セラーナをヴォルキハル城に届けてから二週間が経った。
そのおかげか、各地で起こっていた吸血鬼の襲撃もほとんどなくなった。ゼロという訳ではないが。
そしてシャルティアがドール城の執務室で内政をしていた。
主な内容は各地に対する帝国軍人の派兵や首長からの大きな問題に対する対応策の打ち出した。
多少の問題は独自の戦力でどうにかするが、ドラゴンが出たとかだとシャルティアが出張る必要があるのでそこそこ忙しかった。
全てのドラゴンがパーサーナックスに従い大人しくなった訳ではない。アルドゥインが死んだのなら俺が支配者だとばかりに村を襲撃し支配下に置こうとするドラゴンや単純に暴れたいだけの馬鹿ドラゴンなどが居た。
それらに対しドラゴンボーンであるイナルは各地を回っていた。ドラゴンに対する最大戦力がイナルしかいないので。
部屋で書類を整理し、一息つくと部屋にノックがかかった。
「どうぞ」
「失礼します」
そう言いながら入って来たのはアルディス隊長だ。
「将軍。何やら将軍の友人だという女性が来ています。どうしますか?」
「わたしの友人? ……その者の容姿は?」
シャルティアは一瞬ナザリックの守護者が他に来ているのか、という淡い期待を抱いてしまった。
だがそのはずがないと判断する。もしそうならばナザリックの者特有の気配を感じられるはずだからだ。
「は。その者の名はセラーナと言い、黒髪赤目の女性です」
「セラーナが? わかりんした。ここまで連れて来て頂戴」
「わかりました」
そうしてアルディスが去って少し経つと再びノックが入り、セラーナとアルディスが入って来た。
「ご苦労。アルディス、下がっていいでありんすよ」
「よろしいので?」
「えぇ。大丈夫でありんす」
「わかりました。では」
そうしてアルディスが去るとシャルティアも立ち上がる。
執務机の前にはソファとテーブルがある。ソファはテーブルを挟むように置いてある。
「紅茶でいいでありんすか?」
「えぇ。お願いするわ」
シャルティアが紅茶を用意する。
この部屋には休憩用の紅茶セットが置いてあるのだ。
紅茶を入れるためのケトルには付呪で保温機能があり、熱いお湯をいつでも入れれる。ただ無限にお湯を出せるわけではないが。
シャルティアは原作で紅茶の種類について詳しい、という設定があった。だが今のシャルティアは詳しくない。
それだと困るのでこの世界のでもいいから紅茶の種類について勉強せねばと毎日飲んでいたら味にはまったのであった。
簡易的な紅茶を二人分用意し、テーブルに置く。
セラーナとシャルティアが向かい合って座った。
「それで、どうしてぬしがここに?」
「……私とまた会うとは思っていなかったでしょう。ですが、事は一刻を争うのです」
「それほどの事態だというでありんすか?」
「はい……私の父、ハルコンの目的をまずは話しましょう、父の目的は吸血鬼の楽園を作る事……つまりタムリエルの征服です」
「馬鹿げた夢……とは言えないでありんすねぇ。実際タイパー・セプティムがそれを可能にしてしまっているでありんすから」
シャルティアは厄介事だ、と紅茶を啜った。音は立てない。
「それには私が星霜の書を持って封印されていたことにも関係があるのです。父はある時、予言を見つけてしまった。その予言には吸血鬼が太陽を恐れなくなるというのがあった……それに没頭し、家族を蔑ろにした」
「クソな父親でありんすね」
「……えぇ。けどの前は……良い父親でした」
セラーナは昔を懐かしむような表情を浮かべた。
吸血鬼が太陽を恐れなくなるというのは驚異的だとシャルティアは考えるが、だからと言ってそれだけで吸血鬼大勝利エンドにはいかないだろう。
何せこの世界には神々が実在し、神の使徒というのもまたいる。ドラゴンボーンのように。
というか下手にそんなことしようものならその
「母と私はタムリエルとの戦争を引き起こす気にはなれず、止めようとしたのです。だから星霜の書と共に埋められていたのですわ」
「なるほど。それを阻止するために帝国軍の元に来た、と」
「えぇ。あなたなら力になってくれると思って……それにこんなことを聞いて、黙っていられないでしょう?」
