シャルティアが帝国軍に所属してから二か月が過ぎた。
シャルティアは帝国軍で地位を順調に高め、今はリッケと同じ特使にまで成り上がった。
多数の部下を持ち、彼らに暇なときにアインズ・ウール・ゴウンなどについて情報収集させている。
そしてソリチュードのドール城の会議室で次はどう攻めるか、という会議をしていた。
既に帝国領は半分以上だ。
九つのホールドの内八つのホールドが帝国領になり、残るはイーストマーチ、ウィンドヘルムだけとなった。
砦をどう攻略するか、という話をしようとした瞬間城に男が入って来た。
金髪碧眼のノルドらしい容姿にがっしりした体躯。
そして特徴的なのは竜の素材を使って作れた重層鎧に竜の剣と盾だ。
これは数多の竜を殺してきた証であり、これからも殺すという意思表示。
「テュリウス将軍に話があるんだが、今いいだろうか?」
そう男──イナルは話しかけた。
「あら、イナルじゃありんせんか。久しぶりでありんすね」
「あぁ、久しいな、シャルティア」
「ドラゴンボーンか? いったい何の用だ? 帝国軍に入りに来たのか?」
テュリウスは眉を潜めながら問いかけた。
「残念だがそうではない。アルドゥインの脅威に対応するために、ストームクロークと停戦をしてほしくここに来た」
その言葉に更にテュリウスは機嫌が悪そうな顔をした。
「このまま行けば帝国が勝てる盤面で停戦をしろと? お前は何を言っているんだ」
「……まぁ、そうだろうな。だがすぐにでも内戦を止めて貰わないと困る。アルドゥイン、世界を喰らう者が復活したんだ」
「ノルド神話に出てくる存在でありんすね。それが何かあると?」
シャルティアが横から割り込む。
シャルティアはこの二か月で文字を殆ど覚え、読むことは出来るようになっていた。書くのはまだおぼつかないが。
「あぁ。奴の目的はこの世界を滅ぼす事だ。奴の居場所を知る為にドラゴンを捕獲したい。その設備がドラゴンズリーチにあるんだが……それを使うにはまず内戦をどうにかしてほしい、とバルグルーフ首長から言われてな」
「なるほど。世界の終わりか……それならば帝国軍も何もしない訳にはいかないだろう。だが、情勢的に停戦は無理だ。帝都から何を言われるかわからないからな。だからその代わりに……ドラゴンボーン。帝国側に着かないか? 一時協力するだけで構わない。二週間もあればウィンドヘルムを落とせるだろう」
その言葉にイナルは少し考える。
まだウルフリックには話を持って行ってない。それにイナル個人としては帝国側の方が好きだ。
ウルフリックはやりたいことはわかるがもう少し我慢できなかったのか、とイナルは考えてしまうのだ。
だからストームクロークと敵対することに意は無い。
帝国としても最新のドラゴンボーンが帝国側に着いた、という実績が欲しいのだ。
ドラゴンボーンはタロスが起こした帝国以降常に皇帝の地位にあった。それとの友好関係を構築しているという実績が欲しいのである。
「わかった。一時的にだが帝国に協力しよう」
その言葉にテュリウスは少しほおを緩ませた。
イナルとしても問題ない。
「そうか。ならさっそく、アモル砦を攻め落として貰おうか。シャルティア。彼をイーストマーチの野営地まで転移させてやってくれ」
「わかりんした」
「転移? まさか……転移魔法が使えるのか?」
「えぇ。使えるでありんすよ」
シャルティアはそう無い胸を張った。
「それじゃあ、受け入れるでありんす。
魔法によってイナルは転移した。
「それじゃあシャルティア。ウィンドヘルム近くに軍を転移させてくれ。野営地を作る」
「わかりんした」
■
一週間後。
シャルティア、イナルはウィンドヘルムの橋の上に居た。
ウィンドヘルムを攻め落としに来たのだ。
テュリウスが戦闘直前の演説をする。
「いよいよだ! ストームクロークの反乱者たちに最後の一撃をくれてやる時が来た!」
ウィンドヘルム市内には投石器を使い攻撃をしている。城壁内への攻撃だ。
と言っても部隊が街中に入れば攻撃は止めるが。
「ここまで来れたのはお前たちが勇敢に戦い、多くのものを犠牲にしてくれたからだ
ウルフリックは城壁の内側に隠れられると思っている。だが我々は街に進軍して、瓦礫の中から奴を引きずり出し、正義の裁きを下すのだ
これが奴らにとっての最後だ。だから向こうも必死だぞ。猫がネズミに噛まれないように気をつけろ
では行くぞ! 帝国の為に、帝国軍の為に!」
突撃──と帝国軍は突撃をした。
街の門を押し開き街中に入る。
感嘆にはいかない。街中の至る所にはバリケードが設置され、侵入を阻害している。
そして最後までウルフリックに着いたストームクロークの兵士たちが邪魔をする。
彼らはこれまでの雑兵とはわけが違う。ストームクロークが劣勢になろうとも最後まで忠誠を尽くした屈指の精鋭たちだ。
帝国軍兵士と同等以上の力の持ち主である。
それらをイナルは一撃で殺していった。
(なんかめっちゃ強くなってない?)
