果てしなく広がるハイパースペースの青白い光流が、ガントレット・スターファイターのコックピット窓の外で揺らめいている。
銀河の中心にして巨大都市惑星、コルサント。かつて膨大な歴史を重ねてきたその星を目指し、一隻の戦闘機が超光速航行を続けていた。
詩乃「正道、そろそろハイパースペースを離脱する時間よ」
コックピットの助手席から聞こえてきたのは、落ち着いた透明感のある声だった。
声をかけたのは詩乃。大人びた雰囲気を纏い、どこか涼しげな瞳で計器類を見つめている。彼女は正道の最愛のパートナーであり、いかなる戦場においても背中を預け合える唯一無二の存在だった。
正道「ああ、分かっているよ詩乃。機体のコンディションも問題ない。アステリオス側との同期も完璧だ」
正道は操縦桿に手を添えながら答えた。
彼らの背後には、時空の狭間に存在する拠点惑星アステリオスが控えている。さらには何物も寄せ付けない四次元収納空間、そして外部の実に60倍という圧倒的な速度で生産と技術解析を可能にする時間断層工廠(60倍)が存在していた。正道自身の肉体もまた、人間の身体能力限界強化という驚異的な特典によって、あらゆる動作において人間としての頂点に位置するスペックを誇っている。
詩乃(ヘカートⅡの調整もバッチリね。この世界でのテスト運用が楽しみだわ)
詩乃は膝の上に置かれた大型の長距離火器にそっと触れた。
愛銃、対物ライフルヘカートⅡ。
拠点惑星アステリオスにある時間断層工廠(60倍)において極限までメンテナンスされ、更なる精密加工と調整が施されたその漆黒の銃身は、圧倒的な存在感を放っている。
詩乃「ヘカートⅡの調整も完璧。この世界での稼働テストも兼ねているけれど、工廠で調整されたパーツの精度は本当に素晴らしいわ。狂いが一切ない」
正道「それは良かった。詩乃の射撃技術と組み合わせれば、どんな距離からでもターゲットを射抜けるな」
正道が微笑むと、詩乃も少しだけ口元を緩めた。
詩乃「当然でしょう。あなたの背中は私が守るって決めているんだから。……それで、今回の目的地と仕事について、もう一度おさらいしておきましょうか」
詩乃の言葉を受け、正道はサブパネルのコンソールに視線の向きを変えた。画面には銀河系全域の星図と共に、目的地である都市惑星コルサントの立体ホログラムが青く浮かび上がっている。
正道「今回の目的はコルサントに位置するジェダイ・テンプルだ。あらかじめ受諾してある依頼内容の最終確認と、今後の協議のために赴くことになっている」
詩乃「ジェダイ・テンプル……。フォースを操る修道士たちの総本山ね。彼らが提示してきた依頼の条件、事前の情報通りなら少し複雑になりそうだけれど」
正道「だからこそ直接顔を突き合わせて確認する必要がある。通信だけじゃ見えてこない腹の探り合いもあるからな。俺たちの立ち位置と、拠点惑星アステリオス側の利害を損なわない形で進めたい」
詩乃「そうね。交渉が難航したとしても、私たちが引き下がる必要はないわ。必要な物資は全て四次元収納空間に収まっているし、いざとなればいつでもクロスゲートを使って拠点惑星アステリオスへ退避できるんだから」
正道(詩乃が隣にいてくれるだけで、これほど心強いことはないな)
正道は胸の中で深く頷いた。
神様の手違いという不運から始まった新たな生ではあったが、人間の身体能力限界強化を得た今の正道にとって、あらゆる身体的恐怖や迷いは皆無に等しい。さらに時空の狭間に存在する拠点惑星アステリオスは、自分たちだけの絶対的な領域だ。外部の60倍の速度で時間を回せる時間断層工廠(60倍)を駆動させれば、兵器や機備の補給、開発は瞬く間に完了する。何より、四次元収納空間の存在によって膨大な資材や装備を何処へでもノーリスクで持ち運ぶことが可能だった。