「確かにそうでありんすね。じゃあ、とっととハルコンぶっ飛ばして終わりでありんすね」
その言葉にセラーナは目を点にした。
「お待ちになって。そんなことは不可能ですわ」
「わらわなら可能でありんす。実際に見て本人とその配下の戦闘力は把握していんす。わたしには届かない者たちでありんした」
その言葉にセラーナは少し考えた表情を見せた後口を開いた。
「仮にそれが可能だとしても……父の目論見を聞いた他の吸血鬼たちが黙っているとは思えません。それに予言という事はいつかは成就されてしまうもの。だからここで仮に父を倒したとしても、その意思を継ぐ誰かが成してしまう可能性がある……根本から断ち切る為にはこちらも相応の手段を使わなければなりません」
「面倒でありんすね……その手段は?」
「星霜の書を読み解けば、予言の成就方法がわかるはずです。それを妨害する形にして行こうと思いますわ」
「なるほど。ならまずは星霜の書を読み解く必要があるでありんすね……シロディールに持って行く……いえ。確か
聖蚕の僧侶とはシロディールの白金の塔に居る星霜の書の解読を専門にする者たちだ。
彼らは星霜の書を読み解き災害や戦争について帝国に対し助言をしてきた。
ただ星霜の書を読むと盲目になってしまう。更に星霜の書は訓練した者でないと読めないという厄介さを持つ。
だから聖蚕の僧侶は貴重な者である。
「ならば聖蚕の僧侶を探しましょう」
「えぇ。すぐに動くでありんす」
シャルティアはそう言い紅茶をグイっと飲み干す。セラーナも飲み干した。
セラーナがシャルティアのところに来たのはこのセラーナにとって頼れる人物がシャルティアとイナルしか思いつかなかったからだ。
しかしイナルは冒険者で各地を巡っている為探すのには時間がかかる。なら居場所がわかっているシャルティアに会いに行こうとなったのだ。
そしてシャルティアと話しセラーナはこの人ならどうにかしてくれるかも、と期待を持ち始めていたのだった。
■
「転移魔法とはすごいですわね……」
準備を終えたシャルティアは転移魔法でドラゴンブリッジに来ていた。
最初の内は敵に回るかもしれない相手だったので転移魔法は伏せていたがここまで来たら隠す意味もないだろうと転移でドラゴンブリッジに来ていた。
時刻は昼過ぎと言った頃だ。
シャルティアは近くに居た衛兵に声をかけた。
「ぬし、聖蚕の僧侶に覚えはないでありんすか?」
「聖蚕の僧侶ですか? でしたらそれっぽい者たちがドラゴンブリッジを通って南に進んでいくのを見ました」
「遅かったでありんすか……ありがとう。セラーナ、ここからは走って行くでありんすよ」
「わかりましたわ」
そして二人は走って行く。
お互いに疲労無効のアンデッドなので走り続ける事に問題はない。
だがシャルティアは戦士でセラーナは魔術師。同じ吸血鬼だとしても戦闘力に差がある。
故にシャルティアは速度を落とし走っている。
そうしてドラゴンブリッジを渡り少し走ると馬車の残骸を見つけた。
馬車は豪華な作りだったが、ボロボロに壊されている。
そして周囲には帝国兵の死体と灰があった。
灰の山には吸血鬼がよく着ている鎧があった。
「遅かったようでありんすね」
「えぇ。父の配下が予言を知る為に聖蚕の僧侶を攫ったのでしょう」
「ならあの城を攻めに行くでありんすか?」
「いえ。そこまでする必要はないと思いますわ。奴らはどこかに一時身を隠すはず……何か手掛かりがあればいいのですが」
「手がかりと言っても……この灰しかないでありんすねぇ」
シャルティアはそう言いながら灰の山を蹴った。
すると灰の中から一枚のメモが出て来た。
メモを拾い読んでみる。
シャルティアは殆ど辞書なしでも文字を読めるほどになっていた。
「……この近くの洞窟、フォアベアーズ・ホールドアウトに連れていくよう指示を出されいるでありんすね。洞窟にいきんしょうか」
「えぇ。行きましょう」
シャルティア案内の元洞窟へと向かって行った。
シャルティアは将軍になったことでスカイリム地方の地形を全て頭に入れている。だから洞窟がどこにあるかもわかった。
