スクルダフンは墳墓だ。
その攻略は順調そのものだった。
出現するドラウグルは全てデスロードというドラウグルの最上位種。だが二人の敵ではない。
デスロードのレベルは三十程度なのでイナルも今は先ほどドラゴンを殺し六十にまでなったので敵ではない。
数が多すぎる場合はシャルティアがアンデッド退散の
「見られているな」
「えぇ。ぶちのめすでありんすか?」
「……いや。向こうから敵対してこないなら放置でいいだろう」
スクルダフンを囲う山にはドラゴンたちが居り、イナルとシャルティアの二人を見ていた。
シャルティアは品定めされているようで不快感を感じていたがイナルはたいして気にしていなかった。
そして奥に進むと其処にはドラゴンプリーストが居た。
ドラゴンプリーストとは太古の時代、ドラゴンに仕え名と力を与えられた竜教団の幹部の事だ。
非常に強力な魔術師であり、リッチの上位種のような物だ。
ここにいるドラゴンプリーストの名はナークリーンという。
強力なドラゴンプリーストは全て己の名を冠する仮面を与えられている。
仮面には強力な付呪が施されている。
更に体には妙な鎧を纏っており、地面か羅数十センチ浮いている。
ナークリーンは浮遊しながら奥に進む。
奥にはポータルがあった。ソブンガルデへ通じる門だ。
門の前にある台座から杖を抜き取る。それにより門が閉じていく。
「あいつを倒さないといけないらしいな」
「そのようでありんすね」
二人は武器を構えた。
「スリ、アルドゥイン、ディノク!」
ナークリーンは左手で魔法を行使した。
使われるのは召喚魔法だ。
召喚されるのは二体のアトロナックというデイドラだ。
氷で出来た岩が人型になっている氷のアトロナック──の古代種。
もう一体はそこらの山にありそうな岩が浮遊し、頭部には顔が掘られている嵐のアトロナックのこれまた古代種だ。
強力なデイドラだ。二体ともレベルが四十もある。更に召喚主であるナークリーンはレベル五十だ。
「バー、ディノク!」
ナークリーンは更に魔法を使う。使うのは嵐のマントだ。
マント系の魔法は術者を起点に一定範囲の相手にダメージを与える魔法だ。嵐のマントならば雷のダメージを、と言った感じだ。
そしてアトロナック系デイドラは素でその能力を持っている。
つまり嵐のマント二つプラス氷のマントのダメージを周囲に与えれる。
強力なデイドラに加えドラゴンプリーストという強力なリッチ。それによりシャルティアとイナル両方にダメージが届く。
シャルティアはこの世界に来て初めてのまともなダメージに驚きつつ警戒を強める。
イナルもダメージを受けるが、行動に問題はない。ノルドは冷気に対し五十パーセントの耐性を持つため耐えれるし、それ以外の属性に対してもネロスが鎧やアミュレットに耐性を付呪してもらったので耐えれる。
氷のアトロナックが突撃する。
対しイナルが前衛として突撃した。
氷の石の手でアトロナックは攻撃してくるが、イナルは盾で弾き、シールドバッシュも見舞いする。
「
シャルティアが嵐のアトロナックに向けて魔法を解除する魔法を放った。
それにより召喚魔法は解除され、オブリビオンに嵐のアトロナックは送還された。
その間にイナルは氷のアトロナックを倒し、こちらもまたオブリビオンに送還された。
ナークリーンが右手に持つ杖を振るう。
先端が竜の咢になっている木製の杖だ。込められた魔法は雷の障壁という魔法である。
使う事で地面に雷の壁を生成し触れた相手に雷のダメージを与えるという魔法だ。
ナークリーンは右手の杖を使うと同時に左手でサンダーボルトの魔法を放つ。
サンダーボルトは対個人最強の雷魔法だ。相手に強力な雷ダメージを与えると同時にその半分マジカを削る。
しかしマジカダメージの方は問題ない。シャルティアが使うのはこの世界に無い魔力なのでマジカダメージや吸収では意味がないし、イナルは純戦士なので魔法をシャウトしか使わないしシャウトはマジカを消費しない。
イナルがシャウトと共に突撃する。
「ウルド ナー ケスト!」
使ったのは疾風の疾走というシャウトだ。
高速で前方に移動するシャウトである。
それを使ってイナルはナークリーンの胸に剣を突き刺した。