詩乃はヘカートⅡのボルトハンドルを滑らかに引き、機関部の動作を五感で確かめる。金属同士が擦れ合う微かな質感が、彼女の指先を通じて確かな精度を伝えていた。
詩乃「このヘカートⅡも、元の仕様からさらに工廠の手で光学兵器用ハイブリッド機構やベスカー鋼由来の強化バレルへと組み替えられているわ。実弾だけでなく高出力ブラスター弾の撃ち分けも完璧。実戦で使うのが楽しみな反面、無駄なドンパチにならなければいいけれど」
正道「まあ、相手はあのジェダイ評議会だ。銀河の平和と秩序を掲げる組織だし、こちらから不必要な挑発をしない限りは理性的……だと信じたいところだがな」
詩乃「ふふ、あまり期待しすぎない方が良さそうね。歴史ある組織ほど、形式や体裁、独自のプライドに縛られやすいものだから」
詩乃は愛銃を愛おしそうに撫でながら、毅然とした口調で言った。
二人の間には、長年の冒険と生活によって培われた絶対的な信頼が漂っている。正道の圧倒的な身体能力と決定力、詩乃の超精密な遠距離支援、そして時間断層工廠(60倍)をはじめとする無尽蔵のバックアップ。二人が揃っている限り、銀河のどのような場所であっても恐れるものは存在しなかった。
二人が話している間にも、ガントレット・スターファイターの航法コンピューターが刻一刻と離脱ポイントへのアプローチをカウントダウンしていく。
正道「準備はいいか? いよいよコルサントのメイン宙域に入る」
詩乃「ええ、いつでも大丈夫よ。ヘカートⅡのセーフティも解除確認完了。周囲の警戒監視も始めるわ」
やがて、コックピット内にハイパースペース離脱の警告音が甲高く鳴り響く。
正道「離脱するぞ、詩乃」
詩乃「了解」
正道が速度制御レバーを力強く手前に引くと、窓の外の光流が瞬時に収束し、無数の星々が散らばる通常の宇宙空間へと景色が切り替わった。
そして二人の目の前に現れたのは、星の表面全体が途切れることのない多層都市構造によって覆われた、壮大な巨大惑星コルサントの姿であった。
詩乃「これがコルサント……。惑星まるごと一つが都市になっているなんて、いつ見ても凄まじい光景ね」
詩乃が窓の外を見つめ、感嘆の息を漏らす。雲の切れ目から覗くその地表は、幾重にも重なる巨大建造物と光の網の目によって埋め尽くされていた。
正道「ああ。都市の層は何千階にも重なっている。上層の眩い光と、下層の暗がり。光と影が極端に交錯する場所だ。だからこそ、交渉の場でも一筋縄ではいかない連中が渦巻いている」
正道は操縦盤の通信インターフェースを操作し、コルサント中央航空管制局の周波数へと接続した。暗号化されたデータコードを送信し、入出港の承認プロセスを開始する。
正道『こちらガントレット・スターファイター。指定のアクセスコードを送信する。ジェダイ・テンプル付近の指定着陸ハンガーへの進入許可を要請する』
スピーカーからノイズと共に、機械的な、だが厳格な管制官の声が返ってきた。
管制官『アクセスコードを確認しました。ガントレット機、進入を許可します。指定高度を維持し、第4ビクターレーンを通過してテンプル専用ハンガーへ着陸してください。指定コースからの逸脱は防衛システムの作動対象となります』
正道『了解した。第4ビクターレーン経由でテンプルハンガーへ向かう』
管制からの返信を受け取り、正道はガントレット・スターファイターの両翼の可変機構を安定飛行モードへと移行させ、機体を傾けながらコルサントの巨大な大気圏へと滑り込ませた。
摩擦熱の光がコックピットのキャノピーを赤く彩り、それを抜けると目の前には地表を覆いつくす高層ビル群の超巨層空間が広がった。
