第17話
二人が目を開けたらそこは山の頂上だった。
白い雪が積もる山頂であり、そこには多数のドラゴンが居た。
「アルドゥイン マラーン」
ドラゴンたちがそう叫んでいた。
思わずシャルティアは構えるが、それをイナルが制した。
「パーサーナックス──わが師よ、戻ったぞ」
その言葉に岩に座っているドラゴンが返答した。
純白の姿をしているドラゴンだ。右角が折れて無くなっている。
「終わったのだな。アルドゥイン、ディロン。誰よりも長くこの地に居た最長老は、もういないのか」
「ドラゴンボーンとして、運命を全うしただけだ」
「お前は勝ったのだ。サーロット、クロングラー……この偉大な勝利はあらゆる時代に響き渡り、見る事の出来る者に届くだろう。勝利を存分に味わえ、ドヴァーキン。時の流れに名を記すのもこれが最後ではあるまい」
「あぁ、暫くは余韻に浸らせてもらおう」
そうイナルは笑みを見せた。
パーサーナックスは空を飛んだ。
「ゴラーン! これまでよりも若さが溢れているように感じる──多くの兄弟たちがケイザール中に散らばっている。アルドゥインの支配が無ければヴァーゼン……我がスゥームの正義に従うかもしれん。とまれ、いつか聞くだろう。また会おう、ドヴァーキン!」
そう叫ぶとパーサーナックスは飛んで行き、他のドラゴンたちも飛んで行った。
「それじゃあ、まずはホワイトランに戻るでありんすかね」
「あぁ。戻ろう──世界は平和になったのだから」
■
数日後の夜。スカイリム。ホワイトランのドラゴンズリーチで。
「では、勝利に乾杯! 世界を救ったドラゴンボーンに乾杯だ!」
そうバルグルーフが音頭を取り、酒瓶を掲げた。
「「「「「乾杯!!!」」」」」
そう音頭を取った。
テーブルの上には豪華な料理が多数ある。
シャルティアはそれらを見て食べれないかなと一つ適当に口に運ぶが、謎の障壁に阻まれ食べれなかった。
(ガッデム!)
なら仕方がないとブラックブライアのはちみつ酒を飲む。
はちみつの味はあまりしない。はちみつがアルコールに変わっているからだ。
しかしそれでも多少の風味と甘さは感じられる。
ぐびぐび飲んでいく。
「凄い勢いで飲むな……」
隣にテュリウスがやって来た。
「おや将軍。来れたでありんすか」
「あぁ、こういう祝の席ぐらいには来ないとな」
そうテュリウスは座った。
この宴会はドラゴンボーンがアルドゥインを倒し世界を救った事に対する宴だ。
費用は一部テュリウスの手持ちとバルグルーフの手持ちから出ている。
「それで、だシャルティア。君はまだ帝国軍に所属するつもりか?」
「まぁ、目的であるアインズ・ウール・ゴウンやナザリックに関する情報を得られるまでは帝国で働くでありんすよ。国で上り詰めれば情報も多く手に入るでありんしょうし」
「そうか、なら私から君を将軍に推薦しよう」
その言葉にシャルティアは目を点にした。
「本気でありんす? どこから現れた訳の分からない小娘を将軍に?」
「それを言ったら誰だってどこかの誰かから生まれた訳の分からない者さ。それに君は実力と信用を示して見せた。将軍の地位でもやっていけるだろう。それに……のちのサルモールとの大戦で活躍すれば、更に上の地位に行けるだろう」
「……わかりんした。喜んでお受けいたしんす」
「あぁ。私もすぐに帝都に戻らないといけない。サルモールに対するにらみを利かせないといけないからな……後の事は頼んだぞ」
「えぇ。任せておくんなまし」
宴会はなぜかバルグルーフが裸踊りを披露しながら終わった。
偉大な首長は股間も偉大だった。
■
アルドゥインを倒してから二週間が経った。
その間シャルティアは世界を喰らう者討伐に貢献したとして将軍にまで地位を上げていた。
暫くはテュリウスが居るが後二か月もしたらスカイリムの管理をシャルティアがすることになるだろう。
というか半分程既にシャルティアがしている。
基本的な言語の文字書きは辞書片手ならほとんど出来るようになった上疲労を感じないアンデッドなので休むことなく労働が可能。
