再異世界転生~今度は謎幼女キャラで現代ファンタジー~ 作:昔邪道今王道展開好き
一瞬の閃光が奔り、闇に包まれた獣が二分される。
魔獣に死骸が出るケースは稀だ。
ほぼ全て闇に溶け、魔石へと変化する。
「でやーッ!」
γダンジョン第66階。
俺以外誰も居ない洞窟の様な場所、そこへ次から次へと魔獣が押し寄せる。
それを何百と切り刻み続けていた。
あの時切れなかった仇を勝手に取っている様なもの、つまり半分は八つ当たりだった。
(そろそろ刀を振るのにもこなれてきた頃合いにござろう?一つ拙の指導を受けてみませぬか?)
ラドタルクでは主に長剣を振るっていた。
短期間だが、短剣や槍を使っていた事もあった。
だが刀はこの世界でアカツキを抜いたのが初めてだ。
「今のおれはどうなんだ?イレイザーを振るう様に使っているが?」
俺の身体に刻まれている両手用長剣の技術で刀を振り回し使っていたが、正直この辺りの魔獣では相手にならない。
浅葉が言っていた年少の女にしては強すぎる肉体と、アカツキの武器としての性能が高すぎるせいで、ほぼ瞬間で決着がついてしまう。
稽古にしては楽過ぎて勉強にもなっていないだろう。
(全く持って遺憾でござる。刀である拙の尊厳を破壊するつもりですか。)
「そんなに……?まあ、そう言うなら説明してくれよ。」
(まず、拙は納刀状態と抜刀状態、それに二刀で技を変化させて戦えるマルチウェポンにござる。)
「二刀って、アカツキは一本だけだけど?」
それかラドタルクのニンジャであるリンが片割れをどこかに隠したのだろうか。
(鞘と刀で二刀。鞘は武器であり防具でもあるのでござる。納刀状態、また鞘での攻撃は斬撃でなく殴打になりますれば、戦う相手により相応の選択をされたし。)
幾つかの戦闘でのシーンを思い出して、虚空に向かって刀を振るいアカツキの言葉を確かめる。
鞘に納めたまま殴打することを意識して振る。
或いはアカツキの言う「二刀状態」、左手に鞘、右手に刀を持って舞う様に素振りをしてみる。
当たり前だが納刀状態の時とは重さやその振りの速さに違いが出て来て、脳をめちゃくちゃ使っている様な気がして来た。
(それを知った上で一番肝心な抜刀状態での拙の扱いを先ずマスターするでござるよ。)
「どんな時も基本が一番って事は良く知ってるよ。これでもギルドマスターだったからな!」
そのギルドマスターという肩書きさえ特に仕事もしていなければ、1ヶ月ほどで強制終了させられたんだがな。
(ご存じの通り刀は両手で握る、そして構えは上段、中段、下段とあり、流派によってその構えも様々にござる。)
アカツキのインフォメーションを聞きながら言われた通り、刀を構えてみる。
俺の脳内や肉体に、インテリジェンスウェポンのアカツキとしての情報が流れてきて構えが自然にこなせる。
(他に方法もござらんから、拙の流派を教えたでござる。そう、そんな感じで大丈夫でござるよ~)
上段は時代劇のキメポーズの様に肩の上で斜めに構える。
中段は中学生の時選択授業でやらされた剣道のように、真っ直ぐ胴体から独立させたような状態で構える。
下段は腰を低くし、大剣を流し構えする様に、刀の腹を天へ向け刃を地面に近づけて柄を上げた状態で構えた。
(うん、かわいい。じゃなくて、大丈夫にござる。)
なんか途中から遊んでなかったかコイツ。
まあでも気持ちは分からんでもない。
刀を振り回す制服の幼女っていうのはもう王道中の王道だ。
(それぞれ上段は攻め、中段は守り、下段は奇策、それぞれ得意な使われ方があるのでござる。)
へえ、そんな考え方をされていたのか。
ヘルマンからなんとなく両手武器を教わった時は、先ず筋トレ後は戦って覚えろ技も自分で発明しろだったからな。
(それは師事する先を間違えたからにござる。どんな武器、構えでも良しがあれば悪しがある。どの段でも弱点はござるから気を付けるのですよ!)
