再異世界転生~今度は謎幼女キャラで現代ファンタジー~ 作:昔邪道今王道展開好き
「——して、私達『適合者』は戦えない人々、補助して頂ける方々の期待に必ずや応え、力を磨き智を蓄え、一匹でも多くの……。」
暗がりの中ライトアップで照らされる少女が1人。
両手にしっかりと握られた台本を読み上げ、それがマイクで拾われドーム全体に行き届く。
彼女は誰が考えたのか、思っても居ないであろうことを数分間喋り続けていた。
長い茶髪に険しい瞳、これが入学時成績優秀者から更に選ばれたエリートのトップ……で名前何だっけ。
確か最初に何か名乗っていただろうが、忘れた。
こっちは暗闇の中ライトアップされた偉いさんや施設長の演説を聞かされて、辟易としているのにまさか新入生まで、それをやらされるなんて思っていなかった。
例え俺が彼女の立場だったらお断りしていただろう。
パチパチと拍手が聞こえて、壇上の少女は光から消え自分の席へと去っていった。
「ありがとうございました。以上で第六セバー入学式を終了いたします、新入生は職員の指示に従って掲載されているクラス表を確認後、各自クラスへ向かってください。」
アナウンスをしているのもどうやらセバーの先輩にあたる人だろう。
入学式で繰り返し不可思議に思えたのは、どうも大々的にこの施設は学校であると繰り返し強調している事だ。
学び舎だの、校舎、だの先生方だのと、俺が思っていた民間軍事会社の幼年訓練所みたいな感覚とはだいぶ違う。
あの浅葉が言っていた「学園ライフ」って言うのも、皮肉でも何でもなかったかもしれない。
新入生たちは各々無駄口をたたきながら先生に連れられ、ドーム前の広間に案内されている。
「あっ、呼ばれてるよ。」
「はいよ~」
隣の席だった女の子に急かされ、列に加わりクラス表を見に行く。
ボードの前では生徒たちがやいのやいのと自分のクラス割り当てを見て、喜び悲しんでいた。
1年目だってのにクラスの割り当てで悲しいとかあるのか?
「喜びの個所なんてあるの?わかんないな~」
「ええっあなた知らずに試験通っちゃったの⁉相当ピュアね~」
当然だが見も知らない女子に独り言を拾われてしまう。
「と言うと?クラスで何か違うの?」
「本当に知らないんだ!あのね、試験の優秀さでクラスが決まるから、学園生活が階級社会になってるみたい。ああっと、私もはやく自分のクラスさがさなきゃ!」
ふんふんと聞いていたら、勝手に話を切り上げて人の波をかき分けて前に言ってしまった。
そう言えば自分もクラスを確認しなければならない。
一度割られた人の波が閉じぬ間に縫う様にして表の前まで行く。
……5組ねぇ。
6クラス制だから後ろから数えた方が速い。
普通な結果の戦闘ランク、あの浅葉の言い分は俺の戦闘は悪くない評価だった。
だとすれば大きく足を引っ張ったのは能力ランクの方だ。
ランクEXというのは腫物みたいなものだっただろうか。
ドームから抜けて本校舎へと入り、階段を上って該当する教室まで急ぐ。
(見たところ、多くの人が自前の武器を持っていない様だな。なんか俺オモチャを持った幼女みたいで恥ずかしいぞ。)
(拙は見られて恥ずかしい刀をしておりません!もっと見せびらかして下さい!)
すれ違う人や、追い越し追い越される人に奇異の眼で見られるのはもう何度目だろうか。
結局白衣連中にもアカツキは取り上げられなかったし、ミホにも咎められなかったから自前の武器を持つ事は可笑しなことでは無い筈なんだが。
クラスの開けっ放しの扉をくぐり指定された番号の席に着く。
アカツキを無理やり机の鞄かけに立てかける様にして置いた。
するとすぐにざわめきが始まる。
「なんであんな小さな子が……。」
「掲示板で話題になってたよ、ウワサの。」
「飛び級ちゃんじゃん。」
「『適合者』になったからって、ちょっとかわいそうだよね。」
「飛び級だから優秀かもってみんな言ってたけど、結局5組とか単に『適合者』だっただけって事じゃん。」
……異様な雰囲気だ。
何故俺の事を知っている?