シャルティアは戦うイナルを見て最初の頃よりめちゃ強くなってるじゃん、と若干引いた。
確かに武装の差はある。竜の素材で作った武器は強力無比な代物だ。
更にその武器を作ったのはこのスカイリム最高の鍛冶師エオルンド・グレイ・メーンだ。武器の質としては最高品質と言っていいだろう。
付呪こそされていないが強力な武器と言っていい。
だがそれよりも強いのはイナルの身体能力だ。
シャルティアの見立てでは最初は十五レベル程度だったのが今は五十レベルほどになっている。
そしてドラゴンボーンは人の体に竜の魂を持つ者とされるが、肉体に影響が出ない訳ではない。
その身体能力もまさに人型の竜と言っていい程であり、剛腕を誇る。
「行こうか」
イナルはそう言い奥に進む。
真っすぐ進めばそこには王の宮殿に続く道があるはずだが、瓦礫によって閉ざされていた。
「別の道を探しんすかね」
「あぁ、裏手の道があったはずだ」
そうして二人は入口近くまで戻り、別の道を進んでいく。
少し進むとまた兵士たちが出てくるが二人の敵ではない。一撃で殺せる。
殺して殺して、バリケードを壊しながら道を進んでいく。
「タロスの為にくたばれ!」
「帝国に死を!」
ストームクロークの兵士たちはそう叫びながら突撃してくる。
彼らもこれで自分が死ぬとわかっている。だからこれは最期の抵抗だ。
しかしながら無意味だ。英雄を超えた伝説級のイナルと調節者の頂に居るシャルティアにはその抵抗は意味はない。
そして元は平和だった街を進んでいくと王の宮殿前に着く。
「行くぞ」
そこにはテュリウスとリッケが居た。
四人で王の宮殿の扉を開け、中に入る。
玉座にはウルフリックが座っていた。
ガルマルが前に出る。
「下がって、ガルマル。私達はウルフリックの降伏を受け入れるために来たのよ」
そうリッケが言った。
それに返すのはウルフリックだ。
「堕落し、死に瀕した帝国などにスカイリムを決して明け渡したりはせぬ」
「スカイリムは渡さないわ、ウルフリック」
「いや……だが我が心は彼女の元にある」
それに我慢を切らしのはテュリウスだ。
「もういいだろう。貴様らは裏切り者だ。そして裏切り者に相応しい死に方をするのだ、降伏して公開処刑を受けろ、断り進軍するならば私の手による簡易処刑を覚悟しろよ。
私はどっちでもいいぞ。どちらにしろ貴様らの首はシロディールに送り渡す事になるからな」
「そういう訳にはいかない。ここて帝国を倒させてもらおう!」
そうウルフリックは叫び、玉座から立ち上がり斧を抜いた。
「ファスローダー!」
ウルフリックはシャウトを行使した。
ウルフリックはかつてグレイビアードの元で修業をしていた、元グレイビアード候補だ。
彼は習得に何十年とかかるシャウトの内二つをたった十年でものにした神童であった。
だがウルフリックは下界の戦争──帝国とサルモールの戦争を放ってはおけぬとグレイビアードを出て、戦争に参加しに行った。いわば破戒僧である。
だからウルフリックはドラゴンボーンでもないのにシャウトを行使できるのだ。
シャウトは竜とドラゴンボーンの特許ではない。訓練すればノルドなら誰でも使える技術なのだ。と言っても習得にかかる時間は個人差があるが。
使われたのは揺るぎ無き力のシャウトだ。
不可視の衝撃波が飛んで行く。
イナルとシャルティア両方に命中するが、多少のダメージで済んだ。
イナルも多数のシャウトを体得し、それを物にしている。シャウトに対する耐性という物を会得しているのだ。
イナルは突撃し斬りかかる。
ウルフリックは斧で受け止めるも、その一撃は重い。
ウルフリックは顔を苦痛で歪ませながら後ろに移動する。
「ムゥゥゥウン!」
シャルティアに対しガルマルが両手斧で襲い掛かる。
ガルマルも歴戦の戦士である。その戦闘力は高い。
しかし悲しいかな。武器に強力な付呪が施されていない以上シャルティアに対しダメージを与える事は出来ない。
シャルティアはガルマルの心臓をスポイトランスで貫き殺し、死体を放り投げた。
そこで丁度ウルフリックが膝をついた。
「ウルフリック。今度は逃がさんぞ。最後に何か言う事はあるか? それを聞いたらお前を……お前のような連中が死んだら行く場所に送ってやろう」
小声でリッケが呟いた。
「ソブンガルデ……」
「それはドラゴンボーンに任せる事とする。見事な詩歌が生まれるであろう」
「ドラゴンボーン、どうする?」
「それが望みなら、介錯しよう」
イナルはそう言い、ウルフリックの首を斬り落とした。
こうして内乱は終結した。残る問題はアルドゥインだ。