刀を振るえば振るうほど、アカツキから情報が流れて来て、その通りに刀を振るう。
上段では流れる様な連続技、中段では一撃必殺級の重い技と直ぐに構えに戻れる手さばき、下段では相手を誘う隙のある技と相手の隙を刺す術。
どれも振るっていれば万能な武器だと思ってしまうが、弱点はある。
上段の構えでは奇策に弱く、素早い攻撃への防御が難点だ。
中段はその構えが既に「手」に欠けていて、正味DPS——総合的に攻撃力が低い様に思える。
下段は論外で、よっぽどの相手しかも人間でないと良さを発揮できない様に思えた。
(概ねその考え方でオッケーでござるよ。でもおススメはどんな時でも、中段から相手の様子を見るのが一番!覚えておいて欲しいでござる!)
素振りにつられるようにして、狼型の魔獣『ブラッドハウンド』、球体の浮遊魔獣『アーチボウル』、二足の爬虫類魔獣『リザードマン』が寄ってたかってくる。
そしてそれぞれを練習台に切り刻み、魔石を得ながら奥へ進んでいく。
PDAで現在の位置や先の階層に通じるエリアがあるかを調べ、ついでに浅葉から頼まれたアプリケーションも立ち上げる。
しかし、そこは彼の言う通りで攻略済みエリアを練習がてら訪れていた俺は、その頼まれた物体のどれをも得ていなかった。
「まあ、そりゃそうだな。それにしても本当にPDAシステムをごまかす事が出来るのか?」
あの時浅葉やミホと離れ自室に帰った後、彼からチャットが来ていた。
——PDAシステムには生徒のモチベーション向上の為、ワープ盤の更新に伴って最奥階層が更新されたら全PDAに一斉通知が届く。そんな事をされては、俺の研究の邪魔になるのでお前さん達だけワープ盤を稼働させてもごまかせるようにしてあるからな、悪いが名声は諦めて欲しい。
本日午前中の授業で習ったが、ダンジョンは最奥が分からないため、最深の稼働ワープ盤によって現段階最奥を決めているとの事だった。
そしてワープ盤は大体10階層に1個のペースで配置されている。
俺が発見された和室の場所は第67層とかなり中途半端で、その時に使われたのが第66層のワープ装置だ。
そう、10階に1つは精確な配置では無いのだ。
それゆえ、ダンジョンではいかなる油断や計算は禁物である。
計算上あと5階下ればワープ盤があるから大丈夫だと思っていたら、そこから10階先まで無かったなんて言う事例が授業で紹介されていた。
(拙らだけで最奥を目指すつもりでござるか?)
「とりあえず生命の危険を感じるまでは、やってみないと修行にすらならない。違うか?」
(そこは頷けますれば、でも本当に危なくなったときの保険がありませぬよ!)
「命綱は浅葉チャットってことで、ミホとか助けに来てくれそうじゃん。」
絶句しているであろうアカツキを帯刀しながら、ダンジョンを突き進む。
せっかくヒサトが教えてくれた《ブレイズオン》の芸当も使えなかったから、人前では《アイテムボックス》でやり過ごすことにした。
だが、ここではそんな気を遣う相手すらいない。
現れる魔獣にも違いがみられ始める。
石化ビームを放ってくる飛行魔獣『ガーゴイル』や、人型の悪魔魔獣『ゲイル』、『ヴェックス』、巨大トカゲ魔獣『ラケルタ』。
どいつもこいつも、人の足元を見たり、火力だけで押し通そうとして来たり厄介な奴等だが、俺には遠く及ばない。
4度もアカツキを直撃させていれば自然と死んでいく程度の奴等だ。
洞窟めいた内装は次第に、自然に帰りかけている古城の様な雰囲気へシフトを切っており、明らかに人の手でデザインされたであろう柱や地面のタイルなどが目立ち始めていた。
ダンジョンの説明を思い出していても、これは異質だ。
人の手によってそれらが生み出されたなどという認識ではなさそうだったからな。
——ダンジョンはこの日本に8つ確認されており、その全てが最深部へ到達出来ていない。
γダンジョンはそれ等の中で中堅程の進行度をしているとの事だった。
それらが現れ始めた頃は、どれも国の管轄であったからして協力関係がきちんと出来ていたが、いまではその国すら崩壊の危機にあり、協力ではなく競争の面が激しくなっていると言う。