何処に目が合ってどこに耳があった?
それに掲示板で話題になって勝手に前評判が作られて、勝手に失望されたのではたまったものではない。
だからと言って何か出来る訳でも無く、素知らぬ顔で黙っていたら隣の席に座っていた野郎が話しかけて来た。
「なあお前随分注目されてるっぽいけど、その刀のせいか?」
随分ととぼけた話の始め方だったが渡りに船だ。
この居ずらい空間の中、話の分かりそうな奴と適当に過ごしておけばそのうち先生が来てくれるだろう。
「わかんない、おれの相棒。」
「相棒ったって……愛刀ってヤツ?それにしても、自前の武器をつかう奴って初めて目にしたぜ。」
「じゃあお前どうやって戦うの?」
「そりゃ武器は支給されるモンだと思ってたけど……
「ん、よろしく。おれ、黒羽トキ。」
そんな適当な話をしている間にもひそひそ話は止まない。
「なんだよアイツ、ロリコンか?」
「ミーハーなだけなんじゃね。」
「おれ、だってさ笑える。」
「俺っ子なんているんだぁ。」
ひそひそ話っていうのは、聞かれたくない相手の事をウワサする為に声を落とすのであって、こう全部聞こえるのは相当なめられているのか、バカなのかどっちかだ。
だが、ここで俺がグワッと怒り出してしまっては不思議系美幼女にはなれない。
憤りを押し殺していると、リュウジがワザとらしいため息を出した。
「かわいそうだなお前さんも、年少の身で仮にも年上の俺等が寄って集って囃し立てる環境に来ちまったんだ、同情するぜ。」
「うん。同情募集~カネくれ~。」
そう適当に返すとリュウジの顔もこわばる。
「お、お前も随分図太い奴なんだな。は、ははっ気に入ったぜ……。」
「おうおう!お前等全員行儀よく着席しろォ~私語禁止ぃ~」
開けっ放しの扉を閉めて壇上に立つのは見知った大人だった。
「え~1年5組の担当をする事になった浅葉だ。分からない事があれば聞くように、そこそこ答えるから。」
前にあった人物と同一な筈だが随分とやる気がない。
研究職がメインで、生徒を導く事に微塵も興味が無いと見える。
「先生~」
「おぅ、どうした~ええっと、誰だっけ?」
「下の名前何ですか?」
「お前らに教えてやる下の名前はありません!そういうのはもっとオトナになってから~」
どこからどう見てもふざけた回答に、クラス中が「なんなんだコイツ」みたいな目をする中、マイペースに話を進める浅葉。
「それでは軽く全員自己紹介してもらおうか、ほら左端から奥へ……。」
一度立って軽く挨拶してなにか喋って座る。
そんな事が繰り返され、すぐに俺の番は回って来た。
「名前、黒羽トキ。よろしく。」
とだけ言って着席する。
周りはざわめくがコレは計算の内。
不思議系幼女は自己紹介で名前だけちょこっと言うってのがセオリーだ。
「おらおら、年少に向かってヤジ飛ばすんじゃねぇよ。見ての通り黒羽クンは飛び級の12歳だ、マジメな話可愛がってやらねえとお前等メンツ立たねえぞ。」
ぶっきら棒に浅葉が言うと、ざわめきはさらに上がる。
「12歳⁉すごっ!」
「じゃあホントは小学生なのか!」
「飛び級幼女とか現実にいるのか!」
何か一人やべー奴いなかったか?