そうして街道を外れて暫く歩くと洞窟の入り口に着く。
中に入る。
中は薄暗く明かりも乏しい。だが闇視の
少し進むと川が見える。
川を渡るには左端の方にある橋を渡らないといけない。
奥には洞窟内の砦が見え、塔もあった。
塔の頂上には魔法的な何かが渦巻いていた。
そのために二人は左に向かって進んでいくが、道中でモンスターと遭遇した。デスハウンドだ。
シャルティアが突撃しデスハウンドの頭を踏みつぶして殺した。
更に進み橋を渡る。
砦内に入るとそこには吸血鬼が三人。吸血鬼の従徒が四人居た。
吸血鬼の従徒とは吸血鬼の不老不死性に憧れ自ら吸血鬼になりたく吸血鬼の支配下に入った者、もしくは吸血鬼の魅了などで支配下に置かれている人間の事だ。
「勝利か、ソブンガルデかだ!」
「お前の血を吸ってやる!」
そう叫びながら攻撃してくる。
セラーナはアイスストームの魔法を放つ。
アイスストームの魔法は精鋭クラスの魔法で、上から三番目のランクの魔法だ。
スカイリムの魔法は下から素人、見習い、精鋭、熟練者、達人の順で魔法の習得難易度と威力が上がっていく。
当然消費マジカも相応に重いがセラーナは高位の吸血鬼であり魔法に熟練している為マジカ容量も相応に多い為問題なく連発していた。
そしてシャルティアは冷気に耐性を持っている。と言っても完全耐性ではないが。
アイスストームの中シャルティアが素手で吸血鬼たちに襲い掛かり縊り殺していった。
すぐに殲滅が終わった。
「残りは上でありんすねぇ」
「えぇ。行きましょう」
そうして二人は階段を登って屋上に上がる。
屋上には二人の吸血鬼が居た。男女の吸血鬼だ。
そして魔法障壁の中に一人の老人が閉じ込められていた。
すぐに二人はシャルティアとセラーナに気づく。
「な、侵入者だと?!」
「ドーンガードか?!」
「違うでありんすが──まぁいいでしょう」
そう言いながらシャルティアは女の方に接近しその胸を貫いて殺した。
もう一人はセラーナがアイススパイクの連射で串刺しにし殺した。
灰になって消えていくが、男の方があるアイテムを落とした。
鶏の卵より少し大きい程度の石だ。卵型の石である。
青緑色に発光している石でその光は文様から発せられている。
「
鑑定魔法でシャルティアはアイテムの内容を見る。
「ウェイストーン・フォーカス……この障壁を解除するためのアイテムでありんすね」
「でしたら解除しましょう。この中の者こそが、きっと聖蚕の僧侶です」
シャルティアは階段を登り石を嵌める場所に入れた。
すると障壁が消えていく。
「我が主は消えた。だが主の仇は討とう!」
そう叫びながら聖蚕の僧侶、デキソン・エヴィカスがアカヴィリ刀──刀を抜いて攻撃してきた。
一番近くに居たのはセラーナだ。セラーナに斬りかかる。
だが所詮は星霜の書を読むための者であるうえ老人だ。戦闘力は低い。
簡単にセラーナはデキソンの攻撃を避け、腹をぶん殴った。
「ふん!」
気合を込めた叫びと共に腹を殴られデキソンは吹っ飛んだ。
「だ、大丈夫でありんすかあの老人」
シャルティアは階段を降りながら心配そうに問いかけた。
「ショック療法ですわ。これで正気を取り戻すはず」
その言葉が正しかったのか、デキソンが立ち上がるもその目は正気だった。
「ここは……そうか。吸血鬼に襲われた私を君たちが助けてくれたのか。ありがとう……君たちの名は?」
「わたしはシャルティア・ブラッドフォールンでありんす」
「セラーナと言います。よしなに」
「そうか……私はデキソン・エヴィカスという。見ての通り聖蚕の僧侶だ……君たちの目的は察しがつくが、聞いても?」
「話が早くて助かりんす。吸血鬼が太陽を無くすという計画を阻止するため星霜の書を読んでもらいに来んした」
「そうか……なるほど。吸血鬼たちもそれが目的で……わかった。スカイリムの将軍の頼みだ。ぜひとも読ませて貰おう」
「ではソリチュードまで転移するでありんす。出来れば明日には読んでもらいたいでありんすからね」
「おぉ、噂に聞く転移魔法を実際に見れるのか。ありがたいことだ」
「では、
転移魔法で三人はソリチュードに帰還した。