それらを聞いて少しは自重しようと思っていたが、それを聞いて親しい人達だけでの完全攻略も考え始めた。
俺が発見された時、俺がいた場所が最奥でミホに目覚めさせられた。
という事はミホも腕利きという事だ。
それに彼女は生徒会長とも知り合いの様に会話していたし、何かしらツテがあってもおかしくない。
リュウジかヒサトをも加えてγダンジョンを突き詰めてしまえば、同じ校内で争ったり謀ったりすることも無くなるかもしれないんだ。
……リュウジは無理か。
一通り突っ走って何度も階層と階層をつなぐ階段を下る。
スロープや一方通行の崖などが無い分、作為的なものを感じ、古城の雰囲気も相まってなにかしらの自然現象で生まれたわけでは無いと確信できる。
「おお、これが一番新しいワープ盤だな。」
PDAはバグっていてマップの表示すら出来ていないが、浅葉が装置をごまかしているという事だろう。
つまりは何階に自分がいるのか、今どの地点にいるのかは自分でマッピングするしかないという事だ。
ワープ盤に手を置いて、魔素を取り込み魔力として生成する。
盤と名がついているが、魔力を流し込む先として突出した部分がありそこに球体がはめ込まれていて、どうやら手を当てる場所の様だ。
俺が目覚めた和室が67階。
そこから数えて現時点は78階である。
「しかし、ココまで来たのにもったいないな。戻りだけの一方通行なんて。」
(流石にワープ盤の相互リンクを繋げてしまうとバレてしまうみたいでござる。そう言えばバレると邪魔ってのはどういう意味でしょうか。)
「明言はしてなかったが、想定は出来る。俺がポンポン階層を更新させると、俺や俺を懇意にしている浅葉に注目がいく。すると敵さんからも注目を浴びて集中砲火を食らうって事だろうな。」
ワープ盤を起動させて、1階であるダンジョン入り口へ帰る。
(ラドタルクの3国みたいな話でござるな、どの国が突出しても他2国がすぐさまそれを叩く。だからにらみ合いが永遠に終わらない。)
目の前が光に包まれ、その光が収まると、周囲の風景は様変わりしていた。
空間転移もラドタルクでの雰囲気に似ている。
PDAの他の機能は正常に動いているらしく、浅葉特製クエストアプリケーションは動作し、幾つかの特殊な石や謎金貨、意味の分からない破片、魔石の成り損ないなどが勝手にリストアップされていた。
「《アイテムボックス》が機能していて助かった、欲しいモノかどうか確認せずに持って帰れるんだからな。要らないのはこうして一気に捨てる事が出来る。」
異空間に物体を収納して、そこから瞬時にモノの出し入れができるパッシブマジック《アイテムボックス》。
ゲームであれば定番のシステムで、ラドタルクで覚えた時は感動した。
バックパックを背負わずに戦えて、さらに大量にモノをしまいこめるのだからどんな魔法より便利かもしれない。
換金できる魔石ならとにかく、浅葉の事を考えて必要かもしれないと思った物を真っ向から拾って来たのだから、捨てるものも多い。
意味の在りそうな石ころも結局意味をなさなかったり、大事そうな石板も彼にとっては必要ないらしい。
たしかに、未知の物体で何が有用かわかるだけですごいんだが、もうちょっと、こう……画像を用意するとかさぁ。
無理か。
(こう見てると不法投棄している不審者でござる。)
(ダンジョンの奥深くで捨ててくるべきだったな。バレない様にやってるつもりだがなんか注目の的だ。)
この時期に居る筈も無い小さい1年生が、ダンジョンの入り口で地べたを這いながら何かを吟味している様は異質だったみたいだ。
「なあ、キミ。」
「ひゃいっ⁉」
(不法投棄がばれたか⁉)
(認めたでござる。)
「まだ1年だろう、そこを動かない事だ。どんな事情があれダンジョンの不法入場を許すわけにはいかない!」
メガネをかけた如何にもマジメそうな男が俺に向かって剣を向けていた。
「おれに剣を向けた。」
さて、ダンジョンの奥で修業した試しに対人戦と洒落込もうか!