更に転移魔法でスカイリム各地に兵を派兵できるという圧倒的強みをもってしてシャルティアは八面六臂の活躍をしていた。
シャルティアは与えられた執務室で書類仕事を終わらせる。
そこに部屋にノックがかかった。
「どうぞ」
「失礼します」
入って来たのはリッケ特使だ。彼女は既にシャルティアの部下である。
「報告したいことが。リフテン南東にある砦に傭兵の様な者たちが集まっているとのこと。武装した者が多く、何かしらの野盗……あるいは、ストームクロークの残党の可能性があります」
「なるほど。でしたら明後日にでも部隊を編成しわたしが行くとするでありんす」
「よろしくお願いします。それと、ホワイトラン、マルカルスから吸血鬼の襲撃を受けた、と報告を受けました。マルカルスでは死者が一人。ホワイトランではドラゴンボーンが居たため犠牲者は居なかったそうです」
「そうでありんすか……吸血鬼たちの親玉を見つけないといけないでありんすね」
「お言葉ですが、吸血鬼たちをすべる王、というのは現在発見されていません。見つけるのは至難かと」
「そうでありんすか……適当に一人捕獲して、拷問でもして聞き出した方が良いでありんすかね」
「そうですね。余裕が有るならば襲撃した吸血鬼を捕獲するよう命令を出しておきます」
「頼むでありんす」
「では私はこれで。失礼します」
そうしてリッケは去っていった。
シャルティアも仕事があるので書類を片付けてからドール城を出た。
■
ドール城を出たシャルティアは一人空を飛び、ある洞窟を目指していた。
その洞窟の名はウルフスカル洞窟と言い、かつて狼の女王ポテマが死霊術の練習をしていたという洞窟だ。
ポテマは名前の癖にやっていることは虫の王マニマルコ並みに非道なソリチュード最悪の支配者の一人である。
レッド・ダイヤモンド戦争という戦争で活動していた女傑であり、死霊術に極めて精通していた。
倒した相手をそのままアンデッドにし、更に倒された生者の味方もアンデッドにして使役するという非道をしていたのである。
更にこの世界でもアンデッドは疲労しないし飲食不要。強力なシモベである。
アインズ様がやっていたことの下位互換をしていた。
ポテマはソウル・ケルンというオブリビオンから強力なアンデッドを召喚、使役は出来ていたがただの死体を強力な兵士に変える事は出来なかった。
この洞窟から最近変な音がする、という報告を受けシャルティアは念のため小隊──というか四人の帝国軍兵士を送っていた。
だが一日過ぎても帰還してこない。そのため最高戦力であるシャルティアが来たのだ。
「スケルトンが居るでありんすねぇ」
空からシャルティアは呟いた。
地上を見れば下の洞窟前にはスケルトンが二体居た。
シャルティアが地上に降り、アンデッドを素手で殺す。
今武装はしていない。普段着のドレスだ。
そのまま先へ進んでいく。
洞窟内は暗いが、かすかに灯りがあった。
そして真祖の吸血鬼の優れた聴覚には誰かの話し声が聞こえてくる。
更に進んでいくとドラウグルが出てくる。下位のドラウグルだ。
シャルティアは高速移動し首を跳ね飛ばした。
死体に戻ったドラウグルを放置し奥の小部屋に入る。
天井に穴が空いており、部屋には雪が少しあった。
「な、侵入者か!」
そこにはローブを纏った男が二人いた。
二人の男はそれぞれ魔法を放つ。
放たれたのはファイアボールの魔法とアイススパイクの魔法だ。
シャルティアに命中。シャルティアの防御を貫きダメージを与えるが大したものではない。
シャルティアの魔法耐性はTRPGで言う装甲の様なもので固定値ダメージ軽減だ。だから本当に弱い魔法なら無効化出来るが、一定以上の魔法だとダメージが入る。
シャルティアはまた高速移動。片方の男の胸を貫き殺した。
「
シャルティアは生き残ったもう片方の男に魅了の魔法をかけた。
「あぁ、友か。どうしたんだ?」
男は同胞が目の前で殺され、死体を足蹴にされているというのに笑顔で答えた。
「ぬしたちはここで何をしているでありんすか? それと、ここに来た帝国軍たちはどうしたでありんす?」
