再異世界転生~今度は謎幼女キャラで現代ファンタジー~ 作:昔邪道今王道展開好き
「さて、戦闘訓練の前に自分の魔力情報をPDAに認識させる必要がある。魔術アプリケーションにより、己の魔力を測定後『最適化』させることで、自分のシールドを発生させる事が出来、さらに身体能力向上をパッシブで行うことができるのだ。」
この施設にはいくつかのドームがあり、それらは全て屋内で戦闘が出来る様頑丈にできている。
その中で、妙な装置を前に浅葉が説明を繰り広げていた。
「で、お前さんたちの前にある機械は魔力測定兼レベル測定機だ。レベルっていうのはお前さんたちの身体能力と魔力を総合し、ダンジョン攻略または魔獣討伐にたいしてどのぐらい戦力になるかという指標になる。」
列をなした俺達生徒の中の1人が声を上げる。
「ですが先生、魔力測定は入学時に行いましたよね、それでクラス分けがされているんですから。」
「アレはあくまで《適合者》としてダンジョン攻略に参加できるかどうかだけ判別して、ついで簡素に魔力量を判別したに過ぎない。今回はお前さんたちの『最適化』の為にも詳しく行うって訳だ。」
それにしては俺は随分厳格に検査されたんだけどな。
何日間も研究施設に監禁されて、能力ランクも告げられた。
やっぱり俺だけはダンジョン内で発見された謎人物ということもあって、特別に最初から全て判定が下っていたのかもしれない。
「それじゃあ一人ずつ測定器のまるいデバイスを握り測定、測定後はPDAが自動更新されるから各自『最適化』を行う様に。また時間がかかるから、スキル登録を再確認しておく事だ。『最適化』によって使用可能スキルに変化があるかもしれん、ホラ恥ずかしがってないで早く来い!」
そこから一人ずつ測定が始まる。
四角い大きな機械に繋がれた台座の上に球体の水晶めいた物があり、手をかざすとその水晶が輝きを見せる。
どうやらパターンがあるらしく、緑に光ったり、青く光ったりしていた。
「中村枝莉、能力ランクC……行って良し、次!……保泉夕莉、能力ランクD……次だ列で並べ!」
水晶玉を握ると数秒で色の付いた光が発光され、またその数秒後に測定が終わる。
浅葉から能力ランクを告げられ、そのころには各々のPDAにデータが反映されているという流れだ。
水晶に現れる色が緑か青かでギャラリーが一喜一憂している。
「なぁなぁ、色の違いがそんなにおもしろいのかぁ?」
「あ、飛び級ちゃん。そりゃそうさ、青ならC、緑ならD、万一白だったりしたらEだな。オリエンテーションの測定で、クラスを落とされるなんて事は無いと思うけど。」
「説明も無いのに良く知ってるね。」
「常識だよ、世に出てる対魔獣師も言ってたしネットにも情報が流れてる。」
前にも掲示板でどうのこうのという話を聞いた気がするな。
もっと現代チックな世界で対魔獣とか魔法に関係するグループは情報を隠匿するものだと勝手に思っていたが、内部情報まである程度オープンなのだろうか。
(国家直属の教育機関扱いにござるから、ある程度身の潔白を世間に表明しておく必要があるってこと?)