何千もの空中ハイウェイが複雑に交差し、膨大な数のエアスピードやエアカーの群れが規則正しくラインをなして行き交っている。その整然とした交通流の空域を抜け、ガントレット・スターファイターは緩やかに高度を下げていく。
詩乃「想像以上の交通量ね。でも、正道の操縦なら安心して乗っていられるわ」
正道「人間の身体能力限界強化のおかげで、機体の挙動や空間の把握能力が段違いだからな。コンマ数秒の予測も手足の感覚と同じように処理できる」
正道は余裕を見せつつ、正確無比な操作でガントレット・スターファイターを巨大な建築群の間へと滑り込ませていく。
やがて、幾重にも重なる都市の尖塔たちを背景に、極めて巨大で荘厳な建築物が姿を現した。四本の角塔と中央の巨大なメインタワーを擁するその建造物こそが、銀河の歴史そのものでもあるジェダイ・テンプルである。
正道「見えてきたな。あれがジェダイ・テンプルだ」
詩乃「荘厳な建物ね……。けれど、どこか異質な重苦しさも感じるわ。フォースを尊ぶ者たちの聖地だからかしら」
正道「彼らの伝統と規律の象徴だからな。だが俺たちはジェダイの教義に従うために来たわけじゃない。あくまでビジネスと依頼の確認だ」
正道は巧みな操縦で機体を誘導し、テンプルの敷地内に設けられた広大なハンガープラットフォームへと静かに着陸させた。
着陸脚が接地し、重厚な金属音が響く。反動推進エンジンの残響が徐々に収まっていき、機体は完全な静止状態に入った。
正道「着いたな。それじゃ、行こうか」
正道がシートベルトを外し立ち上がると、詩乃もまたヘカートⅡをしっかりと手に保持して立ち上がった。大型の長距離対物ライフルでありながら、工廠での軽量化カスタムと詩乃自身の鍛錬によって、彼女はそれを何気ない動作で軽々と扱っている。
詩乃「ええ。依頼の確認を済ませて、私たちの足がかりを確実にしましょう」
正道(どんな依頼であれ、俺たちのペースを崩さずに進めるとしよう。四次元収納空間もアステリオスの工廠も、すべて万全の状態だ)
ガントレット・スターファイターのリアハッチが圧力を逃がすプシューという音と共に滑らかに開かれ、コルサントの上層特有の乾燥した風が船内へと吹き込んでくる。
正道と詩乃の二人は並んでステップを降り、コルサントの地、そしてジェダイ・テンプルの厳かな空気の中へと足を踏み出した。
広大なハンガーの床面は磨き上げられ、周囲には巡回するアストロメク・ドロイドや、数名のテンプル・ガードたちの姿が見える。
二人の視線の先には、高くそびえ立つテンプルの巨柱が連なる柱廊と、そこからこちらへ向かって静かに歩み寄ってくる茶色のローブを羽織った人影が見えていた。銀河の中心で展開される新たな物語と交渉に向け、正道と詩乃は揺るぎない足取りで静かに歩みを進めた。
詩乃「さて、どんな出迎えをしてくれるのかしらね」
正道「歓迎されているといいが、まあ、こちらにはどんな事態にも対応できる準備がある」
背中にヘカートⅡを背負う詩乃と、極限の身体能力を秘めた正道。二人の存在感は、歴史あるジェダイ・テンプルの静寂の中においても異彩を放っていた。二人は顔を見合わせ、軽く微笑みを交わすと、目前の巨大な大理石の階段を上り始めた。
彼らの足音がテンプルの静謐な空間に響き渡り、銀河の命運を左右するかもしれない密談の火蓋が、いま静かに切られようとしていた。
朝田詩乃マンダロリアン装備
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朝田詩乃マンダロリアン装備ヘルメット装着
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