「あー静まれ静まれぇ!かわいがれって珍獣扱いしろって意味じゃねえぞオイ!ほら順番まわせ。」
一応、先生として壇上に上がった彼の言を無視する者はそう多くなく、すぐに騒ぎは静まり挨拶めぐりが再開される。
隣のリュウジってやつも淡々と挨拶を終えていて、何かしらのトラブルが起こることが無かった。
「さて、じゃあ重要なセバー専用端末の簡単な解説といこうか。お前たちは専門職になる訳だからして、後々嫌というほど端末については熟知してもらう事になるが、だからと言って全く使えませんじゃ授業にも戦闘訓練にもダンジョン攻略にも行けないからな。」
浅葉はポケットからスマホめいたものを取り出して掲げてみせた。
そして、教卓をタップすると今まで巨大黒板だと認識していたモノが光を帯び、モニターとして端末の説明を映し出す。
「お前たちに既に支給されているソレはスマホに近いが、セバーの活動に専門的なOSとアプリケーションのみを搭載し、衝撃に強く耐水性も高い。そして何と言っても魔素の測定や探知、改良も可能……つまりは外見はスマホだが中身は全然違う。このデバイスを今我々はPDAと呼んでいる。」
PDAと言えば昔の携帯型情報端末全体を指す言葉だったような気がするが……。
(トキ殿、拙とんでもなく眠たくなってきたでござる。御用の時は刀身を鞘から抜いてくださいな!)
(えっちょっと……!)
(では失敬!——。)
コイツは……。
インテリジェンスウェポンは皆性格が違うが、これではイレイザーの方が歩調が合っていたな。
「良いか、操作はスマホと一緒。まずはスキルアプリケーションを開いて、午後の戦闘オリエンテーションに使うスキルの習得とその方法を学ぶぞ。」
座学かぁ。
寝てしまおうにも端末の操作ぐらいは覚えなくちゃ。
浅葉のいう通り戦闘に支障が出る様では、俺の本意でない。
……この世界を救う事が、俺への褒美、か。
今の状況、黒羽トキとして精一杯生きるだけで満足せず、この世界を救わなければランヴェルとしてラドタルク世界を救った褒美さえ手に入れる事は出来ないって事だよな。
じゃあ、ここが折り返し地点だ。
意気込みよろしく、午前のオリエンテーションを終え昼休みへ突入した。
早速急いで学食に行くが込み合っていてまるで座れる気がしない。
それにアカツキを担いで学食で食べるのも気が引けるし、売店で適当にパンを買って、校舎の屋上へ行こう。
「おお、風がここちいいな……屋上で昼飯ってのも憧れだったな。」
(ううん、おや、屋上にやって来たのでござるか)
「今頃起きたのか、とっくに昼だぞ。」
アニメやマンガであこがれていた、屋上での昼食。
地べたに座って、階段室の壁を背もたれにメロンパンを食べる。
(拙の事は良いから、昼飯時というのであれば友人を作るチャンスでござろう。)
アカツキの提言は理解できる。
これは親身になって俺にこの世界で友ができるかどうかの心配をしてくれているのではない、とハッキリわかる。
——警告だ。
1人よりも2人、それよりも3人。
戦いが個で決まる事もあれば、数で決まる事もある。
世界の状況や攻略すべきダンジョンの状況も分からない中、自分一人でなんとかなると思うのは慢心だという警告だ。
「俺がラドタルクの勇者だった頃も、必要な時に仲間ができていた。それは運命ってヤツだと思うんだ、だからそれに従う。」
(運命が死ねというのであればあなたは死ぬのですか。)
「ふ、余裕ってヤツは悪しき事ばかりでないって事さ。そこら辺イレイザーやベルナールの方が良く分かっていた。」
(こういう時に別の剣を引き合いに出すのは卑怯にござる。ただ、トキ殿が言う通り、彼等ならそう言うでしょうね。)
風が思いきりびゅうと吹き荒れ、パンを包んでいたビニールをふわふわと宙へと浮かせる。
素早く立ち上がってそれを取ろうとしたら、先に取られていた。
俺に影を差すその男は、俺の何倍も図体がでかくまるで巨人だ。
「ないすきゃっち」
「お前……たしか、トキとか言ったチビか。」
隣の席の粗野なダンディ男と屋上で運命の再会⁉
ビニール袋取った彼は、ソレをぐしゃぐしゃに丸めて自分のポケットへしまった。
「居るのはお前だけか、誰かと話してなかったか?」
彼はきょろきょろと目を見まわしていたが、俺の会話相手が見つからないみたいだった。
「きになる?おれ、アカツキと話してた。」
(今日会ったばかりの御仁に拙の存在を明かすのですか⁉)
(信じると思うか?それにな、彼にお前は奪えないさ。)
「ふーん、俺の妹もよくぬいぐるみと話してたわ。」
リラックスした表情で、ナチュラルに俺の隣に座ってくる。
彼もパン持参で、どうやら目的は同じみたいだ。
「で、男の俺にはよくわからんが、どんな話をするんだ。」
フリーズ。
……いや、俺も分からない。
ぬいぐるみに喋りかける幼女の思考が俺にはトレースできない!