腰に差していたアカツキが意外な食いつきを見せる。
(いろいろ忙しくてこの世界の社会常識を調べられていないからその辺は分からないな。)
(ラドタルクの冒険者ギルドでも測定器があったでござる。やはり何かしらの縁を感じざるをえませぬなぁ。)
「なんだかみんなおとなしくなってきたね。」
「最初は珍しいけどもうクラス分けされてるし、皆どうせDかCなんだからさ。」
適当に話しかけた男子生徒もつまんなそうな表情を浮かべ、測定に赴いた。
「よし、次で最後、黒羽お前だ。お前は……まあいいやどうせまたエラーだろうし。」
「あい。」
促されるがまま測定器の水晶玉を握り、近くにあるモニタに指示が出た後に魔力を込める。
示される色は……。
「あ、赤だッ!」
「すげぇ、何でこんな奴がこの組にいるんだよ!」
「こりゃAランクか、うん?」
ギャラリーが大盛り上がりしていると、変化が訪れる。
真っ赤に発光していた水晶玉が真っ青になり、オレンジ色に光り、はたまた緑色にとでたらめに色を次々と発光させた。
「なんだありゃ」
「バグって……んのか」
目に見えておかしな挙動をする水晶玉、機械に設置されている入力デバイスであくせく手を動かす浅葉も相まって、俺が機械をバグらせたように捉えられてしまった。
まあ、最初の測定で判別不可なんていわれていたから、こんな結果は想定の範囲内だ。
それに、ラノベ主人公はこういう測定イベントで機械を壊してしまうのがセオリーだし。
「おー黒羽、想定通りだ能力ランクEX。」
浅葉の宣告は前通りだったが、それで湧くのはギャラリーだ。
「ランクEXなんて聞いた事ねぇぞ!」
「ソレってどんな判定なの?」
「いや……聞いた事ねぇけどすげえに決まってる!」
「なんで5組なんだ?」
口々に好きかって言うギャラリーを諌めた後、彼は測定器を幾ばくか操作していた。
他の人間には無かった間が空いて、俺のPDAに受信通知が届く。
「数値も表示もバグリ散らかしていて意味がわからん……ったく、使えるかどうか分からんがとりあえずデータを送った。各種アプリケーションを確認しておけよ、お前は特異なんだから。」
「あい。」
測定から戻った俺は海割り伝説の様に通ろうとするだけで人が勝手に避けていく。
しょうがないので人混みの一番後ろに陣取った。
これじゃ前が見えないが、まあ見たくなったら勝手に動けばいい。
不思議系のいい所は変な行動をしても大丈夫な所にある!
「よし、それでは戦闘訓練のオリエンテーションを始める。まずは各自で二人一組を作れ!」
ゲッ……。
嫌な思いでしかない二人一組の行事。
結局俺と組んでくれそうな奴も他の奴にとられて、先生と組まされて微妙に恥ずかしい思いをするっていうイベントだ。
ええっと、俺と組んでくれそうなヤツは……。
さっき機会をバグらせた張本人かつ、見た目は小学生女子という奇天烈さもあり誰もが顔を背ける。
「よォ、丁度俺もあぶれてたんだ組もうぜトキ。」
「おお、ありがたい。」
リュウジ!
こいつは僥倖、アカツキに言われなくてもこの流れで行けば彼を友人一号にする事が出来そうだ。
二人一組が出来上がっていく中で、浅葉とは別の大人たちがガラガラと大型のケースを運んでくる。
中身がかなり重いのか力を込めて押しながら移動させており、下についているローラーも今すぐにつぶれてしまいそうだ。
「なんだありゃ。」
「読めるぜ、戦闘訓練だってんならあの中に入ってんのは得物だろうよ。」
リュウジが手をすり合わせて待ってましたとばかり指を鳴らす。
すると彼の考えていた通り、大型のケースが変形していき中にはいくつもの形状が違う武器が並んでいた。
中に入っている武器はどれも近接戦闘用のもので、剣や斧、槍、ナイフ、サーベルなど様々だったが遠距離武器が見当たらない。
「あり、弓とか銃とかないの?」
「魔獣に飛び道具は不利だって話だぜ、詳しくは知らねえけど。」
いや、それは初耳だ。
俺がこの世界に転生して最初に戦った魔獣『ヴァルツァー』は飛行モンスターだ。
ラドタルクの世界では弓兵がその処理を得意としていた記憶がある。
俺はあの世界で勇者であったが『魔術戦士』の括りにいた。
そんな近接武器を主とする人間は、飛行するモンスターに対してどうしても受け身にならざるを得ない。
それを的確にローコストで攻める事が出来る弓兵は、それらに有利だったのだ。