「バー、ジョール!」
ナークリーンは激昂し杖でイナルを追い払うように振るう。
イナルは剣を抜き回避する。
イナルが剣で斬り、ナークリーンは回避しようと後ろに飛ぶがそれよりもイナルの方が速い。
ナークリーンが一度魔法を放つ間にイナルは四度斬る。
ノーダメージとはいかない。嵐のマントのダメージとサンダーボルトのダメージが蓄積する。
ナークリーンの後ろにシャルティアが現れた。
それによりナークリーンは偽りの生命力を失い、装備を残して灰となった。
「終わったな……回復はいいか?」
イナルは腰に付けたバッグからポーションを取り出した。
「ぶ……そこまでダメージを受けてないから大丈夫でありんす」
一瞬シャルティアはスポイトランスで回復できる、と言いかけたがそれをばらすのは不味いだろうと思い直し黙って置いた。
イナルはポーションを飲み干し、「そうか」とだけ返した。
イナルはドラゴンプリーストの杖と仮面を拾う。
そして二人は奥のゲート前まで進む。
そこには何かを嵌める穴があり、杖が経常的に入りそうだった。
「これを入れろ、という事なんだろうな」
「入れてみるでありんすか」
「あぁ」
イナルは杖を穴に入れた。
それによりソブンガルデへの門が開いて行く。
石が浮いていき、渦のように開いて行く。
「これが門か……」
「さ、行くでありんすよ」
シャルティアはすげーギミックだなと思いつつ進む。
イナルも同時に進んでいった。
「これが……ソブンガルデか」
着いた先はソブンガルデ。戦死者の楽園だ。
夜のように少し暗い。
地面や草木は現実の物と大差ない。
左右には屹立するローブを纏った石像。
空には全天を覆う星空とオーロラがある。
しかし霧が深い。霧だけは異質さを感じさせている。
「さて、ここのどこにアルドゥインが居るでありんすかねぇ」
「……まずは勇気の間に行ってみよう」
「? なんでありんす? それ」
「勇敢に戦って死んだノルドが宴会をしている場所だ。道はわかる。行こう」
「なんでわかるでありんす?」
「……わからない。だが、わかるんだ」
「……そうでありんすか」
そして二人は進みだす。
「霧が邪魔だな…… ロク ヴァ コール!」
イナルが晴天の空のシャウトを使った。
このシャウトは天候を晴れに変えるシャウトだ。
それにより霧が吹き飛んで行く。
しかしそれは一時的な物だ。すぐに一メートル先も見えないほどの濃霧に覆われていく。
この霧はアルドゥインの鎧だ。
己を隠すマントであり、身を守る盾でもある。
これがソブンガルデ中に充満している。アルドゥインの強大さがよくわかる。
更に進んでいくと向こう側から男が歩いて来た。
ストームクロークの鎧を着た男だ。
「引き帰せ。この先には恐ろしい者が待っている」
「それはアルドゥインの事か? それなら問題ない。俺はアルドゥインを倒しに来たんだ」
「そうなのか? だが、あれは世界を喰らう者。定命の者がどうにか出来る相手ではない」
「俺はドラゴンボーンだ。それに幾多の竜を殺している。勝てるはずだ。俺について来い。ショールの間まで案内しよう」
「そうか、それはたすか──」
最後の言葉は言えなかった。
兵士は空から来たドラゴン──アルドゥインに食われそのままアルドゥインは空に飛んで行ったのだ。
「アルドゥイン!」
「この霧じゃ戦えないでありんすね……どこに行ったかもわからないし」
「……そう、だな。まずは勇気の間に行こう──ロク ヴァ コール!」
イナルがシャウトを行使し、霧を晴らす。
シャルティアは視界阻害に対しても耐性を持っているが、それは
物理的に見えなくされる──例えば壁で遮られるなどをした場合この耐性は動かない。
だからシャルティアはこの霧では戦えないと判断する。
更に進んでいくと、石に座っている男が居た。
知っている男だ。
「ウルフリック、ストームクローク……」
「……その姿、ドラゴンボーンか? 死んでここに来た……という訳ではなさそうだ」
ウルフリックは少し驚いた表情を浮かべた。
「あぁ。世界を喰らう者を追ってここに来た」
「なるほど、アルドゥインか。その声は聞こえど姿は見えんな……勇気の間に行くつもりか?」