腰のアカツキを抜き放ち、教え通り中段で構える。
「俺に抵抗するっていうのか?1年の分際で2年のこの俺に!」
どうやら2年生らしく、怒りと共に踏み込むその剣は乱雑かつ粗野だ。
これなら今のリュウジとイーブンかどうかといった所。
ミホのような手慣れを想定していた為、うんざりとした気持ちでヤツの剣裁きを見切り、避け続ける。
「く、クソ、ちょこまかと……!」
軽い片手剣で攻撃してくるヤツの最大のメリットである、身軽さや手数の多さすら彼からは感じられず、やる気がない様にさえ見えてしまう。
大きく振られた上段からの攻撃を回転しながらよけ、狙いをヤツの剣に定めて切り裂いた。
金属の破裂音と共に、片手剣を切断し、切っ先を宙高く吹っ飛ばす。
「なあっ⁉」
「どうする?おまえ、ぶきないぞ?」
「……‼」
唖然とした顔は長く続かず、血管が切れる程激しく睨みつけて来た彼。
しかし、それさえも遮られる。
「通報を受けました保安部です!……この騒ぎは一体なんですか!?」
ひとしきり大きな声が聞こえたから、そっちの方に目を向けてみると、確かに騒ぎになっていた。
戦闘に集中していてギャラリーが出来ている事に全く気が回っていなかったが、入学の時の様な囃し立てる様子を感じる。
「こ、このガキが!1年なのにこの場所に侵入しているんです!許可証も無い、立派な不法侵入ですよ!取り締まって下さい!」
メガネが縋り付いた先は、ガタイの良い腕章をした男。
保安部というのは——そうか生徒会と管理局が合同で執り行っている、校内の風紀を取り締まる巨大組織。
最大の特徴は、外部からと内部からの両方の採用があるという事だ。
セバー活動をしながらアルバイト、あるいは一般人でも一通り戦闘技能があれば雇われることもあるらしい。
そんなお堅そうな男が俺の前までやって来る。
「確かに、そのタイの色は一年。」
そして、俺に向けてPDAの魔素測定デバイス部分を向けて来た。
「1年5組黒羽旬……。」
「やはり1年か!しかも5組とは!入学早々お前の人生はお終いだァ!」
狂ったように俺に向けて笑いを飛ばすメガネ野郎。
それとは裏腹に保安部を名乗る男は静かに言った。
「黒羽トキさん、あなたにγダンジョン探索許可証が発行されている事を確認しました。」
「なんだって!?嘘だ……ありえない!1年でしかも5組だぞ!?何か、何かしでかしているに決まっている!なあ!」
「うるさいぞ!データを見たが異常は無し、ちゃんと教員である浅葉先生のデジタルサインも確認が出来た。となれば、次はココで勝手に決闘を行っていたという問題になる訳だ!」
ゾロゾロと5人ぐらいの同じ腕章をした男達がやってきて、その内の3人がメガネを取り囲む。
「え?う、嘘だろおい!俺は協力者だぞ、そこのどう見ても怪しい小さい女を捕獲した……あっ、おい放せ!ぎゃああっ」
数秒もしない間に鎮圧され、引きずられていった。
決闘の罪……って事は、こりゃ俺も食らうのか!?
「えっと帰っていい?」
「ダメだ。いくら疑いをかけられたからと言って、真剣を抜いて決闘してはならん。」
「ちょ、ちょっと。じゃあどうしろと。」
「どう考えてもいちゃもんを付けたのはアイツっぽいし、大人しく連行されてくれ。多分少しの時間無駄にするだけで済むからさ。」
同情的な言葉と共に手錠をかけられ、メガネと同様に手錠から伸びる縄で引っ張られながらその場を後にする事となった。
ギャラリーからは、かわいい、だの、意味分からん、だの好き勝手言われ、あまつさえ写真まで取られる始末だ。
「こ、コイツはスクープですよッ!あの飛び級チャンが逮捕!?これはデカい記事になりますぅ!」
あ、やば。
やべーセリフ吐くやつに見つかった。
が、もう遅い。
自分の顔を隠す上着もフードも無い俺は大人しく被写体になるしかできなかった。