ラドタルクの弓矢が有効で、この世の弓矢あるいは銃が不利である理由はどこにあるのだろうか。
考え込んでいると5組の皆は思い思いの武器を既にケースから受け取っていた。
「どうだ、っぱ武器つったら長くてデカいのが最強だって!」
いつの間にか武器を取りに行っていたリュウジがハルバードをもってこっちにかけてくる。
「狭い場所だとキケン」
「あぁ⁉そこをカバーするのが技ってモンだろ、それに奥の手もあるしな。」
彼は腰に差していたショートソードを見せつける。
「1人1つとは言われなかったんでね。」
ニヤリと笑うリュウジ。
しかし、ハルバードもショートソードも見たところ刃が入っている。
訓練だと言うのに随分物騒だと思っていると、浅葉が話し始めた。
「いいか、戦闘訓練は始めに対魔獣より対人を厚くおこなう。理由は1つ、犯罪者や通称『セバー狩り』の連中から先ずは身を守れることが第一条件だからだ。魔獣を殲滅する前に、人間に殺されていては意味がない。」
……十数年の内この世界には何が起こったのだろう。
説明というより演説に近い浅葉の話を聞き流しながら思いにふける。
比較的平和であった世界に突如魔獣が現れ人類に敵対し、しかもそいつ等は対魔獣戦闘に銃は不利と言わしめる力があった。
反攻作戦は絶望的だっただろう。
そんな中、何とか撃退しダンジョンと魔獣の関連を明らかにして、その2つを同時に抑える組織を発足させ未来の為に若い学徒まで動員させて国を保った。
しかし今度は同じ人間にも拘らずそれを利用する悪しき人々が現れ、平穏の為に発った者達を殺そうとしている。
「魔獣の中には人型や二足歩行の奴等も珍しくない、対人戦闘の訓練は決して無駄では無いだろう。お前たちがある程度の対人戦闘をこなせるようになったら、初めてダンジョンを訪れてもらう。夏までには初ダンジョン攻略となる様に、気合を入れて訓練に臨め。」
俺は捕獲されてからこの施設より外に出たことが無い。
ネットにもアクセスしていないからこの世界の普通な日常がどうなっているのか、本当のところ分からないんだ。
浅葉の発言を聞いて、荒廃した日本の姿を想像し気合が入る。
……アカツキのいう通り少しなめていたかもしれない。
「さて、このドームには強力な魔術結界をカンタンに張る事が出来る。」
浅葉は何やら片手でPDAを操作した。
するとこの場全体の魔素が動き、魔力が生じ、俺の全身にピリピリとした緊張が奔る。
この感覚は大規模魔術行使に近い。
一体何を……。
腰のアカツキに片手をかける。
しかし、途中で危険な魔術行使でない事を悟って力を抜いた。
「今強力な防御結界を張った。立ち入っている者全てに強力な魔術的シールドを張っている。俺を見ろ!」
元々皆に聞こえる様に大きな声でしゃべっていた浅葉は、さらにすごい剣幕で注目を促した。
彼は大型ケースの中から一本の剣を取り出し、抜刀して皆に見せつけた。
「よォく見ておけッ!」
そして勢いよく両手でその刃を自分の腹に突き刺した!
「お、オイオイ!」
リュウジは驚きの余り顔面が強張り、5組の中には小さな悲鳴を上げる者も居た。
しかし、よく見れば切っ先は彼のシャツの数ミリ前で止まっており、小さな青色の膜がその進行を留めていた。
「流石だ!だが!」
浅葉は2度、3度と切腹を試みたがその全てが謎の膜に防がれる。
「はっはっは。どうだ、お前等俺が死ぬとでも思ったか。そうだ!人類が開発した防御魔術である《シールド》はあらゆるダメージを通さない。リソースは各自の能力に寄る上に、破損や全壊の修復には時間を要する点に注意だ。」
クラスの皆は未だ緊張に囚われていた。
「……ったく趣味悪ィぜ、クソ!」
「入学したてのお前らはシールドも弱い、だがこの施設に備え付けられている《シールド》発生装置を使えば、十分に訓練が出来ると言う訳だ。どうだ!俺の大立ち回りで十分安心できたんじゃないのか?」
緊張に囚われながらも浅葉のいう通り、彼等は各々自分の武器に興味を持ち始めかってに持ち手を確認したり中には勝手に振る者まで現れていた。
「さて、お前たちは今、午前に設定したスキルや先程の『最適化』で、一般人よりは武器の扱いが出来る人間になっている。では2人でもう一方を仮想敵とし、自由に戦ってみろ。くれぐれもシールド残量には注意しろよ!」
えぇ……もう真剣で対人実戦なのか?