「俺たちはポテマ復活の儀式をしているんだ。帝国軍の奴らなら、儀式の生贄になったよ」
「……そうでありんすか」
シャルティアは己の部下が生贄になったという事で顔を暗くする。
シャルティアの中の人は元人間で、また人間の精神性を残している。
だから生贄という事に忌避間を抱く。
しかし内容が至高の御方を復活させるためとかだったら喜んで自分から生贄になるし、生贄を乱獲してくるが。
「それじゃあここの内部構造と人数を教えておくんなまし」
「ああ、ここは──」
シャルティアは聞いた情報を頭に叩きいれる。
帝国軍で活動する中メモなんていちいち取ってられないので頭にぶち込むことを覚えたのだ。
聞いた情報を頭に入れると魔術師を殺し、穴に降りて先に進んだ。
降りた先は巨大な空洞で、中に砦があった。塔も二つある。
そして片方の塔の頂上では目に見えてわかるほどにマジカが集中しており、周囲から力を集めている。
「我が声に答えよ! ポテマよ来たれ!」
「「ポテマを召喚する!」」
一人の女の声の後に複数の男女の声が響いた。
(相手は死霊術師……相性は最良。負ける道理がないでありんすね)
シャルティアはそう考え先へと進んでいく。
階段を降りた先にはドラウグル一体と死霊術師が一人居た。
「
火球が飛んで行き、魔術師に命中し爆炎を上げた。
その爆発にドラウグルも巻き込まれ両者とも死亡した。
そのまま奥に進みながら出てくる死霊術師とドラウグルを殺していく。
時には魔法で。時には素手で。
ゴッズアイテムを使うような敵は居なかった。
そして塔の頂上に上る。
そこには五人ほどの死霊術師が居た。
「
魔法により全員爆発して死んだ。
そして術者が死んだことで自由になったポテマの魂が逃げようとする。
「逃がさないでありんすよ」
シャルティアはポテマに向かって魔法を放った。
この世界の亡霊系アンデッドは銀の武器やデイドラ武器、もしくは付呪された武器でないと干渉出来ない。
「
ポテマの霊体が業火によって燃え盛った。
大ダメージだ。
正直なところ、ポテマ本人の戦闘力はたいして高くない。
あくまでメインが死霊術なのでそれ以外の魔法系統を殆ど取っていないのだ。
その分死霊術ならば死霊術師としてのトップ、マニマルコの次に熟練しているが。
ポテマは霊体のまま何とか雷撃の魔法をシャルティアに向かって放つがシャルティアは優雅に回避し更に魔法を放つ。
「
霊体の内側から爆散し、ポテマは再びオブリビオンに送還された。
「これでここの事態は収束したとみてよさそうでありんすね」
シャルティアは取り合ず魔法的な物資無いか探すか、と塔をあさり始めた。
■
生き残りや物資の探索をある程度したシャルティアはウルフスカル洞窟からソリチュードに戻り、ブルーパレスに向かっていた。
道中を歩いているとシェオゴラスの従者と会った時を思い出す。
貰ったワバジャックはデイドラアーティファクトという強力なマジックアイテムなので売る訳にもいかないのでアイテムボックスの肥やしになっている。
因みにワバジャックの効果はランダムで相手をスイートロールに変えたり即死させたり爆発させるなど多種多様な効果を齎す。
シャルティアがブルーパレス内に入り、階段を上って二階に上がる。
二階には玉座があり、その近くには椅子と机がある。
椅子には壮年のノルドの男、ファルク・ファイアビアードが座っていた。
「ウルフスカル洞窟の調査が終わったでありんすよ」
元はソリチュード側に向けた依頼をソリチュードが帝国軍に委託した形になる。
「戻ったか、どうだった?」
「死霊術師たちがポテマを召喚しようとしていたので阻止したでありんす」
ポテマ、という言葉にファルクは顔を青くした。
「それは、阻止したんだろうな?」
「勿論。魔法は途中で阻害したし、ポテマ本人の霊魂もオブリビオンに送還したでありんすよ」
「そうか、それならよかった……後で報酬を持って行くよ」
「えぇ。頼むでありんす。それじゃあ、わたしはこれで」
「あぁ。また何かあったら頼む」
そうしてシャルティアはブルーパレスを後にした。