「うお!?あ、あんたは、はっ、はっ、なん、だ!?」
俺が隣にいるのを気づいてなかったのか、かなりびっくりさせてしまった。
「かなりキツそうだな。水いるか?まだ開封していないやつだ」
「はっ、はっ、はっ、あや、しい、だろ!いら、ねぇ!」
「……ふむ」
レオリオの言う通り確かに怪しい。何も入れてないが、拒否されるならしょうがないな…。しゅんとなり水を懐に戻そうとしたら、つんつん髪の少年――ゴン――が話しかけてきた。
「おにーさん!それオレが味見してもいいかな?そしたらレオリオもきっと飲んでくれるよ」
「え?あ、あぁ……なぜ君が?」
「おにーさんがレオリオに断られた時、寂しそうな顔をしてたから…放って置けなかったんだ!」
ゴン…なんていい子なんだ。とても暖かくて眩しいオーラ…浄化されそう。
「うん!レオリオ、変な味はしなかったよ!せっかくおにーさんがくれたんだから、飲んでもいいんじゃない?」
「はっ、はっ、そうだな。……ぷはぁっ、ありがとな!にーちゃん!」
「――ガイと呼んでくれ。ハンター試験お互いに頑張ろう」
「うん!オレはゴン。よろしくね!」
「レオリオだ、よろしく」
そんなこんなでゴンやレオリオやクラピカと交流しつつ、数時間走りようやく登り階段に着いた。キルアは俺に近づいて来なかった……悲しい。
ここって地下100階だったはず。ここから地上まで階段はキツイよなぁ。俺は平気だけど……うん? 後方2キロ先から何かが猛スピードで迫ってくる。このオーラと匂いは……うっへぇヒソカじゃん。やだなぁ、報復とかされるのかな。でもこれで原作通りだからいいのか?
怖いからとりあえず気配を消して隠れるか。レオリオとクラピカに一言入れておこう。
「すまん。しばらく俺は隠れる。近くにはいるから心配しないでくれ」
「ぜーはー、ぜーはー、へ!?」
「どいうことだ?隠れるというのはなぜ?」
「ヒソカ…あの変態肉食ピエロがもう少しで追いついてくる。2人も気をつけろ。もしも、あいつに襲われたら大声で呼んでくれ。じゃ」
「消えた!?目の前にいたのに……」
「へぁ!?ぜーはー、ぜーはー。」
レオリオ大丈夫か?顔がやっべっぞ。警告を2人に残した後、気配を消して団子状態で密集している集団に紛れながら走る。そうしているうちにサトツさんの背後の先から光が見え始めた――出口だ。
ふぅ…やっと地上についた。体は疲れていないが数十時間も地下で汗臭い男たちと走るのは辛かった。臭いがえぐい。
おっと、出口のシャッターが閉まっていくー。ヒソカの気配はまだ階段にいる。間に合うのか間に合わないのかどっちなんだい!間に合――――う!ギリギリセーフ!
こいつ絶対に「
「ねぇ、そこの君。ボクさ一次試験が始まる前の記憶が無いんだけどなんでか知らない?♣︎」
「え?いやそれは……」
記憶が飛んでて森ィ!!!俺のこと覚えてないやんけラッキー。まぁ計算通りなんだけどね。俺も脳震盪で記憶を飛ばすの上手くなったもんだ。最初の頃は力加減が上手くできずに顎を砕いてたっけ。
ヒソカに俺のことを喋ろうとした人に、必死のジェスチャーでなんとか穏便に口止めをした。
――――――
「二次試験会場まで私について来て下さい」
というわけで、まだまだ終わらない一次試験。長くない?このヌメーレ湿原は人間を食べる危険な動植物がいるらしい。こわいね。最初からここを走らせればよくないか。周りから悲鳴と咀嚼音が聞こえてくるし、血の匂いがする。最悪だ。自分の体質が恨めしい。
と内心愚痴りながら深い霧の中を走り続けていると――
「ガーイ!!!助けてくれー!!!」
森から俺の名前を叫ぶ声が聞こえて来た。この声はレオリオだ。あの変態に襲われたのか、今助けに行くぞー!
近くの一番高い木に登り観察すると、約500メートル先にレオリオとクラピカとうんこ帽子がヒソカと対峙しているのが見えた。正直ヒソカと関わりたくないが、2人には助けに行くと約束したしな。でも姿は見せたくないからここから頑張るか。とりあえず殺気をぶつけてみる。
「!?誰だ♠︎」
おっ、意識が逸れたな。次は石を投げてみるか、ほいっ。
――ブォンッ!
投げた石は霧を裂きながら一直線にヒソカ飛んでいくが、それは避けられて足元に着弾。
「っ!? 逃げるぞレオリオ!」
「おう!!」
土煙が舞い上がったところで3人はばらばらの方向に逃げていく。いいじゃん。そのまま逃げちまえ。と言いたいところだがレオリオが戻って来てしまった。馬鹿野郎!ヤられるぞ!色んな意味で!
もう一発投げようと石を手に取った瞬間、変態の顔面に何かが当たった。釣竿のルアーだ。ゴンがヒソカの顔面にお見舞いしたのだ。
ナイスピッチー!ナイピー!ナイピー!よく隠れてたな。俺も探したけどわからなかった。流石は我らが主人公だ。
「仲間を助けに来たのかい?いい子だね〜〜♥。まだまだ君たちと遊びたいところだけど大人しくするよ。誰かがボクのことを監視しているみたいだし♦︎」
――合格♥いいハンターになりなよ♥
などと試験官でもないくせに上から目線の言葉を残し去っていく変態。よかったなレオリオ、ぶん殴られなくて。
もうこの一次試験は大丈夫だろう。俺もぼちぼちゴールを目指しますかね。
……別に姿を隠さなくてもよかったな。どうせイルミから俺のことを聞くだろうし。まぁいいか!
――――――
「へぇー。ドーレ港にクラーケンとメガロドンの死骸が漂流……。縄張り争いか大嵐の影響か……」
「やぁ、イルミ。何を見ているんだい?♣︎」
「ただの暇つぶしさ。というか結構早めに来たね、寄り道してもっと遅くなるかと思ったよ」
「くくく、忠告されたからね。ボクさ、一次試験前の記憶がないんだよね、誰がボクをヤッたのか聞いていいかい♦︎」
「えぇ、記憶飛んでたの?ガイだよ。ガイ=アウスナーメ401番の男だ。一撃で君を倒した時は驚いたよ」
「ガイ…ガイかぁ。ふふふ。いい名前だな〜〜。あぁ!あの殺気は本当に気持ちよかったぁ。心臓がキュッとする感覚ッ。あんなの初めてだよぉ。これが恋なのかな♥」
「うわぁ……ごめん、ちょっと離れてくれる?」
「ガイ、次はぜーったい忘れないからねぇ♥」
「聞いてないし…彼はお父さん達を撃退した化け物だから気をつけてねー。それじゃ」
「待っててねぇ♥」
「はっくしゅん!!!嫌な予感がする……」