もっと流派の素振りとか武器のコンセプトの学習とか、そう言うのが必要なんじゃないのか。
「おいトキ!考えてねぇで俺達もやるぞ!」
前を見ればリュウジはハルバードをブンブン回していて随分とやる気だ。
クラスの連中もぎこちなく舞台における殺陣の稽古みたいな戦闘をしている。
「おお、いつでもどうぞ?」
アカツキを腰から抜いていつでも抜刀ができるようにした。
鯉口は切らない。
「剣を抜かずに、舐められたもんだなアッ!」
大ぶりの長物を右へ左へ避ける。
足元払いには飛び上がり、その次はフェイントからの2段突きを身体をずらして避ける。
「そっちからかかってこないのか⁉」
大声で叫びながらハルバードを振るう彼はすごくイメージ通りの戦士だ。
粗野な性格はその武器の攻撃に現れ、乱雑な筋は逆に見極めが厳しいが本人の練度の低さが回避を簡単にさせる。
「そっちは手数、おれは一瞬。」
大口でもなんでもなく、最初から最後まで俺には勝利への太刀筋が見え続けている。
彼の攻撃を避けている最中でもいつでも彼に刃が届く。
だが……《シールド》今彼を守っているその魔術盾はラドタルクでメジャーではない代物だ。
アカツキが魔剣である以上シールドごと彼を真っ二つにしかねない。
「なんでもいいから仕掛けてきやがれ!練習にならねぇだろうが!」
(アカツキ!)
(拙を信じ彼を切るのです。)
「承知!」
大げさな上段からの振り下ろしを鞘に納めたままのアカツキで受け止める。
リュウジはパワーに自信がある人物だったのか、衝撃波が俺の身体を震わせる。
「な……」
すかさず鞘から抜刀し、リュウジを切り裂くと青い膜がガラスの様に飛び散った。
そして衝撃はその《シールド》である程度しか防げないのか、彼は宙に身体を浮かせて吹っ飛んでいった。
「ぐわあああッ‼」
《シールド》が破ける音と、リュウジの声に驚いたのか周囲は騒然としており、全員が数メートル先の地面に激突してもぞもぞ動いているリュウジか、鞘と刀を持った俺のどっちかを見ていた。
「お、おいやりすぎだ!だれだアイツを吹っ飛ばしたのは!」
《シールド》はある程度研究が必要だな。
アカツキが調節してくれなかったらいまごろリュウジの命は無かっただろう。
「ハァ~やっぱお前か黒羽クン、えっと奴さんは……。」
バタバタと浅葉がリュウジの所へいき様子を見た後に、回復魔術を施す。
そのあと少し会話をしてからこっちに向かってくる。
「オリエンテーションで派手にぶちかますなんて1組か2組の特権だぞ、クソっ面倒な……黒羽クンは転がっている古垣クンを責任もって保健室へ連れて行き介抱する事、コレは命令だ!」
「えぇ~この後の授業は?」
「あ~なんか補講考えてやるからさっさと連れて行け問題児、やっぱり標本にした方がよかったんじゃないか……。」
「物騒なセンセ。」
「どっちが物騒だよ、どっちが……おら、早くいけ。」
吹っ飛ばされて寝転がっているリュウジの身体を見たが、血が噴き出ている訳でも、あり得ない方向に腕が曲がっている訳でも無かった。
あの時浅葉が使っていた《ヒール》の魔術のお蔭だろう。
「ぐ、い痛ぇ……でもこの程度でくたばってちゃ……あたた。」
「おれが保健室つれてくから我慢。」
「チビがどうやって俺の身体持ってくんだよ……。」
そ、それは……。
どれだけ力があった所で、大きすぎる物を持つと持ち手から離れた場所に負荷がかかる。
「おお、たしかに。無理かも。台車とかあるかな?」
「誰か……助けてくれ……。」