緊急事態発生!至急応援を求む!
(何やらお困りで?)
(うーんと、人形とままごとをする童は人形に何を話すのか——だ!答えを教えてくれアカツキ!)
(いきなりでござる……体調とか、風の匂いとか、空の模様とかを一緒に楽しむ、という風景が一般的と思われます。)
(答えになってねーじゃんよ!——いや、こうか!)
「おれは心地良い風だけど、お前はどう思うかって。気温とか湿度とか、アカツキは刀だから。」
「ほぉ、気ィ使ってんのか。偉いな、俺は自分専用の得物が貰えてもキチンと手入れできるか、正直微妙だぜ。」
へらへら笑いながらサンドイッチを頬張る彼。
——思いやりを感じた。
人の情、仲間や友情に必要なもの。
俺への関心が集まるクラスで、陰口を諌める様にワザと大声で同情しその体制への不満を露わにしてくれた彼。
初めての顔合わせでこれ程俺を想ってくれているのは、何か理由があると言っている様なもので、彼の口から出た妹の存在がもう答えの様なものなのだが。
「アカツキはいい子。」
(スマンが少し我慢してくれ。)
(意図がつかめませぬが委細承知。)
俺は立てかけてあるアカツキを手繰り寄せ鯉口を切り、そのまま刀の腹を幾分か露出させそれを撫でた。
一度、二度。
出来るだけ愛おしそうに、まるで子をあやすが如く。
「お、おい!よせ!」
「うわ、おおきいこえ。どしたの?」
「バカなことするんじゃねえ、真剣なんだろ⁉」
突然怒鳴った彼は俺の手から強制的にアカツキを取り上げた。
「刃がささってズバッと入ったらどうする⁉もっと気ィつけろ!」
それを以前披露した様に、魔素を操ってアカツキを独りでに俺の手に戻す。
「なっ、何を⁉」
「アカツキのことはおれが一番知ってる。手を切るようなことはしない。」
「だとしてもだ!あんなマネはするな、俺が参っちまいそうだぜ!」
彼が頭をかかえると同時に予鈴が鳴った。
「チッ……ヤキが回ったぜ、トキさんよあんまし真剣の刃を出すんじゃねぇぞアブナイから。」
「?うん。」
わからなそうな顔を演技しながら首を縦に振る。
「じゃあさっさと戻るぞ。」
すると、彼はさっさと階段室に入って行ってしまった。
(なんか腹の部分を手でなぞられるなんて新鮮でござったな。)
(油でもついてたら自己回復しておいてくれ、さっきまでメロンパン食ってた手だったから。)
(刀にも思いやりを持つべきにござるよ。)
インテリジェンスウェポンの声は情報のみで受け取るものだから、彼女がどんな感じでその言葉を吐いているのか正確な所は分からないが、多少の軽蔑を感じた。
だが演技をしたかいがあった。
大抵の場合あのシチュエーションは見て見ぬふりをする事が多いだろうが、彼は違うのだ。
彼は言い方が粗野だが、俺へ親身にならざるを得ない人間だという事がよく分かる。
さて、昼飯の後は眠くならない様に戦闘訓練のオリエンテーションだったか。
ラノベだとここでひと悶着起こるんだが……そうなったらその時に考えよう!