「あぁ。そこの者たちならばアルドゥインの居場所を知っているかもしれないし……何より、力になってくれそうな者たちが居る」
「そうか……なら、私もそれを手伝おう。愚かな敗者だとしても、まだ出来る事はあるはずだ」
「助かる。行こう」
そうして三人に増え一行は更に進んでいく。
そうして進んでいくと巨大な宮殿が見えて来た。石造りの宮殿だ。
そしてその前には崖があり、崖には骨で出来た橋が架かっている。
橋の前には二メートルほどの大男が立っている。
上半身裸。背中には両手斧を背負っている。
ショールの間を守る門番にして神の一柱、ツンだ。
司るは逆境に対する挑戦と試練である。
「あれがツンか……」
ウルフリックとイナルが感動したような声を漏らした。
シャルティアは神聖属性の存在だから相性悪いな、などと感がせていた。
イナルが前に出る。
それに対しツンが眉を潜めた。
「何故ここにその足で訪れた。不快なる旅人よ。ここはソブンガルデ。魂の終焉の地、ショールの名誉に預かった死者の場であるぞ」
「世界を喰らう者、アルドゥインを追ってきた。勇気の間に用があるんだ」
「なるほど、あの不快な蚯蚓か……だが生者で死者の地に行こうとは何とも大胆な。いかなる権利の元行こうというのか?」
「ドラゴンボーンの定めとしてだ」
「なるほど。運命に導かれ師竜の血脈を引く英雄に会ったのはずいぶんと久しぶりだ。ならばその力を戦って示してみよ。出なければ通す事は出来ない」
「某連打というのなら、受けよう。シャルティア、ウルフリック。手を出すなよ」
「わかったでありんす」
「わかった」
シャルティアとウルフリックは距離を取る。
ツンに対しイナルは攻めに出た。
ツンが両手斧を縦のように構え防御する。
数度、防御の上からイナルが攻撃する。
しかしたいしてダメージが響かない。流石は神と言ったところだろうか。
イナルは後ろに飛び距離を取る。
そして盾を構えたままダッシュ。シールドチャージだ。
対しツンは防御の構え。
イナルがツンに衝突し、ツンが後ろに吹っ飛んだ。
「ぬん!」
だがツンは耐えた。
地面にきちんと着地し、両の足でがっしりと構える。
更にイナルが斬りかかる。
上段からの切り下げだ。
ツンは防御ではなく攻撃に出た。
ツンとイナル、両方の攻撃が同じ肩に命中する。
両者とも痛みで顔を歪めるようなことはない。むしろ歓喜の表情を浮かべていた。
イナルはツンという神話の住人と戦えることに対して。ツンは最後のドラゴンボーンと戦えることに対して。
そうして両者の戦闘が続く。
(レベル六十から七十ぐらいかな?)
シャルティアは両者の動きとダメージ量をこっそり
イナル自身のレベルはぎりぎり七十に届かない程度だろう。だがツンの方のレベルは非常に高い。下手したら己にも届き得る程だ。
そうして二分ほど戦っているとツンが斧をしまった。
「試練は合格だ。この橋を渡り、栄光に浴するが良い。ただし……そちらの少女は駄目だ」
「試練を受けていないからか?」
イナルが問いかけた。
「いいや。この世界の者ではないその少女はこの地に相応しくない。だが、ソブンガルデに来れたという事はショールが認めたという事ではあるから滞在を許すが、勇気の間まで行くのは許せない。あぁ、そちらの男は試練を受けるならば通っていいぞ」
「なるほど、それなら仕方ないでありんすね」
シャルティアはわざとらしく肩をすくめた。
この世界の者ではない、という言葉にウルフリックとイナルが目を点にする。
だがウルフリックはすぐ納得したような表情を見せた。
「なるほど、人知を超えた力の持ち主だと思っていたが……この世界の──ニルンの者でないというのなら納得だ」
「あぁ、一応でありんすがわたしの正体は秘匿して置いて欲しいでありんすから、よしなに」
それに対しイナルが苦笑で返した。
「わかっている。友の秘密をひけらかすような事はしないさ。それじゃあ、行ってくる」
「いってらっしゃい……ウルフリック、ぬしはいかないのでありんすかえ?」
「私はまだ勇気の間に行くのにふさわしい者ではない。アルドゥインを倒してから、試練を受けるとしよう」
「なるほど、そうでありんすか」